SCANDAL VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

SCANDAL『Kiss from the darkness』

TOMOMI(Ba)、RINA(Dr)

すべての感情を歌にしたプライベートレーベル第1弾アルバム

プライベートレーベル”her”を設立したSCANDALが、ニューアルバム『Kiss from the darkness』をリリース。4人の個性がそのまま表れた全11曲(CDにはボーナストラックを含む12曲収録)、バラエティに富んではいるもののより芯の強さを感じるのは、彼女たちが正直に音楽と向き合った結果。いいときもそうでないときも、いいところもそうでないところもすべてを抱きしめることができる人間は強く、そして美しい。それぞれの人生と音楽がリンクしたこの1枚についてTOMOMIとRINAに話してもらった。

■プライベートレーベル”her”から第1弾のオリジナルアルバムとなりますね。

RINA あらためて音楽に対してむき出しの自分でぶつかれたようなアルバムになったと思いますね。”her”を立ち上げてから変化の大きい1年で、その中でどういう音楽を作るのが正解かっていうことを探りながらの制作で、とにかく音楽に正面からぶつかってチャレンジをたくさんしよう、と。そして新しいSCANDALっていうものをもう一度作ろう、みたいな感覚でやっていったので……大変でしたね。

■そうでしたか。

RINA 今までで一番と言えるくらい大変だった。(笑) その分、魂削っていいもの作ったなっていう達成感と疲労感というか、やりきったなっていう感じではありますね。

■TOMOMIさんはいかがですか?

TOMOMI ”her”を立ち上げて、ナチュラルに人間らしく音楽を作れるようになったかなという気はしていて、だから仕上がる楽曲も自然とそういうものになっていると思います。初めて喜怒哀楽を表現できたような、そんな気分です。

■前々作『YELLOW』辺りから、人間的な部分と音楽が徐々にリンクしてきているような感じはありました。4人の人生と音楽がつながってきたというか。

TOMOMI 今まで前を向いてるような曲をたくさん作ってきて、そういうことが歌いたかったし、そういう自分たちでいたかった。そうなんですけど、”her”を立ち上げた10周年のタイミングで、10年続けてくるとやっぱりもっと新しいことがしたい、新鮮な気持ちになりたい、みたいな欲も出てくるんですよね。もちろんその中で葛藤や悩みもあったし、怒りもあったし。そういうところを見せること、楽曲として表現することも間違っていないというか、すごくナチュラルなことだなって思えるようになってきたんです。

RINA このタイミングで必要だったというかね。

TOMOMI そう。

RINA SCANDALが自分の人生そのものだから、中高生からずっとこれに打ち込んできたから、もうバンド以上に大切なものってなくて。だからもっと裸になって音楽作らなきゃって思ったんです、これから続けていくためにも。ポジティブなエネルギーだけを音楽に変換するんじゃなくて、悲しかったこともちゃんと言葉にできるようなミュージシャンになりたいと思ったんですよね。全部を音楽にできたらなと思って、去年はそれをなんとか実行したような1年で。

■今作が一番大変だったとおっしゃっていましたが…?

RINA ”her”を立ち上げることが決定する前から制作を始めていたので、この進路を知る前の楽曲もあるんですよね。

■なるほど。

RINA こうして自分たちが音楽を作る道を進んでいくっていうことを決める前から曲を作り始めていたので、迷っている歌詞だなっていうのもあるし、このときすごく不安だったなって思い返すこともあったりして。”her”を作ろうって決定するまでなかなか制作がうまくいかなかったし、「これだ!」って思うようなフレーズがなかなか書けなくて、それが一番大変だったんですけど。

■これからに対する迷い、みたいな?

