ベリーグッドマン VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ベリーグッドマン『TEPPAN』

僕らは常に夢を描き続けて、追い求めて、一生青春なんだって思いを伝えなきゃいけない

ベリーグッドマンが新レーベル「TEPPAN MUSIC」を立ち上げ、移籍第一弾アルバム『TEPPAN』をここにドロップする。2020年という世相を陰に陽に反映させた今作は、何があろうとも誰かの背中を押すパワーソング(応援歌)としての役割を貫いた楽曲ばかりである。友達、相方、家族、自分自身、高校球児、卒業生など、コロナ禍で当たり前だったことが当たり前ではなくなり、今を生きるすべての人たちが壁にぶつかり、もがきながら前に進むことを余儀なくされている。そんな時代だからこそ、音楽がやれること、音楽だからできることを愚直なまでに突き詰めた渾身作について、Rover、MOCAのお二人に話を聞いた。 

■今作は新レーベル「TEPPAN MUSIC」第一弾作になりますよね?

MOCA 「もっとスピーディーに曲を届けたい」「ヒット曲と言われるものをより多くの人に届けたい」その思いで自分たちのレーベルを作ろうと。後々は自分たちがいいと思うアーティストをプロデュースしたい気持ちもありますね。そのためにもまずは自分たちがレーベルのヘッドとなり、いい作品を世に出し続けなきゃいけないなと。

■ベリーグッドマンとして、もう少しフットワークを軽くして動ける体制を作りたいと?

MOCA いろんな人が絡むほど動きづらくなるし、新しいレーベルでチャレンジしたい気持ちもありましたからね。ただ、以前よりも納期は早かったです。(笑) 2か月前に完パケしちゃおうぜってノリで、そこはミスりました。(笑)

Rover ははははは。でもね、一発目はちゃんとやらなきゃいけないし、僕らも気合いが入りました。二作目はもう少し時間をいただけたらなと。(笑)

■今作を作り終えて、お二人の感触から教えていただけますか?

MOCA 心機一転ではありますけど、 大きなテーマは変わらず、自分たちがいいと思ったものを詰め込もうと。『TEPPAN』というアルバム名を掲げ、アツアツの間違いない曲を、まさにコロナ禍で感じたものを詰め込んだ感じです。

■ええ。今作はコロナ禍を抜きにして語れない作品になりましたね。

Rover コロナの時期に作った曲ばかりですからね。自分から何かエールを送れないかと思い、作品は突き詰めて考えました。ノリで作った曲もありますけど、大変な思いをしている人もいるので、あまりふざけられへんなと。それをちゃんと踏まえて、お笑いだったり、元 気いっぱいに歌わせてもらった曲もあるので。今年はファンとの交流が皆無だったからこそ、繋がりを求めた曲が多いですね。“アイカタ”は、会いたい人と今すぐには会えない気持ちだったり、こういう時期だからこそ感謝の気持ちを伝えようと。“STAY GOOD”は、リモートでメンバーと会わずに作ったものだし、“No Live,No Life”はおちゃらけソングですけど、僕らの生活の一部になっていたライブができないいらだちをぶつけています。

■今作はド頭の“Intro〜TEPPAN〜”からインパクトがありました。前口上的なアプローチが面白かったです。

Rover これまでの作品にもイントロは絶対付けていたけど、ほんまにアイデアが出てこなくて。今回はレーベルも変わるし、鉄板でもカンカン鳴らそうかなと思ったけど、それもよくわからないじゃないですか。

■ははははは。(笑)

Rover MOCAの実家がお好み焼きで、お父さんにコメントを貰おうと思ったけど、それも身内ノリ過ぎるなと。じゃあ落語をやってみようと思って、自分で収録しました。

■Roverさんは落語もお好きなんですか?

Rover 神田松之丞、改め神田伯山さんのラジオをめっちゃ聴いていて。その前に松本放送室をずっと聴いていて、松本人志さんも落語好きなんで語るじゃないですか。それで好きになって、“Intro~TEPPAN~”のイメージは(笑福亭)仁鶴さんです。

■そうだったんですね!

Rover もし落語するなら仁鶴さんの声をマネしようと。今作の収録曲といい意味でギャップが生まれたらいいなと。

■“Intro〜TEPPAN〜”からの“Good Vibes”の流れはとんでもないギャップが生まれています。後者の曲では「子供のままで夢を描いたれ」と歌詞にある通り、「ピュアな気持ちを忘れるな」というメッセージを込めていますよね。

Rover MOCAがその場所に置きたいと言っていたんですよ。何でなんかな?と思ったけど、確かにヴァイブスが微妙やったら、何をやっても無理やと思うから。この曲のトラックメーカーはHiDEXじゃなく、Wood cherryという子たちに初めてやってもらいました。“Chill Out”もそうなんですけどね。大阪で頑張っている子なので、一緒にコラボしたいなと。だから、これからもやると思います。

■“Dreamer”は「2020 ABC高校野球パワーソング」、「2020年 全日本学童軟式野球大会 マクドナルドトーナメント球児応援曲」の野球Wタイアップが付いた曲ですね。

Rover 高校野球の大会が夏にできなくて、いろんなニュースがある中で、僕も衝撃やったんですよ。阪神甲子園球場が丸々ガラ空きになるから、夏の風物詩がなくなると、こんなに寂しいんだなと。あと、その年に卒業する3年生のことを考えるとね。MOCAが瞬時に「何かしなきゃいけない」と言ったんですよ。その時に阪神甲子園球場の配信ライブの企画をウチの社長が提案してくれて。すごく多くの大人が動いてくれて、快く球場側も貸してくれたんですよ。それで、TV局ABCのプロデューサーがベリーグッドマンと一緒にやりたいと言ってくださって。曲は10日間ぐらいで作りました。

■そうなんですね!

