進化した彼らの姿を刮目せよ――MADKID、様々な表情を見せた全国ツアーに幕、更なる高みへ
この夏目標として掲げていたアニサマへの出演を果たした他、アルバム『BOUNDARY』のリリースやアメリカでのイベント出演など、濃い夏を過ごしたMADKID。そんな彼らが『LIVE TOUR 2022 −BOUNDARY−』のファイナル公演を9月23日(金)、LIQUIDROOMにて行った。

会場を揺らす重低音をきっかけに、疾走感のある“Critical Point”でライブをスタートさせたこの日。気迫に満ちたダンスとラップで開幕を勢いづけると、Bメロでは一転して落ち着いた歌声でサビに向けて助走をつけ、ラップとボーカルそれぞれの見せ場を作る。続く“i don’t CARE”ではLINとYUKIによる激しいラップに焦点を当てながら、YOU-TA、KAƵUKI、SHINによるボーカルが楽曲の勢いに拍車をかけた。鮮やかなフォーメーションとキレのあるダンスは、ワイルドでありながらも音へのハマり方やメンバーによる見せ方の違いなど、繊細さも感じられる。ダンス×ロックというMADKID流のミクスチャーを今年リリースの“Critical Point”とリトラックされた“i don’t CARE”という進化した形のパフォーマンスで見せた後、“Gold Medal”ではオーディエンスを煽りながら一体となって盛り上がった。

3人のボーカリストと2人のラッパーから成るMADKIDだが、メンバーによって異なるパフォーマンスでの持ち味があるのも魅力。“REBOOT”、“LINKAGE”ではKAƵUKIの透明感のある歌声が楽曲に開放感をもたらし、SHINの感情的な歌声は切実ながら雄々しく、YOU-TAの迫力のある歌声が存在感を発揮する。YUKIの疾走感あるラップは楽曲の雰囲気を変えるアクセントとなる一方、LINのラップはデスボイスで迫力を見せたかと思うと柔らかい歌声を披露するなど、変幻自在な歌声でボーカルとラップの懸け橋にもなっていた。そんな5人が織り成す絶妙なバランス感は、ミドルやバラードの楽曲でも顕在。アコースティックギターの音色が爽やかな“Interstella Luv”では優雅な振りと抑揚のある歌声が歌詞への没入を誘い、シームレスなボーカルとラップの行き来が動きのある曲調を作り出す。“Blooming”では5人が横並びになって静かに歌い上げ、儚げな歌詞にぴったりな柔らかい雰囲気を作ると、力強く伸びやかに歌い上げた“グッバイ・ティーンエイジャー”へ。バラード曲のセクションではよりじっくり歌声やダンスを届け、大きく印象を変えた。

この日の彼らは更に新鮮な表情を見せていく。6月に行われたワンマンライブでもアニソンカバーを取り入れるなど、より間口の広い形での魅せ方を探ってきたMADKIDだが、今回はさらに大胆なアニソンの取り入れ方で会場を盛り上げた。アルバム『BOUNDARY』にてカバーしたFLOWの“Sign”では、特にFLOWを敬愛しているというYOU-TAが落ちサビを伸び伸びと歌い上げ、ペンライトを持ったメンバーとオーディエンスが一斉にケチャ(手を伸ばし祈りを捧げるような動きをするオタ芸の一種)をする場面もあるなど、本人たちも肩の力を抜いて楽しむ様子を見せる。さらに“おジャ魔女カーニバル”、“とっとこハム太郎”と、ライブは予想だにしない方向へ。ライブ序盤に激しいパフォーマンスで魅了したグループとは思えないギャップを見せ、リラックスしたMCにも通じる無邪気で温かい雰囲気を作り上げた。

そしてライブ終盤は、アニソンの文脈を引き継ぎながら『盾の勇者の成り上がり』オープニングテーマの“FAITH”、“RISE”へ。怒涛のラップと気迫に溢れたボーカルで畳みかけ、ロックサウンドの熱量を更に高めるような激しいダンスを展開していく。ダンスロック、バラード、アニソンと多方面から彼らの魅力を魅せたこの日であったが、更にディープな空気を作り上げたのが、5人全員が作詞とラップに参加した“Play”であった。会場が熱気に包まれるラストスパートというタイミングで、5人が時折ユーモアのあるリリックを乗せながら、各々のラップスタイルでリリックを紡いでいく。これまでの彼らの疾走感とエネルギーに満ちたパフォーマンススタイルに風穴を開けるような、新たな盛り上がり方を提示する曲として台頭した“Play”。アニソンカバーを取り入れ、リラックスして楽しむ様子を積極的に見せるようになった今だからこそ、ユーモアとスタイリッシュなパフォーマンスを融合させる存在として、新たなMADKIDを代表する楽曲になったのではないだろうか。曲終盤、トラックメイカー・HylenによるトラックとLINのラップを軸にして激しく展開していく“Play”は、5人各々によるラップという話題性による盛り上がりも相まって、この日一番の濃厚な雰囲気を作り上げた。そしてその熱量を引き継ぎながら“Fight It Out”を披露し、白熱したパフォーマンスで最後まで圧倒した。

アンコールにて新衣装をお披露目した彼らは、新曲“Change The World”を披露。ポップでありながらも勢いのある楽曲をきらびやかな声色を織り交ぜながら歌い上げると、キャッチーな“No border”、“GoO!!!”で一体感を作り上げる。ライブの定番曲“Get Started”でオーディエンスを巻き込みながら熱を高め、ラストは“Bring Back”で力強いロックサウンドとともに大ボリュームのアンコールを締めくくった。ロックチューンでの磨き上げられたパフォーマンスをはじめ、多彩な楽曲で5人それぞれの持ち味を活かした表現を見ることができたこの日。凄まじいスピードで進化を遂げる彼らの魅力が溢れる一夜であった。

Text:村上麗奈
『LIVE TOUR 2022 −BOUNDARY−』@LIQUIDROOM セットリスト
01. Critical Point
02. i don’t CARE
03. Gold Medal
04. REBOOT
05. LINKAGE
06. Interstella Luv
07. Blooming
08. グッバイ・ティーンエイジャー
09. Sign
10. おジャ魔女カーニバル
11. とっとこハム太郎
12. FAITH
13. RISE
14. Play
15. Fight It Out
ENCORE
01. Change The World
02. No border
03. GO!!!
04. Get Started
05. Bring Back