円熟味を増した真心ブラザーズがMB’Sと共に届けた、本気で音楽を楽しむ姿。
真心ブラザーズが、年に一度の恒例として行い続けてきた、総勢10人、ビッグバンド編成となる「MB’S」でのワンマン公演。これまでは中野サンプラザを舞台に続けてきたが、昨年より会場をLINE CUBE SHIBUYAに変更。4月20日(日)に『熟成』と題して行った公演が、同地では2回目になる。今回のライブタイトルに付けたのが『熟成』。真心ブラザーズが活動を始めてから36年。真心ブラザーズとしてはもちろん、「MB’S」として届ける音楽のスタイルも円熟味を増してきただけに、今の彼らにとても似合う言葉だ。今年の特徴は36年の時を駆け巡るのはもちろん、意外とレア曲も並べてきたことだ。広大な銀河の世界を舞台にファンタジックな冒険活劇を繰り広げる、まるで超大作ハリウッド映画のような壮大かつ派手なSEに乗せメンバーらが舞台へ登場。背景でギラギラと輝くMB’Sのネオンは、華やかな時代を象徴するシンボルのよう。

ライブは桜井秀俊の指揮を受け、メンバーらが「夜のお供に真心ブラザーズ!」と合唱する“夜のお供に真心ブラザーズ”から幕を開けた。意外な展開にクスッとしながらも、真心ブラザーズらしい遊び心と実感。その上で演奏は軽快に駆けるホンキートンクなロックンロールナンバー“Sometimes 時々”へ。心地よくも華やかな演奏が観客たちの気持ちを弾ませる。その音色に触れ、立ち上がってはしゃぎだす人たちも大勢誕生。良い意味で緩さを持った心で、現実や年齢という服を脱ぎ捨て、身体を揺らして楽しめる。とても真心ブラザーズらしい始まりの景色がそこには広がっていた。さらに心のエンジンを奮い立てるように、“傷だらけの真心”へ。雄大な音の景色を描きながらも、観客たちのENJOYしたい身体の熱をしっかりと、しかもゆっくりと上げていくところも、グルーヴィな音楽を通して熱を膨らませていく彼ららしい。続く“JUMP”でも、良い意味で肩の力を抜いた歌と演奏を届けるメンバーらがいた。心地よい歌や演奏の風を受けJUMPするのではなく、身体も心も大きく揺らしながら酔っていく。その感覚を味わえるのが嬉しい。

この場へひと足早く夏の熱気を連れだすように、彼らは“Dear, Summer Friend”を演奏。決してイマドキの汗まみれな音楽ではなく、熱を抱きながらも爽やかな風を覚えるところも、実はお洒落さんの真心ブラザーズらしさ。ファンキーかつ華やかな演奏に興奮を覚えた観客たちが“Dear, Summer Friend”を通し、胸をドキドキ騒がせていたのが手に取るように伝わってきた。愛しい人へ一緒に夏を楽しもうよと歌うYO-KINGに誘われるように、大勢の人たちが振り上げた手を左右に大きく振りながらこの曲の中へ飛び込み、一緒に眩しい夏の青春を感じあっていた。一転、切なくもロマンチックな香りを放つメロウな演奏に乗せ、YO-KINGが胸の内に秘めていた想いを伝えるように“time goes on”を歌った。少しセンチメンタルな声で届ける歌に、心が淡い色に染まっていくのを感じていた。続いて桜井秀俊がヴォーカルを担い、歌ったのが“耄碌はやってくる”。この楽曲を作ったのは、まだまだ年齢の衰えなど遥か先と感じていた20代の頃。酔っぱらったおっさんの自慢話をする姿に、未来の自分を重ねて作った楽曲だったが、2人とも今は、あの時の耄碌(もうろく)していくおっさんの姿へ。50代になった今の自分たちの姿も重ね合わせて歌い演奏していた。むしろその哀愁味が、この歌をハートフルな色に染め上げていた。

