BOXER KID VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

完成した時点で100点なので、後は聴いたみなさんそれぞれで少しでも何かを感じてもらえたら

常に日本のレゲエシーンの先頭を走ってきた、大阪を拠点に活動するレゲエクルー“MIGHTY JAM ROCK”所属のBOXER KIDが、約7年振りとなるソロアルバム『THE PARTY』をリリース。同じく関西の敏腕プロデューサー(TERRY THE AKI-06、卍LINE、韻踏合組合 等)のAKIO BEATSを迎え、「一度でもストリート発のカルチャーに共鳴したことのある者にこそ贈りたい、言霊メッセンジャーの真骨頂」というこのアルバムについて、その思いを訊いた。

■今回の作品の話に入る前に、改めて所属されているMIGHTY JAM ROCKというクルーについて教えていただけますか?

BOXER KID MC&セレクターにしてプロモーターも務めるKYARAとROCK、自分と同じくDee Jay(歌い手)であるJUMBO MAATCHとTAKAFINに自分も加えた5人で、20年近く大阪を中心にダンスホール・レゲエ・スタイルを追求し続けるラバダブ・セット(サウンド&歌い手集団)になります。2001年に1st作を発表して以降、昨年2019年まで年1作のペースで毎年リリースを重ねて、現在19枚のオリジナル・アルバムを作り上げており、今年も20枚目を制作予定です。

■ご自身にとってMIGHTY JAM ROCKはどのような存在なのでしょうか?

BOXER KID メンバーは家族以上に時間をすごした戦友であると同時に、尊敬できる先輩たちであり良きライバルでもある。ひと言で言えば、常にともにあるべきホームだと思います。

■そんなつながりの強いグループに属しながら、今回ソロ・アルバムを制作した経緯はどのようなところにあったのでしょうか?

BOXER KID まず大前提として、先ほどもご紹介した通りMIGHTY JAM ROCKには僕も含めて3人のDee Jayがいるんですが、当初より「3人の歌い手それぞれがソロで魅せられてなんぼ」というスタンスを持っています。そんな3人がしのぎを削る形で成立させていくのが、MIGHTY JAM ROCKによるオリジナル・アルバムのスタイル。それだけに、それぞれが常に独自の動きも欠かしません。僕自身も自ら主宰するNAKAMARU RECORDSというレーベルを2013年に起ち上げており、そこで前作となる『BOXER KID MIX TAPE BY AKIO BEATS』をユニバーサルミュージックからリリースしていて、その延長線上に今作もあるんだと思います。

■今作の背景には音楽に対するそういう姿勢があるんですね。では、7年ぶりにご自身のレーベルからソロ作品をリリースする意図はどこにあるのでしょうか?

BOXER KID 昨年、改めて自分の人生や音楽への気持ちと向き合う機会があって、今回のプロデューサーであるAKIO BEATSとスタジオに入る形で制作をスタートさせました。これまで約20年近く音楽をやれてきた事実と合わせて、これから先を見つめ直した時、いつエンディングを迎えるかわからないなと感じたんです。だからこそ、できる内にやりたいことをやり切っておこうと思ったんです。

■聴かせていただいた音源からはもちろん、強い想いの元に作られた作品だということが、今の言葉からも伝わってきます。ここで、収録された楽曲についても順番にお伺いさせてください。まず幕開けを飾る1曲目“INTRO ~曲目~”は、イントロとは思えぬほど現場感満点ですね?

BOXER KID このアルバム『THE PARTY』の案内状的な意味合いを持たせたくて1番最後に作ったんですが、収録曲のタイトルをぜんぶ入れて映画の予告編的な作りになっていると思います。

■今作の表題にもなっている2曲目の“THE PARTY”については?

BOXER KID 昨年の夏からHEYZ CAFEというバーで月1開催している『THE PARTY』に由来しているんですが、このイベントに行ってみたくなるように作っていった曲です。気だるさを感じる聴き心地を意識して、あまりマジメに歌いすぎないようにヴァースをすべて同じフロウにしたのもポイント。さらに、レゲエ・シンガーのDORAにコーラスを入れてもらったことでパーティ感が増したと思います。

■アルバムに先駆けて2月12日に配信された“名称未設定”は、どこか現代の闇をあぶり出すような曲調ですね?

BOXER KID 何気ないタイミングで友人の1人にあるサイトを見せられて、こんな現状を歌にしてくれと頼まれて書き始めました。テーマがテーマなので表現が偏らないように、ストロングなビートでハードに乗せることを心がけました。

■ある意味、今作の肝のひとつとも感じる“NEW ERA”についても聞かせてください。

BOXER KID ビートの制作中にプロデューサーのAKIO BEATSが、〈NEW ERA〉というテーマを出してくれたことから内容を広げていきました。

■リスナーとしても本当に印象的な曲だと感じましたが、ご自身でポイントとなった歌詞を挙げるとしたら?

BOXER KID 思い入れのある曲でもあるので1フレーズだけを挙げるのはなかなか難しいですが(笑)、あえて言えば「思いを築くと心に響く」という部分でしょうか。

■おっしゃる通り、確かに胸に響きました。続いては、5曲目の“JOY FOR ALL”。

BOXER KID 最近趣味で画を描くようになったのをきっかけに作っていった曲で、人生をキャンバスに例えて好きなように描いて好きな色を塗ろうとメッセージしました。先ほどの質問にもありましたが、この曲で言えばポイントとなるフレーズは「求めるな与えよ」ですかね。その真意を感じながら聴いていただけたらと思います。

■「毎日誰かの誕生日」との歌詞も印象的な“YEH YEH YEH”は、中盤で気分を上げてくれる曲ですね?

BOXER KID はい。聴いていて、ただただ楽しくなるような1曲が欲しくてソカのビートをAKIO BEATSにリクエストしました。

■レコーディングの際に意識したことや新たな挑戦になったことがあれば教えてください。

BOXER KID BPMがかなり早めなので、フロウで緩急をつけることや、サビを4小節にして展開がクイックになるようにした部分だと思います。