「観たことがない人こそ今来るべき」、「5人のフィロソフィーのダンスとしてできる新たなエンタメを探している」。5人体制初のEPと全国ツアーを語る。
フィロソフィーのダンスが2ndEP『One Summer Dream』をリリース。2022年11月に新メンバーに木葭のの、香山ななこを迎え、5人体制で活動しているフィロソフィーのダンス。5人体制では初となるEPである今作には、3年前より存在していたという楽曲“キュリアス・イン・ザ・モーニング”や、壮大なバラードの“作り笑いをさせないで”、ORANGE RANGEの“上海ハニー”のカバーや、“熱風は流転する”のリミックスなど、様々なアプローチが楽しめる5曲が収録される。今回はフィロソフィーのダンスの、奥津マリリ、佐藤まりあ、日向ハル、木葭のの、香山ななこの5人にインタビューを決行。5人体制になってからの変化や今作の歌に込めた思いなどを訊いた。
■フィロソフィーのダンスに木葭さんと香山さんのお2人が加入してから、あと数ヵ月で1年を迎えます。お二人はこの1年でどのようなご自身の変化を感じていますか?
木葭 なんでも楽しめるようになりました。最初の頃は何をするにも不安だらけで、楽しめていない自分がいたんですけど、今は段々いろんなことにも慣れてきて、撮影だったり、ライブの経験も増えてきて、純粋に楽しめている自分がいるのを感じています。
香山 私は人前で堂々と喋るのがあまり得意ではなかったんですけど、それが得意になってきた気がします。
■オリジナルメンバーの3人は、そんな新メンバー2人の変化をどう感じていますか?
日向 最初の方は、ライブでも2人が不安そうな顔をして歌っているのは分かっていて。なので、ステージ上でも目があったら「笑って!」とか言ったりしていたんですけど、この間、東名阪ツアーを5人で初めて回った時の映像を見たら、すごく楽しそうな美しい表情をしていましたし、自信を持ってステージに立っているんだなと感じることが多いんです。2人が成長していっている過程をこんなに近くで見られて楽しいなと思います。後輩2人が成長しているのを見て、オリジナルメンバー3人も「まだまだ負けてられないぞ」というか、「私たちも頑張ってフィロソフィーのダンスの新章を盛り上げていかないと」とも思いますし、自分を見つめ直すいいきっかけにもなったので、新たな風を入れてくれた2人には感謝しています。
奥津 最初入ってきた時は、本当に「可愛くて仕方ない」みたいな感じだったんですよ。その気持ちはメンバーとして過ごしていくうちに段々薄れていくものだと思っていたんですけど、全然そんなことはなくて約1年経った今でも「可愛い!」みたいな感じです。(笑) 慣れていない時の2人も知っているし、慣れてきて私たちに心を許してくれていると感じる瞬間はすごく嬉しいですし、未だに可愛いは止まらないですね。昨日とかも、愛おしさが爆発して、ななこのことを抱きしめたりとか。(笑) 愛おしさは増すばかりといった感じです。
佐藤 ののは最初の頃はダンスに苦手意識があると言っている時があったんですけど、この間の東名阪ツアーではのののソロダンスのパートがあって、すごく綺麗で美しく完璧なダンスを見せてくれたんです。本当に努力の人だなと思って、すごく成長を感じました。ななこに関しては、最近いろんなところで「ななこの歌がすごくよくなった」という話を聞くんです。自分で練習しに行ったりしているという話も聞いて、ななこの現状に満足しないストイックさは、私たちの方が見習わないといけないなと思っています。2人のように初心を忘れずに気を引き締めて活動していきたいです。
■いい刺激を受け合っているんですね。ここからは今作のEPの収録曲についても伺っていければと思います。“キュリアス・イン・ザ・モーニング”は、いただいた資料によると、3年前に仮レコーディングしてから「一度も耳から離れなかった楽曲」とのことですが?
奥津 そうなんです。当時「メジャーデビュー曲をなににしようか?」と、たくさんの曲を歌っていた中にあった1曲で。本当にずっとふとした瞬間につい歌っちゃったり、「あの曲どうなりましたか?」みたいに、たまにつんつんしてみたりするくらい、耳から離れない大好きだった曲なので、やっとリリースできて嬉しいです。
■耳から離れないというのは、日向さんと佐藤さんも?