歌謡ロックの匂いも漂わせて届けた“Very Very Very”に触れながら感じていた、真心ブラザーズはいつの時代の中でも流行りに左右されることなく、自分たちの「好き」を貫いてきたんだなという姿勢。そして、自分たちだからこそのグルーヴという魔法を楽曲に振りかけ続けてきたこと。心地よく身体を揺らしながらも、“Very Very Very”を通してそんな想いを巡らせていた。真心ブラザーズと言えば、フォークなスタイルからスタートしている。彼らの原点となる音楽性を伝えるように、YO-KINGがアコギを手に“のり弁女”を弾き語る。そこへ穏やかな音色で絡む桜井秀俊のギター。こういうレアな表情をさりげなく入れ込んでくるのも、MB’S公演の楽しさだ。ゆっくりと演奏を膨らませるように、真心ブラザーズは続けて“夕凪”を歌い奏でていた。ゆったりと、まったりとした、緩やかながらも大きくグルーヴを生み出す演奏に、やっぱり心地よく酔っていた。“破壊”では、まるで詩人のような姿になったYO-KINGが、今の世の中を見て悲観する想いを語るように歌っていた。直接的に伝えるのではなく、強い感情をあえてオブラートに包みながら、達観した視点で歌いかけるところがYO-KINGらしい。だからこの曲に詰め込まれたメッセージに、いろんな想いを巡らせずにいれなかった。

セッション風の始まりから、楽曲は一気に激しさを増していく。唸るような演奏をぶつけた“STONE”では、YO-KINGが感情を吐き出すように歌っていた。曲が進むごとにテンポもアップしていく。いや、そんな風に感じるほどラウドでスピーディ、豪快なロックンロールの衝撃に身体が痺れていた。気づいたらMB’Sはヴォーカル、ギター、ベース、ドラムという、いわゆるロックバンドらしい編成になっていた。派手で華やかでファンキーなスタイルも持ち味だが、きらびやかな服を脱ぎ捨て、引き締まった音楽で勝負するのも真心ブラザーズのスタイルということから、先の曲から数曲はシンプルなスタイルで届けてきた。“きいてる奴らがバカだから”では、ソリットかつガレージロックした楽曲を、切れ味鋭い演奏とトガった歌声に乗せ、攻めるように叩きつけてきた。その硬派な姿に、彼らの中にある熱いロック魂を感じた。続く“急がない人”でも、歪みを上げる演奏に乗せ、演奏陣が激しく攻め続けていた。その上でおおらかな様で歌うところもYO-KINGらしい。一転、“橋の上で”では、シンプルな演奏を通してノスタルジーなムードを描きだす。心の声を歌いあげるような姿に、しばし心を傾けていた。それまでのソリッドな演奏がモノクロだとしたら、続く“FLY”は、シンプルなスタイルの中へ少しずつ色を加えるような様を見せていた。ここからまた新たに踏み出そうとする、そんな気持ちもゆったりとしたおおらかな歌や演奏から見えてきた。だから、この曲に触れながら色づくような想いを感じていたのだろう……。

