BIGMAMA『Roclassichristmas』ライブレポート@マイナビBLITZ赤坂 12月25日(水)

BIGMAMA

気品と優雅、激しさと高揚が同居し行き交ったBIGMAMAのRoclassick的クリスマスSPライブ!

毎年恒例のBIGMAMAのクリスマスSPライブが今年は12月25日(水)にマイナビBLITZ赤坂にて行われた。今年はタイトルに『Roclassichristmas』とついている通り、「Roclassick」色が特に目立つ趣きとなった。「Roclassick」とは、BIGMAMAがロックとクラシックの融合を追求し、クラシックの名曲たちを自身のテイストや解釈を交えて再構築したもの。対象曲のフレーズが彼らの音楽性の中でキャッチーなリフやトピックとして蘇り、クラシック音楽の持つ優雅さや気品、気高さや雄々しさが更にデフォルメされ、そこに彼らの演奏による高揚感や興奮度、歌による新しい物語の解釈が加味され、見事自身の曲として昇華させてきた楽曲群だ。これこそ彼らがバイオリンを有したロックバンドだからこそ成しえる音楽性とも言える。ここまでアルバムにして3作品がリリースされ、彼らの通例ライブでも時々現れるその各曲は、現れる度にライブの色や流れを変えるサムシングエルスを与えてくれる。そしてこの日は発売されたばかりのその第三弾にして最終章を飾る『Roclassick~the Last~』からの楽曲がふんだんに織り込まれ、現れる曲毎に会場をその楽曲が描き出す世界観や歌世界へと誘い、惹き込んでいく光景も印象深かった。

場内には次々とクラシックの有名曲がBGMとして流れており、通例の彼らのライブに比べ気品が漂い、厳かな雰囲気が漂っている。まだ無人のステージには頭上にバンドの立体ロゴボードが、背後には各種巨大ミラー、ステージ上には左右にツリーが配置。ステージバックには巨大なリースも飾られ、それらが我々と共にメンバーの登場を待つ。ベートーヴェンの“第九”が大音量で響き渡る中、燃え上がるような赤いライトにて浮かび上がったステージに、最新のアーティスト写真同様の正装をしたメンバー各位が現れる。リアド偉武(Dr)によるマーチ的なスネアの向こう、東出真緒(Violin)が“ヴィヴァルディ〈春〉”のモチーフを奏で出す。その優雅さを切り裂き、上書きしていくように“走れエロス”が現れ、同曲が有した2ビートが会場を並走させていく。「『Roclassichristmas』へようこそ。BIGMAMAです。どうぞよろしく!!」と金井政人(Vo&Gt)。現れる鈴の音を経るとポップさが場内に広がっていく。クリスマスにぴったりな“My Greatest Treasure”だ。途中では恒例のフロアからの「Merry Christmas」のコールも。同曲ではアウトロも長く保たれ、柿沼広也(Gt&Vo)もそこに光景感溢れるギターソロを乗せていく。

新曲“LEMONADE”では金井もギターを置き、ハンドマイクに持ち替えステージを左右にムーブしながら歌唱。ミュートを利かせた柿沼のギターと安井英人(Ba)のベースが育む適度なファンキーさ、リアドの生み出すハネるビートが会場に躍動感を寄与していく。再びライブを激化させるべく“荒狂曲”シンセカイ””に入ると赤を基調にしたライティングも映える。間には激流に巻き込まれるような場面も現れ、場内の起爆を更に誘っていく。緊迫感のあるイントロから“ワルキューレの非行”に入ると、ツービートで駆け抜ける…と思いきや、当然そう一筋縄にはいかず。ドラマティックさを織り交え贈られていく。そして不穏さとダイナミックさを同居させた“Perfect Gray”では、現れたサビのストレートさが、また疾走メロディックナンバー“the cookie crumbles”でも数多くのクラウドサーフが生み出されていった。それらに対して隙間の多いサウンドと会場をたゆたわせるような横ノリと夜とムーディさを寄与したのは“高嶺の花のワルツ”であった。同曲での金井のたゆたうように歌を泳がせるような歌唱も印象深い。ここで金井がステージセンターに配された鍵盤に座る。リアドもマレットに持ち替え、ダークなストリングス音のスリリングさをイントロデュースに“Animanimus”に飛び込めば、“mummy mummy”では金井もハンドマイクスタイルにてアクティブに歌唱。同曲独特のビッグビートさと共にその歌声が広がっていく。

