東京女子流 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

少女から女性になった7年ぶりのアルバムが完成。大人になって知った「夜の感情」を語る。

東京女子流が2015年以来となるアルバム『ノクターナル』を完成させた。7年ぶり、そして20代になってから初のアルバムになる本作は「夜、誰かを想う時。」をテーマに制作され、夜を舞台にした楽曲を数多く収録。少女から女性になった今だからこその等身大の表現で歌われている。2010年のデビューから12年、10代前半から活動してきた彼女たちは、どんな夜を過ごし、どんな想いを楽曲に重ねたのか。山邊未夢、新井ひとみ、中江友梨、庄司芽生の4人が、「大人になってから知った」という夜の感情を語ってくれた。

■アルバムは7年ぶりですが、アルバムを出したい気持ちは、ずっとあったんですか?

山邊 ありました。私たちだけじゃなくて、ファンの方々からも「アルバムいつ出すの?」「アルバム出して欲しいな」という声をずっといただいていて。アルバムをリリースすると聞いた時は、ファンの方々が喜んでくださる画が頭の中に浮かんで、すごく嬉しい気持ちになりました。

■なぜ、このタイミングでのリリースだったんですか?

庄司 私たちは12年間活動しているんですけど、その中でいろんな変化進化を遂げてきて、ようやく4人としての私たちが確立してきたというか。年齢的にも少女だった私たちから、女性と言えるような年齢になって、今がいちばんこれまでのアルバムからの変化や進化を感じてもらえると思うんです。それを結成から干支が一周したタイミングでリリースできることになって、すごく嬉しさを感じています。

■言われてみると、もう干支一周なんですね。

中江 そうなんです。(笑)

山邊 それに4人でオリジナルアルバムを出すのは初めてなんです。7年前にリリースした『REFLECTION』は、4人の曲と5人の曲が混ざっていたので。

■そう考えると、いかにファンの方々が待ち望んでいたかわかりますね。アルバムには去年以降に発表された楽曲が収録されていますけど、なんでそうなったんですか?

庄司 やっぱり最新の私たちを届けたい想いがあって。歌い方とか、ビジュアルとか、そういう面も含めて、いちばん最新を楽しんでもらえる内容になっていると思います。ただ、(AL+DVD盤とAL+Blu-ray盤のみ付属の)Disc2には2018年からの曲が入っていて、未公開だった曲も含むモリモリの内容になっています。

■お蔵入りしていた曲も?

中江 この時のために温めてました。(笑)

新井 ようやく花咲きましたね。

■アルバムは「夜、誰かを想う時。」がテーマになっていますが、なぜこのテーマになったんですか?

庄司 収録されている曲は、ほとんどが夜のシチュエーションになっているんです。それと私たち自身、年齢を重ねて朝よりも夜に活動することが増えたので、夜行性や夜咲き(の花)を意味する『ノクターナル』がタイトルになりました。

新井 それこそ初期の頃は20時までとか時間制限があって、出演できなかったイベントもたくさんあったんです。今はみんな成人して、時間を気にすることなくイベントにも出演できるようになって、それは私たちにとって大きな変化だったなと思います。

■結成した頃はみなさん10代前半でしたもんね。

中江 もともと女子流はちょっと背伸びした、大人の恋愛の楽曲を歌っていたんですけど、少女から女性になって、今回のアルバムではリアルにも近い等身大で歌った甘く切ない大人な恋愛の楽曲が多いんです。そこは昔から女子流を知っている方たちには衝撃的かもしれないなと思います。

■昔は明らかに背伸びして歌っていることがわかって、それが魅力のひとつだったと思うんですけど、今は背伸びしているのかしていないのかわからないから、個人的にはどう受け止めていいのか戸惑う部分があるんです。

中江 やっぱり昔よりは吸収するものが増えましたし、楽曲を通して知った感情もありますし。その楽曲を歌うために研究研究の12年だったので、女子流の曲で大人にさせてもらったところもあるんですよね。

■みなさんにとって女子流の曲が恋愛の教科書になっていたんですか?

中江 今の言葉いいですね。「女子流の曲が恋愛の教科書でした!」って、どこかで言いたい。(笑)

■ご自由にお使いください。(笑) 今回のアルバムの曲は、それこそ12年前だったら全然違う表現になっていた曲ばかりだと思うんです。リード曲になっている“Viva La 恋心”も、とても大人っぽい曲ですけど、いかがでしたか?

新井 厚みが感じられる楽曲で、コーラスやハモりもあって。昔はユニゾンで一緒に歌ったり、ソロで歌ったりすることが多かったんですけど、ハーモニーを奏でられるようになったことは成長なのかなと感じます。

山邊 こういうハモりやコーラスは、昔だったら歌いきれていなかったし、歌詞の意味も理解できていなかったと思います。当時はディレクターさんに「どういう意味ですか?」と聞くことはしていたんですけど、聞いても「はて?」みたいな感じだったから。だから、ライブで重ねていくうちに意味が理解できるようになった曲も多いんですよね。

■“Viva La 恋心”は「恋心バンザイ」的な意味だと思うんですけど、どういう気持ちで歌ったんですか?

