MOROHA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■そういえばUKさんはX JAPANに憧れて音楽を始めたんですよね。結構スタイルが違うと思うんですけど……。

UK もう妥協の妥協です。(笑) 僕はギターの中でアコギが一番嫌いだったんですけど、でも今も続いているってことは、そこに道を見つけたってことなので、その時点で「アコギで自分(UK)みたいな表現をすること」って意味では無敵です。

アフロ そうだな。アコギだったらhideにも勝ってるもん。いや違うか、もっと細分化しなきゃだよな。「アコギでUKをやる」っていうことに対してはUKは最強です。

UK いろんな表現の仕方があるのが音楽の良さだったりするから、一概に「音楽」って一括りにしてテッペンは言い張れないです。

アフロ ただ、「数字」はあるよね。だからそれも負けたくないなと。俺たちより売れているアーティストはいっぱいいるからさ、もうみんな捕まっちまえ!って思うよ。(笑)

■ま、まぁまぁ……。ところで“エリザベス”のタイトルの由来はなんですか?

アフロ 俺たちの写真をずっと撮ってくれている人が「エリザベス宮地」っていう人なのね。それでタイトルにつけたんだけど、「エリザベス」ってお姫様の名前じゃない。それが歌詞にリンクしてくるんだよね。1番でお父さんが子どもと奥さんの写真を撮るじゃない。多分、お父さんにとってのエリザベス(=お姫様)がこの二人なんだね……っていう後付け。そういうのが素敵だなと思ってね。

■3番の歌詞ってカメラ視点ですか?

アフロ そう!カメラの視点。“エリザベス”ってアウトロもめっちゃ最高だよね。

UK 「“エリザベス”のアウトロ良いよね」って、アフロ以外からもよく言われるんですが、あえてこういう言い方をすれば、“エリザベス”のアウトロは「魂売ってる」と思います……。(笑) あれは誰でも思いつくし、いかにもなやつをやりたくてあえてやっているんですけど、「それが良い」っていうのは、まぁ音楽の真理なんだと思います。やっぱりエゴに走って自分が気持ちいいものを選びがちだけど、何人もの人が「良い」って言うものは、大衆音楽として一つの正解だと思います。そういう意味では多分俺が間違っているんです。(笑)

■私は“0G”のどんどんズレ込んでいくアウトロが好きでした。こっちは逆に一般ウケはしなさそうだと思います。

アフロ そこがいいバランスなんですよ。UKはほっとくとどんどんそっちに行くので、「わかんないからもっとこう……“カノン”みたいなエモさをくれよ!」って言ったみり。「ついに言いやがったなソレ」みたいな。でも本当にすごくバランスを取ってくれて、UKのギターがトリッキーすぎる時、俺が「もうちょっとわかりやすくして欲しい」みたいなことを伝えると、自分の落としどころと美学とのバランスを取ったイイ所を作ってきてくれるのは、本当にすごいことだと思う。

■それ、“命の不始末”でめちゃくちゃ感じました。この曲って3拍子系ですよね?

UK そうです。8分の6拍子。まぁこの辺はあんまり意図していなくて、俺が3拍子で作った曲でも、4拍子として取ってくれても別にいいわけで。それはラップを乗せた時の音楽の面白さなので、どう捉えられてもいいんですよね。アフロはどんな拍子でやっているか知らないかもしれないし。(笑) 俺は音楽理論で説明できないようなグルーヴ感みたいなものの方が大事だなって思っているので。MOROHAに限って言えば、レコーディングでもクリックとか絶対に使わないし。

■アフロさんは拍子を意識されていますか?

アフロ 全然だよ!だから時々UKに文句言うのよ。「なんか意地悪してない?ちょっとラップ乗せづらいんだけど?!」って。(笑)

■その理由が「だってこの曲3拍子だから」みたいな感じなんですね。(笑) 収録曲だと“0G”も印象的でした。この曲はどうやってできていったのでしょうか。

アフロ 前にスマホのCMやっていたから裏切りみたいになるんだけどね。「ちょっと自分スマホ触りすぎじゃない?」って思ったのがあったかもしれない。俺、このあいだ「スマホを辞めた方がいい理由」ってサイトをスマホで見たの。

■「スマホを辞めた方がいい理由」をスマホで見たんですね?(笑)

アフロ そうなの!そのサイトには「このページを目指して検索しましたか?ネットサーフィンしていて偶然ここにたどり着いたんじゃないですか?その時点で脳はあんまり働いていないんです」みたいなことが書いてあって。「目的なく走るのがスマホの性質で、それが悪いわけじゃないけど、そっちに偏りすぎるのが良くないんです。そこで得た情報はどれぐらいの鮮度で保存されますか?」っていうような問いかけがあったりとかして、「なるほどな」と思いました。

■これはすごく身に覚えがありますね。

アフロ あと、昔はビット数の粗いゲームの画面と説明書のキレイなイラストを見て、自分の想像力を働かせていたじゃないですか。だけど、今はイラストと同じクオリティのCGがゲーム画面の中で動いているから、その時点でやっぱり脳みそはちょっと使わなくなってきているんだなと思います。そういうことを「曲を書いた時に気を付けよう」って思っていたわけです。あと、エゴサーチで傷ついたりして、それも必要な傷ではあるんですが、そこにこだわり過ぎるのは無駄だと思ったし。“0G”はそんな感覚の曲です。

■“0G”の次の曲“花向”は、昔付き合っていた女の人と久しぶりに会って……みたいな感じで合っていますか?

