THE BEAT GARDEN VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ちゃんとひとつ提示できるポリシーというか、メッセージをこの“わたし”で紡げたと思います。

THE BEAT GARDENが新曲『わたし』を7月9日にリリース。今作の“わたし”は、カンテレ・フジテレビ系⽕曜よる11時ドラマ⽕ドラ★イレブン『あの⼦の⼦ども』の主題歌となっている。「高校生の妊娠」を真正面から描いた話題作の主題歌ということもあり、いろいろと思いを巡らせたという“わたし”の制作についてや、秋から始まるone man live tour 2024『FORTE』に向けての意気込みなど、U、REI、MASATOの3人に話を訊いた。

■前作の『present』以来の取材になりますが、最近のモチベーションというか調子はいかがですか?

U 最近は、SNSなどで海外の方からもリアクションを貰うことが増えてきたこともあって、この前開催されたブラジルのフェス(第17回ブラジル&ラテンフェスティバル2024)に乗り込んでみたりしました。

REI 僕は最近お茶にハマっていて、レモングラスとか、緑茶と何かを混ぜたやつとか、水出しで冷たくしたりもして楽しんでいます。

■オシャレですね。これからの季節にいいですもんね。MASATOさんも以前コーヒーにハマって、豆から挽いてコーヒーを入れたりしていましたよね?

MASATO それはずっと今でもやり続けていますよ。僕は最近この二人の影響もあって、古着に興味を持ち始めて、バンドTシャツとかにハマっています。

■最近は海外のヴィンテージのバンドTシャツが流行っていて、すごく人気があるものは高価になっていますもんね。MASATOさん今日はHi-STANDARDのバンドTシャツのリメイクですか?

MASATO これは僕が大好きな古着屋さんでたまたまガレージセールをやっていて、掘り出し物で見つけたんです。1点モノだったので即決で買いました。

■最近、みなさんが気になっているアーティストや曲などはありますか?

MASATO 新しい曲をいろいろと聴くようにしているんですけど、最近は僕の知り合いが制作に携わっているという若いアーティストで、idomくんというシンガーソングライターの曲をよく聴いています。話を聞いてみたら、まだ音楽を始めて2、3年くらいらしいのに、あのレベルの音楽制作をするということですごいなと思って。僕はメロディラインを聴いて、きっと鍵盤をやってきた人のメロディだから、めっちゃピアノが弾ける人なんだろうなと勝手に思っていたんですけど、聞いてみたらいっさい楽器は弾けないと言っていてもっとびっくりしました。(笑) 「きっと聴いてきた音楽がいいんだと思います」と本人は言っていたんですけど、若いセンスに驚愕したんですよ。だから、最近の若い人たちが作る音楽にはめっちゃ興味がありますね。

REI 僕は最近jo0jiさんというアーティストに注目しています。すごく洋楽的ではあるんですけど、ちゃんと邦楽に落とし込んでいて、音数が多くなくて、ピアノも生で弾いている感じとか、曲のバランスがすごく自分好みだったのでよく聴いています。最近スタッフで新しく入ってきた人がいて、その人がどういう音楽を聴いている人なのか知りたくて、よく聴く曲のプレイリストを作って送ってもらったら100曲くらいあったんですけど、その中に入っていた1曲だったんです。今ではハマっていろいろとjo0jiさんの他の曲も聴いています。

U 僕は最近KANさんの曲をあらためてちゃんと聴いたらすごくハマってしまって。たまたま曲を作っている時に、カノンコード(カノン進行)と言われているヒット曲に多いコード進行があるんですけど、KANさんの曲に結構それが多くて、参考に聴いていたんですけど、歌詞がめちゃくちゃいいなと思って。言い回しとかが、この時代にこの書き方をしているというのがあらためてすごいなと感じたんです。ストレートなんだけど、ちょっと普通にはない表現をしていて、少しひねくれているところもあったりして。僕の恋愛観にもすごく似たものを感じましたし、帰り道に曲を聴いたら街がMVになっちゃう感じ。(笑) 切ない気持ちで帰り道が歩けていいんですよね。しかもKANさんのアルバム曲で、シングル曲とか代表曲じゃない曲でも、いい歌詞がすごくたくさんあって、中でも“恋する二人の834km”と、“君が好き胸が痛い”の2曲が特に好きなんです。

■KANさんは名曲がたくさんありますよね。亡くなってしまって残念です……。今年の4月に開催された初のZepp単独公演『good error』のライブはいかがでしたか?

