超特急『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025 EVE』ライブレポート@さいたまスーパーアリーナ

夢へ向かう9人と8号車の日、30,000の笑顔の花咲くツアーファイナル。

超特急が8月8日(金)、埼玉・さいたまスーパーアリーナで『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025 EVE』ファイナル公演を開催した。超特急が8月8日、「8号車の日」に終点を定めてツアーを行うのは、彼らの夏の恒例行事。2025年はファイナル埼玉公演に向けて、史上最大規模となる4都市8公演が行われていた。発車時間を少し過ぎ、ライブはツアーのテーマ曲“EVE”でスタート。舞台中央に置かれた電飾のリングがゆっくり持ちあがると、その中からモノクロームの衣装を着た超特急の9人が現れる。次なる曲“Steal a Kiss”は、火花が散る中ビビッドな重低音とサイバーパンクな背景のもと、カメラに抜かれる仕草と視線の艶やかさ、対照的な弾ける笑顔に視線を奪われた。続く“Re-Booster”では、タブロイド紙風のデザインにメンバーのポートレートが張り出される中、鮮やかなステップが突き刺さる。9色のレーザービームが交差する“Kura☆Kura”には、8号車の手拍子が美しく揃った。冒頭からシリアスな4曲が連続したが、ここでスクリーンに映し出されたのはポップな文字とパステルカラーの流れ星。“What’s up!?”は、笑顔の輝くミュージカル調のナンバーで、曲の間にメンバーはひとりずつ挨拶していく。かと思えば、続く“Lesson Ⅱ”では、9つの光が闇の中から集結し、眩い爆発と共に天空の庭園に建つ中世風のガゼボが現れる。一瞬のうちにその背景が星空へと変われば、神秘的な弦楽の響きの中、超特急はオルゴールの金属音と共に“Cead Mile Failte”でスモークの雲を蹴る。

そこから一転、ハイキックで炎の塊を舞い上がらせると、ステージは本物の炎と幻の炎とに包まれて、焼け落ちる背景に、観客は熱気をも幻覚した。“Feel the light”では、不規則に瞬く星の球を胸に抱いた9人が、何かを渇望するように手を伸ばす。暫しの転換で、スクリーンに映るのは透明な水中に沈んでいく超特急の姿だった。やがて9人は真っ黒な衣装でどこか不思議な空間に集まり、背中を向け合い別れていく。その姿を見送ると、ステージの中央にはいつの間にか揃いの白い衣装をまとった超特急が集まっている。爽やかな幕開けの“No More Cry”には、ペンライトがくるくる回り、明るいコールが高らかにアリーナの天井を包んだ。しかし、その明るさは重い鎖を引きずる音にさえぎられる。金属の軋む音に、揺れる柱時計、ロウソクが燃える古めかしいシャンデリア。妖しい洋館でコウモリが羽ばたくと、裏地が赤い黒マントに身を包んだ超特急は、ゴシックホラーな“Bloody Night”を歌い踊る。そこからマントを脱ぎ捨てて、9人は「もっと声を聞かせて!」と、“Kiss Me Baby”をドロップ。メンバー名のコールは綺麗に揃い、8号車とステージとの一体感を作り上げた。「さいたまスーパーアリーナ、盛り上がってますか~?ここから俺たちとみなさんで一揆を起こしていきたいと思います。行くぞ!」いつの間にかメンバーカラーの羽織風の衣装に変身していた9人は、金屏風の前で唇を鼓に見得を切り、“ikki!!!!!i!!”を歌い踊る。花道の先がせり上がり、上にヴォーカル、下にダンサーが立って回る様はさながら盆踊りだ。“Believe×Believe”では雷鳴とどろく中、他の追随を許さない堂に入った白目の剥き方でグループの「格」を見せつけていく。