中江 この曲の主人公は、寂しい夜、恋心に酔いしれている感じなんですけど、個人的には大人になってから知った感情なんです。今は「寂しいな、音楽でも聴こう」と思うことがあるんですけど、大阪から上京する前は寂しい夜とかなかったんですよね。お仕事で東京に来ても、お泊りみたいな、合宿みたいな感じで、疲れ果ててすぐ寝ちゃっていたので。

■歳をとってからの方が夜が寂しくなってきたんですか?

新井 わかるかも!

中江 ひとみはずっと寂しいよね。(笑)

新井 私も地元の宮城にいた時は、家族がいたから寂しいと思わなかったけど、上京してからは家に帰ってもひとりだし、部屋も暗いし、寒いし……。だから(メンバーが母親に書いた手紙を元に作られた)“Dear mama”ができた時はヤバかったです。取材を受けていた時に思い出して泣いちゃったくらい、家族の存在が大きいんだなということに改めて気付かされて。でも、女子流のメンバーがいるので、集まる機会とかもあって、そういうのに助けられている自分もいるなっていうのはすごく感じます。

■昔は知らなかった夜の感情がいろんな曲に入っているんですね。アルバムの収録曲で、みなさんが実際に夜、家で考えていることに近い曲はありますか?

中江 近い曲かぁ。難しいな。

庄司 確かに。それは難しい。

中江 基本的に恋愛の曲が多いので、自分と完全につながっているなと感じる曲は少ないんです。ただ、全体的にダンサブルな曲が多い中で、“この雨が上がっても”だけはちょっと落ち着いた雰囲気になっていて。4人それぞれ感情を派手には出さないけど、すごい切ない締め付けられるような歌い方をしているんです。私は子供の頃から活動してきて、今25歳になって、わかりやすく感情的に歌うというよりは、この曲のテンション感がなんか好きなんですよね。静かに、でも気づいて欲しそうに歌っているというか。我慢しているけど気持ちは伝えている感じが大人っぽいなと思うんです。曲をいただいた時は、大人な歌詞だし歌いこなせるのかな?って混乱しましたけど。

■どのへんが大人だと感じたんですか?

中江 「忘却なんて言葉はどこにも見つからない」という歌詞とか。確かに、忘れたことをポイって捨てる場所なんてどこにもないよなと思って。この曲は内に秘めていることが綴られていて、気持ちを代弁してくれるというか、「あぁ、これがそういうことなのか」って。最初はそんなこと思っていなかったんですけど、聴いていくうちに思うようになりました。

■これから歌っていく中で、また曲への解釈も深まっていくんでしょうね。新井さんが実際の自分に近いと感じる曲は?

新井 私は“ガールズトーク”と“コーナーカット・メモリーズ”が、今の自分に合っているというか。“ガールズトーク”には「私達いつでもTokyoガールズ」という歌詞がありますけど、私はもともと宮城で暮らしていて、東京よりは田舎だと思うんです。東京は常に最新だし、「ビュン!」っていう感じじゃないですか。

■はい。(笑)

新井 だけど田舎だと、まわりくねるような濁す感じがあるような気がして。そういうことを東京に来てから気付かされたり、成長するにつれてわかってきたりっていうのが、この“ガールズトーク”では映し出されていて、「わかるなぁ」って共感できる部分がたくさんあるんです。“コーナーカット・メモリーズ”はディスコっていう感じなんですけど、個人的には「コロナ禍で止まった時を私たちと一緒に動き出させようよ」みたいなイメージが強くて。みんなでこれからこの曲を聴いて楽しもうっていうところは、今の自分たちに重なるなと思います。

■コロナでライブできない期間が長かったですしね。山邊さんが実際の自分に近いと感じる曲は?

山邊 私は“days 〜キミだけがいない街〜”です。遠距離恋愛の曲なんですけど、私は亡くなってしまったわんこちゃん(愛犬)を思いながら歌っていて。小さい時から一緒だったので、自分の中でとても大きな存在なんですけど、この曲には「離れていてもがんばるよ」という意味が込められているので、歌っている時は感情がグッと入るし、自分が伝えたいことをファンのみなさんにも伝えやすいし、実際に伝わっているんじゃないかなと思うんです。そういう実体験があるから、より自分の想いを込められた曲だと思います。

■改めて歌詞を見ると、今のお話と完全に一致しますね。庄司さんが実際の自分に近いと感じる曲は?

庄司 私は“ワ.ガ.マ.マ.”かな。学生だった頃は学校でも誰かといるし、お仕事でもメンバーやスタッフさんと一緒にいる時間が長かったので、逆にひとりになりたいという感情が強かったんです。だけど学校を卒業して、女子流一本になった時に、お仕事でしか人と会う機会がなくなって、そんな中でコロナ禍になって、そもそも人に会わなくなって、今度はひとりが寂しくなっちゃったんです。それを経た直後にレコーディングしたのが“ワ.ガ.マ.マ.”で、歌詞がストレートにグサっときて、想像とかではなく自分のまま歌えたというか。そういう思い出も含めいちばん共感できる曲です。