繋がって巡って、廻っていく“HEART”。
舞台を仕切る、黒くて薄いカーテンが役目を終える。透明なピンスポットが優しく照らした先に佇むのは、ホワイトの衣装に身を包んだReoNaの姿。12月22日(月)、昭和女子大学人見記念講堂にて『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”』が行われた。3rd Album『HEART』の発売を記念して開催されたこのツアーも、本ステージで6都市中5つ目を迎える。マイクをそっと口に寄せたReoNaが“命という病”でステージの始まりを告げた。月明かりに溶けていくような甘い歌声が、観客たちの湧き立つ心を早くも解放させていく。続く“オルタナティブ”では、計算され尽くした不協和音を奏で、ステージの完成度の高さとこだわりを証明していた。暗転のち、ReoNaの手にはエレキギターが。まどろみをかき消すかのごとく始まったのは“GG”だ。このライブでは、ライティングの妙が目立った。赤と青、主張する2つのカラーが地面を走る光撃は、まるで心臓のように鳴り響くドラムに合わせて、脈打つ動脈と静脈のようで、五感の大部分が刺激されていく。乱反射する生命のようなレーザーは、ステージと観客をまばゆく照らし続けていた。

ここまで歌声のみを響かせてきたReoNa。メロディの終わりとともに「ありがとう」と 彼女が呟くと、オーディエンスはたまらず両手を叩く。続けて「ハローアンハッピー」と一言告げたのち、振り付けが印象的な“R.I.P.”、澄んだささやきとグルーヴ感の調和が美しい“forget-me-not”を披露した。「人見記念講堂、あらためましてこんばんは。」の言葉を皮切りに、ReoNaが本ツアーに込めた想いを告げる。「繋がって巡って、廻っていく“HEART”。あなたの心も集められたら」。息継ぎすら愛おしい彼女の言葉に、オーディエンスは懸命に耳を傾けていた。生まれ故郷である奄美大島の二度と会えない人へのメッセージを手紙のように綴った歌とReoNaが紹介して始まったのは“ガジュマル ~Heaven in the Rain〜”。ピアノの主旋律が、ReoNa自身が抱える後悔と願いをゆっくりと紡いでいった。

続けて披露された“生命換装”では、悲哀と体温を帯びたポエトリーが。そして“虹の彼方に”の始まりを告げる一音が鍵盤から響くと、脈打つメロディが聴くものの心に住み着いていった。そして“オムライス”。この曲では、ReoNaの表情が薄暗くて見えないまま、まるでどこかの誰かの物語を代弁するような演出だった。続けざまに観客のハートを支配したのは、アコースティックギターによるカントリーさと、切なさが同居した“SWEET HURT -Naked-”。薄明に照らされたReoNaと、たしかに揺れ動く影の美しさも相まって、ステージは生々しい高揚感に包まれていた。そして2025年の思い出をバンドメンバーと振り返るなか、Aqua Timezとツーマンライブを開催した話題に。そしてReoNaが「太志さんから『託す』といってもらったお歌です。」と語りながら歌い始めた楽曲は“決意の朝に”。心をさらけ出しながら舞台の上をたゆたう彼女を見ると、つい手を伸ばしそうになる。

ステージは、不揃いな感情を優しく切り取った“かたっぽの靴下”へ。続けて穏やかな空気を切り裂くように始まった“End of Days”では、ReoNaがマイクを握る手に力を込めて言葉を紡いでいた。ふと時が止まる。心音が聞こえるほどの静寂のなか、ReoNaがゆっくりと語りだしたのは「最悪の選択肢を選んでしまうくらいなら、いっそのこと、逃げたっていいと思うんです。」というメッセージ。ボカロP傘村トータから託された曲“敗走”で輪郭のある歌声を震わせた。そしてReoNaがふと「ウィー・アー・オール・アローン。」と呟くと、たった一人のあなたに寄り添う歌として“芥”を客席へ届けた。彼女の透き通るブレスが会場に溢れるたび、夢の中にいるような感覚を覚えた。

「ゴミのままで、ありのままの命で、燻ったままで、生きて、生きていこう。」そんなReoNaの言葉とともに舞台は暗転。ふたたび彼女を一筋の光が照らすと、その手にはアコースティックギターが握られている。ただひたすら絶望に寄り添う歌“Debris”の始まりの合図だ。生きていこうと何度も訴えるReoNa。曲が終わり、彼女が「ありがとう」と呟く頃には、観客たちが自らの足場を確かめるように呼吸を整えていた。一体になったステージは“コ・コ・ロ”へ引き継がれ、客席からはクラップが発生。カラフルな照明がステージを舞い踊る様子は、ここに集まった心たちが喜び合っているようにも見えた。

「また何度でも、巡った果てで、たどり着いた場所で。逃げて、逃げて、逃げて、逃げて逢おうね。」そう言葉を残したReoNaが選んだラストナンバーは“HEART”。「まだ生きてる まだ生きてる」心臓の鼓動のようなリズムで紡がれるメッセージに、この空間だけが感情のすべてを許されているようだった。全楽曲を歌い終えたReoNa。まぶゆい光に包まれながら、透き通る眼差しでフロア全体をしばらく見つめ、「じゃあな!」と一言。上手や下手、2階席に向けたっぷりと時間をかけお辞儀をしていく。この瞬間も、彼女が用意した一曲だったに違いない。ステージを通して、観客がたしかにReoNaから受け取った“HEART”。自分がどこにしまったかはわからずとも、今日を生きていくための温もりは感じられる。

Text:川上良樹
『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”』@昭和女子大学人見記念講堂 セットリスト
01.命という病
02.オルタナティブ
03.GG
04.R.I.P.
05.forget-me-not
06.ガジュマル ~Heaven in the Rain〜
07.生命換装
08.虹の彼方に
09.オムライス
10.SWEET HURT -Naked-
11.決意の朝に
12.かたっぽの靴下
13.End of Days
14.敗走
15.芥
16.Debris
17.コ・コ・ロ
18.HEART