ここからは再び10人編成へ。ラストへ向けて熱狂のエンジンを奮い立てようと、真心ブラザーズは“どか~ん”を演奏。「どか~んと一発やってみようよ」と歌うYO-KINGの声に合わせ、会場中の人たちが大きく両手を振り上げ、どか~んと盛り上がっていた。理屈も屁理屈も必要ない。ただ彼らと一緒になって無邪気にはしゃげばいい。それだけで笑顔になれる。その楽しさをさらに派手に、華やかに彩ろうと、真心ブラザーズは“Let’s 感動”を演奏。YO-KINGは「感動しよう」「感動は楽しい」と歌った。彼ら自身が音楽を楽しむその熱が、興奮というグルーヴになって観客たちの気持ちも熱く揺さぶる。だから一緒に声を掛け合い、会場中が一体となって騒ぎ続けたい気持ちに染まっていた。そこへすかさず、スタイリッシュでファンキーな音色が流れだした。“ENDLESS SUMMER NUDE”の登場だ。さらに心が華やいだ。いつしか会場中の人たちが歌や演奏に合わせ、高く掲げた両手を大きく振り、一瞬にして無邪気な夏の子供(少年や少女)に戻り、この歌の中へと飛び込み、眩しい青春のひとときを思いきり味わっていた。流れる汗さえ輝くような爽快さも真心ブラザーズらしい。ここからは最後まで気持ちをアゲ続けてこそ。「EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG」と歌いあげる“EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG”が、この会場へ歌声や演奏の熱風を巻き起こす。熱狂せずにいれなかった。気づいたらこの場がノリノリのパーティー会場に染め上がっていた。メンバーらがセッションを交わすように歌い演奏をする様へ一緒に参加し、共にアガッていく。みんなもうノリノリじゃないか!最後に真心ブラザーズは極上のロックンロールナンバー“ROLLING”を届け、最高に華やぐ楽しさを持ってライブを締め括っていった。

メンバーらが、再びステージへ登場。MB’Sとのセッションを楽しむような幕開けから、アンコール曲の“オレは音楽”へ。「オレは音楽 音楽そのもの」、心の底から音楽を楽しんでいる姿をよりゴージャスな編成で彼らは届けてきた。ステージ上の10人が「オレは音楽」「だからサイコー」の気持ちで届ける音楽だもの、それに触れて興奮しないわけがない。ここにいるみんなも気持ちをナチュラルボーンミュージシャンに染め上げ、MB’Sと一緒に、再び熱狂の様を作りあげていった。その上で最後に歌い奏でたのが“RELAX~OPEN~ENJOY”だ。タイトルへ記された言葉通りの楽しさを、真心ブラザーズはここまで描き続けてきた。ミドルメロウかつ、スケール大きな演奏に乗せ、ここへ至るまでに感じ続けてきた楽しさを、誰もが改めてこの曲を通してじんわりと身体中に染み渡らせていった。年に一度の楽しみなのがもったいない。いや、だからこそ年に一度、その楽しさを存分に味わうのが良いのかも知れない。さぁ、また来年も足を運ぼうか。

