MOROHA VANITYMIX 2019 SUMMER PICK UO INTERVIEW

MOROHA Ⅳ

「やさしさに対して現実的になった」約2年半ぶりのオリジナルアルバム完成

前作から約2年半ぶりとなるオリジナルアルバム『MOROHA IV』をリリースしたMOROHA。鋭く、そして繊細な言葉とギターはより研ぎ澄まされ、聴くたびに心臓を掴まれるかのようなあの感覚は変わらずだが、今作ではやさしさの振り幅が広がり、また新たな表情を見せる。メジャーデビュー後初のオリジナルアルバムともなる今作について、2人に話を訊いた。

■前回の取材のとき(『MOROHA BEST~十年再録~』リリース時)、なかなか曲ができないとおっしゃっていましたが。

UK あー、そうでしたね。でも思い返せばそれからちゃんと作っていましたね。

アフロ たしかに俺がいつまで経ってもリフがこないって言っていましたね。

■常に自分を越えるものを作らなきゃって。

UK それはいまもありますよ。自分のギターに対して新しい何かができないかってことは常に考えていて、いまもそれが飽和してきていますけど、別の活路を見出してもいたりして。例えば知らないアーティストがやっている技術的なものを自分に取り入れて実際やってみたけど、全然自分のものにならなかったとか。でも、当時、1年前の頃は自分のギタープレイとかギターに対してどうこうって思っていましたけど、最近は曲全体としての聴き心地のほうに目を向けるようにはなったかな、と思いますね。

■きっかけは何かあったんですか?

UK これは昔からなんですけど、日本の音楽ってサビが命だと思っていて、特にここ最近のヒットチャート上位のものってサビがめっちゃいいんですよ。それに感化されているというか、目指してるところはそういう届け方だったりするので、それをもうちょっと意識してみようかなって、そういう感じですね。

■なるほど。なかなか曲が書けないとき、ご自身を奮い立たせて書くようなことはされないんですか?

UK もうそういうことしなくていいのかなって。そういう時期を経て、次に出てくるものがあるなって、最近はそう思うようにしていて。

アフロ 恐怖の境地に入りましたね。これはほんとにいつまで経ってもリフがこないかもしれない。最悪の悟りを開いてしまった。(笑)

■あはははは。そんな中で今作、どんなアルバムになりましたか?

UK まず“ストロンガー”“上京タワー”“遠郷タワー”といったシングル曲がけっこう入っているんですね。いままでそういうアルバムをあまり作っていなくて。というのも、シングルをそもそも出してこなかったので。でも“上京タワー”に関しては、けっこう時間が経っちゃっているのでレコーディングし直していて、そういう意味ではまた新鮮な感じで聴けたり、聴き比べたりとかもできるかなっていうところと、個人的には、前の3枚のアルバムに比べたら、やさしい曲の振り幅が増えたなと思います。やさしさの深みが出たというか。

■あー、たしかにそうですね。

UK 身の丈に合ったのかなんなのかわかんないんですけど、人の気持ちがわかるような曲が増えたな、というのは実感としてありますね。アルバムというよりはそういう曲ができて、それがたまたまこのアルバムに入っただけなんですけど。

アフロ あー、そうか。“うぬぼれ”って曲、これは女の子視点の曲で、女の人が書いたものを俺が歌っているっていう、言ったら俺が俺じゃない人間になっているわけですよ。なので、この曲の中では「わたし」って言っているんですよね。これは完全に俺が思っていることだったりするんだけど、それを言ってくれる女の人がいたらいいなとか、そういうことを言ってあげたい人がいるなとか、そういうところからできたんですよね。だからきっと、そういう気持ちが俺に芽生え始めたんでしょうね。「いままでなかったんかい」って話なんですけど。でも、振り返れば“GOLD”とかもそうか。

UK うん。だから増えたって感じだよね。あと、例えばファーストアルバムでは、何なにがしたいとか、こうしたいっていう願望を歌うやさしい曲が多かったんですけど、やさしい曲でも現実を歌うようになりましたよね。やさしさのほうへの現実を歌うようになったかなって。

アフロ そうか、素敵なことを言っていただけてうれしいなぁ。たしかに“うぬぼれ”の歌詞の中で「機嫌がいい時にするのは気まぐれで いかなる時もそれこそが優しさ」っていうのは、やさしさに対しての現実を歌っているよね。やさしさについて現実的になった。ストイックだよね、やさしさに対して。そういう部分はたしかに歌えるようになってきた気がするな。これはほんと思ったんですよ、「機嫌がいい時にするのは気まぐれで いかなる時もそれこそが優しさ」って、「できないなー、俺」って。

■やさしさに対して現実的になったって素敵ですね。

アフロ すごくいいですよね。俺らの曲の“勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ”は厳しさに対しての現実を歌っていたんですよね。その対になるような言葉をいま言語化してくれたのでうれしいですね。ひさしぶりにしゃべったと思ったら、まぁまぁ芯を食ったこと言いましたね。

UK 俺、自分の曲に優劣とかつけたくないんですけど、“うぬぼれ”マジでいい曲ですよね。(笑) 捨てるフレーズないし、それは歌詞に対しても。自分のギターもすごく納得いっているし、すごくいい曲だなと思いますよ。これをもし自分でやっていなかったら、たぶん初めてMOROHAで泣ける曲だなって、それくらいの曲かなって。(笑)

アフロ そうだね。でも、リード曲じゃないっていうね。

UK たしかに。(笑) 自分が弱っているときに聴く感じでもなくて、普通にフラットな気持ちで聴いてもめっちゃグッとくるというか、そういう曲っていいですよね。弱っているときにチョイスしてもらうのもすごくうれしいんですけど、やっぱり状況を選んでしまうじゃないですか。そういう状況下じゃなくてもこの曲を聴いて、みんなが平等に思うことをしっかり歌えていたり、曲として表現できているっていうのはすごくいいなって。だからもうはっきり言いますけど、この曲がいちばんいいです。(笑) 普遍的な曲。

アフロ でもこれはほんとそうかもしれない。