降幡愛 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

80年代の夏曲をカバー!恋が愛に変わっていく全6曲のロマンスを解説。

声優としての活躍のみならず、本格80sシティポップを体現するアーティストとしても国内外から熱視線を浴びている降幡愛が、初のカバー作となるミニアルバム『Memories of Romance in Summer』を完成させた。これまで同様に本間昭光がプロデュースした本作には、シティポップの大定番である山下達郎の“RIDE ON TIME”、かねてより降幡が好きを公言してきた中原めいこの“君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。”など、いずれも80年代の夏曲である6曲を収録。すべてカバー曲でありながら、女性側と男性側の心情が交互に描かれ、恋が愛に変わっていくひとつのストーリーとしても楽しめる作品となっている。これまでは全楽曲で作詞も手掛けてきた降幡に、新たな挑戦となった本作の聴きどころを語ってもらった。

■なぜカバーアルバムを作ることになったんですか?

降幡 以前からライブではカバー曲を披露していて、すごく感触がよかったんです。だから「いつかカバー曲をまとめた作品を出したいね」という話はしていて、この夏のタイミングがいいんじゃないかということになりました。

■今回の収録曲は、今までライブでやっていた曲なんですか?

降幡 ライブでやったのは“You’re My Only Shinin’ Star”だけで、あとは今まで披露していない楽曲になります。

■ライブで評判がよかったから新しいカバーを作ってみようという流れだったんですね。選曲はどうやって進めたんですか?

降幡 夏っていうテーマは先に決まっていて、それをもとにスタッフさんと候補を出し合いました。“Lucky Chanceをもう一度”は、スタッフさんから推してもらって入れた楽曲ですね。(原曲を歌っている)C-C-Bさんのことは知っていましたけど、この曲のことは知らなくて。聴いてみて「めちゃカッコいい!」となりました。山下達郎さんの“RIDE ON TIME”も、スタッフさんから「絶対入れた方がいいよ」と言われた曲なんですけど、誰もが知る名曲だし、いろんな方がカバーしているじゃないですか。

■プレッシャーがありますよね。

降幡 そうなんですよ。だから不安もあったんですけど、今回も本間さんが全部編曲してくださって、それに背中を押してもらったというか。今までは私が歌詞を提出して、本間さんに曲をつけてもらうスタイルだったのが、今回は自分たちで楽曲をセレクトして、本間さんにアレンジしてもらう流れになったんですけど、今までやってきたものを踏襲してくださったんです。

■本間さんとはどんなことを話したんですか?

降幡 原曲の良さを崩さないようにしつつ、いかに降幡愛プロジェクトのテイストを入れるか、そこを本間さんも面白がっていて。私としては、今までは「こういうサウンドでお願いします」とかオーダーしていたんですけど、今回は私が何か言うのは違うんじゃないかと思って、あんまり言わないようにしたんです。“You’re My Only Shinin’ Star”だけはライブで歌うことが決まっていたので、「ある程度大人っぽく」とか、「ライブ映えするような感じで」とか、抽象的なことだけオーダーしました。

■実際どう作っていたのか、1曲ずつお聞きしていけたらと思うんですけど、まずは“夏のミラージュ”からお願いします。

降幡 “夏のミラージュ”は『きまぐれオレンジ☆ロード』(1987年放送開始のアニメ)の主題歌で、小学校4〜5年生の時に再放送を見ていたんです。その頃からずっと好きだったし、夏の曲だったので、私がゴリ押ししました。(笑) 恋のはじまりを歌っている曲なので、曲順も1曲目にさせていただきました。

■言われないとアニソンだとわからない曲ですよね。「金色の夏の蜃気楼(ミラージュ)」とか、言葉使いもおしゃれですし。

降幡 素敵ですよね。普通におしゃれな往年の曲という感じがして。“夏のミラージュ”は、今回の6曲の中でいちばん低いところで歌っているんですけど、スタッフさんから「声質に合っているね」と言われて、自分でもハマった感じがしました。特にAメロ・Bメロは大人の夏の恋愛みたいな感じを出せたと思うので、そこに注目して聴いてもらえたら嬉しいです。

■2曲目の“君は1000%”は、男性ボーカルの1986オメガトライブの曲ですけど、降幡さんがリストアップした曲なんですか?

