GRANDSON『I LOVE YOU, I’M TRYING TOUR 2024』ライブレポート@代官山UNIT

発汗作用を促す、生粋のアジテーターが初来日で大暴れ!

カナダはトロント発のオルタナティブシンガー/ソングライター、GRANDSON(グランドサン)。彼の一夜限りとなる初来日公演が代官山UNITで行われた。今回サポートアクトを務めたのは今や勢いに乗っているPALEDUSKだ。しかし、今日はKaito(Vo)、Tsubasa(Gt)、BOB(Dr)のメンバー3人しかいない。どうやらDAIDAI(Gt)はアメリカに行っているらしく、初めて3人編成で挑むという。序盤からラウドロックを軸にヒップホップ、エレクトロ、ダンスミュージックなど、多彩な要素を混ぜ、凄まじい熱量でフロアを掻き回していく。「GRANSONの曲を聴いて、これにシャウト入れたら面白いんじゃない?って、DAIDAIが持って来た」とKaitoが説明した後に“SLAY!!”を披露。サビで観客は手を上げ、最初は様子見だった人も大騒ぎ。また、2月21日リリースの6th EP『PALEHELL』から新曲もプレイされ、コロコロと表情を変える起伏激しい展開でフロアを翻弄。持ち時間40分、通常編成のライブではなかったものの、新世代ミクスチャーの破壊力をこれでもかと見せつけてくれた。

そして、20時10分にQUEENの“Bohemian Rhapsody”が流れた後、小さな日の丸の旗を振り、「コンニチハ!」とGRANDSONは挨拶。ショウは昨年5月に出た最新2ndアルバム『I Love You,I’m Trying』収録の“Drones”でスタート。ギターとドラムを従えたバンドスタイルで、そこに坊主頭(!)のGRANDSONがステージに登場。パーマヘアを想像していたので少し面食らったが、1曲目から観客をジャンプさせたりと、盛り上げ方がとくかく上手い。シンガーというより、バンドマンのそれに近く、曲が進むにつれてアジテーターぶりに拍車がかかっていく。“Something To Hide”に入ると、ロック衝動を惜しみなく叩きつけ、“Oh No!!!”では観客とコール&レスポンスで距離を急速に縮めていった。

EP『a modern tragedy vol.1』収録の“6:00”に移ると、グランジばりのヘヴィなギターに加え、重厚なドラムも相まり、骨太なバンドサウンドを強烈にアピール。そこにGRANDSONはシャウトをかまし、常に肉弾戦を仕掛けてくる前のめりの迫力に圧倒されるばかり。また、EMINEMを彷彿とさせるシリアルかつコミカルなラップで迫る“WWⅢ”における表現力も素晴らしい限りだ。その後も彼は曲中に観客を座らせてジャンプさせたり、あるいはフロアに降りて動き回ったりと、片時もジッとしていない。パーティー感溢れる“Dirty”ではたくさんの人が楽しそうに踊り狂う。

ショウも終盤に差し掛かり、バラード調の“Healther”ではフロアど真ん中に攻め込み、観客と同じ目線でエモーショナルに歌い上げる。そんなGRANDSONの姿をケータイで照らす人たちが増え、感動的な景色が広がった。それから“We Did It!!!”をやり終えた後、フロアにペットボトルを数本配ると、本編ラストに“Blood//Water”をプレイ。GRANDSONがペットボトルの水を撒くと、観客もそれをマネする形となり、ちょっとしたウォーターパーティーが繰り広げられた。

アンコールに応えると、アコギ弾き語りで“Bury Me Face Down”を披露。伸びやかなハイトーンボイスを含めて、ソウルフルな歌声を存分に発揮。それからバンド編成に戻ると、再びロックモード全開に切り替わり、“Stigma”ではモッシュピットも勃発。最後はLINKIN PARKのマイク・シノダと共演した過去もある“Riptide”をプレイ。ノリのいい曲調で会場を沸かせ、約1時間半に及ぶライブは終了。

GRANDSONの音源はどこか内省的なムードがあり、メロディアスな曲調は魅力の一つになっている。だが、それは一つの側面に過ぎなかった。ライブはいい意味で音源を裏切り、ひらすら享楽と共感を観客と密に分かち合う内容であった。ヒップホップ、R&B、ジャズの影響を受けながら、ライブ自体はロックやグランジの鬱屈したエモーションを放出するベクトルへと舵を切っている。本人の中でも音源とライブを意識的に分け、その両面を味わってもらうことに喜びを見出しているのではないか。いや、もっと純粋に根っからのロック少年ぶりがライブでは爆発するのだろう。いずれにせよ、GRANDSONは従来のシンガーソングライターの枠に収まらない生粋のロックアーティストであることを証明した。バンド好きをも虜にするGRANDSONの剛腕パフォーマンスは、ここ日本でもっと人気が広がってもおかしくない。今回のライブを目撃した人たちによる口コミが広がり、再来日の機運が盛り上がることを願っている。

Text:荒金良介
Photo:Masahiro Yamada

『I LOVE YOU, I’M TRYING TOUR 2024』@代官山UNIT セットリスト
01. DRONES 
02. SOMETHING TO HIDE
03. OH NO!
04. 6:00
05. DARKSIDE
06. OVERDOSE
07. WWIII
08. INTERLUDE
09. APOLOGIZE
10. STICK UP
11. BEST FRIENDS
12. DIRTY
13. HEATHER
14. DESPICABLE
15. WE DID IT
16. BLOOD//WATER
17. BURY ME FACE DOWN
18. STIGMA
19. RIPTIDE