ここまで13曲を駆け抜けて、倒れた8人の中心に立ち「お楽しみはこれからだ!」と叫ぶリョウガ。それを聞いて皆がのそのそ起き上がって来るが、中には再び寝転んで「二度寝です」と豪語するメンバーもいる。小休止のMCタイムでは6月から始まった今回のツアーを振り返り、8号車の日を改めてお祝い。初めての参加者も多い中、埼玉出身のシューヤは埼玉県民の8号車に対して、「ようこそ、俺のマブダチ」と歓迎した。ユーキの提案のもと、会場全体でウェーブをやろうということになると、「ウェーブ」の単語を聞いてペンライトをぷるぷる振り小波を作っていた8号車たちは、見事な大波を作って9人を大喜びさせる。ここで近況報告として、「タカシのスポーツ遍歴」の話題になる。スポーツ経験者が多い超特急だが、タカシにもこれまで知られていなかったスポーツ経験があるという。やっていたのはサッカーだ。しかしリフティングに憧れながらグラウンドの周りをドリブルするだけで、1年経たずに辞めてしまったそう。次に挑戦したのは卓球だが、これも対人戦すら無く1年中壁打ちで終了。次は科学部に所属し、誰よりも上手くスライムを作れるようになったと自慢する。それに対し「スライムって誰が作っても同じになるんじゃないの?」とツッコミも入るが、「タカシが作ると違うんだよ!」と反論があった。ユーキからは「この会場、みんな『たまアリ』って呼んでいるけど、正式略称は『さいアリ』らしいですよ。さっき偉い人が言っていました」と豆知識。マサヒロは深夜のホテルで歌声が聴こえたことを報告し、「2つ隣の部屋から聴こえて来た」「じゃあアイツ(※シューヤ)か」「でも超特急と全然関係ない歌めっちゃ歌っていて」「じゃあアイツと違うか」「ただ、声めっちゃ高かった」「じゃあアイツか」と漫才めいたやりとりが続く。深夜で他の宿泊客がいたこともあり、マサヒロは「歌うならせめて超特急の歌にしてほしかった」と苦笑する。

次の曲の準備のため、次第に人が減っていくステージ。「何かありますか」と話をふられて熟考したリョウガは「ん~、あっ……う~ん……」とずいぶん悩んだあと、先ほど“Bloody Night”でマントが顔にかかり何も見えなくなったことを語る。だが、ユーキに至ってはマントを落としていた。カメラが入る日に限って起こりがちなこういうハプニングも、いつか懐かしい思い出になる。9人が順に去り、暗くなったステージには、光の雨が降り注ぐ。そこで“霖雨”を歌うのはタカシとシューヤ。そのそばにはユーキとタクヤが手脚で霧を巻き上げ静かに舞う。花びらの中で4人が去ると、派手なサーチライトの中、“Re-Turn Up”のイントロと共にカイ、マサヒロ、アロハがアリーナ席へ現れる。カイからの「8号車Are you ready?連れてくぜDOME!」の宣言に、客席からは大歓声が上がった。続いては赤い幕が降りてシアター風の電飾が輝く中、クラシカルなスーツスタイルのリョウガとハルが登場。スタンドマイクで“STYLE”を披露するが、「お前が歌うんかい!」「俺が歌う!」とヴォーカルを奪い合い、客席を笑わせて最後は端正なハーモニーで背中を合わせた。全員がステージに戻ると、カレッジスタイルに着替えた超特急は、“Snow break”、そしてスウィートな“キャラメルハート”をMVの世界観そのままにパフォーマンス。ここでは定番曲“My Buddy”や、ネオンきらめく“Jesus”と、華やかなナンバーが続く。曲の合間では、自動車工場や会社員、喫茶店のマスター、工事現場などで働くメンバーのミニドラマが映し出される。それぞれの場所で生き、悩み、答えを見つける9人の姿は、職業が違っても、ここに集まる8号車の人生に重なる部分があった。

