erica VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

いろいろな3作品が揃ったので、それぞれ聴きたいタイミングで聴きたい曲を聴いてほしい。

シンガーソングライター ericaが、約1年ぶりに待望のニューシングルをリリース。2024年を締めくくり、3ヶ月連続で配信リリースされた。第1弾は『夢に向かって頑張ってる君へ』で、夢を叶えるために頑張っている人に向けて、1人じゃないんだという思いを込めた応援ソング。第2弾は『推ししか勝たん』で、erica初となるラップにも挑戦した、大好きな推しへの想いをぎゅっと込めた推し活ソング。そして第3弾は『じゃんけんぽ』で、勝ち負けじゃ測れない幸せの”価値”を描く、可愛くて真っ直ぐな恋愛ソングとなっている。そんな3曲について、ericaから詳しく話を訊いた。

■VANITYMIXでの取材は、前作の『ホワイト』の時以来なので、約1年ぶりの取材になります。2024年ももうすぐ終わりますが、この1年を振り返ってみていかがですか?

erica 実は今年の春くらいには次の作品をリリースしようと思っていたんです。でもこれからのericaの歌の方向性とか、どういった歌を今まで作ってきて、これからはどういった歌を作っていきたいかも含め、プロデューサーのnaoさんともいろいろと話し合う機会があって。その結果、一度ゆっくり考えてみようということになりまして。それで、夏にあったイベントに久しぶりにnaoさんが歌を聴きに来てくれたんですけど、その時にnaoさんの中でericaに歌わせたい曲を閃いたみたいで、「こういうことをやりたい、ああいうことをやりたい」みたいなことをたくさん提案してきてくれたんです。それまで私の方はずーっと曲を作っていたので、未発表曲をもう20曲以上も作っていて、その中から「どの曲を出していこうか」とスタッフさんたちともいろいろと話をしていたんですけど、naoさんから提案されたものはまた方向性が違ったものだったので、そこからまた「じゃあどうしようか……」という話になり、あらためてまた話し合いが始まってしまって。(笑) そうこうしているうちに、下半期もだいぶ過ぎてしまったんですけど、「今年中にはなにかリリースしたいよね」となって、今までいろいろと「今後どうしていこうか」と考えていたけど、「もっと気楽な気持ちで今出したいものをリリースしていってもいいんじゃないか」ということになって。急遽、「年末の10月、11月、12月の3ヶ月連続でリリースしよう」ということになったんです。(笑) 今後ericaがどんな歌を歌いたいかというのも大事なんだけど、それだけ曲が出来上がっているなら、「その曲たちにスポットを当ててあげよう」という感じになって。今年の前半はいろいろとコンセプチュアルにしっかりと考えていたので、自分の中では連続リリースの第1弾目にリリースする曲に対するプレッシャーが増しちゃって……。選曲するのにめちゃくちゃ悩みました。(笑)

■なるほど。すごく紆余曲折があった1年だったということですね。(笑)

erica でも今まで1年間に1曲もリリースしなかったという年はデビューしてから今まで一度もなかったので、ファンのみんなも「今年は曲出さないのかなぁ?」と心配してくれていたと思うんですけど、この年末になって「バーッ」とリリースすることになっちゃいました。(笑) 急に慌ただしくなって、スタッフさんたちもいろいろと大変だったと思います。

■じゃあ今年の前半は、割りと今までやってきたことを振り返ったり、原点に立ち戻るというか、自分を見つめ直す時間になった感じだったんですか?

erica 昨年の秋にリリースした前作の『ホワイト』という曲が、命をテーマにした曲だったんですけど、私は今まで恋愛について歌った曲が多かったし、大きな愛についてはテーマにしたことはあったけど、命をテーマに曲を作ったのが初めてだったので、そういった大きなテーマに取り掛かるタイミングで、自分自身に対しても向き合うタイミングがその都度あったので、去年くらいからずっと自分を見つめ直してきた感じでした。

■昨年の『ホワイト』の制作段階から、そういったことに向き合うといったことをされてきた感じだったんですね。

erica そうなんです。これまで開けないでおこうと思っていた箱を開ける作業だったりとか、見て見ない振りをしてきたこととか、自分の身の回りの命のことから始まって、今世界で起こっている戦争のこととかにまで目を向けていくと、どんどん途方もない作業になっていっちゃって、すごく遠い目をしてしまいましたね。(笑) 「もうなんのことを歌ったらいいかわからない……」みたいになってしまって、まだ答えは見えていないんですけどね。(笑) でも結構なところまで掘り下げていったので、もう世界平和を歌うところまで来ちゃったかもしれませんね。そんなことを歌っているデモ曲も実はもうあったりしますからね。(笑)

