アルカラ『キミとボクTOUR』ライブレポート@Zepp DiverCity

それぞれが進む道の交差点となった『細井ファイナル』。

3月21日(火・祝)、Zepp DiverCityにてアルカラ結成20周年ワンマンツアー『キミとボクTOUR』ファイナル公演が行われた。ファンにはお馴染み、アルカラマネージャーの細井氏が3月でアルカラの元を離れることになったことを受け「細井ファイナル」と改名された本公演。開演前、ステージ上には『アルカラ20周年ファイナル』から『細井ファイナル』に書き換えられた看板がスポットライトを浴びており、ライブ前からアルカラらしいユニークさと人情が溢れていた。定刻、陽気なSEとカラフルな照明がステージを彩る中メンバーが姿を表すと、1曲目から“Dance Inspire”で開幕。ボーカルにかかる深めのリバーブが開幕から濃密な世界にいざなう一方、勢いを感じさせる演奏や「チカチカストロボ」の歌詞の通りビビッドに点滅する照明が賑やかだ。

続く“tonight”では、オーディエンスにシンガロングさせながらドラマチックな緩急を作り上げ、稲村太佑(Vo&Gt)が「Zepp DiverCity、なにかが足りない!」と叫べば、キラーチューン“アブノーマルが足りない”へとなだれ込む。イントロからぐんぐんと進んでいく疋田武史(Dr)のドラムが牽引し、下上貴弘(Ba)とサポートギターもステージ上で広々と動き回りながら生き生きとした音色を奏で、会場の熱を高めていく。“チクショー”、“DADADADA!!”と次々と惜しみなく展開されるアッパーな楽曲に、オーディエンスの熱狂も早速最高潮だ。「この春からはやたらコール&レスポンスを要求していこうと思います!」と言う稲村は、何度もオーディエンスとの掛け合いを楽しみながら会場の空気をひとつにまとめあげていく。

この日は、20周年ツアーファイナルにふさわしいスペシャルゲストも登場。「交差点でアルカラ初代のギターを見つける」と稲村が“交差点”の歌詞を変えながら口ずさむと、大歓声が起こり、アルカラの初代ギタリストである三浦拓也(DEPAPEPE)が登場。稲村、下上、疋田、三浦と、初代メンバーが揃うと、「ART HOUSEに向かうぞ!」と彼らの原点である神戸ART HOUSEの名を口にして“交差点”を演奏する。稲村は「今は違う道歩いてる」の歌詞を三浦と肩を組みながら歌うなど、20年の時を経て再びステージ上で集まった喜びを噛みしめているようだ。そして2002年2月27日、初ライブの次の日に作ったという“自然”、更に“キャッチーを科学する”を初代メンバーで披露。三浦の渋いギターの音色と伸び伸びとした稲村の歌声のバランスも心地いい。続くMCでは、三浦の自己紹介を皮切りに20年前のことに思いを馳せるメンバーたち。「結成当初は音程が取れなくて、コーラスも叫んでるだけでいいって言われたけど、今日はちゃんとコーラスもできています」と話す三浦は清々しい表情を浮かべており、会場も20年越しに交わった道を目撃している感慨深さに包まれる。

三浦が去った後、「プレゼントは多い方が良いと思って、新曲を用意してきました!」と新曲を披露。序盤からの三浦との演奏にかけてのアグレッシブな雰囲気とは打って変わり、“如月に彼女”、“秘密”と、稲村の大人びた歌いまわしと落ち着いたドラミングやギターのフレーズ、色気のあるベースがどこか甘美な楽曲が続く。更に稲村による気迫たっぷりのバイオリンが率いる“鮮やかなるモノクローム”に、1人で歌い始め、徐々に楽器が加わった“秘密基地”まで、ドラマチックな雰囲気を成熟させていった。そしてダンサーとともに“癇癪玉のお宮ちゃん”、“藤壺のキミ”とパーティーチューンを続けるとライブも終盤へ。三浦が語っていた「ただ演奏するだけでは駄目で、熱いのが大事とアルカラから教わりました」という言葉や、「いつも最後だと思って演奏する」というART HOUSEからの教え、そして「その意味がこのツアーで本当に理解できた気がする」という稲村の言葉にも納得な、彼らの燦燦たる高揚感が演奏からひしひしと伝わってくる。

“ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト”の後には「細井君、ほんま9年間ありがとうございました」と、マネージャーの細井氏について語り始める稲村。「細井君、コーラスに入っていることも多いんですよ。マネージャーがレコーディングの時にブースに入ってくるの、すごいなと思うんですけど。(笑) これからはレコーディングする時にオファーすればいいんでしょ?」と笑いを誘い、「「別れそれはスタート」は“ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト”の歌詞です。10年前に書いたけど、まだ歌っているし、今日三浦だって来たから、細井ともまたライブで会える。同じ空の青の下でお会いできれば」と歌詞を引用し、“boys&girls”へ。稲村は一つ一つの言葉に思いを込めるように、どの曲よりも一層力強く歌い上げた。

アンコールにて“おんなのこおとこのこ”を演奏したアルカラは、「細井がアルカラにリクエストした曲やっていいですか!」と、“やいやいゆいな”で大団円。演奏後には稲村と細井氏がステージ上で熱い握手を交わし、細井氏は「アルカラが僕をマネージャーにしてくれました」と、これまでを振り返って感謝の言葉を口にする。20周年というひとつの節目のタイミングであったと同時に、細井氏との別れと三浦との再会という、それぞれの道が交差した本公演。彼らが再びステージ上で再会した時には、この日のことに思いを馳せるであろうメモリアルかつ賑やかな一夜であった。

Text:村上麗奈
Photo:新倉映見

https://arukara.net/

『キミとボクTOUR』@Zepp DiverCity セットリスト
01. Dance Inspire
02. tonight
03. アブノーマルが足りない
04. チクショー
05. DADADADA‼
06. 交差点(Gt.三浦拓也)
07. 自然(Gt.三浦拓也)
08. キャッチーを科学する(Gt.三浦拓也)
09. 新曲
10. 如月の彼女
11. 秘密
12. 鮮やかなるモノクローム
13. 秘密基地
14. 癇癪玉のお宮ちゃん
15. 藤壺のキミ
16. ウツリギ
17. ゼロの雨に撃たれて
18. 目の前には
19. ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
20. boys&girls

ENCORE
01. おんなのこおとこのこ
02. やいやいゆいな