Text:長澤智典
Photo:堀内レイ
真心ブラザーズ『熟成』@LINE CUBE SHIBUYA セットリスト
01. 夜のお供に真心ブラザーズ
02. Sometimes 時々
03. 傷だらけの真心
04. JUMP
05. Dear, Summer Frien
06. time goes on
07. 耄碌はやってくる
08. Very Very Very
09. のり弁女
10. 夕凪
11. 破壊
12. STONE
13. きいてる奴らがバカだから
14. 急がない人
15. 橋の上で
16. FLY
17. どか~ん
18. Let’s 感動
19. ENDLESS SUMMER NUDE
20. EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG
21. ROLLING
ENCORE
01. オレは音楽
02. RELAX~OPEN~ENJOY
LIVE
■弾き語りライブ・ツアー『真心道中歌栗毛 2025』
・5月5日(月・祝) 群馬・高崎シティギャラリー コアホール
開場16:00 / 開演16:30
全席指定:¥6,500(税込)
[問]ホットスタッフプロモーション 050-5211-6077 (平日12:00~18:00)
・5月9日(金) 愛知・名古屋市千種文化小劇場
開場18:30 / 開演19:00
全席指定:¥6,500(税込)
[問]ジェイルハウス 052-936-6041(平日11:00~15:00)
・5月10日(土) 京都・金剛能楽堂
開場16:00 / 開演16:30
全自由:¥6,500(税込)
[問]清水音泉 06-6357-3666 (平日 12:00~17:00)
・5月17日(土) 島根・松江フォーゲルパーク センターハウス
開場18:00 / 開演18:30
全自由:¥6,500(税込)
※開場時間前の入園(9:00~17:30)は別途入園料が必要です。(17:30に一度ご退場頂きます)
[問]YUMEBANCHI(岡山) 086-231-3531 (平日12:00~17:00)
・5月18日(日) 広島・出雲大社広島分祠 神楽殿
開場17:00 / 開演17:30
全自由(駐車券付):¥7,500(税込) / 全自由:¥6,500(税込)
※会場にお車でご来場する場合は、駐車券付きチケット(販売数限定)をご購入いただく必要がございます。お車でのご来場予定のお客様はお早めのご購入をお勧めします。
※駐車券付チケットをお持ちでない方はお車でのご来場はできません。ご注意ください。
※駐車券単体での販売はございません。
[問]YUMEBANCHI(広島) 082-249-3571 (平日12:00~17:00)
・5月30日(金) 高知・蛸蔵
開場18:30 / 開演19:00
全自由:¥6,500(税込)
[問]デューク高知 088-822-4488 (平日11:00-17:00)
・5月31日(土) 香川・栗林公園 商工奨励館
開場14:30 / 開演15:00
全自由:¥6,500(税込)
[問]デューク高松 087-822-2520 (平日11:00-17:00)
・6月7日(土) 北海道・小樽GOLDSTONE
開場17:30 / 開演18:00
全席指定:¥6,500(税込/+1D)
[問]マウントアライブ 050-3504-8700(平日11:00~18:00)・6月8日(日)
北海道・旭川 島田音楽堂
開場16:00 / 開演16:30
全席指定:¥6,500(税込)
[問]マウントアライブ 050-3504-8700(平日11:00~18:00)
・6月14日(土) 宮城・青葉山公園 仙臺緑彩館 交流体験ホール
開場15:00 / 開演15:30
全席指定:¥6,500(税込)
[問]EDWARD LIVE 022-266-7555(平日11:00~15:00) https://www.edward.co.jp/live/contact/
・6月21日(土) 秋田・あきた芸術劇場ミルハス ホールA
開場16:30 / 開演17:00
全席指定:¥6,500(税込)
[問]EDWARD LIVE 022-266-7555(平日11:00~15:00) https://www.edward.co.jp/live/contact/
・6月22日(日) 青森・ねぶたの家 ワ・ラッセ イベントホール
開場16:00 / 開演16:30
全席指定:¥6,500(税込)
[問]EDWARD LIVE 022-266-7555(平日11:00~15:00) https://www.edward.co.jp/live/contact/
・6月28日(土) 大分・芝居の湯
開場17:00 / 開演17:30
全自由:¥6,500(税込/+1D)
[問]キョードー西日本 0570-09-2424
・6月29日(日) 熊本・キャバレーニュー白馬
開場16:00 / 開演16:30
全自由:¥6,500(税込/+1D)
[問]キョードー西日本 0570-09-2424
・7月5日(土) 兵庫・湊川神社 神能殿
開場14:30 / 開演15:00
自由席:¥6,500(税込)
[問]清水音泉 06-6357-3666 (平日 12:00~17:00)
・7月6日(日) 静岡・起雲閣 音楽サロン
開場16:00 / 開演16:30
全自由:¥6,500(税込)
[問]ジェイルハウス 052-936-6041(平日11:00~15:00)
・7月10日(木) 東京・浅草公会堂
開場17:45 / 開演18:30
全席指定:¥6,500(税込)
[問]ホットスタッフプロモーション 050-5211-6077 (平日12:00~18:00)
・7月20日(日) 沖縄・桜坂劇場 ホールA
開場15:30 / 開演16:00
全席指定:¥6,500(税込/+1D)
[問]PMエージェンシー 098-898-1331 (平日11:00~15:00)
※お一人様4枚まで
※4歳未満入場不可/4歳以上要チケット