アフロ これはね、不倫。結婚している人のことを好きになっちゃった曲。

■やっぱりそうですよね。大体みなさんそこに注目すると思うんですけど、私、最初の方の「獅子座 乙女座」って歌詞を見て「春から夏にかけての季節の曲なのかな?」って思ったんです。

アフロ それは正解。だんだん年を重ねるとね、周りには既婚者が増えてくるわけですよ。でも、恋バナは減らない。それがどういうことかって、やっぱ「そういうこと」なんですよね。でも、それを否定したくないなと思ったし、許されざることも許されてしまうのが歌の世界だから。

■でも、これ歌詞の中では手を出しているようには見えなくて。セーフじゃないですか?(笑)

アフロ でもさ、「君の立てた寝息をshazamした夜」って所はもう怪しくない?

■怪しいです。(笑) ただ、付き合っていたのがすごく昔の話で、たとえば高校の同級生だった頃のエピソードだったらセーフなんじゃないかなとも思います。授業中の居眠りを見ていたとか……。

アフロ なるほどね。想像の余地があるものができたっていうのはすごく嬉しいことですね。

■そして最後の曲が“六文銭”なんですけど、“一文銭”からのシリーズももう6曲目ですね。六文銭といえば三途の川の渡し賃ですが、歌詞の中で追悼されている方は誰ですか?

アフロ これはね、あのね。それを言っちゃうとね……。

■神秘性が薄れるというか……?

アフロ っていうかね、俺はね、人が亡くなったことを歌詞に使うってのは一種のタブーだと思うのよ。それをやる時はそれに伴うだけの理由付けと、クリエイティブがなきゃいけないっていう風に思っていて。それで、俺の中のルールの1つに「誰に向けた曲なのかを言わない」というのがあるので、これはちょっと言えないんです。

■聴く人は気になる部分ではありますよね。この曲に関してはストレートにこのまま聴くのが1番かなって思う部分もあります。「なぁUK」の所がすごく好きです。

アフロ そうだね。やっぱ(○文銭シリーズは)俺たちのことをとにかく歌うっていう感じになってくるから、どうしてもやっぱり視界に入ってくるよね。

■MOROHAの音楽は人生を歌にして切り売りしているみたいな所があるじゃないですか。こうなると、10枚目くらいのアルバムがどうなるかがすごく気になってきますね。

アフロ どうなってるんだろうね?でも何かさ、すっごいしょうもないことを歌っていたら歌っていたで面白くない?逆に恨み節になっているかもしれないけど。

■もしかしたらオケがついているかもしれませんか?

アフロ それも全然いいのよ。「俺たちは二人でやっているからカッコいい」「二人でやるからこそ生まれるカッコよさがある」って別だから。俺たちが「そっちの方がカッコいいね」ってなったら、もしかしたらバックバンドを入れるかもしれないし。現状の回答としては、「二人でやっている方がヒリヒリする」ってことでやっているだけであって、今後はわかんないかもね。でもね、やっぱり……二人だとギャラがしっかり貰えるのよ。

■いや、大事なことだと思います。

アフロ 音楽ユニットは3人組が最もバランスいいって言われているのは何故かって、結局、絶妙に食えそうで食えないからみんな頑張るんだと思う。あくまで傾向だけど4人組は4人分稼いで家族も養うとなると世間に迎合しがち。それで、二人とか一人とかだと割りと食えるから、あんまり野望を抱かずに自分のペースでやった結果、色気がなくなっていく気がする。そういうとこの「3人組」の絶妙さっていうのはある気がしていて。

■最近はサポートメンバーをたくさん入れて、メンバーが自由に動くバンドもいますよね。

アフロ MOROHAもサポートメンバーでアコギ入れてさ、UKはその辺でタバコ吸ってウロウロしてる……っての良くない?

UK でもさ、ファッションショーとかってそれだよ。デザイナーは自分が作った洋服を自分では着こなせないけど、超カッコいいモデルたちに服着せて花道を歩かせて、最後は「自分のもの」みたいな感じで出てくるの。(笑)

アフロ つまり音楽で言ったらプロデューサーになるってことですよね。でもライブではプロデューサーが最後に出てきて「ドヤ!」はしないか。誰かに俺が歌詞あげて、UKがリフ作ってMOROHAをやらせて、終わった後に俺とUKが出てきて……「ドヤ!」みたいな。…ないね、ないわ!

■ひょっとしたら10年後のMOROHAはファッションショーのデザイナースタイルになっているかもしれませんね。(笑)

Interview & Text:安藤さやか

PROFILE
2008年結成、長野県出身。今年14周年を迎えるアコースティックギターのUKとMCのアフロからなる二人組。互いの持ち味を最大限生かす為、楽曲、ライブ共にGt×MCという最小最強編成で臨む。その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽は、あなたにとって、君にとって、お前にとって、最高か、最悪か。
http://moroha.jp/

RELEASE
『MOROHA V』

UMCK-1750
¥3,300(tax in)

YAVAY YAYVA RECORDS / ユニバーサル シグマ
6月7日 ON SALE