MADKID VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

活動10周年と3rdアルバム『DROPOUT』を語る。

MADKIDが3rdアルバム『DROPOUT』をリリース。タイアップ曲8曲を含む今作は、MADKIDの集大成とも呼べるようなもの。今年結成10周年を迎えた彼らの軌跡が結集したような一枚になっている。更に新録曲には、これまで“REBOOT”、“Critical Point”で共に制作をしてきたD&Hとの楽曲“Mirage”や、LINが書き上げた“Swell”、2度目の共作となるQ-MHzとの楽曲“DROPOUT HEROES”、そして最新タイアップ曲の“Chaser”と、バラエティに富んだ楽曲を収録。どんな楽曲でもMADKIDとして戦える矜持を示した。今回のインタビューでは、アルバムの新録曲を中心とした制作秘話から10周年を迎えた心境など、YOU-TA、YUKI、KAZUKI、LIN、SHINの5人に、たっぷりと話を訊いた。

■今作は13曲中8曲がタイアップ曲で、この2年の集大成のようなアルバムになっているかと思います。出来上がってみて、みなさんはどんなアルバムになったと感じていますか?

YOU-TA こうやって見てみると、2ndアルバムとは全く違う内容になっているし、タイアップも含めて今まで自分たちがやってきたことが形になった1枚かなと思います。現時点でのベストアルバムみたいなラインナップになっているので、この10年やってきたことがこの1枚にしっかり落とし込めたかなと思います。

YUKI 前回の『BOUNDARY』と比べて、幅が広がった気がしました。タイアップの作品に合った曲であったり、アニメを通していろんな世界観の曲を作れたのはいい経験だったと思います。新曲もどれも個性的で、今までにない曲だというのは毎回感じるんですけど、今回はサウンド面で常にMADKIDらしさの根っこのようなものを感じました。どんなタイアップだろうとどんな曲だろうと、一貫してMADKIDになるのがちゃんと証明されているかなと思います。

KAZUKI ボリューミーなアルバムになったと思います。半分以上がなにかのテーマソングになっているというのに改めてびっくりしていますし、本当にありがたいなと。1曲ごとに本当に色が違う曲になったので、僕たちが今出せるベストなのかなと思いますね。

SHIN 今回のアルバムには“Bring Back”以降の作品が入っているんですけど、改めてすごいアニメのタイアップをこれだけ歌うことができて、本当に幸せだなと思います。アニメが好きな人たちにも、アルバムというまとまった形で届けられたらいいなと思っています。

LIN 本当にいろんな曲があって、単純に聴いていて楽しいアルバムになっていると思います。リスナーとしても良いアルバムだなと思います。

■アルバムタイトルの『DROPOUT』にはどんな意味が込められているんですか?

YOU-TA ダンスボーカルグループとして10年やってきて、アニメのタイアップをやらせていただく中で、自分たちの進む道が決まってきたと思っていて。でも僕らはどのジャンルからも良い意味で収まりきらない、はみ出してしまうと思っているので、アルバムのタイトルを『DROPOUT』にしています。「はみ出しているけどそれでいいよね」とか、「進む道について悩んだこともあったけどこの形でいいよね」という意味も込めて、このタイトルにしました。

■数年前、MADKIDがアニメソングを歌い始めた当初は『盾の勇者の成り上がり』のイメージが強かったですが、今回の収録曲を見てみると、様々な作品のタイアップがあります。今作に収録されている中で、特に印象に残っているタイアップ曲はありますか?

SHIN 僕は“Change The World”です。『盾の勇者の成り上がり』ではないアニメでは一発目の曲だったので、特に印象に残っていて。曲も今までのタイアップとは違う雰囲気の楽曲を作ったので、「どういう反応をしてくれるのかな?」とか、「『盾の勇者の成り上がり』で知ってくれた人にも受け入れてもらえるのかな?」といろいろな感情がありました。“Change The World”を出して、いい反応をいただけたことはすごく嬉しかったですね。

LIN “ふたつのことば”と“Paranoid”は印象深いです。“Paranoid”は自分が作ったというのも理由のひとつですけど、僕が生まれる前くらいから漫画を描いている伊藤潤二さんのアニメの曲でしたし、そのアニメでグランジっぽいトラップを下地にしたカラーベースの曲を受け入れてもらえたという懐の深さも印象に残っています。“ふたつのことば”は、今までやってきたタイアップの楽曲とは決定的に違って、自分の考えていることや自分に近い歌詞がタイアップ曲として書けたので、すごく印象に残っています。