RINA 迷いもあったし、正直怖かった。どこまで出来るんだろう?って。バンドをやっていたら1年なんてあっという間に過ぎちゃうし、女性としてもどういう人生を歩んでいくのかってことが明確に見えなくなっちゃって。だからどういう曲を歌えばいいのかも曖昧になっちゃって。これはもうひとりでは解決できないからみんなに話をしようと思って、今話したようなことや、これからどうしていきたい?どんな音楽やりたい?みたいなことを4人で話し合ったタイミングがあったんです。

■なるほど。

RINA そのときにまた新しいことが始められるっていうわくわくとか、目に見えないけど確かな期待みたいなものを持っていないと進めないよねっていう話になって。これがいい結果になるかわからないけど、レーベルを立ち上げて、マイナスからになるかもしれないけどやってみるか!って、そういう話を4人でした次の日に、ボーナストラックの“YOU GO GIRL!”の歌詞が書けたんです。だからあの曲がすごく好きなんですけど、泣きそうになっちゃう。(笑) そのときにメンバーが言ってくれた言葉が歌詞になったようなものなんで。

■そうだったんですね。

RINA デモは仕上げていたんですけど、やるかわからないストックになっていた曲で、でも”her”のスタッフがひっぱり出してきてくれて、「これボーナストラックに入れるべきだよ。これがテーマじゃん!」って言ってくれたので。レコーディングの日を急遽プラスして録って、それでうまくピースがハマったかなって。あきらめずに書ききってよかったなって思いましたね。迷っていた、弱っていた自分たちも本当だし、そういう心の波、下がっているときにできた曲も出すっていうことが、今回のチャレンジでもあったので。

■今はもう迷いはないですか?

RINA もう柔軟に生きようというか、そんな感じ。(笑)

TOMOMI チャレンジしてみて違ったら辞めたらいいし、とりあえず一歩は踏み出してみよう、みたいな気持ちですね、今は。

■チャレンジと言ったら1曲目の“Tonight”から、かなり驚かされました。

TOMOMI MAMIの曲なんですけど、バンドアレンジで完成しているものを、バンドの文化を知らない人のところまで届く曲にしたいっていうことで、全然違うジャンルの人とやってみようと、SASUKEくんの名前があがって。

■面識はあったんですか?

RINA 一方的にインタビュー記事を読んでるっていうレベル。(笑)

TOMOMI 一緒にやる前に「新しい地図」のお3方と番組で共演させてもらったりしていて、間接的につながってる、みたいな。

RINA 遠くでかすってたね。

TOMOMI その後、ちゃんとお会いしてお願いしました。

■曲があがってきたときの印象はどうでしたか?

TOMOMI 一番最初にあがってきたときはバンドアレンジとは真逆なもので、オールSASUKEサウンドみたいな感じで…。

RINA 全部打ち込みになってたもんね。

TOMOMI そう。全部打ち込みでドラムとベースがなかったんですよ。(笑)

RINA うちらこれどうやってやろう?って。(笑)

TOMOMI ライブでどうしよう…?みたいな。(笑)

RINA めっちゃカッコよかったけどね。

TOMOMI めちゃめちゃカッコよくて、このままリリースしてもいいなってくらいの完成度だったけど、わたしたちがこれを出してしまうと、TOMOとRINAはライブ中、棒立ちになってしまう。(笑)

RINA 休憩の曲になるから。(笑)

TOMOMI それはちょっとな…ってことで、何回もメールでやりとりしたし、直接会ってお話もしたし、そのやりとりもライブっぽくて面白かったんですよ。今までアレンジは決めてから録ることがほとんどだったけど、SASUKEくんの現場に関しては、レコーディングしながらいろいろ作っていった感じで。すごく刺激的でしたね。

RINA 自分じゃ絶対に思いつかないフレーズもあったし、フィルとかも相談しながらその場で変えていったりして、デジタルなサウンドなんだけど、ひとつひとつ手作り感のある作業みたいな。一切手を抜かず、クオリティの高いものができたなって。ベースもめっちゃむずかったよね。(笑)

TOMOMI むずかったっていうか、「可能な限り複雑に弾いてください」って。(笑) そんなオーダー初めてで。(笑) シンセベースがそもそも入っているから生はちょっと控えめにしよう…とか、計算しつつやっていたんですけど、それももう全部やり直しで。可能な限り複雑にしました。(笑)

■ベース、めちゃめちゃカッコいいです!

TOMOMI ありがとうございます。SASUKEくんのオーダーのおかげです。(笑)