“a kind of love”で各々の個性がよく出る衣装に着替え、舞い戻った超特急。猫耳帽子のアロハのシャチホコ倒立も見事にキマり、“EBiDAY EBiNAI”ではヴォーカルふたりの歌声にペンライトの花が咲く。会場を抱き込むタカシの歌声と、天に突き抜けるシューヤの歌声。それらが重なる中、幻想的な方位記号が回転する。たそがれたステージで歌われるのは“君と、奏で”。8号車の歌声はいつだって、飛べない9人に大きな翼を作る。曲の合間には、再びミニドラマが始まる。今度は様々な場所で働く9人が居酒屋に集まり、酒を飲みながらお互いの日々をねぎらう、誰にでもある日常風景の場面だ。「ミスった分だけ笑い話が増える」という台詞には、思わず胸がじんとする。そんなささやかな日常が描かれたかと思いきや、突然始まったのは光のショータイム。「さいたまラストスパート!まだまだいけるか~?!」激しい花火の炸裂音を響かせて登場した超特急は、メンバーカラーのジャケット姿。9人は“超えてアバンチュール”でゴンドラに乗り込み、何曲もかけて会場の隅々まで視線を送り、手を振っていく。メインスクリーンに映った途端、カメラアピールを欠かさないのはプロの技。カメラに抜かれたアロハは連続変顔を披露するも、照れてうずくまり、その背中をカイが抱く。“AwA AwA”でステージに戻った超特急。次なるナンバー“メタルなかよし”ではリョウガの変顔にますます磨きがかかり、デスヴォイスもエアギターも冴えわたる。後半に持ってくるにはかなりハードな一曲だが、メンバーは微塵も疲れを感じさせなかった。

ネオン輝く“Drawイッパツ!”でコールがそろえば、汽笛を模したシャウトで応え、“Burn!”では青空を背景に観客を煽り立て、限界を越えた歌声がそろい、揺れるペンライトで会場が揺れ動く。「次の曲で最後になります。今日、8月8日は8号車の日、2桁号車のメンバーが加入してくれた大切な日、14年間応援してくださった皆様にとって大切な日です」フィナーレを前に語り出したユーキの感謝の言葉は、時折涙に詰まって潤んだ。「この瞬間を一緒に過ごせることは当たり前じゃなくて、奇跡なんです。この景色が見られて本当に嬉しいです。でも、これで終わりじゃない、もっと素敵な景色を見せたい。誰ひとり残すことなく、みんなと生涯笑っていきたいなと思います。そんな想いを込めて、この曲を歌います」そうやって歌い出されたのは、重い鼓動の響く“Billion Beats”。この瞬間を共にする歓びを全身にみなぎらせ、8号車全員を祝福するこの曲で、スクリーンに映し出されたペンライトの花畑はメンバーの姿と並ぶ。「なんの言葉も出てこない!最高でした!また会いましょう!」曲の最後、タクヤがそう叫ぶ。エンディング映像では9人が海辺で夕陽を見詰め、「当たり前のことは永遠に続くわけじゃない」「でもさ、だから大事なんでしょ?」と再確認し合い、どこかへ駆けて行った。

ライブ本編が終わると、アンコールがわりの超特急コールを優しいライトが撫でる。しばらく間を置き、ラフなツアーシャツ姿で戻った超特急は「最後まで盛り上がって行きましょう!」と“踊ライナー”を披露した。「アンコールありがとうございました! その声がしっかり届いたから、今、ここに立ってます!」その言葉に歓声が上がる中、リョウガはステージへ呼び戻してくれた8号車に感謝しつつ、「今ちょっと笑ったヤツいたな?」と客席を指しからかう。ここでは改めて、メンバーひとりひとりから感謝の言葉が語られた。まずシューヤが「一度は夢を諦めた僕ですが、僕はこれからもタカシくんのため、8号車のため歌い続けます」と語れば、スクリーンには真っ直ぐにスタジアムを見詰めるタカシが大映しになる。カイは自分が弱い人間であると告白し、それでも超特急のカイとして活動する時は、周囲の皆がネガティブな側面を覆い隠してくれていることを話す。「これからも強がらず、みんなに頼って、無理しない人でありたいと思いました」の言葉は、胸に響く人も多いだろう。マサヒロは8号車の日ということでドリンクのストローがピンクであるとを明かし、ひと笑い取って、「皆さん、周り見てください。いっぱいいるでしょ?このままゴッソリ連れて次に向かいたいと思います」と決意を新たにする。タクヤは「言葉の力って大切だから最後に何か言おうとしたけど、収録入ってる今日に限って何も出てこなかった」ことを反省し、「また会ってください、ありがとうございました」。赤い猫耳を付けたユーキは「皆さんいかがでしたか?」の問いかけに上がる歓声を噛み締めて、「8号者の皆様が声を出して、ペンライトを振ってくれるからできたライブです。本当にありがとうございました」と感謝を重ねた。アロハは皆に続いて「ありがとうございます」の言葉を語り、加入してからの3年間を振り返るとともに、この会場に両親が来ていることを話して、これからも頑張っていくとを宣言。ハルは「3年間あっという間でした」と話しつつ、最高の仲間と出会えたこと、そして前日に体調を崩していた父親が回復したことを明かし、会場は温かい拍手に包まれる。