KAZUKI 僕も“ふたつのことば”が印象に残っています。アニメの内容も曲調も今まで自分たちがやってこなかったジャンルだったので挑戦でしたし、この曲で初めて僕がメインボーカルをやったんです。MADKIDとして活動してきた10年で初めてだったので、そういう意味でも大事な曲になりました。

YUKI 僕は“FLY”ですね。結構いろんな要素を入れていて、出来上がった時はやりすぎかなとも思ったんですけど、そのごちゃまぜ感がめちゃめちゃ好きな曲で。それまでライブでも圧で押していく感じのライブはたくさんしていたんですけど、それとはまた違って、みんなが笑顔で聴けるような曲にもなっていて。ツアーでこの曲を聴くと、頑張ろうと思えた思い出もあります。

YOU-TA 僕は“Last Climber”ですかね。この中で唯一スロットのテーマソングになっていて。僕は歌詞を書いたんですけど、自由に歌詞を書かせていただけたのがすごく印象的でした。あとは僕も結構パチンコ好きなので、自分が散々やってきたパチスロに対して曲を作れるというのがめちゃくちゃ嬉しくて。打っていても自分たちが作った曲が流れるのが嬉しくて、めっちゃ印象に残っています。

LIN “Last Climber”だけSNSで感想を書いている層が違うからね。(笑)

YOU-TA そうそう。スロットから知ってくれる人とかもいたりして、そういうのも嬉しかったですね。

YUKI 一番いいタイミングでかかるんだよね!

YOU-TA そう。一番流れる曲になっているので、脳内を刺激してくるんだと思います。(笑)

■新曲として収録されている“Chaser”は、『ハイガクラ』のオープニングテーマになっていますね。

LIN とにかく『ハイガクラ』の世界観を絶対に崩さないようにしたい、というのは念頭に置きながら作りました。あまりオリエンタルになりすぎない方がいいという事で、その塩梅は結構難しかったかもしれないですね。一種のアイコンとしてオリエンタルなものを出すのは簡単なんですけど、そうじゃないアプローチで雰囲気を出すのは、やっていて楽しかった部分でもありました。例えば「たとえ何処に居ても I’m chasing you」のところは、元々は語尾が綺麗に終わっていたんですけど、ペンタトニックに変えていて。主メロではない部分の、ある程度裁量を持たせてもらっている部分でペンタトニックスケールを使うことで、民族調っぽい雰囲気が出せたらいいなと思っていました。

■レコーディングはいかがでしたか?

SHIN 僕は1Aを歌っているんですけど、難しかったです。質感とかもすごく難しい部分だったので、YOU-TAとLINのディレクションをもとに頑張ったレコーディングでした。レコーディングなので、エフェクトなしでどう艶感を出そうかとか、プリプロの段階からLINが送ってくれたデモを聴いて歌い方を考えていました。

KAZUKI 1曲を通して自分のいろんな歌声を出せたらいいなと思っていて。1Bはちょうどトラックも静かになるので、その世界に引き込むような声で歌えたらなと思ってレコーディングしましたし、逆にサビや2Aは疾走感に負けない強い声で歌うようにしました。でも2Aは特に苦戦しましたね。最初つるっと歌った時に、何の引っかかりもないような歌になっちゃって。でも息の使い方だったり、いろいろチャレンジをしながらレコーディングしました。

YOU-TA 頭サビの曲は“One Room Adventure”以来だと思うんですけど、やっぱり頭サビって飛ばそうと思っても飛ばせない場所じゃないじゃないですか。配信サイトでアニメを観ていても、「イントロをスキップ」もできないくらいのところだと思いますし。頭サビの一言でどれだけ掴めるかというのがめちゃくちゃ大事だと思っていたので、自分らしさ全開で歌いました。あとは、この曲に関してはボーカルをトラックにしっかり馴染ませていくことが大事かなと思っていて。歌割りも結構すぐに決まって、2人もトラックに馴染むように歌ってくれたので、曲の世界観を保ったまま作れたと思います。フェイクとかもLINがプリプロで入れてくれたものをちょっとだけ変えたり、自分なりに歌ったりしていて、最後まで飽きずに終われる曲になっていると思います。

■ボーカルが曲に馴染むというのは、聴いた時にもすごく感じたことでした。ボーカル3人それぞれの特徴が主張しすぎていないというか。

YOU-TA 歌のニュアンスはボーカル3人でそこまで細かく話したりはしないんですけど、LINから受け取ったプリプロを経て感じた感覚が似ていたから、そうなったのかなと思います。

