■詞を読んでいても、前向きさと悲しさのせめぎ合いをすごく感じたので、今の「強くなれない部分もリアルに描く」というお話を聞いて腑に落ちました。
erica 私の中ではそんなに強く前に進めないっていうのがリアルなんですよね。
■歌声も他の曲とは違う印象だと感じました。
erica 最近の曲には今回のようなゆっくり淡々と歌う曲はなかったんですけど、実は私の原点って、このメロディーラインなんですよね。私の音楽での最終的な目標が、声だけで思いを伝えられるアーティストになることで。例えば小田和正さんのような、音だけで言葉を伝えられるというか、たまたまそこに言葉が載っただけみたいな、音だけでも感情を表現できるようなアーティストになりたいと思っているんです。なので、私は歌手になってからずっとそれを大切にしてきて。私の曲って、できるだけ簡単でストレートな言葉を使っていて、誰にでも分かる言葉を乗せて、音だけでどれだけ深みを持たせられるかをテーマにしているんです。今まではそういう思いがあった上で、naoさんが今の世の中のサウンドと良い具合に混ぜてくれていたんですけど、この曲では逆にすごく削いでくれたというか。流行りのサウンドやアレンジはなしで、言葉一つひとつを丁寧に伝えるためのアレンジを作ってくださったので、それが結果的に私がすごく作りたかった、声だけで思いを伝えるというのに少し近づけたのかなと思っています。20代の時にはスキルがなくて、きっと同じことはできなかったと思うんですけど、今なら少しはできるようになっているんじゃないかなって。言葉一つひとつを大切に歌えるようになったと思いますし、その点が今回の“ホワイト”で挑戦させてもらったポイントかなと思います。
■音数もかなり少ないですよね。
erica そうですね。以前だったら、「もっとドンチャンやってくれないと歌えないよ！」みたいな感じだったと思います。(笑) できるだけ音数を少なくするというのも今回のテーマでした。でも最初はもっと音が少なかったし、歌い方も今ほど感情的ではなかったんです。1回感情を入れて歌ってみてと言われて歌ったら、この方がいいということになって。それに合わせてアレンジも少し付け足して、今の形になりました。
■歌に合わせてブラッシュアップしていったんですね。
erica そうなんです。最初はできるだけ淡々と、感情を入れない歌い方をしていたんです。曲が命をテーマにしているから、あまり感情を入れると恩着せがましいというか、暑苦しいというか、圧を感じるかなと思って。でも「ここまでは淡々と歌っていいけど、途中からは感情を入れてもいいかも」みたいな感じで、少しずつ感情を入れてみたりしています。
■ちなみに“ホワイト”というタイトルにはどんな由来があるんですか？
erica 最初は歌詞の中から象徴的な言葉を取ろうかなと思っていたんですけど、そういう切り取った感覚よりも、全体のテーマである命という言葉に対してなにかないかなと思ったんです。私は白がすごく好きなんですけど、白って何色にもできるし、何よりも純粋で、何にも染まっていない最初の色でもあると思っていて。白から人生を歩み始めて少しずつ色を足していって、最後世の中からいなくなる時にまたいろんなものが洗われて、また白になっていくっていうイメージがあって、そこに白の魅力を感じているんです。私は大事な時には必ず白を着るんですけど、自分にとって白はまっさらになれる、素直になれる色でもあるなと思って。そういうのを表現できればいいなと思って“ホワイト”というタイトルを提案しました。曲を段々と作りこんだり、歌っていく過程で、naoさんやスタッフさんと命について話す機会が増えたんです。そんな命をテーマに世間話をすることって普段ないじゃないですか。でもこの曲をきっかけに、これからの人生とか、生きるということをすごく考えるようになったし、周りの人とも話せるようになったので、すごく自分の中でも壮大なテーマになったんですよね。
■チームでそういった話ができるようになったのは、すごく良い変化のように思えます。
erica すごく大事ですよね。命のことをお互いにざっくばらんに話すことってなかったので。すごく新鮮というか、今までにない変化でしたね。
■“ホワイト”はもうライブでは披露されたんですか？
erica この前、映画の上映後に初披露させていただきました。映画を観た後に泣いている人もいる中だったので、私も泣きそうになるのを我慢しながら歌いました。これからセットリストにどう入れていくのかはすごく悩んでいるところなんですよね。“ホワイト”の後にどう明るい曲をもっていけばいいんだろう……みたいな。でも先程失恋ソングとしても聴けることが分かったので、そういうつもりにすると混ぜやすくなるかもしれないですね。
■映画に対する曲としてはもちろん、その文脈を離れてライブでどう歌われていくのかも楽しみですね。
erica そうですね。元々は映画の曲なので、派手な感じでもないし、作品に寄り添うことを大事にしたかった曲なので、映画を知らない人たちにどう伝わるのかは楽しみです。聴いた人がいろんな解釈をしてくれれば良いなと思います。
Interview & Text：村上麗奈
PROFILE
高校卒業後、歌手を目指して山梨県から上京。「告うた」と題した、告白や失恋について歌った切ない歌詞が話題になり、女子中高生を中心にクチコミによって認知が広がる。得意なことは即興ソングを歌うこと。2017年にリリースした『告白10ヵ条』はLINEMUSICのウィークリーチャート1位を獲得。
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RELEASE
『ホワイト』
デジタル配信リリース
https://erica-peacevoice.lnk.to/white
ピースボイスエンターテイメント
10月11日 ON SALE
