androp VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

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内澤崇仁(Vo & Gt)

届くべきところに届けるため
それぞれの信頼のもと完成したニューアルバム

来年12月16日デビュー10周年を迎えるandropが、ニューアルバム『daily』をリリースする。TVドラマ「グッド・ドクター」の主題歌として話題となった“Hikari”を含む全6曲。ライブハウスツアーと並行して制作された今作には、彼らの日常とぬくもりがつめ込まれた。「届くべきところに届けるため」――それぞれの「信頼」をたよりに、妥協することなく作られたこのアルバムについて、内澤崇仁(Vo. / Gt.)に話してもらった。

■今作は何かテーマを持って作られたんですか?

内澤 初めは特にテーマはなく、でした。今年3月にアルバム『cocoon』を出した辺りで、次はどうしようかって話をしていて、なんとなく次のアルバムを目指してみようか、ということになり、じゃあ来月くらいまでに何曲かあげますねってことで、4月に13~14曲提出したんですけど、そこからまた話合いをしようということになって。

■そうだったんですね。

内澤
 それと並行して、7月から放送のTVドラマ「グッド・ドクター」の主題歌のオファーを3月にいただいていたので、その曲を作り始めていて、その制作が4月~5月には終わるかなと思っていたんですけど、なかなかうまいこと進まないというか、時間がかかってしまって。結局7月までずっと作っていたんですよ。

■その理由というのは?

内澤 ドラマってやっぱりいろんな人が関わっているじゃないですか。なので、自分の思う着地点とドラマに関わる人たちの着地点が微妙に違っていて。僕は「これは素晴らしいぞ、かっこいいぞ」と思いながら毎回曲を持っていくんですけど、「いや、こうじゃなくて…」って、なかなか着地点の折り合いがつかなくて。

■なるほど。それは大変でしたね。

内澤 7月12日に第1話の放送だったから、その1ヵ月前には完成させるってことで進めていたんですけど、ドラマが始まってもまだできていなくて…。結局、放送日前日の朝にワンコーラスだけ完成させて、1話、2話ではそれを使っているんです。

■ワンコーラスだけのものを?

内澤 そうです。ワンコーラスだけのものを使って、3話までにはなんとかフルコーラスができて、そこからCDのバージョンが放送されました。それくらい期間がかかってしまったんですね。だから、みんなもうアルバムの話は忘れちゃっていて。(笑) アルバムの話がなくなっちゃって次どうなるのかと思っていたら、その主題歌の“Hikari”が思いのほかいい感じだということで、レコード会社から「年内にアルバムを作りたい」って言われて。それが9月かな?9月の初めに打ち合わせをして。

■なかなかなタイトスケジュールですね。

内澤 いままでの経験上、シングルでもアルバムでも大体2ヵ月前くらいに完成して、そこから1~2ヵ月かけて宣伝するっていうパターンだったので、それを考えると10月にはできてなくちゃいけない。でも僕ら9月から3ヵ月間、ライブハウスツアーが始まる予定で。(笑)

■そうですよね!

内澤 ツアー中にアルバムを作るのはちょっとむずかしいって話をしたら、曲数を減らしてミニアルバムはどうだろうってことになったんですけど、それでもたぶんいままでの経験上、厳しいなって。でも僕ら、制作はすごく好きだから、「作らせてもらえるんだったらしっかりやりますし、最善も尽くしますし、真剣にやりますけど、年内に作れるかどうかは約束できないです」っていうところから、このアルバムの制作はスタートしているんです。

■これまでにライブと制作を並行されたことは?

内澤 初めは自分が両立できない人間だったので、ライブはライブ、制作は制作でやらせてもらっていたんですけど、だんだん並行するようになってきたりもしていて。それで、今回はものすごく並行することになったという。(笑)

■ものすごく重なりましたね。(笑) 今まで並行していたのはスケジュール的なところでですか?

内澤 そうです。たまたまスケジュールがっていうところで。僕としては、それぞれに集中するほうが精度が高いかなって思ったりするんですけど、並行して作ったら、それはそれでライブで聴いてくれる人の顔を思い浮かべながら曲が書けたりとか、そういった利点もあるので、たぶん良し悪しはありますよね。

■たしかに。じゃあ今作はテーマというより“Hikari”を軸にしてできたアルバムという感じですか。

内澤 そうですね。“Hikari”を入れたいというオーダーがあったので。あと来年の12月16日でバンドが10周年を迎えるので、12月16日から10周年イヤーがスタートしていて。そういう節目のときでもあるので、僕らに伝えられるものをパッケージしたいなっていう想いは漠然とあって。いまだから鳴らせる音、いまだから言えること、そういう音楽をパッケージしたいなとは思っていました。

■3月に話が出て、それから9月に正式に決まって、実際に収録されている曲はいつ頃作ったものになるんですか?

内澤 “Blue Nude”と“Saturday Night Apollo”は、次のアルバムにって考えていた曲だから3月に作って、“Blanco”は“Hikari”のあとだから8月後半くらい。“Canvas”は3~4年前に作った曲で、アルバムとかシングルのタイミングで毎回必ず候補にはあがるんだけど、でも毎回「いや、今回じゃない、今回は違うんじゃないか」ってことで、なかなか入れられなかったんですけど、今回やっと入れられました。“Home”は、今月(11月)できました。

■今月ですか?(笑)

内澤 今月頭にデモを作って、その1週間後くらいに完全にできましたね。

■期間も期間だし、ライブとも並行だし、精神的に追い込まれたりしませんでしたか?

内澤 相当追い込まれましたね。僕的にはいつ死んでもおかしくないくらいがんばりました。少しだけ延期はしましたけどね。1週間だけ延ばさせてもらって、さすがに無理で。(笑) いろんな人に迷惑をかけながら、やっとできました。

■“Hikari”にしても、このアルバムにしても、そういう意味では信頼関係みたいなものがなければきっとできなかった1枚じゃないですか?

内澤 それは思いますね。“Hikari”は、それこそドラマがオンエアされてもまだ作っていたし。でもやっぱりものを作るとき、妥協したものを作っちゃだめだなって、そのときあらためて思ったんですよ。遅れるのはよくないですけど、中途半端なものを出して中途半端に届いてしまうのだったら、遅れてでも納得したもの、妥協していないものを届けるべきなんじゃないかって。まぁ、そのときは僕ひとりだけじゃなく、ドラマのプロデューサーも一緒にリスクを背負ってくれていたので、責任のなすりつけ合いもできたから、よかったんですけどね。(笑)

■なすりつけ合い。(笑)

内澤 でも、ものを作る人はこうあるべきだなって、すごく思いました。それはそのプロデューサーに教えてもらった気がして。だからこのアルバムも絶対に妥協したものを作りたくなくて。それで結局1週間遅れちゃったんですけど、でも発売日を延期するって相当なリスクを背負うことだと思うし、メンバーも「納得するものができるまで待っているから」って連絡をくれたり、「焦んなくていいよ」って言ってくれたり。周りの人の信頼があって、僕も信頼できたっていうのがほんとうに大きいです。それこそこの10年で積み上げてきた関係性なのかとも思ったし、お互いが信頼し合って、その信頼のもとで作り上げていった感じはありますね。