vivid undress『リクエストワンマンライブ Vol.2』無観客配信ライブレポート@新宿ロフト 6月28日(日)

vivid undress『リクエストワンマンライブ Vol.2』

こんな時期や事態だからこその歌たちが贈られたvivid undress無観客配信ライブ

自身を保ちつつも自分らしく、自らを守りながら生き抜く…。この日のvivid undressの配信ワンマンライブは、演者からもその演目を選んだ観者たちからも、こんな時期や事態だからこそ自身に言い聞かせ、今も苦しむ多くの人たちに向け贈られるべく楽曲たちが期せずとも数多く鳴らされた。vivid undressが無観客配信ワンマン『リクエストワンマンライブ vol.2』を新宿ロフトにて行った。このライブは、あんズ(vivid undressのファン)たちから事前に募った「プレイして欲しい曲たち」を基に行われたもの。2019年5月の下北沢シェルターに続き、2度目の企画となる。まずはsyunn(Ba)より、rio(Key)が用意した本日の主旨と視聴感謝の前説 (フリガナなし。が故に誤ったりとたどたどしい)が読み上げられる。そこでは力強く「自分たちの今の想いを全て捧げ厳選されたセットリストで挑む!!」とも宣言。久しぶりの彼らのライブハウスでの一夜を目前に気持ちも高ぶる。この日は2部構成。ライブに加えて視聴者も交え、この日を振り返ったり、今後の重大発表等も織りなされた。ライブの方は事前公表があった通り、ファンが選んだ感満載の痒いところにも手が届くセットリスト。ライブ代表曲を始め、なるほど的な選曲もあり、併せて彼らのこれまでのストーリーを共に歩んできたが故の、完全DIYにて苦労した時期や浮上に向かう時期の曲たちが多く選ばれていたのも興味深い。

登場SEのなか、画面には無人のステージが映し出される。青と白のライトが明滅する中、演奏陣がスタンバイ。間を置きkiila(Vo&Gt)も中央に表れ、まずは一般的にも知名度も高い“シーラカンスダンス”からこの日のライブは始まった。tomoki(Dr)の16ビートとsyunnのファンキーなベースライン、幾何学なリフとファンキーなカッティングを使い分けたyu-ya(Gt)のギター、そしてそれらを経て現れるサビのストレートさが、無人ながらまるで会場を引き連れていくようにライブを走り出させていく。「変わっていく世界の中でも変わらずに私たちは私たちを貫く!!」と、自身のアイデンティティを告げるような楽曲に今の時節ながらのメッセージを感じる。早くも自身の持ち場を離れステージ前方で踊り煽るrio。ここでは上に下に踊り騒ぐ画面前の多くの視聴者を見た気がした。“私メンヘラなんかじゃないもん”に飛び込むと、彼らのストーナー性とキュートさが映え、こちらも自身のアイデンティティを告げるような曲が画面越しの身に覚えのある者たちの胸にダイレクトで問いかけてきた。合わせてメンバーのステージアクションもヒートアップ。アグレッシヴに迫りくる。

「みなさんこんばんは。vivid undressです」とkiila。rioが「前説がヤバかったけど1曲目の“シーラカンスダンス”で挽回できた」と笑うも、割って「悔しい!!」と前説噛み噛みであったsyunn。訳を聞くと、もし誤りなく最後まで読めたらyu-yaのコロナ給付金がもらえるはずだったのに、それも開始後10秒で砕けたとのことであった。この日は珍しい曲もプレイされた。rioの鍵盤と切ないkiilaの歌い出しから初期曲“知らない”に入ると、アッパーな4つうち交じりの上昇観のある楽曲が再びライブを走り出していく。「触りたい」と画面に手を伸ばすかのようなkiilaの歌声。口には出していない本当は伝えたいとの真意や本音が疾走感のあるサウンド共に飛び込むように伝わってくる。対して、彼らの変拍子や幾何学さが映える“天上の宴”は、難しく展開が目まぐるしいながらも、キチンとポップで聴きやすく伝わる彼らの真骨頂が炸裂。サビのラテンポップ部では会場全体がバウンスしている光景が浮かんだ。そしてこれも彼らの真骨頂。キメの多さと歌詞の情報量とキチンと韻が踏まれるが故のキャッチーさがギュっと詰まった“生きて生きて”では、syunnとyu-yaもフロントにて早弾きユニゾンを披露。配信ライブで無人ながらも魅せる部分の意識も怠らない。