タカシが語ったのは、14年にもわたる活動の中、高く掲げた「ドームを目指す」という夢を笑われる日もあったこと。そういった世間の反応に対し、タカシは、この日さいたまスーパーアリーナに集まった30,000人もの笑顔を見て、夢を諦められないと思ったそうだ。「見たか!諦めなかったから僕たちは今ここにいるんです!──ありがとうございました!」それはまるで締めの一言で、次に指名されたリョウガはちょっとうろたえる。しかしさすがのリーダーは、「言いたいことや思うことはたくさんあります。8号車の皆さんの拡散力、マナーの良さ、愛の強さ。皆さんを尊敬して、リスペクトしています。本当にありがとうございました」と美しくコメントした。その後、「坊主にすることを賭けてゲームしていた」「坊主×坊主はロン毛だろ」「今その話はいらない」「せっかく俺がいいこと言って締めたのに」「いや、お前じゃない」と軽快なやりとりで盛大に8号車を沸かせながら、ドームに立つ決意を新たにした9人。そこで唐突に舞台が暗転し、慌てる彼らの声が響く。次にステージが明転すると、超特急は「8号車おめでとう」の手書きパネルを掲げ、ポーズを取っていた。ピンクのテープが踊る中、アンコール2曲目は“MEMORIAる”。そして定番の挨拶と共に、“走れ!!!!超特急”が披露された。メンバーひとりひとりが手を振って挨拶し、これで終わりの空気が流れるも、再度起こったアンコールに呼ばれて9人は再々登場。ユーキは感激しながらメンバーにひとりずつ抱きつき、メンバーはその勢いを受け止めたり固まったりした。ツアーと8号車の日を締めくくる最後の曲は、“gr8est journey”。30,000もの8号車の笑顔がきらめく会場で、万感の思いの中、人差し指を突き上げた9人の眼には未来が映る。ドームはゴールではない。もっと大切なことで、まだできていないことがある。繰り返される感謝と共に語られたその言葉、そして8号車の輝きは、超特急を次のステージへと向かわせる。彼らは必ずドームの地を踏む。その確信と、来年の8号車の日への期待を抱かせて、9人はステージを去って行った。

Text:安藤さやか
Photo:米山三郎、笹森健一

超特急『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025 EVE』@さいたまスーパーアリーナ セットリスト
01.EVE
02.Steal a Kiss
03.Re-Booster
04.Kura☆Kura
05.What’s up!?
06.Lesson Ⅱ
07.Cead Mile Failte
08.Feel the light
09.No More Cry
10.Bloody Night
11.Kiss Me Baby
12.ikki!!!!!i!!
13.Believe×Believe
14.霖雨
15.Re-Turn Up
16.STYLE
17.Snow break
18.キャラメルハート
19.My Buddy
20.Jesus
21.a kind of love
22.EBiDAY EBiNAI
23.君と、奏で
24.超えてアバンチュール
25.SAY NO
26.ジュブナイラー
27.Secret Express
28.AwA AwA
29.メタルなかよし
30.Drawイッパツ!
31.Burn!
32.Billion Beats

ENCORE
01.踊ライナー
02.MEMORIAる
03.走れ!!!!超特急

W ENCORE
01.gr8est journey