LACCO TOWER 20周年特別公演『狂想演奏史~至上のハタチ~』ライブレポート@恵比寿LIQUIDROOM 7月18日(月・祝)

LACCO TOWER 20周年特別公演『狂想演奏史~至上のハタチ~』

第一部を「至上のインディーズ史」、第二部を「至上のメジャー史」と名付け、LACCO TOWERは20年間の歩みをエモく伝えた。

20年…。少し前なら成人式を迎える年齢だった。無垢な心で生まれ、家庭という環境の中で育ちながら、一人の人間として形成される上で、20年という年月はとても実り多い期間だ。大抵の人は家族に守られ、少しずつ人格を形成し大人になっていく。でも、一人一人がある程度の人格を形成した大人になってから出会い、そこから一緒に新しい人生を作り上げていくのは、口で言うほど簡単ではない。もちろん深い絆で結ばれてもいくだろう。でも、その絆を強く結ぶため、何度もぶつかりあうなど軋轢を繰り返し、そこで紐がほどけてしまうこともある。20年とは、その言葉を体現するに十分な歳月だ。

LACCO TOWERが誕生したのが、2002年7月のことだった。彼らはメジャーデビューをするまでにも3つのインディーズレーベルと手を繋ぎ、作品を重ねてきた。現在のメジャーレーベルとなる日本コロムビアのTRIADレーベルから1stアルバム『非幸福論』を発売したのが、2015年6月。つまり、メジャーへ足を踏み入れるまでにLACCO TOWERは13年の歳月を重ねてきた。13年の歳月を…というのは、あまり適切ではないか。LACCO TOWERとして長く音楽人生を歩んでいく中で、ちょうど7年前に彼らは自分たちを長く輝かせていけるメジャーという環境に出会い、そこで知り合った信頼の於ける仲間たちと手を組んだと言った方が正しいだろう。

結成から丸20年。7月18日、LACCO TOWERは恵比寿LIQUIDROOMを舞台に『狂想演奏史~至上のハタチ~』と題したライブを行った。この日は二部構成で開催され、第一部を「至上のインディーズ史」、第二部を「至上のメジャー史」と名付け、インディーズ時代とメジャー時代の楽曲を明確に分けた形で、LACCO TOWERの20年間の歩みを伝えた。

第一部「至上のインディーズ史」

フロアを埋めつくした観客たちによる熱いクラップを受け、ライブは“柘榴”から始まった。松川ケイスケ(Vo)は、「どこかの誰かみたいに強くはなれなくて」と、胸の奥から込み上げる想いのままに歌っていた。彼の心の叫びを、演奏陣が熱く疾走する音で力強く押していく。曲が進むにつれ、松川の歌声が熱を帯びていく。サビを歌っている時にフロア中から一斉にクラップが起きた。胸が熱くなった。

最初からライブのクライマックスの様相を呈していく場内。その勢いをさらに増すように、LACCO TOWERは“奇妙奇天烈摩訶不思議”を突きつけた。松川の「まわれ!まわれ!まわれ!」や「騒げ!騒げ!騒げ!」と煽る声に刺激を受け、フロア中でも高く拳を突き上げ、大勢の人たちが熱を上げ続ける。高鳴るドラムビートを合図に、楽曲は“檸檬”へ。さらに速度と激しさを増す演奏の上で、言葉を噛みしめるよう感傷的に歌う松川の姿も印象深かった。感情的と感傷的、二つの要素が交わりながら熱を上げていく。間奏で見せた細川大介(Gt)のギターソロもエモかった。

続く“斜陽”でも、松川は胸の内から沸き立つ想いを、様々な展開を描きだすハードな音楽に乗せて歌っていた。心を揺さぶる、とても感情的でドラマチックな楽曲だ。演奏に触れながら気持ちが高揚していく。哀愁を覚える楽曲の中に感じたエモーショナルな匂い。続いて、心のホックを外すようにミッドメロウな演奏に乗せ“夕化粧”を歌った。心が切なさへ浸っていく感覚が不思議と心地よい。

