結花乃 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■新曲もバンドサウンドや牧歌的なポップス、ミディアムバラードもあれば、はたまた昭和歌謡まで飛び出してきますもんね。

結花乃　おかげさまで、あえてシングルやミニアルバムでは挑戦できない、アルバムならではの曲たちを入れることが出来ました。

■結花乃さんの出自って看護師さんで、人の生死に携わった仕事を経て、現在のシンガーソングライターの活動じゃないですか。とは言え、これまであえて死生観のある楽曲を避けてきた印象もあるのですが。

結花乃　ただ「元看護師だから命の歌をうたう」だけだと、薄っぺらいものに捉えられる懸念もありますし、これまで歌うのを避けてきました。人生経験や看護師経験もまだまだ未熟な私が命の歌をうたうなんておこがましいなって。まだ私自身、大いに人生に迷っていますから。「私、このまま歌手としてやっていけるんだろうか…？」とか。なので、もっともっと精神的に強くなって、人間として更に大きくなってから歌いたいんです。それが故に、聴く人の心にも響くのだろうし、伝わるでしょうから。それもあり、今はまだ時期尚早かなと。

■対して“きんぎょすくい”は、これまでになかった死生観も若干感じさせられました。

結花乃　あえてバシッとした表現は避けましたが、このようなメッセージの伝達方法であったら今の私でもありだし、逆にこのような伝え方が出来るのも、ここまでこのような経験をしてきた私ならではなんだろうと思い、作り、歌いました。この“きんぎょすくい”に関しては、あえて抽象的にぼんやり感じさせる程度に命の尊さや儚さ、慈しみを歌にしてみたんです。

■あえてバシッとストレートに伝えず、感じさせる程度の、どのような解釈もできる、この加減や具合が素敵です。

結花乃　遠回りだったかもしれませんが、このような歌表現が出来たのも、やはり看護師経験を経たからでしょうし。改めて看護師もやって良かったと実感しました。

■既発曲もアレンジが変わり、合わせて曲の印象もガラリと変わった曲も印象的でした。“明(るい)日”なんて、オリジナルとは全く違ったジャジーなテイストに生まれ変わりましたね。

結花乃　原曲は可愛い感じでしたが、こちらはかなりアダルティになりました。(笑)　この辺りもこれまでやってこなかったけど挑戦してみた編のパート2で。(笑)　こちらではジャズに挑戦しています。アレンジが仕上がったのを聴いた際に、「これは歌い方も全く変えなくちゃな」って。けっこう練習してレコーディングには臨みました。オリジナル曲は、同世代に向け、「明日にはいいことがあるさ」的な伝え方だったのに対して、こちらはもうちょっと大人な人や悩んでいる方に、「まだまだ大丈夫よ」と伝えている雰囲気が浮かんできたんです。そこで落ち着いたキャラクターを再度設定して、その新しい主人公になり切って歌いました。

■ラストには川嶋あいさんとnaoさんによる、いわゆるI WiSHコンビからの楽曲提供ですね。

結花乃　そうなんです！これまでも作曲は共作もありましたが、作詞の方は自分一人で全て書いてきたので、初めて自分以外の方に歌詞を提供してもらい歌いました。

■実際に他の方から提供してもらった歌詞をうたった気分は？

結花乃　最初は「他の方が歌詞に込めた想いを、自分でどう表現したらいいんだろう？…」との心配もありました。だけど、川嶋さんの歌詞が私の中ですごくしっくりきたし、分かりやすく心にも響いたので、一言一言大切に歌わせてもらいました。

■次に向けてや二人の明日へといった感じでラストに来て、ようやく次向きの曲が現れました。(笑)

結花乃　ここまで来てようやく幸せになれましたよね。(笑)　アレンジも王道な盛り上がり方をするドラマティックな曲だったので、この曲から感じた初々しさや淡い感じを踏襲して、そのイメージを大切に歌いました。

■最後に結花乃さんの今後のビジョンをお聞かせ下さい。

結花乃　初のアルバムなので、まだまだこれから頑張らなくちゃって部分もありますが、もっともっとみなさんが知っていたり歌える、そんな曲をドンドン増やしていきたいです。

Interview&Text：池田スカオ和宏

PROFILE
医大を卒業し看護師を経てシンガーソングライターになった異色の経歴の持ち主。2016年9月7日、デビューミニアルバム『花一匁』をリリース。CDジャケットのデザインも自ら手がける多彩なアーティストでもある。地元富士市のブランドメッセージソング“いただきへの、はじまり”を担当。2018年8月・9月にはNHKみんなのうたへ“きんぎょすくい”を書き下ろす。
https://yukano.jp/

RELEASE
『結花乃譚～きんぎょすくい～』