703号室 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

703号室

■ご自身の作品に対して「日本語の美しさというものを、歌を通して表現したい」という思いがあるとのことですが、作詞を担当されている岡谷さんとしてはいかがでしょう?どのようなところが美しいと思いますか?

岡谷 美しさというか…自分が一番表現できるのが日本語なんですが、英語って一つの音に対していろんなことを入れられるけど、日本語って一音に一文字、あいうえおの一文字一文字のリズムがあるから、その一つの音に対して一つのひらがなしか入れられないんですよね。でも逆にそんな風に伝えられる情報量が少ないからこそ受け取る側としては想像ができる、想像力を広げられると思うんです。洋楽の和訳を見ると結構細かく歌っていたり、しっかり説明していたりすることが多いけど、日本語ってもっと個人の解釈に任せられるようなものも多いと思うんです。短歌とかもそうですよね。限られた音の中で自分の伝えたいことを伝えるという。そんなところがすごく素敵だなと思っています。

■単純に省略されるだけでなく、イメージも広がるということですね。ではそんなところを今後は表現していきたいというところでしょうか?

岡谷 受け取る人によって、その曲の意味が全然違ってきたりとか、例えば「ありがとう」と歌っている曲だったら、本当は私はお母さんに対して「ありがとう」という気持ちを伝える曲として作ったものでも、A子さんからすれば友達、Bくんだったら恋人とか、いろんな解釈ができると思うんです。

■そんなところがまたTikTokとかでさらにアピールできるといいですよね。

岡谷 だから同じ曲でも動画の作り方が人によって解釈によって全然違っていたりするんです。私たちの曲で「偽物勇者」という曲があるんですが、基本的にはイラストといっしょに動画投稿されているというのが一番多い中で、そのストーリーの内容なんかは人によって全然バラバラなので、全部見ていると「こんなに解釈って、違ってくるもんなんだ」とビックリしています。

■楽曲は私も聴かせていただきましたが、ポップな楽曲の中で内容的にはなかなか重苦しい感じだけど、リアルを描いた詞であるという印象がありました。JELLさん、つばささんは、日本語に対してどんな風に思いますか?

JELL 私は逆に考えるんですが、英語って一つの言葉でいろんな意味があるじゃないですか。でも日本語って一個の言葉がその意味そのままを表していますよね。だから直接その人に伝わることも多いと思っているし、それはすごく素敵だと思っています。その言葉を言っただけで、本当に伝わる。英語だと前後に入る言葉で変わってくるところもありますよね。「Like」という言葉は「好き」という意味と「似ている」とか。いろんな言葉が入ってきちゃう。そういったところが日本語の特徴だなと思います。

つばさ 他の言語もひょっとしたらあるかもしれませんが、例えば僕たちの歌でも“ウタカタ”という曲があるんですが、そういう言葉とか、この前“花笑む”という曲を作ったりしたんですが、言葉そのものが持つ響きがそもそもそのキャラクターを作っていたりというところはあると思うんです。海外で「cute」とか「pretty」でいいはずのものが、最近は海外でもカワイイ=「kawaii」という表現で通じていますよね。それは言葉が持つ響きからイメージが広がっているように感じるし、その言葉にキャラクターがあったり。それが日本語のいいところなのかな、と思っています。僕は意味とか、漢字、ひらがな、カタカナとかじゃなくて、出た音から得られる情報とかで、日本語の特徴がすごくあると思っているんです。岡谷は一言一言をとても噛みしめるように歌っているので、そんな古い日本語、響きの特徴的な日本語を一言ずつ歌うたびに、それがすごく生きてくるように思えるんです。僕からしたら言葉が持つ空気感とか響きをどうやったらもっと的確に表せるかとか、想像力を膨らますことができるかとかを考えながら、そうやっていろいろと自分の持っている引き出しと合わせつつ、味をつけつつ操作していっているんです。

■なるほど。こうして聞いてみると、やっぱり日本語っていいなとあらためて思いました。今はTikTokをバンドのプロモーションとして活用されていますが、自分でTikTokをやるとしたらどんなアイデアがありますか?

岡谷 結局プロモーションになっちゃうかもしれないですが…やっぱり自分が知らないところで今も家に引きこもって学校にいけない人とか、すごく死にたいと思っている人とか、たくさんいると思うんです。そういう人たちに向けて、TikTokは誰でも無料で簡単に見られるという特長を生かして、一人ひとりに自分たちの音楽で励まされてもらえたらと。なにか行動するきっかけになれたらという思いで歌詞や曲を作っていたりするんですが、私はそういう思いを届けたい。「独りぼっちじゃないよ」と言ってあげたいんです。

■なんか駆け込み寺みたいなものですね。確かにそういう使い方も有用でしょう。

JELL 例えば現在は自分たちが発信する側ですが、発信する側とそれを使う側の人が、テレビ電話みたいな感じで気軽にコミュニケーションできるようなものができれば、面白いんじゃないかと思いました。私たちの音楽を聴いている側の人って、気になるんですよね。そういう人の意見を直接聞けるのも面白そうですし。今のだと行って帰って、という単一方向なので。

■それもいいですね。ぜひ実現してほしい!

つばさ TikTokで動画を作るとしたら秒数が限られているんですよね。それこそ広告なんですが、CMとかにすごく似ているなと思っています。それって例えば出てくるキャラクターだったり、音が持つ存在感とかすごく大事だと思うんです。テレビの広告を見ても、あの企業とこの企業の広告って似ているようでもなんかしらそれぞれ特徴があるし。そういうところで、もっと熱を入れさせるようなものが作られればと思うんです。僕は結局音楽を作りたいというところが芯になるんですが、単純に「なにこれ!?、かっけー!」みたいな音楽をどんどん燃料として投下していったりして、みんなが好きなように主張していけたりとかできたら、それこそ面白い。でも一番僕の中で作りたいのは、短い秒数でも長い秒数でも音楽はそこにあって、そこにわずかの音でも、一音聴いただけで「あいつだ!」とわかるようなもの。とにかくやっぱりいろんなものを作って聴いてもらいたいと思っています。

Interview & Text & Photo:桂伸也

PROFILE
横浜発のスリーピースバンド。専門学校の同級生で、2018年8月1日に結成し、岡谷柚奈(Gt&Vo)、つばさ(Key)、JELL(Dr)の3人で活躍中。バンド名の由来は、専門学校の教室が703号室だったことから。楽曲“偽物勇者”はSpotlightとしてTikTokで9月4日から展開スタートし2万投稿突破。楽曲配信サービス「Spotify」では日本バイラルトップ50で4位(11/5)を記録し、その後もチャートインし続ける。YouTubeの楽曲フル動画もTikTokで展開後、急激な伸びを見せ、220万再生を突破している。日本から世界で活躍する才能を発掘するグローバルプロジェクト「TikTokSpotlight」では、ファイナリストにも選ばれた。
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