温かい音色が身体を優しく包み込む“香”でも、LACCO TOWERは切なさに浸る感覚を届けてくれた。心が幼いがゆえの、もどかしく、悲しい想い。寂しさを募らせるように歌い奏でる様へ触れながら、その痛みを心の両手で抱きしめていた。歌が進むにつれ、心に光が差し込む感覚を覚えていたのは、切なすぎるがゆえの錯覚か?!MCでは、LACCO TOWERとして20才を迎えた喜びを語っていた。その嬉しさを体現するように“鼓動”を演奏。熱を抱いて駆ける演奏に合わせ、フロア中から熱いクラップが鳴り響く。気持ちを解き放つように歌い奏でる姿が、とてもエモーショナルだ。曲が進むにつれ、エモさが増してゆく。そして…彼らはこの会場にも夏を呼び込むように“藍染”を演奏。LACCO TOWERは、満員の観客たちを爽やかな夏景色の中へ連れ出した。目の前に見えていたのは、藍染した浴衣を着た愛しい人の姿。淡い恋心へ熱い刺激を注ぎ込むように細川と塩﨑啓示(Ba)が飛び跳ねながら演奏する様も、嬉しい刺激的な姿だった。

力強いサビ歌から始まった“後夜”では、胸を騒がせるエモい楽曲を通し、メンバーと観客たちが共に気持ちを熱くしながら、その先にある幸せをつかもうと心の手を伸ばし続けていた。“林檎”のイントロが流れだしたとたん、ここまで溜め込んでいた感情を、ここにいる人たちみんなが一斉に解き放った。誰もが無邪気な少年や少女に戻って、エモーショナルな楽曲に熱情したい気持ちを重ね合わせ、騒いでいた。そこには”楽しむ”ことを何よりもの喜びに感じる宴が広がっていた。

第二部「至上のメジャー史」

全身黒い衣装に着替えを終えたメンバーたちが、ふたたび舞台へ登場。重厚な音が鳴り響くと同時に、楽曲は“罪之罰”へ。メンバーたちは冒頭から気持ちの熱をどんどん高めながら、心地良い緊張感を覚える歌声や演奏を観客たちへ突きつけていた。とても情熱的だ。その姿に刺激を受け、観ている側の気持ちもアガりだす。

先に演奏の中に作りあげていたピリッとした緊張感を増幅するように、楽曲は“化物”へ。彼らは歌っていた、「化かし合いは続く」と。でも、互いにパッションとエナジーを高めあうこの場には、化かし合いどころか本気で高まった感情のぶつけあいが続いていた。松川の叫び声とノイズ音を撒き散らす細川のギターの音に触発されたのか、フロア中から熱いクラップが響き渡る。そして楽曲は“証明”へ。天高く突き上がる数多くの拳。サビに向かって熱を上げていく演奏。サビで高ぶった気持ちを頂点まで引き上げた時、そこにはメンバーと観客たちの高ぶる感情が一つになった大きな熱が生まれていた。高揚した気持ちが一つになる中で生まれた興奮。

その勢いを加速するようにLACCO TOWERは、ダークファンタジーな音世界を作り上げる“純情狂騒曲”を演奏。想いを紡ぐように歌う松川。抑揚した彼の歌声に寄り添いながらも、演奏はエモさを持って駆け続ける。視線や心は松川の歌う声や姿に惹かれながら。身体はずっと熱を求め続けていた。これまでの熱情した景色から表情を塗り替えるように、真一ジェット(Key)の奏でるピアノの音色が美しくも壮麗な世界を描きだす。とても美しい。でも、切ないバラードの“遥”だ。心に染み渡る演奏なのに、そこにエモさを感じさせるのも嬉しい。悲しみに暮れる想いを少しずつ振り落とすように松川は歌っていた。心濡れる想いへメンバーたちも演奏で寄り添っていく。フロア中の人たちも、“遥”に綴られた悲しみを振り切ろうとする主人公の気持ちへ心寄り添い、その想いに浸っていた。メンバーたちがもの悲しい音色を重ねながら切ない情景を描きだす。

続く“永遠”でも、強く想いを込めた言葉を紡ぐように歌う松川の声に演奏陣が寄り添うように、その想いを少しずつ膨らませるように音を奏でていた。乱れる心へ、細川の奏でる哀愁を帯びたギターの音色が重なり、さらにもの悲しさを増長していく。悲しみを覚えるのに、不思議と気持ちを寄り添い続けていたくなるバラードナンバーだ。いろんな人との巡り合いによって、今の自分たちがいることを告げたMC 。今も応援してくれるファンたちを含め、たくさんの人たちとの出会いへの感謝の想いを届けるように、そしてみんなで気持ちを一つに溶け合うことを求め、ライブは後半ブロックへと進んでいった。