U ZeppDiverCityは、リハーサルの時にはすごく大きな会場だなと感じたんですけど、お客さんが入ったら、すごくお客さんとの距離も近くて、意外とライブを観る側で見ていた時よりもそこまで広く感じなかったんです。それに新しい人たちも結構来てくれていましたし、その空気感も新鮮ですごく楽しかったです。

REI 僕たちがやれることを全部詰め込んだライブでしたね。初めてのお客さんもたくさんいらっしゃったんですけど、自分の中ではちょっと悔しい部分もあったライブでしたが、それも含めて『good error』だったなと感じました。タイトル通りのライブになったんじゃないかなと思います。

MASATO まさに今二人が言ってくれたようなライブでしたね。「僕らにはあのステージは12年かかったんだな」と、いい意味で実感できましたし、本当に偶然できたタイトルでしたけど、タイトル通りのライブができたなと思います。僕はこのライブではエレキギターを弾いたんですけど、それもすごくいい経験になりました。あのきっかけがなかったら、きっと始めていなかったと思うし、エレキギターを買うまでは、そこまで踏み込めていなかったと思います。ギターでフレーズを弾くことで、もっと自分たちの曲を愛せるようにもなったので、今後も武器のひとつとして使っていけたらいいなと思いました。

■以前取材した時に、Uさんが「Zeppはただの通過点でもないし、ゴールでもない」とおっしゃっていましたが、THE BEAT GARDENにとって、この度のZepp公演はどんなマイルストーンになりましたか?

U そうですね、あの取材の時は少し強がりで言っていた部分もあったと思います。そう言っていないと不安だったのかもしれないですけど、Zepp公演をやる前とやった後では、結構気持ち的にも大きく違うところがあると思います。やっぱり一番は、「声の大切さ」を知ったことです。その時のライブでは後ろに映像とかを入れずにやったので、僕らもお客さんもお互いに頼りになるのは声しかなかったんです。広い会場でしたから、どうしても真ん中以降は顔がよく見えないですし、自分たちが作ってきたアンセムがある曲や、今まで育ててきた曲たちがあったからこそ、声が繋いでくれた部分が本当に大きかったなと思います。あらためてビートガーデンとはどんな存在なのかを考えた時に、ファンの人たちとどういう繋がり方をしてきて、どういうライブをするべきなのかを教えてくれた場所でした。これからこれ以上の場所に立ったとしても、一つの指針(マイルストーン)になる会場だったと思います。逆にそれよりも小さな会場でライブをする時にも、「今のこの声が大きな会場に行っても、僕らを繋いでくれるんだ」と思えるので、すごく大事なことを教えてくれた場所になりました。きっと僕らがもっと大きくなったとしても、時々またライブがやりたくなる会場なのかなと思います。

■なるほど。では新曲『わたし』のこともお聞きできればと思います。今作はカンテレ/フジテレビ系ドラマ『あの子の子ども』の主題歌とのことで、立て続けのドラマタイアップですが、タイアップが決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

U 決まった時はもちろん嬉しかったんですけど、率直に言うと、僕は今回のテーマは難しいなと思いましたし、テレビの中で流れる曲ですし、歌詞を書くにしても、やっぱり自分の中では何か気にせずにはいられないプレッシャーがありました。嬉しい反面「頑張らないと」と思う気持ちが大きかったですね。

REI 僕ももちろん嬉しかったんですけど、最初にお話を聞いた時は、高校生の妊娠をテーマにした作品ということで、もう少し暗いというか重い感じなのかなと思っていたので、デモを作る段階では、泣き要素が強いというか、そういう感じで作り始めていたんです。でもストーリーを読んだら、意外と前向きに頑張っていく二人が描かれていたので、最終的にはこの“わたし”という曲が、このドラマにぴったりな楽曲になって良かったなと思いました。

MASATO 僕はBABEL LABELさんの作品が好きで、よくドラマとか映画を追いかけて観ていたんですけど、今回のドラマの監督がそのレーベルのアベラヒデノブさんだったので、一緒に仕事できるのがすごく嬉しかったです。

■ドラマの原作は読まれた感じですか?感想はいかがでしたか?

U 原作はもちろんなんですけど、ドラマの脚本も5話まで読ませていただきましたが、この作品がドラマになるのがすごく楽しみでした。きっと誰もがどこかで心当たりがあるというか、高校生というのは、ほとんどの人が経験していることだと思うので、「わかる」という共感の気持ちもあるし、大人になった自分たちからしたら、「この子たちになんて声をかけてあげたらいいのかわからない」という気持ちもあるし、すごく物語に入り込めるストーリーでした。

REI これは高校生の話でしたが、みんな誰しもそうなる可能性は秘めているじゃないですか。だから本当に他人事ではないと思いますし、そういった責任についても再度認識させられるというか、あらためてちゃんと考えないといけないなと思いましたし、いろいろな角度から読ませていただきました。

MASATO 原作はすごく画が綺麗だったので、それに合わせて綺麗な音楽にするのかとか、話の内容に合わせて深刻な曲調にするのかとか、そういうことばかりを最初は考えてしまいましたね。すごくいい話なんですけど「どうしたらいいのかな?」と、そんなことばかりを考えながら原作を読んでいました。

■今回は高校生の妊娠というセンシティブな内容のドラマですが、みなさんは主人公の二人のうち、どちらの目線というか、どちらに感情移入して観ていますか?