■新曲“Mirage”では、YOU-TAさんが作詞で参加していますね。

LIN ラップ以外はYOU-TAが全部作詞してくれました。

YUKI 曲は“REBOOT”や、“Critical Point”を作ってくれたD&Hさんにお願いしていて。MADKIDと親和性があると思っていたし、D&Hさんの曲から出る味をアルバムに入れるのがいいんじゃないかと思って提案させてもらって、お願いすることになった曲ですね。

YOU-TA “Mirage”って、「蜃気楼」という意味なんですけど、今までいろんな葛藤や思いがあったことを蜃気楼の中にいる自分たちに例えて、歌詞を書いてみました。それこそ前事務所を独立したタイミングで“REBOOT”という曲を出したんですけど、その時とはまた違う葛藤や、目指すべきものができてきて、その中で「自分たちの信念を曲げずに戦い続けていくぞ」みたいな気持ちを歌詞にした曲ですね。でも改めて見返して思うんですけど、自分の歌詞って結構暑苦しいなって思うんですよ。でもアルバム単位で見ると、それでいいんだと思えるというか。LINが書いてくれる曲や歌詞があるから、自分の歌詞も活きるのかなとすごく思います。

■確かにYOU-TAさんの歌詞は、視点がご自身にあるという印象があります。なので、より熱がこもった印象になるのかもしれませんね。

YOU-TA MADKIDのバランスを崩さないように、自分らしく書くのってすごく難しいなと思いましたね。LIN先生からはお褒めの言葉をいただきましたけど。(笑)

LIN 本当にD&Hさんの楽曲ってメロディーもすごくグローバルで、アメリカでも通用するような音の質感だったり、メロディーになったりすると思うんですけど、そういうメロディーに日本語を載せるってすごく難しいことだと思うんです。それを違和感なく書いて、歌いやすい歌詞にするというのは、中々できることじゃないと思います。

YOU-TA 嬉しいですね。(笑)

■YOU-TAさんが書いた歌詞に自分のラップを書くというのは、ラッパーのお二人にとっても普段とは少し勝手が違うこともあったのではないでしょうか?

LIN すごい楽でした。(笑) 「ここだけでいいんですか?」みたいな。(笑) 僕は2番のラップだったので、1番でみんなが歌って、YUKIもラップして、パワーがあるタイミングだったので、本当にいい意味で気楽にやれました。気負いすることがなかったというか。

YUKI 僕もこの曲に関してはやりたい放題でしたね。他の曲はタイアップ曲ということもあってメロディーも聴きやすい曲になっているんですけど、これはグローバルっぽい雰囲気を出したいなと思って。普通にラップするのも勿体ないなと思ったし、面白いことしたいという発想で作りました。すごく楽しかったです。

■かなりパワーのある曲になっていると思いますが、ボーカルのみなさんはどんなレコーディングでしたか?

KAZUKI 大前提として難しいんですけど、このアルバムの中でもレコーディングしていて楽しい曲だったと思います。D&Hさんのディレクションのおかげもあるんですけど、今までより更に殻を破れたというか。サビの「不確かな」のところも、プリプロの段階では裏声にしていたんですけど、D&Hさんから「もしできるんだったら声張ってみてくれない?」と言われてチャレンジしたら、その方がめちゃめちゃ良くて。そういうのもレコーディングしながらいろいろできて、新曲の中でも特に好きな曲になりました。

LIN 作家の方がレコーディングをディレクションしてくれることってあまりないので、D&Hさんの曲の時はそれもあって、普段とは違うものになりますね。

KAZUKI 確かに。今までなかった角度からのディレクションがあるので、すごく勉強になります。

SHIN 僕もレコーディングはすごく楽しかったです。KAZUKIも言ったように、D&Hさんのディレクションは新しい感覚になれるので、プリプロとは全然違うアプローチの仕方をすることも多くて。ディレクションいただいたことを自分の中でしっかり馴染ませて表現できたと思うので、すごく成長できたと思います。

YOU-TA サビの最後の「You gonna imagine show’s beginning」という歌詞も、最初は少し違っていたんですけど、D&Hさんがネイティブの方なので、「こっちの方がいいと思う」と指摘していただいて、その場で歌詞を変えたんです。クリエイティブなレコーディングになったと思います。