阿部真央『阿部真央TOUR2022 “Who Am I”』ライブレポート@昭和女子大学人見記念講堂

『阿部真央TOUR2022 “Who Am I”』

3年8カ月ぶりとなる全国ツアー2日目、「新しい阿部真央を見てほしい」 

「こんばんは、東京、会いたかったよー!」と元気いっぱいに挨拶する阿部真央。結論から言うと、実際のライブ自体は素晴らしいものだった。彼女の歌声から放たれる無尽蔵のエネルギーを感じ取り、パワーを貰った人たちも多かったのではないだろうか。4曲入り配信限定EP『Who Am I』をリリースし、それに伴う全国ツアー『阿部真央TOUR2022 “Who Am I”』を3年8カ月ぶりに決行。そのツアー2日目にあたる9月9日(金)、昭和女子大学人見記念講堂(東京公演)のライブを観てきた。ちなみに本ツアーはまだ終了していないため、なるべくライブの流れはわからないように記述する。

彼女がステージに現れると、客席に座ったままの観客を見て、開口一番に「みんな座って聴く?」と尋ね、「ここで立った方がいいっていうタイミングが来るから」とイジリつつ、堂々たるステージングを展開した。最新EPからは4曲中3曲披露され、自ら鍵盤を弾きながら、ソウルフルな歌い回しで惹きつける“Don’t you get tired?”には心を奪われた。シンプルなアレンジの中で、緩急を付けた歌声のフローやアクセントが際立ち、観客も食いつくように聴き入っていた。

さらに「永遠に愛しますと言いながら、さよならの曲。清々しい別れがあってもいい。寂しさもありながら、新たな出発」とMCを挟んで、“I love you so much forever”を披露。人生には様々な岐路が待ち受けている。ずっと下を向いてばかりいられない。晴れやかなサウンドに乗り、阿部真央の歌は凛とした表情で空を見上げているよう。しかしながら、それは憂いを内包した明るさと言えるものかもしれない。だからこそ、そこに強い説得力が宿り、曲全体からポジティブな光を享受できるのだ。もう一つ、EP表題曲“Who Am I”も聴き応え十分であった。自ら鍵盤を弾き、ファルセットを効果的に活かし、繊細かつ奥深い表現力でじっくと聴かせる。その透徹した歌声に魅了されたのは言うまでもない。

そうした最新モードの彼女を魅せつつ、新旧織り交ぜた楽曲により、多彩な表現力を凝縮したショウであった。「声出せないとかいろいろあるけど、みなさんと楽しい時間を共有したい。楽しいを届けにきました。全力でライブしていきます!」と宣言。今回のEPを含めて、最近はギターではなく、ピアノでソングライティングを手掛けることが多い彼女。そのモードを反映させるように、ライブにおいても新たなチャレンジを試みる。

「ピアノ嫌いなのは阿部真央のファンならご存知でしょうけど、ギターで作ったちょい昔の曲をピアノでやる。これがね、大変なんですよ……自分を信じる。新しい阿部真央を見てください」と告げると、“キレイな唄”をプレイ。澄み渡るハイトーンと鍵盤の音色がマッチし、温かなメロディラインにすっかり癒されてしまった。また、「あなたの輝ける未来に行けるように、私も応援する」という言葉の後に“READY GO”を投下。「君だけの輝ける場所へ」と歌い上げる歌詞にも背中を押され、なんだか、どの曲も違う角度から活力を貰うような瞬間が多々あった。

久しぶりにバンドセットで挑んだ熱量の高いステージはもちろん、鍵盤による弾き語り曲も今ツアーで増やしたりと、常に前に突き進んでいく彼女の生き様がパフォーマンスにもそのまま直結していた。全国各地で、生命力溢れる阿部真央の勇姿と歌声を是非とも体感してもらいたい。体の芯から震えるような熱が湧き上がってくるだろう。

Text:荒金良介
Photo:上山陽介

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