U 僕は完全に福(さち:桜田ひより)ですね。もう「宝(たから:細田佳央太)に出会えてよかった!」と思いますし、「日本中の男の子が全員宝だったらいいのにな」と思うくらいです。(笑) 全国大会に行ける権利をあんなに簡単に諦めて、福のためにいろいろと調べたり、あんなにいい男の子います?!僕は福側の気持ちでどんどん宝が好きになる気持ちで観ていますね。

REI 僕も福ですかね。宝くんはすごく完璧だし、お手本な男の子だと思いますし、素敵な方だと思います。今回のドラマは基本的にこの二人で描かれているから、感情の動き方がすごくわかりやすいというか、描写が細かく描かれているのがより伝わってくるので、そういったところも含め、僕は二人とも大好きです。

MASATO 僕も比重でいうとやっぱり福ですね。でもこの温かさみたいなものって、予期せぬ妊娠という出来事に、周りのみんなが肯定的でいてくれるという背景がある福だからこそ、生まれている温かさだなと感じます。過去にはそうじゃないような描き方の作品もあるじゃないですか。だからこそ今回は福に感情移入ができる気がします。

■意外に男の子目線で観ている人はいないんですね。(笑)

U 確かに。僕らはみんな乙女なんですかね。(笑)

■ちなみにドラマ内で“わたし”の曲が流れた感じはいかがでしたか?

U 今回の歌詞を書く時に、歌詞の一行一行をアベラ監督とかとZoomで話しながら、「この言葉は福と宝の言葉にしか当てはまらない感じがするので、もっと全国の高校生たちみんなにもわかる言葉に寄せて欲しい」とか、「このシーンはすごく大事なので、この言葉を入れて欲しい」とか、すごく明確に希望を伝えてくていたんです。なので、もう曲を流してくれるシーンの言葉、例えば「携帯」とかを歌詞にハメてくれていたので、どのシーンで流すのかをあらかじめちゃんと決めてくれているんだなと感じ取ったので、それにちゃんと応えられて、そこにハメ込んでもらえているんだとしたらすごく嬉しいです。物語を邪魔せずにちゃんと仲間入りできていたのが嬉しかったし、それくらい馴染んでくれていて本当に良かったです。

REI すごく感動しました。本当にドラマに寄り添える曲になったなと思いました。

MASATO 僕は祈るような思いで1話目を観ました。本当にこのプロットに沿って一音一音紡いでいったので、その一音一音がちゃんと作用していってほしいと思って、本当に一音一音を辿って聴いていました。ドラマって毎回いろいろなストーリーがあって、これからも展開されていくので、1話観ただけじゃまだ安心はできないので、一応1話目には寄り添えてホッとはしたんですけど、毎回ハラハラしながら観ています。

■今作“わたし”の作曲はTHE BEAT GARDENとなっていましたが、3人で一緒に制作された感じですか?それともパートごとに分担したりとか、誰かがベースを作ったりした感じですか?

U 今作はMASATOがベースを作ってくれました。

MASATO 最初は先ほども言ったように、もっと深刻な曲調にするか迷ったんですが、自身から出てきたメロディを大切にしようと思って。でも出てきたメロディが全然切なくなかったので、そっちに振り切ろうと決めてその限界点を伸ばしていった感じです。そこからはここにはこういった歌詞をハメてほしいなと、なんとなくストーリーに合わせて思っていた箇所があったんですけど、今回は本当に自分が意識していた意図を全部Uさんが歌詞で汲んでくれていたんです。僕はUさんがドラマサイドの人たちとどういったやり取りをしているのかも聞かされていなかったんですけど、それが本当に意図通りで、ピタッとハマっていたのがすごかったです。

■Uさんは今作の作詞にあたって大切にしたモチーフなどはありましたか?

U 逆に僕は今回はMASATOに何度もブチ切れているんですけどね。(笑) MASATOはいつも歌詞のことを考えずに、世界観を優先して曲を書くんですよ。しかも今回は特に歌詞を書く人のことを汲んでくれていなかったんです。だからこそ素敵なメロディになっている場合もあるんですけどね。(笑) 最初に曲を聴きながら鼻歌みたいにメロディを口ずさんでみて、今回は高校生がテーマだし、例えばこれが合唱コンクールの曲になるとしたら、憶えにくい歌詞は絶対につけてはいけないので、いつも以上に素直に書こうと思いました。何度も何度も自分で読み返して、自分のやりたいことが出てしまっていないかを確認しながら、何度も修正しながら、誰が聴いてもすぐに内容を理解できるような言葉を使うことに気をつけました。