MARiA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

MARiA『Moments』

音楽を通して言いたいことはどっちのMARiAも一緒なんだけど、伝え方とか表現の方法がちょっと違う。

GARNiDELiAの作詞・ボーカルを務めるMARiAが、セカンドソロアルバム『Moments』を6月22日にリリース。ガルニデでの活動で見せる力強いパフォーマンスとは打って変わって、ソロ活動では等身大で柔らかい一面を見せるMARiA。今作『Moments』は、前作『うたものがたり』に続き、様々なクリエイター陣から楽曲を募った1枚になっている。evening cinemaの原田が手掛けた80’sの雰囲気漂う“Think Over”や”Long Distance”、luzと堀江とのコラボ作“カフェラテのうた feat. luz”、異国情緒漂う“Pray”など、幅広いジャンルの楽曲が揃い、普段とのギャップや様々な楽曲を歌いこなす表現力や歌唱力を堪能することができる。本稿では、ソロとしてはVANITYMIX初登場となるMARiAに、ソロとユニットでの違いや、楽しんで制作したという今作について話を訊いた。

■ソロでの活動となると、取材の場なども含めて気持ちは変わるものですか?

MARiA そうですね。自分が歌詞を書いているのと書いていないのとは結構変わってくるものではあります。それが面白くてソロをやっているんですけどね。GARNiDELiAに関しては13年目になるので、そこで築いてきたものや自分が貫いているものもあって。ガルニデのMARiAとして喋ったり、歌ったり、作品を作っていくのと、ソロのMARiAとしてやるのは、曲の作り方だったりとか、選ぶ曲だったりとかも変わってきますね。

■今作『Moments』も前作と同じように、クリエイターから曲と詞を提供してもらうという形を取っています。ガルニデでの活動はtokuさんが作曲、MARiAさんが作詞の形を取りますが、ソロの楽しさは普段とは違う人と制作することですか?

MARiA そうですね。ガルニデではできない、やらないことをやる場所だし、チャレンジもできる。自由な音楽の遊び場みたいなテンションで考えているので、どの曲もフレッシュな気分でレコーディングできます。あとクリエイターの方がディレクションしてくれたりするんですけど、人によってディレクションの方法も全然違ったりするので、そういう面白さもありますね。

■確かに曲によって作る人が違う分、曲の雰囲気もかなり違いますし、そういった面白さはありそうです。歌詞は渡されてからリテイクを入れたりもするんですか?

MARiA しますね。前回の『うたものがたり』の時は、MARiA節を封印するっていうのをテーマにして作ったアルバムだったから、「来たものを全て素直に受け入れて表現する、リテイクはしない」っていうのが自分の中のルールだったんですよ。するとMARiA節を完全に封印したことによって、改めて「MARiA節とは」っていうことを考えるわけじゃないですか。となると、歌い方もそうだし、楽曲のサウンドだったり、言葉の選び方、メッセージ性とか、「全部ひっくるめてMARiA節だった」っていうのが浮き彫りになり、よりMARiAらしさが自分の中で明確になったんですよね。『うたものがたり』でそういういろんな発見があったのを経て、今回の2作目では、楽曲選びから私も入って、歌詞もリテイクさせてもらったりしたので、割りと自分プロデュースなアルバムになったかなとは思います。サウンドプロデューサーとして清水信之さんに入ってもらったんですけど、信之さんが見つけてきてくれたevening cinemaも、曲を聴いてから「是非やりたいです」という感じでスタートしているので、割りと今回のアルバムはMARiA節が効いているアルバムになっていると思うんです。前回は「こんなことMARiA歌う!?」みたいなのが面白い振り幅で、それが発見だったし、新しかった。でも今回は「やっぱりMARiAってこうだよね」っていうのを再確認するようなアルバムになったかなって思います。でもその中で、私が選ばない言葉の選び方だったりとか、目指す方向は一緒なんだけど、「こういう言葉の使い方は自分だったらしなかったかもしれない」っていうこともあるので、そこは人に書いてもらう面白さだなと思いましたね。

■ソロ活動で改めて自分の強みを考え直すことは、ガルニデへの影響もありましたか?

