“SIN”で果たした原点回帰。MADKID、『盾の勇者の成り上がり』との歩みを語る。
MADKIDが9枚目となるシングル『SIN』をリリースする。表題曲“SIN”は『盾の勇者の成り上がり Season 3』のオープニングテーマ。初代『盾の勇者~』のタイアップ曲“RISE”の系譜を感じさせると同時に、『盾の勇者~』とMADKIDの歩んできた道のり、そして“RISE”をリリースした2019年からの変化を思わせる楽曲となった。今回はMADKIDの5人にインタビューを決行。『盾の勇者~』とのタイアップを起点にアニソンアーティストとしても活躍の幅を広げ続けている彼らに、今夏の『Animelo Summer Live 2023 -AXEL-』(アニサマ)の感想や今作へのこだわりを、YOU-TA、YUKI、KAZUKI、LIN、SHINの5人にたっぷりと訊いた。
■先日2度目のアニサマ出演を果たしましたが、いかがでしたか?
YOU-TA 去年とは全然違いました。去年は本当に何もかもわからない状態で出させてもらって、あっという間にステージが終わった感じだったんですけど、今年は初々しさというよりも、「どうやって会場のお客さんを巻き込んでいくか」といった結果が求められるとアニサマ統括プロデューサーの齋藤Pにも言われていて。そういったことを念頭にステージを作っていきました。終わった後に感想を見たら「センターステージを上手に使っていた」、「すごく良かった」みたいな声が多かったので、本当に嬉しかったです。
KAZUKI 去年は出演できることがとにかく嬉しくて、いざ当日を迎えたら緊張で記憶もないくらいあっという間だったんです。今年はそれに比べて少し余裕を持てた気がしています。あと、今年はアニサマにも歓声が帰ってきたので、それも含めて「どんな感じになるんだろう?」と思っていて。イヤモニ越しからでも聞こえるほどの大歓声だったので、本当にすごいなと感じました。最高でした!
SHIN 昨年はメインステージだったので、お客さんは前にしかいなかったんですけど、今回はセンターステージで360度全部にお客さんがいたので、すごくいい景色が見られました。お客さんに囲まれているのはもちろん、全方向から歓声が来るという体験をしたのが初めてだったので、すごくいい経験でした。
YUKI 結果論なんですけど、前回に比べてより受け入れてくれる人たちが多くなったという感覚があって。というのも、今回のパフォーマンスのテーマとして「巻き込むこと」というのが僕らの念頭にあったんです。“SIN”はどちらかというと見せるパフォーマンス重視だったので“RISE”でどう盛り上げるかとか、たった2曲だけどちゃんと爪痕を残せるようにといろいろ考えて臨んだステージでしたが、センターステージで良かったんじゃないかなと終わった後にも思いました。僕たちについて、「アニソンという界隈の中ですごく重要な役割を担っている」と言ってくれている人が結構いたので、僕たちもその意識を持ってこれからも活動していこうと思います。
LIN みんなが言った通りなんですけど、1年目よりももう1段階上のパフォーマンスをすることをすごく考えながらやっていて。そういった目標をちゃんと達成できたんじゃないかなと思いますし、経験値も上がって、もう少し上の階段を見られるようになったステージだったと思います。
■1年前に初めてアニサマへの出演を果たしたみなさんですが、それから今に至るまで、アニサマをきっかけにライブパフォーマンスなどで変化したと感じる部分はありますか?
YUKI 「僕たちの魅力ってライブだよね」という話は元々していたんですけど、それがどういうライブかという具体的な事をそれまではあまり言えなかったんです。でもアニサマを通して、ダンスボーカルグループだけど一緒に声を出して煽れるとか、そういった周囲を巻き込む力は僕たちのスタイルとして確立された部分なのかなと思います。今年のアニサマで“RISE”をやるということは前から言っていたので、普段のライブから踊りを削って煽る体制に変えたりもしていて。そういう部分はアニサマを経て変化した部分なのかなと思います。
YOU-TA 去年はアニサマの前にアメリカにも行かせてもらったので、その経験も大きかったと思います。アメリカのお客さんは日本とは全くタイプが違いますし、アニサマも僕らが経験したことのないステージだったので、そういった大きいステージに出させてもらうことによって、自分たちの気持ち的にも大きく表現できるようになったとは思います。
■今回の新曲“SIN”は『盾の勇者の成り上がり Season 3』のオープニングテーマとなっています。制作を始める段階ではどんな楽曲にしようというイメージがあったんですか?
LIN 『盾の勇者~』の主題歌を何曲か担当させて頂いてきた中で、曲調がどんどん激しくなっているので、過去の楽曲に負けないような曲にするというのだけは念頭に置いていました。激しさがありつつも、「アニメにちゃんと合うように」というのは考えていました。
YUKI あとは原点回帰というか、“RISE”の良さを含めた曲にするみたいなことも意識していたよね。
YOU-TA “Bring Back”は挑戦を詰め込んだ楽曲でもあったんですけど、“SIN”は“RISE”をオマージュしている部分があるというか。
KAZUKI 歌割りも“RISE”っぽい歌割りになっているんです。原点回帰していくというのは意識したポイントかもしれないですね。
■楽曲をよりよくするために意識した点はありますか?
