■前作からのチャレンジが、今回ついに実を結んだわけですね。
小鳩 今回もカッコよさ重視とか、かわいらしさもあるやつとか、何パターンか録った中から、この激しいやつになりましたっぽ。
■ライブで見るのも楽しみです!リズム隊の2人は毎回演奏のハードルを上げられて、試練を課されているイメージがありますけど、今回はいかがでしたか?
AKANE とても試練でした。(笑) “NO GOD”、“H-G-K”、“BLACK HOLE”とかは特に。「ついに来たか」と思うのは毎度のことなんですけど、“BLACK HOLE”は過去最速の曲で、本当に「ついに来たか」と思いました。これが前作のタイミングだったら厳しかったかもっていう速さだったんですけど、自粛期間中に基礎練習をがんばった成果が出ました。
■自宅でドラムの練習をしていたんですか?
AKANE 自宅でやっていました。フィンガートレーニングはパッドでもできるので。スティックで「ぶわー」って連打して、遅れないように、力の入れ加減にも気をつけて。ずっと左手の中指とかを鍛えていました。
■発言がアスリートですね。(笑)
AKANE 左右のバランスが結構違うなと思っていたんですよ。高速フィルを叩くと、やっぱり利き手の方が動くから、左手を追いつかせないといけないなとは、ずっと思っていたんです。でも、そういうバランスを揃えるとかは時間をかけないとできないので、とてもいい機会でした。
■MISAさんのベースはいかがでしたか?
MISA やっぱり今回は時間がいっぱい取れたので、1曲1曲に向き合えたかなと思います。なるべく手癖をなくしたくて、意識してやったことないフレーズを入れてみたりとか、そういう感じで作ってみました。
■いちばん苦労した曲は?
MISA 体力的に苦労したのは“I still seek revenge.”ですね。スラップで弾くところが多いので。あとは“NO GOD”も面白さを出したくて、ピックとスラップの切り替えをわざと増やしました。“Why Why Why”も同じ感じで、切り替え多めで作りましたね。
■あえて難しい演奏を選んだというか?
MISA そうですね。レコーディングだと分けて録ることもできるから、「1曲通したらすごい難しくなっちゃった……」みたいなことが多いんですけど、今回は特にレベル高めの曲になりました。ライブでもちゃんと弾けるように、筋トレしないといけないなと思っています。
■筋トレが必要になる演奏。(笑) KANAMIさんからアレンジ面でのリクエストは?
KANAMI ベースに関しては基本は「まかせた!」っていう感じですけど、その“I still seek revenge.”で「こういうスラップ入れて欲しい」みたいなことは、ちょっと伝えました。でも、イメージ通りのやつを入れてきてくれたので、「さすが!」と思いました。ドラムに関しては、ちょっとレベル上げというか、これはできるだろうなというのを想像しつつ、フレーズを入れたデモを渡して、あとは「ご自由に」って。自分のギターも結構ハードルを上げてしまったので、お給仕までにがんばって練習しなきゃなと思っています。
■KANAMIさん的に「やりすぎたな」と感じている曲はありますか?
KANAMI “H-G-K”です。基本的にテンポを下げた状態のデモを作って、後から上げるんですよ。でも“H-G-K”は、実際にテンポ上げたらめちゃめちゃ速くて。「まぁ、練習すればいけるっしょ」と思っていたんですけど、練習に3ヶ月くらいかかっちゃいましたね。(笑) 今でもサボるとイントロは弾けなくなっちゃうので、お給仕までにしっかり練習しなきゃなって思っています。
■帰ったらイントロ聴き直します!それと“サヨナキドリ”は小鳩さんボーカルの曲だと思うんですけど、メロディアスでビックリしました。
小鳩 他の曲が激しいというか重いというか、しっかりとした曲が多かったので、BAND-MAIDっぽいサウンドを残しつつ、キャッチーなメロディーを持った曲があってもいいかなと思って、KANAMIにお願いしましたっぽ。
KANAMI 2曲くらい提示して、こういう感じがいいって言われて、それを進めて。小鳩らしさが出せたらいいなっていう感じで作りました。
■これはラブソングということでいいんですか?
小鳩 そうですっぽね。今まで小鳩ソロの歌でこういう切ない系のラブソングはなかったので、あえてそこにしましたっぽ。歌詞のイメージは『ロミオとジュリエット』で、英語のセリフ部分は引用していて。タイトルの“サヨナキドリ”も、英語だと「ナイチンゲール」という鳥の名前なんですけど、それも『ロミオとジュリエット』の中に出てくるんですっぽ。
■そういう元ネタがあったんですね。ご主人様・お嬢様もビックリすると思います。
小鳩 前作では小鳩曲はお休みしていたので、待っていてくださった方には、ぜひビックリして欲しいですっぽ。
■ちなみに“本懐”もラブソングっぽい曲ですよね。
小鳩 そうですっぽね。こっちはSAIKIの強い感じで歌ってもらいましたっぽ。
■「報われない恋なんて 大嫌い」とか、ちょっと不倫感ある歌詞だなと思ったんですけど。(笑)
小鳩 ははは。(笑) “Puzzle”(アルバム『Just Bring It』収録)を作った時も言われましたけど、不倫をテーマにはしておりませんっぽ。でも、受け取り方は人それぞれなので、ご自由に解釈していただきたいですっぽ。
SAIKI なんか、ドロドロした恋愛のやつ見ているから。
小鳩 この曲をもらった時に、ドロドロしてるなと思ったんですっぽ。今回は小説や漫画からインスピレーションを受けることが多かったんですけど、これを書いた時はドロドロした系の作品を読んでいたので、こういう歌詞になりましたっぽ。
■KANAMIさんはドロドロしたものをイメージして曲を作ったんですか?