MARiA かなりあったかな。『うたものがたり』の後にガルニデのアルバム『Duality Code』のリリースだったんですけど、相方のtokuの方がびっくりしていたかもしれないですね。「歌も歌詞もすごく変わった!」って言っていて。tokuも「楽曲の作りとかが変わった」って言っていたので、お互いにソロを経てからの進化はありましたね。

■今作の後に出るガルニデの曲の進化もまた楽しみですね。

MARiA どうなっていくんでしょうね。(笑) でもガルニデの軸があるから、ソロが遊べるみたいなところはあるので。どっちも遊んでいたら遊びにならないし。ガルニデはガルニデでの芯があって、そこを生きている私がソロでこんなことをやるから面白いと思うんです。ガルニデは戦いなんですよ。生み出す戦いみたいなのがすごくあって。でもそれが原動力にもなって、みんなの背中を押しているっていうのも絶対あると思うんです。それがガルニデのMARiAなんだけど、ソロのMARiAは結構ハッピーだし、キラキラして「音楽楽しい!」みたいな。今作を制作している時も、悩みゼロみたいな感じで。レコーディングもすごく楽しかったです。(笑)

■アルバムの『Moments』という名前含め、全体的なテーマはどのように決めていったんですか?

MARiA 曲が集まってからアルバムタイトルを決めていきました。evening cinemaの原田くんが作った“Think Over”が一番最初に貰った曲だったんですけど、これが結構衝撃的で。この曲に自分が引っ張られたところもあったんです。「ほんの一瞬を 駆け抜けるようにして」っていう歌詞から始まるから、自分の中で「これがテーマだ!」ってなったんですよね。なので、他の曲もこの曲を軸に選んでいったんです。それぞれのクリエイターさんからの曲が3、4曲ある中から自分が選ばせてもらうっていう作り方をしていったんですけど、“Think Over”を軸にして選んでいったら、結構キラキラしたポジティブな楽曲ばかりが集まって。自分では歌詞を書いていないし、テーマもあらかじめ言ってから集めた楽曲ではなかったんですけど、どの曲も「君」に対して伝えている歌詞だったりとか、君と過ごす瞬間に生まれている気持ちを書いていたりとかするんです。なので、「一瞬」とか「瞬間」が自分の中でテーマになりました。だからそのまま『Moments』にしました。

■楽曲のテーマは最初からオーダーをしていたわけではなかったんですね。

MARiA はい。アーティストとかクリエイターさんから頂いた曲の中にはもちろん元気いっぱいな楽曲だけじゃなくて、ちょっとミディアムっぽい感じのものだったりとか、歌詞の内容もいろいろあったんですよ。ただ、その中で自分がチョイスしたのがこの曲たちでした。等身大の私っぽいアルバムになったなって思います。「やっぱりMARiAってポジティブなんだな」って。自分で選ぶと、そういう言葉を発信していきたくなるんだなっていうのが、改めて感じたことですね。

■歌声はガルニデでの力強い印象というよりは、柔らかい高音が綺麗な楽曲が多いですよね。

MARiA そうですね。“Think Over”も“Long Distance”も、ジャジーな“カフェラテのうた feat. luz”とかもそうなんですけど、リズムもあえてちょっともたらせたり、音の中で遊ぶような歌い方をしていることも多くて。“君といたい”とかもサビで抜け感みたいなのを出したりとか、全力で前に押すっていう歌い方をしている曲はあんまりないですね。

■確かに。そうだったんですね。

MARiA みんなの中には、普段のすごく強いMARiA像があると思うんですけど、それとはやっぱり全然違う私がソロだと出てきました。女の子らしさとか、しなやかさ、柔らかさとか。それは『うたものがたり』も全開で出ていたんですけど、そこがソロのポイントなのかなと思います。ガルニデのMARiAって、性別とか関係なく「MARiA」っていう存在だと思うんです。割りと中性的というか、全人類に向けて発信するみたいな。(笑) それがソロになると女性的な目線になったりとか、女性シンガーとしての歌になってくるんだろうなって。ガルニデのMARiAって多分、普段はあんまり恋愛もののイメージもないですし。

■そういう中で恋愛ものを歌う心情や表現のポイントというと、どういったものがありますか?