■すごいですね。(笑) もう“We are the world”の世界線ですね。

erica でもそんな壮大なテーマばかり考えていると病むんですよ……。日々生活しているといろいろなことがあって、身の回りのちょっとしたことや、仕事のこととか、人付き合いや人間関係のこととかでも悩んだりするじゃないですか。そっちはそっちで自分なりには真剣に悩むんですけど、そんな小さなことで悩んでいてもしょうがないくらいの大変な出来事や事件が世界中で起こっていて、それとのバランスをとるのが大変で、「またこんな小さなことで悩んでいる私って……」と考え込んじゃたりして。(笑) でもそんなことでウジウジ悩んでいるのも嫌で、「なにか遊びで気晴らしソングでも作ろう」と思って作った曲も何曲かあって。それこそ今回の連続リリースの第2弾でリリースした“推ししか勝たん”は、まさにそんな時に作った1曲なんです。

■まさかのタイミングで作られた1曲だったんですね。

erica 私もまさかこの曲をリリースすることになるとは思ってもいませんでしたからね。(笑) そういった意味では先ほども言った通り、「もっと気楽に出していこう」という形でリリースしていくのも、結果的には良かったのかなと思いました。

■ちなみに最近ericaさんが世界について考えさせられたニュースやエピソードなんかはありますか?

erica そこまで壮大なものではないんですけど、去年ある学校の学園祭に呼んでいただいたんです。その時に海外から留学生で来られている学生さんが、実行委員会で私のアテンドをしてくれたんです。その学園祭でライブをやらせてもらって、「最後にみなさんで記念写真を撮りましょう」という時に、その子がたどたどしい日本語で、「私が初めて聴いた日本の歌がericaさんの曲で、今回ericaさんが学園際に来ると聞いて、なにがなんでも実行委員会になりたかったんです」と話してくれて、それにすごく感動してしまって。しかも、まだ日本に留学に来る前からずっと私の曲を聴いていてくれたみたいで。すごく嬉しかったので、その子が好きだと言っていた曲をその場でアカペラで歌ってあげたら、その子もすごく感動して泣きながら聴いてくれていて。その子はYouTubeで私の曲を知ってくれて、それからずっと聴いてくれていたらしいんですけど、私は今まで日本から全然出たこともなくて、プライベートでも海外旅行にあまり行ったことがないし、外の世界のことを全然知らないなぁと気がついたんです。こうやって国も言葉も関係なく私の曲を聴いてくれている人がいるんだなぁと思ったし、もっともっといろいろな国の人にも、私の曲を知ってもらいたいなと思ったんです。それで、今回の“推ししか勝たん”のMVのサビには、5ヶ国語でリリックを入れてみたんですよ。字幕ツールとかじゃなくて、ちゃんとした形で歌詞が伝わったらいいなと思って。だからといって、まだこれからそれに対してどんなリアクションが来るのかはわからないんですけど、世界中のたくさんの人たちに聴いてもらえたらいいなと思います。

■すごくいい話ですね。ericaさんは今、世界に目を向けている感じなんですね。

erica 今まであまりそういう機会がなかったし、目を向けてこなかったので、今はそうやっていろいろな国の人たちにも私の曲を知ってもらって、聴いてもらうのが夢の一つですね。

■今回は3ヶ月連続配信リリースすることになって、最終的にこの3曲になった決め手はなんだったんですか?

erica チームのみんなでどの曲にしようかと相談した時に、「3曲のうち1曲は今までのericaではやったことないような世界観の曲にしてみたらどうだろう?」という話にもなって、まずはアップテンポな曲と、ちょっと遊び心で作った曲、最後はまさにericaワールドといった感じの3曲にしようとのことで、今回は選曲しました。

■それでは1曲ずつお話を聞ければと思いますが、まずは10月にリリースされた“夢に向かって頑張ってる君へ”ですが、こちらは「第3回全日本学生フルコンタクト空手道選手権大会」及び、「文部科学大臣杯 第18回JKJO全日本ジュニア空手道選手権大会」の応援歌になっているそうですが、この曲はその応援歌として描き下ろした曲なんですか?

erica この曲は、実はコロナ禍にみなさんからいただいた手紙に対して、お返事返しで曲を作っていたんですけど、その時に作った曲のうちの1曲だったんです。だから、その時はワンコーラスだけだったので、30秒くらいの短い曲だったんですけど、どこかのタイミングでちゃんとした1曲に仕上げたいなと思っていたんです。そんな時に今回の空手道選手権のタイアップのお話をいただいたので、この曲がいいなと思ったんですけど、その時に自分が思って書いた歌詞と、今の自分が思う歌詞がちょっと違っていたので、ブラッシュアップして、アップデートしてみるのも面白いなと思ったんです。去年リリースした“ガンバレ!〜夢に向かって〜”という曲があって、その曲は過去の自分に励まされている曲だったんですけど、今度は「私が誰かを励ましたい、誰かを支えてあげたい、みんなの背中を押してあげたい」と思ったんです。来年は私の歌手活動20周年なんですけど、これまでずっとみなさんに支えてもらってばかりだったので、それもふまえて、今度は私がみんなを励ませるような曲を書きたいと思って、この曲にしました。今までも応援ソングはあったんですけど、自分のために歌っている曲が多かったんです。さっき言った“ガンバレ!〜”もそうなんですけど、今の自分や未来の自分に向かって「ガンバレ!」と言っている、自分への応援ソングが多くて、誰かに向けた応援ソングは今までなかったなと思って。

