今作のアルバムタイトルには、軽やかに飛び立っていきたいという願いが込められている。
今年5月30日に還暦を迎える古市コータローが、通算6枚目となるオリジナルアルバム『Dance Dance Dance』をリリース。今作には浅田信一をサウンドプロデューサーに迎え制作した全10曲を収録。自身の作詞・作曲に加え、YO-KING(真心ブラザーズ)や西寺郷太(NONA REEVES)の作詞曲や、江沼郁弥の提供曲など、バラエティに富んだ楽曲を収録。レコーディングには浅田信一に加え、田村明浩(Spitz)、高間有一、オヤイヅカナル、古市健太が参加。ジャンル問わず様々なアーティストからリスペクトを受ける古市コータローならではの布陣で制作された。THE COLLECTORSのギタリストのみならず、ソロアーティストとしての活動や役者など、数々のキャリアを積んだ古市コータローのソロ活動の集大成となる作品について、いろいろと話を訊いた。
■現在はTHE COLLECTORSのライブツアーの真っ最中で、先日は書籍『Heroes In My Life』
も出版され、今度はソロアルバムのリリースと、まさに多忙を極めている状況だと思いますが、最近の調子はいかがですか?
古市 まぁ、おっしゃっていただいた通りですごく忙しいんですけど、午前中から仕事が入っていることは滅多にないので、午前中はジムに行ったりもして、割と自分のルーティンの生活が出来ていると思います。
■5月には還暦を迎えられるとのことですが、目前の今、この60年間を振り返ってみていかがですか?
古市 この間、インスタグラムのパラパラ漫画で「人生はあっという間」というような漫画を見て、生まれてからおじいちゃんになるまでを描いた作品だったんですけど、全くその通りだなと思いましたね。僕はもうすぐ60歳ですけど、一つ一つを思い出せばいろいろなことがありましたけど、でもやっぱり一瞬というかあっという間だったという感想ですね。
■ちなみに赤いちゃんちゃんこを着る予定は……?
古市 全くないですね。(笑)
■むしろ赤いライダースを着るとかはどうですか?
古市 いや、それもないかな。(笑)
■今作はソロアルバムとしては6枚目となりますが、ご自身にとってどんなアルバムになりましたか?
古市 今回は特にコンセプトがあったわけではなかったので、制作から考えると2023年〜2024年の自分がテーマというか、現在進行形の自分を詰め込んだ感じかな。それが表現できればという想いで作っていったので、僕も曲が出来上がるまではどんなものが出来るのかすごく楽しみでしたね。それで出来上がったものを聴いて「なるほど。今はこういう感じなんだな」というのを僕自身でも感じられたので。
■では今作は初めにコンセプトを決めてというわけではなく、録り溜めていった曲が集まってきたものをアルバムにするといった感じだったんですか?
古市 いや、今回は録り溜めるというのもしていなくて。アルバム作ろうって決めてから曲も新しく作って行った感じなんです。だからこそより今の感じというか、そういうのが詰まったアルバムになりました。
■そうだったんですね。じゃあ、この『Dance Dance Dance』というアルバムタイトルも、全部の曲が出来上がってから決めた感じですか?
古市 そうですね。初めは『ROCK ‘N’ ROLL IS MY LIFE』でもいいかなと思ったんだけど、ちょっと宣言し過ぎるなと思ってさ。(笑) もう60歳だし、もっと軽やかな方がいいかなと思ってこのタイトルに決めました。
■今作はサウンドプロデューサーとして浅田信一さんをはじめ、YO-KINGさんや西寺郷太さん、江沼郁弥さんなどが、作詞や作曲で参加されていますが、どのようなオーダーでオファーした感じですか?
古市 今回は特になんのオーダーもしていないんですよ。もうお任せで書いてもらいました。
■歌詞をお願いする場合は、曲が出来てからそれをお渡しして書いてもらう感じですか?
古市 そうですね。曲が出来てからですね。郷太に関してはほぼ完成形に近いデモを録ってからそれを渡して、YO-KINGには弾き語りのみのデモを渡しましたね。
■ではアルバムのそれぞれの曲についてもお話をお聞きできればと思います。まずはアルバムタイトルにもなっている“Dance Dance Dance”ですが、すごく軽やかで多幸感のある曲でしたが、この曲の聴きどころを教えてください。
古市 この曲は浅田信一くんが書いてくれた曲なんだけど、1曲目になったということもあるけど、このアルバムのというか今の自分のテーマみたいな感じになりました。「今再びこの歳で未来に向けて軽やかに行こう」みたいなね。
■「靴が脱げても踊り続けろ」という歌詞もあって、すごく強い意思を感じる曲ですよね。
古市 そうですね。まさにその感じです。
■2曲目の“Tonight”はご自身で作詞・作曲された曲ですが、この曲は夜がテーマですか?夢がテーマですか?