降幡 そうですね。夏と言えばオメガトライブさんだろうと思って、その中でもいちばんの定番曲かなと思って選びました。全部私が好きで歌っている曲ですけど、この曲は特に「あー、好きだったんだね」とスタッフのみなさんからも言われたというか。(笑) 男性の曲を歌うことによって、また印象も変わると思うので、そういうところに注目していただきつつ、「君は1000%」という爽快なサビがみなさんの脳裏に焼き付いたらいいなと。

■とっても印象的なサビですよね。

降幡 もともと小さい頃にCMか何かで聴いた記憶があって、当時から印象に残っていたんです。それで年月が経って調べていくうちにこの曲に辿り着いて、どんどんハマっていって。それくらいインパクトがあるフレーズですね。私を通してこの曲を好きになってもらえたら嬉しいです。

■3曲目の“君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。”は、もうタイトルからしてインパクトのある曲です。

降幡 ずっと好きだと言わせていただいていた方なので、ぜひ1曲歌わせていただきたくて。中原めいこさんといえばこの曲だろうと。後半はずっと「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」と歌っていて、本当にパンチがある1曲ですよね。Aメロとかは大人な感じですけど、サビになって弾けていく感じが、歌っていて気持ちよかったです。

■降幡さんは以前取材させていただいた際にも「かわいいよりも、面白いと言われたい」と言っていたので、そういうキャラにも合っているのかなと思いました。

降幡 あー、確かに。(笑) でも、こういうノリノリなダンスサウンドは、自分のソロではそんなに歌ってこなかったんです。だから、実際に歌ってみたら「あ、すごいアップテンポ!」と感じました。あとイントロってやっぱり大事じゃないですか。レコーディングが終わってから「もうちょっと南国感を入れたいです」なんて話をしていたら、本間さんが猿や鳥などの鳴き声を散りばめてくださって。それで余計に濃さが出たかなと思います。

■あれは降幡さんのリクエストだったんですね!この曲はMVも作られるそうですけど?

降幡 はい。ジャケットを描いていただいたNOSTALOOKさんが、アニメーションで仕上げてくださる予定なんです。今絶賛制作中(4月16日に公開)で、私もラフしか見れていないんですけど、めちゃくちゃ楽しみにしていて。

■降幡さんは出演しないんですか?

降幡 ノー出演です。(笑)  でも歌っている女の子は、きっとNOSTALOOKさんが「私をイメージして描いてくれたのかなぁ?」と思っていたり……キウイ・パパイア・マンゴーがかわいい感じで出てきて、「こうきたかー!」ってなると思います。

■キウイ・パパイア・マンゴーはジャケットにも入っていますよね。

降幡 そうなんです。ジャケットには至るところに収録曲の要素が入っているので、いろいろ発見してもらえたら嬉しいです。

■答え合わせするのが楽しみです。収録曲の話に戻りますが、4曲目の“Lucky Chanceをもう一度”はスタッフさんから推された曲と言っていましたよね?

降幡 そのスタッフさんが本当にC-C-Bさんを好きで、その影響で私のSpotifyやApple Musicのプレイリストにも、C-C-Bさんの曲がたくさん入っているんです。松本隆先生の歌詞も、すごく引き込まれるストーリーで、「どうすりゃいいのさ」とか、「野暮なPoliceman」とか、面白いフレーズがたくさんあるんですよ。

■車を停めて女の子を口説いていたら警察に止められたっていう。(笑) ちょっとコミカルな描写が印象的でした。

降幡 当時の音楽番組の映像も見たんですけど、パトカーが出てきて、パトカーのドアを開けて歌うみたいな演出があって。「あいつはNo No No」とか合いの手みたいなコーラスが入るんですけど、それがキャラソンっぽさを出しているというか。そこは女性スタッフさんと一緒にブースに入って、ガヤ的な感じで録りました。女性4人で歌ったので「SPEEDみたいですね」と言われましたけど。(笑)

■完全に男性目線の歌ですけど、感情移入的な部分で意識したことはありますか?

降幡 とにかく一生懸命女の人を口説きたい歌詞じゃないですか。私の中の80年代の男性は、ギラギラ感というか、根拠のない自信というか、強気な感じのイメージがあったので、そういうマインドで歌いました。私が作詞をする時は悲しい歌ばかりなので、こういうカルチャーもあったんだなと思って、新鮮で面白かったです。

■5曲目の“You’re My Only Shinin’ Star”はライブでも歌った曲ですけど、降幡さんがカバーしたいと言ったんですか?

降幡 スタッフさんから「ミポリン(原曲を歌った中山美穂)はいいぞぉ〜」と教えていただいたんですけど、もともと(作詞・作曲した)角松敏生さんがセルフカバーしたバージョンは知っていて、ずっと好きな曲だったんです。「月灯り二人照らして」とか、角松さんらしい澄み渡ったフレーズが素敵で、中山美穂さんが歌う良さもあるし、角松さんが歌うことでも違う良さがあって、私のカバーでは最後の「I Love You」のところを「Because I Love You」にさせてもらったんです。「付け加えていいですか?」と許可をもらって。

■そうだったんですね!

降幡 もちろんリスペクトあってのお願いなんですけど、快く許可していただけて。レコーディングはライブの後だったんですけど、ライブと違ってバンドメンバーがいなかったので、ちょっと寂しい気持ちで歌ったというか。そういうところも楽曲にマッチしたような気がします。