■実は僕もこの“夢に向かって頑張ってる君へ”を聴いた時に、以前リリースした“ガンバレ!〜夢に向かって〜”のアンサーソングというか、そんな位置づけの曲にしたかったのかな?と思っていたんですよ。

erica アンサーソングのつもりで書いたわけではなかったんですけど、今そう言われてみて、確かにそうだなと思いました。(笑) でも来年で私は歌手活動20周年を迎えるんですけど、それが私の中でも大きな節目になるし、二十歳の時から20年間歌手をやってきて、来年40歳になるので、すごく大きなターニングポイントだと思ったし、自分の中の心境の変化も大きかったんです。最近は私の周りのスタッフもどんどん年下が多くなってきたし、20代の後輩たちも増えてきたので、私が20代だった時に「こういう先輩がいたらいいな」と思っていたような先輩でいたいなと思うんです。そういうのって、年を重ねていかないとなかなかわからないものですよね。(笑)

■ericaさんが20代の時には「こんな先輩になりたいな」と思うような、憧れの先輩はいなかったんですか?

erica 私が20代の時には、あんまりそういう機会がなかったし、同世代の子たちと一緒にいることが多かったかもしれないです。でもそういうことを思うようになったというのは、すごい変化だなと思いますし、今までは等身大の自分に寄り添うような曲が多かったんですけど、今度は私がみんなを励ましたいし、「私が先頭を切るから、みんなもついて来てね」というような気持ちもあります。

■“夢に向かって頑張ってる君へ”は、すごくど直球でストレートな応援歌ですが、歌詞や曲でなにか意識した点や、イメージしたことなどはありますか?

erica 私は一貫していて「ど真ん中ストレートしか投げない」し、おしゃれな言葉は使わないんです。でもそれが一番難しいと思っていて。私が目指しているのは、音で曲を表現できる人になりたくて、究極なことを言えば「あ」と「い」と「う」だけでも、その曲の意味が伝わるというか、そういった表現ができるようになりたいんです。美空ひばりさんとか、さだまさしさん、天童よしみさん、小田和正さん、吉田美和さん、徳永英明さんみたいな。そんなレジェンドの人たちの歌は、「あ」と「い」と「う」だけでも成立する歌い方だと思うんです。もう息づかいさえも音になっているというか。私が小さい頃に“We are the world”を聴いた時、英語がわからなかったから歌詞の意味まではわからなかったんですけど、すごく感動したのと同じで、究極は歌詞がなんであれ、その思いが伝えられるような歌手になるのが夢なんです。それにカバー曲とかもそうなんですけど、同じ曲でも歌う人が違うだけで、違うものになるというのは、やっぱりその人の生き様とか、その人の魂とか、そういったものが表れると思うんです。そういう歌が歌えるような人になりたいと思った時に、できるだけシンプルな歌詞で、3歳の子供でもわかるような歌詞がいいなと思いました。

■確かに今どきの音楽は、譜割りにしても、歌詞にしても、難解だったり、言い回しが難しくなっている傾向があって、そういう曲が流行っている中で、逆に若い人たちの間では昭和歌謡とか、シティポップとかも聴かれるようになってきていますよね。1周回ってシンプルな歌詞や曲がまた支持されているので、むしろericaさんがやっているのが最先端なのかもしれないですよね?(笑)

erica そんなに褒めてもらって嬉しいです。(笑) 今は多様性の時代だから、なんでもありになっちゃっているので、逆にシンプルでわかりやすいのが新鮮なのかもしれないですよね。確かに最近、私が昔リリースした“あなたへ贈る歌”がすごく聴かれていて、再生数も伸びているんですよ。(笑) 今はいい曲だったら昔の歌であろうと、聴きたい人が聴いてくれるから、あんまり時代や流行りに寄せないで作ってきたのも良かったのかなと思いましたね。

■続いては、11月にリリースした“推ししか勝たん”ですが、なぜ推し活の曲を書こうと思ったんですか?ericaさんは誰か推しとかいるんですか?

erica 実は私、「クレヨンしんちゃん」が大好きで、グッズを見つけたら買っちゃうので、結構数が多くて大変なんですよ。(笑) 最近はすぐになんでも買わないで、ちゃんと選ぶようにはしているんですけどね。でもなんで推し活の曲を作ったのか、全然覚えていないんですよね。(笑) さっきも言ったんですけど、遊びで作った気晴らしソングの中にこの曲もあったんですけど、きっとTikTokとかを見ていた時に、推し活をしている人の動画とかがあったんでしょうね。それで「私が推し活の歌を作ったらこんな感じかな」みたいな感じで作ったんだと思います。(笑)

■ちなみにこの曲で初めてラップに挑戦したとのことですが、ラップを入れようと思ったのはなぜだったんですか?

erica それも本当にただただノリで歌ったんだと思うんですけど、デモを録音していたレコーダーにラップも入っていたんですよ。(笑)