古市 この曲の歌詞は浅田くんと一緒に共作で書いたんですよ。共作っていうと補作詞みたいなイメージが大きいですけど、これは本当に浅田くんと一緒に考えながら書いたんです。
■それは顔を合わせて一緒に「どういう歌詞にしよう?」って相談しながら?
古市 そうです。だから本当に面白かったですよ。お互いに歌詞を出し合って、「そのフレーズいいね!」ってね。(笑)
■タイトルの“Tonight”というのは?
古市 これも60歳だからっていうこじつけになっちゃうんだけど、「叶わなかった夢をもう一度追いかけてみよう」みたいなテーマですかね。あえて言うなら「いくつになっても夢は持てるんだし」ってことを言いたかったんですよ。
■3曲目の“Only Lonely Road”は作曲が古市さんで、作詞は浅田さんですが、こちらの曲はいかがですか?
古市 この曲は今回のアルバムでは一番最後に作った曲なんですけど、ワンコーラスをiPhoneで録って、浅田くんに送ったらすごく気に入ってくれて、「歌詞を書きたいです」と言ってくれたのでお願いしたんです。
■あがってきた浅田さんの歌詞を見てみての感想は?
古市 「流石です!」の一言ですね。(笑)
■では4曲目の“OCEAN WAVES”ですが、こちらも作曲は古市さんで、作詞は西寺郷太さんですね。この曲はすごくポップですけど、歌詞の内容はすごく切ない感じですよね?
古市 そうなんですよ。それが郷太のすごいところで、それをサラリといけるというか、言葉のチョイスもすごいなと思いましたね。
■この曲を歌ってみていかがでしたか?
古市 この曲はすごく難しいんですよ。気持ちを込めすぎると暗くなっちゃうし。でも歌詞のハマりがすごく良くて気に入っています。
■続いて5曲目の“POOL”はYO-KINGさんの作詞ですが、ホテルのプールがテーマとはまた独特の目線ですよね。歌詞をいただいた時の感想はいかがでしたか?
古市 この曲は最初はもっとバラードっぽい曲だったんだけど、あがってきた歌詞を見たら、結構攻めてる系だったので、アレンジも変更して歌詞に寄せたというか、歌詞の世界観に合わせてアレンジし直しました。
■6曲目の“ROCK ‘N’ ROLL IS MY LIFE”は、なんかすごく懐かしくてエモい曲ですよね。ついつい口ずさみたくなります。
古市 さっきも言いましたが、最初はこれをアルバムタイトルにしようと思っていたくらいだったんです。あんまり声を大にして言いたくないけど「結局自分の人生ってロックンロールだったな」って思うんですよ、現時点までは。その事を改めて再確認させられたというか、もうこの歳になって違う人生を目指したくもないし、このままロックンロールで終われればいいなと思うしね。歌っていても染みますよね。(笑) 若い頃にこの曲を歌うのとでは絶対に気持ちが違うと思いますね。
■確かにそうですよね。7曲目の“冬にわかれて”は江沼さんが作詞・作曲の曲ですが、さっきもおっしゃたようにお任せで作ってもらったとの事ですが、あがってきたものを聴いてみてどうでしたか?
古市 郁弥はきっと僕のことをいろいろ調べたんだろうなって思いましたよ。(笑) でもすごく郁弥節で良かったです。なんか人が書いてくれた曲って自分では絶対に書かない曲調なので、僕はそれが好きなんですよ。歌ってみても楽しかったです。
■人に書いてもらった曲を歌う時って、ご自身で作った曲を歌う時とまた違った感じなんですか?
古市 そうですね。やっぱり難しいです。この曲も出だしのメロディーとか、僕だったら絶対に作れないフレーズだったから、いきなり出だしから「うぉう……!」って感じでしたね。(笑) でもその方が新鮮だし、そういう部分があった方がいいんだろうけどね。自分の歌ばっかりだと、自然と歌いやすい方にばっかりいっちゃうから、逆に刺激になりますよ。
■8曲目の“そばにあるはず”は、またご自身での作詞・作曲ですが、なにげない歌詞がすごくいい曲ですね。曲のポップさもすごく好きでした。
古市 この曲もこの歳になっての感想ですね。やっぱり気持ちはあの頃の子供のままなんですよね。でも税金は払わないといけないっていうね。(笑) それで、別に宝くじが当たったわけではないけど、「昨日の夜に食べたラーメンが美味しかったな」っていうだけで、すごく幸せだなっていう。そんなもんだよね、結局はそれがいいんじゃない?っていう曲ですね。そんなことで十分幸せだよねっていう曲です。