ライブハウスをダンスホールに変えたツアーファイナル。
7月25日(火)、BRADIOが『DANCEHALL MAGIC Release Tour 2023』のファイナル公演を恵比寿LIQUIDROOMにて行った。これまでもファンキーな音楽を奏でてきたバンドであるBRADIOが、今一度「ファンキーとはなにか？」という問いを立てるところから制作をはじめたというアルバム『DANCEHALL MAGIC』を引っ提げて行った本ツアー。この日のチケットはソールドアウト。会場には歓声が溢れたことも手伝って、バイタリティに満ち満ちたライブとなった。
暗転の後にサポートメンバーとともに大山聡一(Gt)、酒井亮輔(Ba)の2人が登場し、オーディエンスを煽ったのち、真行寺貴秋(Vo)が飛び込むようにステージに登場、弾けるような1音目とともに“DANCEHALL MAGIC”でライブは開幕する。演奏が終わるとともにバチっとポーズを決めて静止した真行寺の姿に熱い声援が湧き上がり、ぱっと動き始めても会場が盛り上がる。派手な演出はなくとも、スタイリッシュかつキャッチーな演奏と振る舞いで会場を巻き込み盛り上げていく、BRADIOのエンターテイナーとしての力を序盤から強く実感させられた。どことなく南国を思わせる“Diamond Dust Popping Life”、リズミカルな譜割りとキャッチーなサビが会場を揺らす“YATARA Dance”、“-Freedom-”と続き、曲ごとにボーカルや楽器の音色のアプローチを変えながら会場はディープな盛り上がりを見せていく。BRADIOの軸となっているのはライブで盛り上がる踊れる音楽でありながらも、曲によって変化するギターの音色やベースのタッチ、歌声の発声やニュアンスは、踊れる音楽であるだけに留まらない聴きごたえを生み出していた。
今回のためにリアレンジしたという“Time Flies”では、リズム隊の存在感とシンセサイザーの90sを思わせる雰囲気が哀愁を演出。続く“オワラナイ”の歌い出しではステージ上でのトラブルもあったが、真行寺が瞬時に歌い出しの歌詞を替え、トラブルが起きたことと仕切り直したいことを歌い上げることで瞬時にユーモアに変換するという完璧なフォローも。その機転と、一旦演奏を止めた後に口にした「生きていれば躓くこともあります、それが今日だっただけ」という言葉は、BRADIOのスタンスが色濃く表れていたように思う。“Time Flies”にある「へこたれモードの日だって 苦しくても焦るなよ」という歌詞をはじめ、BRADIOの音楽には日々を過ごしやすくなるような思考が反映された歌詞が散りばめられている。この偶然への咄嗟の対応は、一貫したBRADIOのスタイルを音楽以外の部分で強く感じることができた一幕であった。
一転、ロックな音色と煽りが会場を熱く染めた“69 Party”の後、キーボードとギターのしっとりとした繋ぎから“BAN BAN TONIGHT”、“きっと遠く キミともっと遠く”へと、ライブは後半へと向かっていく。後半部分、特に胸を打ったのは “運命へ”の大サビ部分のシンガロングだ。これまでダンサブルな楽曲が続いていた中で落ち着いたナンバーである“運命へ”はそれだけで存在感を増していたが、大サビで巻き起こった大合唱はこの日幾度となくあったシンガロングやコールアンドレスポンスのどれよりも活力ときらめきに満ちていた。そこで感じたのはフロアの一体感ではなく、会場が個々の集まりから形成されているということ。この日会場を訪れた個々人が各々の感じ方で歌詞を受け取り、翌日からまた各々の場所で生きていくための糧にするのだろうと強く思わせる“運命へ”の大合唱は、BRADIOのメッセージがオーディエンスひとりひとりに染み渡っていることを強く感じさせた。
ロックチューン“Buster！”、“ソウル・ギャラクシー”と、残りのエネルギーを全て発散させるような活発さでライブは大団円を迎える。最後には真行寺がフロアに降りてオーディエンスと近い距離で音楽を奏でる場面もあり、最後まで会場の熱気は高まり続けたまま本編を終えた。アンコールでは、公演の2日後に誕生日を迎えた大山を一足早く祝うサプライズも。その後に新曲“ファンファーレ”、“Back To The Funk”を披露。この上なく明るいダンスホールを作り上げた、まさに『DANCEHALL MAGIC』という言葉がふさわしい夜となった。
Text：村上麗奈
Photo ：ヤマダマサヒロ
『DANCEHALL MAGIC Release Tour 2023』＠恵比寿LIQUIDROOM セットリスト
01. DANCEHALL MAGIC
02. スパイシーマドンナ
03. Diamond Dust Popping Life
04. YATARA Dance
05. -Freedom-
06. Time Files
07. オワラナイ
08. 69 Party
09. BAN BAN TONIGHT
10. きっと遠く キミともっと遠く
11. Catch A Vibe
12. 運命へ
13. Buster!
14. ソウル・ギャラクシー
ENCORE
01. ファンファーレ
02. Back To The Funk
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