「オーオオー!!」と歌いだすメンバーたち。声を出せない観客たちは、それに応えるべく高く手を掲げ、心の中で声を張り上げながら“雨後晴”を歌っていたことだろう。互いの求め会う感情が重なるたびに、気持ちを熱く突き動かす興奮を覚える。メンバーたちも、大勢の観客たちと一緒に「オーオオー!!」と声を張り上げながら高く手を伸ばしあう。そのたびに、お互いに伸ばした手をつかもうとさらに気持ちを熱くしていく。なんて嬉しく気持ちを掻き立てるエモーショナルな光景だろう。真一の奏でる美しいエレピの音色……その音が少しずつ楽曲の音色に変わりだす。重田雅俊(Dr)のドラムカウントを合図に、楽曲は一気に熱を放つように“非幸福論”へ。熱情した楽曲へ刺激を受け、フロア中から多くの拳が突き上がる。演奏が進むたびに気持ちが高ぶり、松川の歌声に心を揺さぶられる。

続いて“火花”が飛び出した。メンバーたちの歌声や演奏に合わせ、フロア中から突き上がる拳、拳、拳。このフロアが揺れるような錯覚を覚えるくらいに、身体を揺らさずにはいられない。一体化したこの熱狂が堪らない。曲中、細川がお立ち台に上がり踊る様を見せていたように、メンバーたちの理性のタガも外れだしていた。「みんなの人生の中に、俺らの音楽が少しでも花を添えていられたのなら良かったなと思います。20年前の俺に見せたいよ、この景色を。これもみんなのおかげです」心地好く駆けだした“薄紅”の演奏に合わせ、ふたたびフロア中から突き上がる拳。火花を撒き散らす熱狂というよりは、互いに沸き立つ嬉しい気持ちを重ねながら、大きな愛に満ちた熱を作りあげていく様がそこには広がっていた。このままずっと心を満たす熱を感じあっていたい。

ここで細川が語りだした。彼は4年前「局所性ジストニア」に罹り、そこから完治を目指して治療を続けてきた。だが、病気は悪くなるばかりで演奏にも支障をきたすようになってきた。本人はもうLACCO TOWERとしてどころか、ギタリストとして活動を続けるのは不可能と判断し、その想いをメンバーに告げた。でもメンバーは細川がいないLACCO TOWERはあり得ないと語り、彼が辞めることを良しとしなかった。その嬉しさに希望を覚えた細川。彼がLACCO TOWERのメンバーとして活動を続けていく上で下した一つの決断。それが、右手演奏のギタリストから左手演奏のギタリストにチェンジすることだった。(詳細は細川大介のブログhttps://lacco-to.bitfan.id/contents/menu/36659を参照)右手奏法のギタリストを卒業し、左手奏法にシフトした細川をふたたびメンバーに迎え入れたLACCO TOWERは、21年目に向けた新制LACCO TOWERとしての新たな始まりを告げようと、最後に“告白”を演奏した。「自分一人じゃいられない、みんなといるから進んでいける」その想いを、新たな決意を示した細川へ贈るようにもこの日は聴こえていた。

アンコールの声を受け、メンバーがふたたび舞台へ。LACCO TOWERは最後に「21年目の今日の夜に」と言葉を告げ、“一夜”を選び届けてくれた。闇夜を抜けた先には、かならず幸せを覚える光が差し込むはず。その光が僅かでもいい。そこへ少しでも幸せな明日を覚えられるのなら、その歩みを止めることはない。まさにLACCO TOWERの21年目の決意を、いや、ずっと心に抱き続けてきた意志を改めて示しながら、LACCO TOWERの歴史は21年目を刻み始めた。そしてLACCO TOWERは、12月7日に20年の歩みを集約したLACCO TOWERオールタイム・ベストアルバム『絶好』を発売することを発表した。それに先駆け、10月より『LACCO TOWER 20th TOUR 2022「絶好旅行」』を行うことも発表。素敵な人生の歩みを重ね続けるLACCO TOWERの少し先に見えた未来の姿も、ぜひ目にしたい!

Text:長澤智典
Photo:鈴木公平

https://laccotower.com/

20周年特別公演『狂想演奏史~至上のハタチ~』@恵比寿LIQUIDROOM セットリスト
第一部「至上のインディーズ史」
01. 柘榴
02. 奇妙奇天烈摩訶不思議
03. 檸檬
04. 斜陽
05. 夕化粧
06. 香
07. 鼓動
08. 藍染
09. 後夜
10. 林檎

第二部「至上のメジャー史」
01. 罪之罰
02. 化物
03. 証明
04. 純情狂騒曲
05. 遥
06. 永遠
07. 雨後晴
08. 非幸福論
09. 火花
10. 薄紅
11. 告白

ENCORE
01. 一夜