yu-yaの爪弾きとkiilaの歌い出しから入った“ウララ”では、そこにバンドサウンドが加わった際に、とてつもない生命力とバイタリティを我々に寄与してくれた。振り返りつつも、また新しい物語へと向かう。自身の中の変わっていくものと変わらないものを顧みさせ、擁した切なさを振り切り、またグッと前に力強く足を踏み出すかのような歌が我々に明日への更なる活力を与えてくれた。rioの抒情的なピアノの旋律に乗せ、このコロナ禍における自粛や諸々の中止や延期、果たせなかった約束や誓い等を振り返りkiilaが語る。「そもそも当たり前のことなんてなかったと思い知らされる日々でした。みんな寂しかったしツラかったでしょう。いまだ苦しんでいる人も多い。どんな形でいつまた私たちを襲うような出来事が訪れるかなんて誰にも分からない。だからこそ今を大切に生きていかなくちゃなって。泣きたい時は泣き、ツラい時はツラいと告げ、頑張れない時は頑張らなくていい。でも、頑張る際は思い切り頑張る。そうやってあなたがあなたらしく生きていけますように…」と、また元気で会いましょうと誓いの如く“yours”が最後に手渡しのプレゼントのように贈られた。ギュっと抱きしめるように自身を守り抜け。どんなに傷を負おうが大丈夫。と力強く信憑性たっぷりに歌われた同曲。どんな未来や過去だろうが自身のアイデンティティを持って立ち向かうとの誓いのような同曲が、自身を信じ進んで行けば、このコロナ禍もいつかは、「ああ、そんなことがあったね…」と懐かしく振り返れる時がくることを信じさせてくれた。

ライブはここで終了。以降は視聴者との交流が始まった。まずは8月19日発売のミニアルバム『変身コンプレックス』から、ベースのsyuunが作った“主演舞台”が最速先行公開。初心を保ったまま、この街で私らしく生きていくからと、これから羽ばたくべく気概をストレートなサウンドに乗せて歌われた同曲。ラストの雄々しいコーラスも力強い。そんな“主演舞台”を始め、全体的な前向きな作品内容と来るミニアルバムを語ってくれた彼ら。この日のライブを振り返ると、“知らない”は久々。これが過去3回目のプレイであったこと。お客さんからも各々想いの包まった各リクエスト曲からは、意外性も含めて自分たちにも多くの発見や改めての気づきがあったことを語る。またニュースとしては、上述のパイロット楽曲“主演舞台”のサブスク&MVが7月8日に解禁。「これまでにないタイプのMVに仕上がった!!」とメンバーも豪語していただけに公開も楽しみだ。

「今後もライブが増やせ、少しづつ日常に戻ってくれたら嬉しい」(yu-ya)、「次作はかなりいい出来につき楽しみに待っていて欲しいし、その際はガンガン聴いてくれ!」(tomoki)、「前説が上手く出来なかった事が心残り。また是非ともまたリベンジしたい!」(syunn)、「今日を始め今後も出来る最大限のエンタテインメントを発信していく。楽しみにしていて欲しい」(rio)、「今日は久しぶりのライブでとても楽しんでやれた。みんなとても大変な経験を経たけど、生き続けていればまた必ず笑顔で会える。離れていても私たちは音楽で繋がっている。これからも私たちは頑張っていくので、みなさんも元気でいて下さい」とkiilaが締めた。

新曲“主演舞台”からも伺える、これまで以上の前向きさと自身のアイデンティティの保持、そして明るくポジティヴに自分たちを誇れるように、気高く進んでいくであろう彼らのこれからの歌たち。このコロナ禍を経て、より自身の歌ってきた歌やこれから歌うべき歌が見えた感のあるvivid undress。その向こうにこれまで以上の数多く、そして幅広く、裾野の広いあんズたちが見える。vivid undressの未来は明るい。さぁ、これからも思いっきり自分を抱きしめながら、彼らと共に自分なりに前向きに歩んでいこうではないか!!

Text:池田スカオ和宏

http://www.vividundress.com/home/

『リクエストワンマンライブ Vol.2』セットリスト
1. シーラカンスダンス
2. 私メンヘラなんかじゃないもん
3. 知らない
4. 天上の宴
5. 生きて生きて
6. ウララ
7. yours