日向 そうですね。特にメジャーデビューの時は本当にたくさんのデモを作っていたんですけど、この曲はメンバーもずっと覚えていたし、チームのたまにしか顔を出さないスタッフさんも「ああ、あの曲ね」みたいな感じで覚えていてくれたので、みんなの記憶に残っていたみたいです。今回はそこからアップデートしていただいたんですけど、「それそれ!」みたいな。そんなに細かくオーダーはしていないんですけど、耳から離れない要素を更に上乗せしてくださって、本当に一回聴いたら癖になるスルメ曲になったと思います。
■少し前のことになってしまうかと思いますが、初めて聴いた際の印象は覚えていますか?
日向 この歌詞は気になりました。「どこに向かうんだろう?」みたいな。「目覚めて、あなたがいなくなっていて、どうなるんだろう?」みたいな。いろいろと想像できる余白が多いからこそ気になっちゃう。普段リリースする時は、元のデモから歌詞をがらっと変えることが多いんですが、この曲はほとんど元のデモのままですね。
■木葭さんと香山さんはこの曲を聴いた時の印象は覚えていますか?
木葭 やっぱり聴いた後、しばらく頭から離れなくて。(笑) 「これがみんなが言っていたことか!」と思いました。キャッチーなメロディーと不思議な世界観の歌詞がすごくいいなと思いました。
■聴く前から、「耳から離れない曲」だという話は聞いていたんですね?
木葭 そうなんです。噂には聞いていたので、本当だったって思って。
香山 私も聴いた日の夜から頭の中でずっと鳴っていました。「みんなが言っていた現象はこれか!」って思って。聴いてくれたみんなにもその現象が起こると思うので、みなさんの反応がすごく楽しみです。
■“サンバーント・ロマンス”は、特にみなさんの声の個性が出ている曲だと感じました。1人の主人公を作り上げるようなイメージで歌っていったとのことですが、それぞれどんなイメージで歌ったのか聞かせてください。
佐藤 まず共通認識として、ひと夏の恋におぼれてしまった女の子みたいなのはあって。私だったら2番Bメロの歌い出しの「このまま 永遠 期待してもいいの?」という歌詞があるんですけど、ここの部分は「相手を落とすためのとどめの一発」みたいなテンションで歌ってみたり、でもその次の行で砕け散っているから、もっと切なくて悲しい感じの歌い方にしたり、いろいろな歌い方に挑戦しました。最終的にはすごく悲しい感じに歌っているテイクが選ばれたのですが、お気に入りのフレーズになりました。
奥津 私は、落ちサビの「絡まった言葉 身近いNight」からの4行を歌っているんですけど、いろいろ経てからのオチみたいな結構大事なシーンなので、悲しいとか、切ないとか、好きみたいなひとつの感情で歌うというよりは、複雑に絡まった感じを全て表したいなと思って。切実なフレーズもあれば、ちょっと怒っているというか、もどかしい気持ち、「そんなつもりじゃなかったんだけど!」みたいなニュアンスも入れてみたり、ちょっと甘さも入れてみたり。その後の歌詞に「痛甘い」という言葉が出てくるんですけど、まさに痛甘さみたいなのを出したいなと思って。このフレーズの中でどこまで複雑な感情を表現できるかを考えて、いい歌が歌えたかなと思います。
日向 私は1サビとラスサビで同じ歌詞を2回歌っているんですけど、ディレクターさんと歌詞を考察して、1サビは恋が叶う可能性にまだ期待しているけど、ラスサビ前にはもう砕け散っていて、負けが確定しているから、その違いを出したいということになって。
■負けが確定。(笑)
日向 「負け確」って大きくiPadに書きました!(笑) マリリが直前で落ちサビを感情的に歌ってくれているので、私もそれに乗っかって、すごく開放して歌えました。
木葭 大人の女性のひと夏の切ない恋の曲なので、ただ切ないとか、悲しいじゃなくて、心が焼けちゃうぐらいの切なさとかの感情を込めて、その切なさの度合いをちゃんと表せるような歌い方をしました。あといつもカッコいい歌はカッコよく、可愛い歌は可愛く歌うようにしているんですけど、今回は大人っぽく、いつもより背伸びして歌っていて。なんだろう、あの……セ…セ…。
日向 セクシー?