KANAMI ドロドロしたものは特にイメージしてなかったです。(笑)
■受け手によって解釈が変わるのが面白いところですよね。
小鳩 歌詞の意図を伝えることもあるんですけど、SAIKIはSAIKIの受け取り方でいいと思っているので、基本はおまかせで歌ってもらっていて。KANAMIから小鳩のところで一個変わって、小鳩からSAIKIのところで一個変わって、という感じですっぽね。
SAIKI 私は耳触りとか言葉の響きとかを気にしているだけなので、そんなに歌詞の意味を理解しようとはしていなくて。「この響き、変だと思うなぁ」みたいなので、変えてもらうことがあるくらいですね。濁音が楽器の音を邪魔して、「気持ち悪いなぁ」と感じることがあるので。それもたまにしかないですけど。
KANAMI それがいいと思う。SAIKIがまっさらな感じで歌ってくれるから、聴き手がそれぞれの色を想像できるのかなと思うんです。
小鳩 せっかくいろんな受け取り方ができるものなのに、決めつけると幅を狭めてしまう気がして嫌なんですっぽ。それこそ不倫の曲と思う人もいれば、大失恋の曲と思う人もいれば、いろいろあっていいと思うんですっぽ。
■僕は意味を求めてしまいがちなんですけど、“H-G-K”は何かの頭文字なんですか?
小鳩 これは爆弾の名前ですっぽ。歌詞に「爆ぜる」とか入れていたので、勢いあるキラキラした感じがほしくて、SAIKIとタイトルを考えていた時に爆弾の名前を調べていたら出てきましたっぽ。
■だから歌詞のどこにも頭文字がないんですね。“Giovanni”は人名ですか?
小鳩 これは『銀河鉄道の夜』をテーマにしていて、主人公のジョバンニ側のイメージで書いたんですっぽ。海外にGiovanniさんがいたら、自分の名前だと思って聴いてもらって大丈夫ですっぽ。
■“After Life”は「死後」という意味ですか?
小鳩 死後というよりは「来世」ですっぽ。明るい方の意味で書きましたっぽ。(笑)
■“I still seek revenge.”も不穏なタイトルですけど。
小鳩 とても怖い歌ですっぽ。まだ復讐を求めている、復讐をやめない的な意味なので。
■全曲解説して欲しいくらいですけど、時間が足りなくなっちゃいますね。
小鳩 そうですっぽね。想像を膨らませて、自分の中で物語を作ってもらえたらいいなって思いますっぽ。今回はストーリー性が強いというか、展開が多くてイメージを膨らませやすい曲が多いので、楽しんでもらえると思いますっぽ。
■この『Unseen World』はBAND-MAIDにとって、どういう作品になったと思いますか?
小鳩 今のBAND-MAIDだからできる、新旧織り交ぜた作品になりましたっぽ。初期の頃は作家さんに作ってもらった曲を演奏していたんですけど、「原点回帰盤」は当時の感じを自分たちなりのやり方で作りましたっぽ。「現点進化盤」は、これからの私たちということで、挑戦的な曲がいっぱい入っていますっぽ。昔から聴いてくださってる方にも、最近知ってくださった方にも、「BAND-MAIDというものがわかる1枚ですよ」と言える作品になったと思うので、これから私たちのことを知ってくださる方にも、まずはこのアルバムを聴いてもらえたらなと思いますっぽ!
Interview & Text:タナカヒロシ
PROFILE
メイド服を纏い、ライブを「お給仕」、観客を「ご主人様・お嬢様」と呼び、メイドの世界観を演出する一方、ビジュアルとは相反するハードなロック・サウンドを武器に観る人を魅了する。日本だけに留まらず、海外のご主人様・お嬢様にも熱狂的に受け入れられている、〈世界征服〉を目標に掲げる、メイドの女性5人組ロックバンド。
bandmaid.tokyo
RELEASE
『UnseenWorld』

完全生産限定盤(2CD+BD+フォトブック)
PCCA-04991
¥7,700(tax in)
初回生産限定盤(CD+DVD)
PCCA-04992
¥4,400(tax in)
通常盤(CD)
PCCA-04993
¥3,300(tax in)
ポニーキャニオン
1月20日 ON SALE