富田美憂 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ミニアルバムで見せた大人な表情、数年後までのビジョンも語る。

声優、富田美憂がコンセプトミニアルバム『Fizzy Night』をリリース。「大人の恋愛」をテーマに作られたという5曲入りの本作は、ジャジーな楽曲やバラード調の楽曲など、元気でパワフルな印象が強かった富田の大人な一面を見せた作品となっている。
今年23歳を迎え、歌手活動3年目となる富田。「大人の恋愛」というテーマについて、そして今作の制作背景やそこで発見したことなどについて、話を訊いた。

■今回のミニアルバムはどうして「大人の恋愛」というテーマになったんですか?

富田 コンセプトアルバムを作りたいというお話はずっとしていたんですけど、ファーストアルバムも出したし、ワンマンライブも終わって、ここまでいろいろな経験を積んできたので、「このタイミングで出してみたらどうだろう」というお話をいただいたんです。前回のシングル『OveR』のリリースが終わったタイミングで、スタッフみんなで集まって渋谷に焼肉を食べに行って、今後の作戦会議をしたんです。そこで「ミニアルバムのコンセプトはどうする?」っていう話をみんなでして、「こういうのがやりたいです」っていうのを自由に話し合いました。実はこの時にもう手元にはシティポップっぽい曲調の“Coming Up”と、バラードの“My Guiding Star”があったので、それも今回のアルバムに収録して、「その曲に合うようなコンセプトで作っていこう」っていう話になって。それで「ジャジーな曲を入れてみたらどうだろう」とか、「“ジレンマ”とか“かりそめ”に近いような大人っぽい雰囲気の楽曲もあったらいいんじゃないか」っていう話になって、今回は「大人の恋愛」をテーマにしたアルバムにしようと決まりました。

■アーティスト活動を始めてからは3年程ということで、その間でのご自身の成長も踏まえて「大人」というワードの入ったテーマが付けられているのかなとも感じました。ご自身の成長との関連もあるんですか?

富田 それもすごくあって。例えば30歳から33歳になる3年間と、20歳から23歳になる3年間って、多分吸収するものも違うし「一気にぐっと大人になるんだろうな」っていうのは思っていて。今は23歳なんですけど、20代前半だからこそ出せる私なりの大人を表現するのも面白いかなっていうのは思いました。

■最近ご自身で「自分大人になったな」と感じた出来事などはありましたか?

富田 とても小さいことで言うと、微糖のコーヒーが飲めるようになりました。(笑) 今までスタバとかに行ったら甘いのばっかり頼んでいたんですけど、最近はスターバックスラテにガムシロップとかを入れずに飲めるようになって。毎日現場にコーヒーを持って行くようになったとか、そこはちょっと大人になったなと思います。(笑)

■先ほど既に2曲はあったというお話もありましたが、それ以外の曲に関しては「こういう曲を歌いたい」という希望や意見も出されたんですか?

富田 それ以外の曲に関しては今回のテーマ通り、「大人の恋愛」っていうコンセプトでオーダーを出させていただいて、それでいただいた曲の候補の中から選びました。同じテーマなのに作家さんによって全然違うタイプの曲たちが上がってきて、曲選びの段階からすごく面白かったです。

■富田さん自身は「大人の恋愛」というテーマに対してどんなイメージを持っていますか?

富田 とても偏見かもしれませんけど、中学生とか高校生とかの恋愛って、「好きです!付き合ってください!」ってストレートに言ってお付き合いするみたいなのが多くて、若々しさがあるなって思うんですけど、大人の人たちがする恋愛って「すごく頭を使うんだろうな」って思いますね。あんまりストレートに言わずに……。そういうイメージがあります。

■今までの富田さんの恋愛ソングで言うと、“片思いはじめました”は直球の恋愛ソングで、今おっしゃった前者のものに近いですよね。

富田 そうですね。“片思いはじめました”は、「カルピスのCMみたいな感じで」っていうオーダーをさせていただいたぐらい、初恋をした学生さんとかが共感できるような世界観になっていて。大人が聴いても「学生時代はこういう恋愛したな」って懐かしく思い出せるような曲だったんです。今回はあえてそういうキラキラ感はちょっと抜きたいなっていうのも意図としてありました。

■全体的に声域も高めで、歌声の印象も違って聴こえます。特に“Catcher”はファルセットも多いですよね。

富田 そうですね。今まではありがたいことにアニメのタイアップ曲が多かったというのもあって、結構カッコよくロックにキメていくみたいなのを強みにしていたんです。でもやっぱり大人のいい女性って、常に余裕があると思うので、今回のアルバムに関しては必死さをあまり出しすぎたくないなって思っていて。全体的にちょっと力を抜いて歌ったりとか、あえてファルセットばっかりで歌ってみたりとか、力押しすぎない歌作りみたいなのを意識していました。“Catcher”は作家の椿山さんがレコーディングに来てくださったんですけど、「どういったイメージで書いてくださったんですか?」って聞いたら「富田さんは受身な感じより強気でいきそうなイメージが勝手にあったから、ちょっとギラギラした感じで作りました」みたいなことをおっしゃっていて。(笑) 以前椿山さんとご一緒した作品で「錆喰いビスコ」っていう作品があったんですけど、そこで私が演じたキャラクターがちょっと強気な感じだったので、「そのイメージも椿山さんの中ではあったのかな?」なんて思って。なので、割りと攻めの姿勢で作っていきました。

■そうだったんですね。楽器の使い方も今回はブラスが入っていたりと華やかですよね。“群青 Dreaming”はジャジーな楽曲ですが、これも作家さんによる大人っぽさの違いみたいなところなんですかね?