木葭 セクシーに。
日向 ためらわないでいいんだよ。(笑)
木葭 セクシーな私が見せられたかなと思います。
日向 恥ずかしくなっちゃったんだね。言葉が詰まっているのかなって思って。(笑)
木葭 ハルちゃんの助けがなかったら言えなかった。(笑)
香山 (笑) 私は自分のパートの「なんだか…名前教え合っただけで」というところが気に入っているんです。名前を教え合った出会いの瞬間のピュアなときめきと、でも次の行では「切ない」とも言っているから、ただときめいているだけじゃないんだなとか。そういう思いをイメージして歌いました。
■みなさん歌詞をすごく解釈してからレコーディングに臨むんですね。“作り笑いをさせないで”は、1番を日向さんが、2番を4人が歌う壮大なバラード曲です。バラード曲は久しぶりとのことですが、まずは日向さん、1番を歌ってみていかがでしたか?
日向 気持ちよかったです!
■やはりバラードを歌い上げるのは、他の楽曲とは違う気持ちよさがあるものですか?
日向 そうですね。ゆったりとした曲の中で思う存分メロディーを表現できるのが、バラードの良さだと思うんです。文字が詰まっていない分、その隙間をどう埋めるかで、かなり色が出ると思うので、思う存分自分らしさを出そうと思って歌いました。2番は他のメンバーが担当してくれているんですけど、レコーディングの時に「他のメンバーにはハルちゃんの背中を押すイメージで歌ってもらう」というのを聞いて。この8年間、常にメンバーに支えられて生きてきた人生だったので、結構それは想像しやすかったというか、曲の主人公ともリンクしやすかったんです。「今までの自分の人生でも支えてもらっているし、この曲でも支えてもらっているんだ」みたいな。つらくて先に進めない歌詞を歌っているところに、はっと頭の中にメンバーが出てきて、「ハルちゃん大丈夫だよ、ハルちゃんなら前に行けるよ」っていう日常が浮かんできて。曲の中では最後まで悲しみに浸っているので、そこは違う部分なんですけど、でも日常生活とリンクしてわかりやすかったので、感情を込めやすかったです。
■2番からの歌唱を担当するみなさんは、日向さんの背中を押すようにとのことでしたが、歌ってみていかがでしたか?
奥津 最初、「どうやって歌おうかな……」と結構悩んだんです。1番と2番の対比をどうしたいかによって、歌い方が変わるなと思って。でもハルちゃんを包み込むような感じ、背中を押すような感じで歌おうとなったので、こういうバラードの失恋曲って暗くなりがちだと思うんですけど、私はすごく笑顔で歌っていて。ハルちゃんに「大丈夫だよ」みたいに言葉をかけるとしたら、私は多分笑っているなと思ったんです。普段のバラードとはちょっと違う歌い方をしてみたので、安心感とか包容力が出ていたらいいなと思います。
佐藤 過去にバラード曲はあったんですけど、その時、私のソロパートはなかったので、そう考えてみると、私はバラード曲は初参加だなと今気付きました。(笑) “作り笑いをさせないで”は悲しくて切ない歌だけど、でもそこに引っ張られすぎず、ハルちゃんが一番を一生懸命歌ってくれたからこそ、逆にいつも通りの自分で歌おうというか。「2番になぜ私たち4人が出てくるのかという意味がちゃんとある歌にしたい」と思ったので、いつも通り自分らしく歌いました。
香山 私のパートの前で鳴っている音が少し派手な感じに変わっているんです。「言いたい言葉は溢れてくるけど」という歌詞ですし、どちらかというと、ハルちゃんに共感するような、寄り添うような感じで歌いました。
木葭 私も一緒で、ハルちゃんの今までの歌に表れている切実な感じの勢いをそのまま途切れないように寄り添う感じで歌ってみました。
■コーラスも厚くて綺麗ですよね。
奥津 頑張りました。「ハルちゃんに負けないくらい、メインだと思って歌ってください」と言われたんです。「どうしよう……」と思ったんですけど、ハルちゃんが歌のメインだとしたら、私たちはそれをかき立てる、伴奏のメインみたいな、ギターソロじゃないですけど、そういう気持ちで、背景を作る人みたいな気持ちで歌っていました。後ろの背景を全部私が壁として作っている、みたいな。(笑)
日向 美術さんみたい。(笑)
奥津 壁になるのを頑張りました!