Rover 期限も迫っているし、今までのベリーグッドマンにない曲を作って欲しいと言われて、無茶言ってくるなと。(笑) 考え方も若くて、エネルギーがある人なんですよね。

■具体的にはどんなリクエストをされたんですか?

Rover 映画『グレイテスト・ショーマン』の“This Is Me”みたいな曲にしてくれと。いやいや1週間では無理だと思ったけど、できる限りの“This Is Me”をやろうと。「これが俺らなんだ!」という気持ちでやれば、いい方向に転ぶやろうと思ったんですよ。最初の「戦いは終わらない今もずっと」という歌詞が出てきた時に、これはイケるかもなって。それで、心が爆発するような気持ちで「We are Dreamer」って、めちゃくちゃベタな言葉を伸ばして歌ってみようと。そしたらすごくいいアンセムができました。

■Roverさんとしては「We are Dreamer」のフレーズは思い切って使った言葉?

Rover そうですね…意味わからないじゃないですか。(笑)

■そんなことはないですよ!(笑)

Rover 高校球児のみなさんに響くかなと思って。僕らの世代はFUNKY MONKEY BABYSの“あとひとつ”だったので、ここに来て「We are Dreamer」って何だろう?と最初は思いました。

■QUEENの「We Are The Champions」みたいなことですよね?その気持ちは十分に伝わりますよ。

Rover そういうことですよね。「We Are The World」みたいな。(笑) だから、僕らとしては壁を破った1曲なんです。こういう時だからこそ、僕らは常に夢を描き続けて、追い求めて、「一生青春なんだ」って思いを伝えなきゃいけないなと。

■特に「輝くとは限らなくても We are Dreamer」の歌詞は肝ですね。

Rover そうですね。全員が全員輝くとは限らないし、光があれば影があるから。ただ、そこは悩みましたね。「今ネガティヴな言葉がいるかな…」とも思ったけど、それが現実ですからね。なぜそういう風に言えたかと言うと、この曲で僕らも苦労したので、共に闘おうと いう気持ちが芽生えたのかもしれない。「嬉し涙を拭って抱き合おう」の歌詞も、濃厚接触がダメだと言われている時期だからこそ、絶対使いたかったんですよ。

■ああ、なるほど。

Rover 毎日感染者数が出ているけど、芸術は止められないですからね。

■それと“Answer”も「MBSベースボールパーク」のために書き下ろした曲ですよね?

Rover これはコロナ前かな。関西の試合中継のテーマソングで、プロ野球の人たちと触れ合う機会があって。そこで感じたのは自分との闘いなんですけど、ファンのこともすごく考えているんですよ。もっと言えば未来の子供たち、未来の野球選手、未来の野球界のために、という気持ちが強くて。前田健太さんも未来の子供たちへとめっちゃ言うんですよね。「この一試合を見て、闘病生活で亡くなる子供がいたら、最後の一試合になるんだから」みたいな。

■ベーブ・ルースが病気の少年とホームランを打つ約束をした、みたいな話とも通じますね。

Rover そうですね。サッカー、マラソンでもあるだろうけど、野球はテレビでもよく流れているから、身近に感じられるスポーツですからね。プロ野球選手本人に問いかけている歌詞があるんですよ。「俺たちは何のために生きてんの? 奪われたくない何かのためか いつも支えてくれる人たちの 笑顔と泣き顔を映しだして この人のために戦えんのか? 問いかけたその瞬間がもう 答えかもしれない」って。地位や名誉じゃなくて、ファンのために戦えるのかって。プロ野球選手に恐れ多くも僕らが言っているんですけど、自分に向けても言っているんですよね。それはスポーツを通り越して、働くことの根源にあるものじゃないかと思って“Answer”という曲名にしました。

■いい話ですね。その歌詞は個人的にもグッときました。

Rover これ言ってもいいんかな…?高橋優さんの“福笑い”という曲があって、去年、秋田のフェスに行かせてもらって、そこで弾き語りを聴いた時に感動して泣いちゃったんですよ。そのエッセンスがすごく入っているんですよね。「自分以外の携わっている人のために命をかけて闘えるのか?」って。「お前は命をかけて曲を作って、歌っているのか?」って自問自答した時に、初めて自分の中に責任感が芽生えるから。それが答えなのかなと。

■MOCAさんはいかがですか?

MOCA そのエッセンスを入れたいと言っていたので、ええなと思いましたよ。

Rover 僕らもお金をもらうようになって、何のために生きているのかわからなくなる瞬間もあるんですよ。それはみんなにも当てはまることだと思うし、自分に対する戒めみたいな曲ですね。