富田 そうですね。フワリさんに実際にお会いした時、すごく小柄でかわいらしい方だったから、「この人のどこからこの曲が出てくるんだろう……?」って謎のままレコーディングが終わったんです。(笑) それにこの曲は言葉選びもすごい独特で、それこそ私が偏見として勝手に思っていた、「大人はあんまりストレートに言わない」っていうのがすごく出ている曲だなと思います。大人でちょっとセクシーな感じを歌で表現しやすい曲だなとも思ったので、あえてねっとり歌ってみたりとか、今まであんまり出してこなかった表情を詰め込めるような曲だったので、聴いていただいている方たちにも「ドキッ」っとしてもらえたら嬉しいです。

■まさに歌がねちっこい感じというのは聴いていて感じたことでした。それは富田さんの中にあった引き出しのひとつだったんですか?

富田 そうですね。どの曲もそうなんですけど、今回は「私が持ってきた歌のアプローチをどう良くしていくか」みたいなディレクションをしていただいたので、伸び伸びと歌わせてもらいました。

■“Coming Up”はアルバムの制作が始まる前からあった曲とのことですが、どのような経緯で作られた曲だったんですか?

富田 前作の“OveR”のレコーディングをした日だったと思うんですけど、レコーディングスタジオで、「今度はシティポップをやってみたいです」って言った記憶があるんですよね。ノンタイアップで自由に何でもできるみたいな状況になった時に、シティポップっぽい曲もやってみたいなってぼやいたら、スタッフさんがとても乗り気になってくれて、すぐに曲をくれたんですよ。その時はまだどのCDに収録するかとかは決まっていなかったんですけど、「とりあえず作っちゃおう」みたいな感じですぐに作ってくださって。でも今回のテーマにぴったりだなと思ったので収録しました。

■シティポップを歌うにあたっては、どのようなことを意識されたんですか?

富田 私は年代的にも触れたことがなかったので、私なりに「シティポップとは?」みたいなことを考えたり、YouTubeで昔の曲を聴いたりもしました。でもやっぱり富田美憂が歌う、令和の新しさもあるけど、ちょっと懐かしいレトロな曲調にしたかったので、私らしさはちょこちょこと入れながら歌っていきました。

■“My Guiding Star”も先にできていた曲だったんですよね?

富田 そうですね。この曲は“Coming Up”よりも前にあった曲、たしか1年前くらいにもう歌も入れた状態で、トラックダウンも終わってすでにできあがっていた曲なんです。もしかしたら別のCDのカップリングに収録するかもしれなかった曲なんですけど、オケを聴いた感じで「シャンシャン」って鈴の音が入っていたりして、すごく冬っぽい曲だったので「冬にリリースするCDに入れたいよね」っていう話になって、ストックされていた曲だったんです。

■バラードの落ち着いた中にも力強さが感じられる曲ですよね。アルバムの中でも存在感があります。

富田 そうですね。“群青 Dreaming”とか“Catcher”って、ちょっと非日常っぽさがある曲だなと思っていて。その中でも“ベンチ”と“My Guiding Star”は、このアルバムの中でも日常感を出せる曲なんじゃないかなって思っていて。特に“My Guiding Star”は、日常の中にあるささいな幸せを切り取った楽曲になっているので、恋人と過ごす日常の温かさみたいな、のんびりとした雰囲気も込められていて。聴いてくださっている方たちも、もし奥さんとか旦那さんとか恋人とかがいたら「いつもありがとう」って言いたくなるような曲になったらいいなと思ったので、自分の中にある感謝の気持ちも込めて、温かい曲になったと思います。この「導く星」という意味のタイトルは、作家さんがつけてくださったんですけど、 “星に願いを”にインスピレーションを受けて作ったとおっしゃっていたので、私も夜空を思い浮かべながら歌いました。聴いていても情景がぱっと入ってくるような曲になっていると思います。

■“ベンチ”はすごく優しい楽曲で、雰囲気としては“片思いはじめました”にも近いものがあるんじゃないかな?と感じました。

富田 それこそ「“片思いはじめました”の進化系みたいな曲もあったらエモいよね」っていう話から作られた曲でもあって。アルバムとしては2枚目になるので、そういう繋がりがあってもいいんじゃないかなっていう。あとは「大人がテーマだけどかわいらしい曲も欲しいよね」っていうところから作っていただいた曲でした。