リアドの電撃スネアと安井の超絶スラッピーを抜けて現れた“Swan Song”では激化と、それらとは対象的な東出のバイオリンの優雅さとの同居も楽しめた。同曲のサビで現れたホッピングビート時には場内も合わせてバウンス。ブリッジ部分の柿沼のギターソロではライトハンドも堪能できた。またサティの変拍子に8ビートをブレンドさせた“Royalize”では東出もキーボードに移り、ドリーミーなオルガンの音にて楽曲にふくよかさを付与していく。ここから数曲は金井のピアノ演奏も交え贈られた。金井のピアノ弾き語りとリアドのドラムのみで“the Last Song”を開始。2コーラス目からはそこにバンドサウンドも加わり、美しさと尊さ、それでいて至福さが光量の高い背後からの白色ライトと共に我々に神々しく降り注いた。対して中盤ではアコースティックスタイルも数曲現れた。まずは金井がピアノと共に一人で“春は風のように”にて場内いっぱいに愛しさを広げていけば、柿沼のアコギと東出、そして金井のピアノによる“最後の一口”では、その三声のハーモニーも楽しめた。

「アコギは緊張する」とアコギに持ち替えた金井。「クリスマスなのでカバーを持ってきました」と続け、DREAMS COME TRUEの“LOVE LOVE LOVE”を暖かくも切なくカバー。同曲では会場中も一緒に大合唱。みんなが愛を叫んだ。みんなで謳歌する曲は続く。「甘くて苦い人生のようなクリスマスを」(金井)とハンドマイクにて歌われた“Sweet Dreams”の際には、場内を甘くて解けない夢を見ようと誘因。それに呼応するかのように会場中が幸せのワイパーを描き出す。「まだレコーディングしていない、ここだけでしか聞けない曲を」と金井。あなたに幸せをの願いも込められた未発表の新曲“St.Light”が再び会場中をここではないどこかへと引き連れていった。同曲のラストに歌われた、「ずっとこの日を待ち望んでいたんだろう」の問いかけは図星でもありドキッとさせられた。

「あと少し。お互い出し惜しみのないようにしよう!!」(金井)。ここからはラストスパート。場内が次から次へと連続爆発を引き起こしていく。“No.9”では、リアドもマレットに持ち替え、“第九”の部分では大合唱と共にとてつもない至福感を呼び込めば、そこに“We Wish You A Merry Christmas”をマッシュアップ。そのまま飛び込んだ“MUTOPIA”の至福のEDM感に会場内も幸せそうな表情と共に踊る。金井もアコギに持ち替え入った“あなたの声で僕の名を呼んで”では、現れた雄々しいコーラスも印象的であったし、東出のバイオリンもエレガントに泳ぎ回った“秘密”、“計算高いシンデレラ”では、その東出による“カノン”のフレーズがダイナミズムとエレガントさを場内の隅々にまで広がらせていった。「続きは『Roclassick tour』でお待ちしております」と金井。ラストはここまでの謳歌や至福感から一転。“誰が為のレクイエム”の情熱的なラテンビートが会場にレクイエムとして贈られた。「Merry Christmas」(金井)の言葉を場内に残し彼らは去った。アンコールは無し。続きは1月末からの全国ツアーに持ち越された。

と、ここまで書いていて驚くべきニュースが飛び込んできた。なんとドラムのリアド偉武(Dr)が1月30日よりスタートの『Roclassick tour 2020』の全国ツアーをもってバンドを去るというのだ。昨晩のライブではそんなこと微塵も感じさせていなかっただけに仰天した。とは言え、ドラマーとして自分の可能性をもっと試したく、その新しい冒険を始める為とのこと。なるほど。残念だがこれは祝福して送り出そう。そんな彼にとっては最期の全国ツアーになってしまう『Roclassick tour 2020』。この日はクリスマス限定のスペシャル感はあったものの同ツアーのプレやキックオフと見てもいいだろう。1月30日より5月まで日本全国津々浦々にて展開される同ツアー。リアドのBIGMAMAでの雄姿と『Roclassick Tour』の最終章であり、完成形を是非みなさんにも観てもらいたい。それは美しくも気高く、優雅で激しく、爽快でいて快楽な世界をあなたの中に広がらせてくれるだろうから。

Text:池田スカオ和宏
Photo: 高田 梓

http://bigmama-web.com/

『Roclassichristmas』セットリスト
1. 走れエロス
2. My Greatest Treasure
3. LEMONADE
4. 荒狂曲”シンセカイ”
5. ワルキューレの非行
6. Perfect Gray
7. the cookie crumbles
8. 高嶺の花のワルツ
9. Animanimus
10. mummy mummy
11. Swan Song
12. Royalize
13. the Last Song
14. 春は風のように
15. 最後の一口 [acoustic ver (金井、柿沼、東出)]
16. LOVE LOVE LOVE [DREAMS COME TRUE]
17. Sweet Dreams
18. St.Light
19. No.9 ~We Wish You A Merry Christmas~
20. MUTOPIA
21. あなたの声で僕の名を呼んで
22. 秘密
23. 計算高いシンデレラ
24. 誰が為のレクイエム