MARiA ガルニデでも恋愛の歌詞は書いているんですけどね。ただひとつ言えるのは、私が書いている曲の歌詞って、ハッピーな恋愛の曲がものすごく少ないんです。すごく悲しいか、すごく強い女。“君といたい”とかの歌詞は自分じゃ絶対に書かないですから。でも本当は「君といたい」って思っているんですよ?(笑) だからきっとこれも私なんです。どっちもちゃんと私で、ガルニデとしてステージで歌ったりとか、ガルニデとして書くMARiAも嘘のないMARiAだし。でも、より素の女の子の部分を掘り出してくれる作家の方が多いんですよね。原田くんにディレクションしてもらった時に、「こんなに強いボーカルの人が、音の中で揺らいだりする曲を歌ったらどうなるんだろう?っていうのが聴きたくて書いた」って言っていて。そういう目線が入ると、ちょっと女性らしさが追加されたりっていうのはあるんだろうなって思いました。自分だったら強がっちゃったりする部分があっても、それを読み解いて書いてくれている感じがありますね。

■先程「レコーディングが楽しかった」というお話もありましたけど、“Long Distance”は特に歌のノリがよくて、それが伝わりました。

MARiA 超楽しかったですもん!どの曲もめっちゃ楽しかったんですけど、“Think Over”とか“Long Distance”は、自分の中ではすごい新鮮なサウンド感で。シティポップを歌うMARiAって今までいなかったから、すごく斬新で新鮮だなって思ったんですよね。でもやってみたら意外とハマって、新しい扉を開いた感じで楽しかったです。原田くんの言葉の選び方って面白いから、すごく勉強になったし歌い心地がよくて。歌詞がリズミカルなんですよね。普段だと「環状線沿いを徘徊」とか絶対書かないですもん。(笑)

■“Star Rock”はダンサブルで、また違ったノリ方の曲ですね。

MARiA 結構普段の私に近い楽曲かなと思います。この曲は私がステージで歌っている姿が想像できたので選んだんです。今回はライブを意識して作ったアルバムでもあるので、ライブ映えしそうな楽曲を入れたいなって思って。

■“カフェラテのうた”では、歌い手のluzさんとコラボしています。どういった経緯でコラボすることになったんですか?

MARiA luzくんはもともと歌い手の友達で、普段も仲がいいんですけど、3年前くらいからずっと「一緒にやりたいね」と話はしていたので今回声をかけました。luzくんが最近堀江(晶太)くんとタッグを組むことが多かったから、「曲は堀江くんに書いてもらおうよ」みたいになって。堀江くんも元々はレーベルメイトだったし、界隈的にはかなり近いところにいて、イベントとかではよく会っていたりもしていたから、むしろ「なんで今までやったことがないんだろう?」みたいなくらい近いんです。それで3人で打ち合わせして、「luzくんとMARiAが歌うならちょっとエッチな感じの方がいいよね」って。(笑) 「キャラ的にもそっちの方が盛り上がるよね!」と。曲はジャジーなサウンド感がそこにハマるのではないかという話をしていたら、めっちゃドンピシャな曲が上がって来たので、やっぱりすごいなと思いましたね。3人ともプロデューサー脳だから、めっちゃ話が早くて。みんな客観視して自分のこと見ているんですよ。めちゃくちゃ面白かったです。