MADKID『MADKID ALL TIME BEST LIVE -Future Notes-』ライブレポート@ヒューリックホール東京

MADKIDが初のホールワンマンライブで見せた歴史と歩み。

5月20日(土)、MADKIDがヒューリックホール東京にて、『MADKID ALL TIME BEST LIVE -Future Notes-』を行った。キャリア初のホール公演となる本公演。タイトル通りこれまでの彼らの歴史、そして進化を続けた現在の姿をアンコール含め、2時間半以上にわたってたっぷりと届けた。オープニングムービーの後にYOU-TA、YUKI、KAƵUKI、LIN、SHINの5人が登場するなり、“Never going back”、“Get Started”という熱量たっぷりの選曲でライブは開幕。メンバーもオーディエンスを煽り、早速最高潮の熱気が会場を包む。MADKIDのライブと言えば、各々のダンススキルの高さやラップ、歌の掛け合わせが見どころのひとつだが、この日はサビやイントロなど、曲によってところどころでメンバーが横一列に並び、オーディエンスを煽ってはその反応を見て笑みを零したりと、のっけからオーディエンスとともにライブを作り上げていくという意気込みが伺えた。

そんなライブらしい楽しさに溢れる雰囲気は、今回からオーディエンスの歓声が解禁された影響もあるだろうが、彼らのライブへの向き合い方の変化も感じられる。というのも、ここ最近のMADKIDのライブでは、フランクな姿を見せるカバーコーナーを積極的に取り入れるなど、洗練されたパフォーマンス以外での楽しませ方も模索してきた。この日のライブを通して感じられた、楽曲に没入するパフォーマンスとオーディエンスに向き合い柔らかな表情を浮かべる緩急のバランスは、ライブの理想的なあり方でもあったように思う。クラップを求めた“Gold Medal”、キャッチーなサビの“来・来・来”と、積極的にオーディエンスと一体になるような序盤。盛り上がり必至、いわゆるライブ曲が出し惜しみされることなく畳みかけられるセットリストからは、MADKIDの歩みとベストライブと銘打つ自信が感じられた。最初のMCで5人それぞれが挨拶と意気込みを話すと、“出ていってよ”からはしっとりとした楽曲を歌うセクションへ。高音のボーカルも映えるこのセクションだが、バラード調だからこそ歌声の抑揚やダンスも光る。“Be the light”、“Stay with me”と続く繊細なパフォーマンスにオーディエンスも息を吞んで見入った。

中盤には、ラッパー、ボーカルそれぞれによるパフォーマンスも。LINとYUKIのラッパー2人が歌う“STAY GOLD”は、ライブの熱狂を煽るようなアレンジが施されており、そのリリックやステージ上の振る舞いからは、2人の良い関係性を感じさせる。YOU-TA、KAƵUKI、SHINのボーカルチームは“紅蓮華”のカバーを披露。これまでもワンマンライブでMADKIDの新たな表情を炙り出してきたカバーコーナーだが、今回はボーカル陣の歌声の違いを改めて押し出すようなカバーとなった。更に、彼らが目指すアーティスト像としても掲げているFLOWとともに作り上げた新曲“Future Notes”も披露した。今回のライブタイトルにもなっている「Future Notes」は、2020年に独立してメンバー自ら立ち上げた会社名でもある。コロナ禍で立ち上げた会社名を冠した新曲は賑やかなライブチューン。彼らの歩みの結実を表すような楽曲に、会場は多幸感に包まれた。

幕間映像にてアコースティックバージョンの“Cry”、“ALL DAY ALL NIGHT”の2曲のパフォーマンスが流れた後、5人は黒を基調とした軍服に着替えて再登場。そして会場の空気をぐっと引き締めるような“REBOOT”を皮切りに、“Unveil”、“OVERAGAIN”、“Forever young”のメドレー、“Change The World”へと続く。「ALL TIME BEST」とのコンセプト通り、インディーズ時代の楽曲と最近の楽曲が混ざりあったセットリスト。元々J-POPとは離れたジャンルから産声を上げたMADKIDが、今や各々のバックボーンとポップネスを掛け合わせたハイブリッドな音楽でアニメタイアップを次々と担当しているという特異な歩みを感じさせる選曲だ。ライブ本編も後半に差し掛かり、“Bring Back”の終盤にて畳みかけるようなラップワークでクライマックスの熱狂を演出すると、その勢いのままに“FAITH”になだれ込んでいく。天井無しに高まる熱狂とともに、ライブが進行するにつれて力を増すメンバーの歌声も更なる高みを見せてくれる。“Paranoid”、“Last Climber”と続けた後、ヒリヒリとした熱さのまま“Fight It Out”を披露すると、晴れ晴れとした表情で本編が締めくくられた。

ここまででも20曲以上という大ボリュームだが、彼らのオールタイムベストライブはまだまだ終わらない。アンコールの手拍子が鳴りやまない中、映像にて解禁されたのは全国ツアー。10月7日の埼玉公演より、SHINの故郷である宮崎での初の単独公演まで、全10都市15公演を予定している。そんな発表の後に再びステージに登場した彼らは、心からライブを楽しむように“Light up”、“No border”を披露。“No border”では5人が客席に降り、より近い距離でオーディエンスを煽りながらライブを堪能する。5人それぞれのラップが詰まった“Play”では、宮崎弁を組みこんだリリックで歌い始めるSHINが「絶対宮崎来いよ!」とツアーにも言及し、最後は“RISE”で締めくくる。更にWアンコールに登場すると、新曲“One Room Adventure”も披露。今後の活動への期待を高める形で、盛りだくさんのライブを終えた。

ダンスミュージック、ヒップホップ、ロック、JPOPとジャンルを横断し、進化し続けてきたMADKID。その歴史を辿るようなセットリストとともに、オーディエンスから受けた歓声や力を存分にパフォーマンスに昇華してみせた。セットリストのみならず、パフォーマンスもこれまでを1段も2段も飛び越えた、タイトル通りのベストライブであった。

Text:村上麗奈
Photo:中原幸

『MADKID ALL TIME BEST LIVE -Future Notes-』@ヒューリックホール東京 セットリスト
01.Never going back
02.Get Started
03.Gold Medal
04.来・来・来
05.出ていってよ
06.Be the light
07.Stay with me
08.メドレー(PARTY UP~Going around~Freakin’ you~I don’t Care)
09.Stay Gold(LIN、YUKI)
10.紅蓮華(YOU-TA、KAƵUKI、SHIN)
11.Future Notes
12.GO!!!
13.REBOOT
14.メドレー(Unveil~OVERAGAIN~Forever young)
15.Change The World
16.Bring Back
17.FAITH
18.Paranoid
19.Last Climber
20.Fight It Out

ENCORE
01.Light Up
02.No border
03.Play
04.RISE

W ENCORE
01.One Room Adventure