LIN シンセと生音のバランス感はすごく気にしていたと思います。“RISE”はそこが絶妙なバランスで作られていたので、どれだけそのイメージに近づけられるかは重視した部分でした。
■楽曲タイトルの“SIN”は「罪」という意味で、歌詞には七つの大罪の内容が含まれていますね。
LIN 『盾の勇者~』のSeason 3の内容として、七つの大罪というテーマがあったんです。なので、歌詞は七つの大罪を意識しながら、結構気を遣って書きました。というのも、『盾の勇者~』は海外でもすごく人気があって、七つの大罪の考えが実際に身の回りにある国でも人気なんです。僕たちはキリスト教徒ではないですし、そんな僕たちが歌う上で、どの程度その内容を書くかはバランスを気にしました。どれくらい海外の方たちにも受け入れてもらえるかといったことは、最初は不安だったんですけど、結果的に良いバランス感になったんじゃないかなと思っています。
■YUKIさんはラップ詞を担当しています。
YUKI 七つの大罪というテーマがあるからこそ、前回よりも書きやすさはあって。ラップでは2人ともいろんなことにチャレンジしたんですけど、原点の“RISE”に戻るというのを意識したり、僕らの良さをより出すためにラップをお互い書き直したり、いろんなディスカッションを経て今の形になっていきました。僕の部分は英語の歌詞も多いんですけど、できるだけ日本語がちゃんと聴こえるように意識しています。
■以前『盾の勇者~』のタイアップ曲の取材をした際、「登場人物の心情が自分たちの歩みに共鳴する部分があるので、感情移入して歌詞が書けた」というお話をしていたと思うのですが、今回は歌詞を書いていく段階で、MADKIDとしての共感はありましたか?
LIN 今回は売れた人に歌詞を書いているみたいな気持ちになりました。(笑) どんどん主人公の尚文がすごい人間になっていって、戦いをたくさん経験して成長もしているので、逆に尚文たちから気付かせてもらうみたいなフェーズになっているのかなと思います。
YUKI “RISE”の時は、僕らのことを知らない人たちが多い中で「やってやる!」っていう精神と、尚文の状況がシンクロしていたんですよね。いわゆるネガティブな部分や闘争心がリンクしていて、尚文になったように歌詞を書いていました。でも今はLINちゃんが言ったように、尚文自身がすごくレベルアップしていますし、僕たちも同じようにレベルアップはしているんですけど、心境的にはシンクロというよりは、少し違う見方になっているような気はします。でもこれからも尚文の戦いは続くので、僕らも一緒に戦うという気持ちはあります。
■ひとつの作品のタイアップを何度も担当しているからこそ、視点の移り変わりがあるのは面白いですね。
LIN 『盾の勇者~』って、シンプルにすごくカッコいいアニメじゃないですか。だから、例えば僕らが「カッコよくありたい」とライブ中に思った時に、作品から追い風が吹く感じがするんですよね。アニサマの時もそうだったんですけど、Season 3のティーザー映像が流れた時に、余計に僕たちがカッコよく見えたと思うんです。それは『盾の勇者の成り上がり』という作品のカッコよさに背中を押してもらう事ができたからだと思っていて。アニメに助けてもらいながら表現ができているなと感じます。
■すごくいい関係性ですね。SHINさん、歌詞を見たり楽曲を聴いた際の感想を教えてください。
SHIN 最後のサビに行く前にLINが歌っている「運命と戦う」という英語の歌詞があるんですけど、そこが自分の中ではめちゃくちゃ響いたんです。すごくカッコいい言葉だなと思ったし、考えさせられたというか。あとは、さっき言っていたように、僕も“RISE”の時に比べたら尚文がはるか遠い存在になっている感覚があったので、僕自身も自分を成長させながら歌っていました。
KAZUKI “Bring Back”はすごくいろんなことを詰め込んだと思うんですけど、今回は“RISE”をオマージュしているのもあって、最初聴いた時からすごく聴きやすいなと思ったんです。激しいけど頭に残りやすいメロディーが“RISE”に近いのかなと思います。歌に関しても自分自身の成長を見せられたと思うので、作品を追うごとに僕らの歌の成長も感じ取ってもらえるかなと思います。
YOU-TA 歌に関しては今KAZUKIが言ったことと一緒で、今思うと“RISE”の時はまだ初々しかった感じがするんです。なので、その時からの成長は感じられると思います。前回の“Bring Back”は自分の詰め込みたいものを全部詰め込んだような作品だったんですけど、“SIN”は結構タイトにやりたいことをやれたと思っているので、すごく良いものが作れたんじゃないかなと思います。
■『盾の勇者~』の楽曲に限らず、MADKIDの楽曲は日本語と英語がシームレスに行き来するような曲が多いじゃないですか。“SIN”もしかりだと思うのですが、それについてなにか意図していることはあるんですか?
LIN 多分YOU-TAとかは分かると思いますけど、僕らの時代の日本語ラップって、ちょうどそういうのがカッコいい時期だったんです。m-floのVERBALさんとかもそうだったし、日本語と英語がナチュラルに変わっていくのがカッコ良くて。なので、そのルーツから来ているバランス感なのかなと思います。
YUKI この塩梅で書けるのは強みだと思いますし、それをちゃんと歌えるというのも強みだなと思っていて。英語っぽく聴こえるけど実際は日本語だったり、日本語っぽく聴き取れるけど英語っぽい気持ちよさがある。でも歌うのは難しいんですけどね……。
YOU-TA それこそLINが作ってくれたデモを聴いた時、歌詞を見ずに聴くと日本語なのか英語なのか分からない箇所が結構あるんです。それで歌詞を読むと、「そういう歌いまわしなのか!」みたいな。それをどう自分なりに歌っていくのかは、これまでMADKIDとして何曲もやってきて馴染んできましたけど。
KAZUKI “SIN”で言うと、サビの「今越えてく恐れずに Bring it on」のハメ方とかは、日本語だけど日本語っぽくないというか、そのまま読むんじゃなくて英語っぽく発音したりはしています。