みんなから頂いた思いを音楽にして返していく。それが私の人生なんだなと改めて感じる。
Wakanaが5月12日(日)に東京・I’M A SHOW(アイマショウ)にて、ソロデビュー5周年を記念したワンマンライブ「Wakana 5th Anniversary Live 〜THE“VOICE”Stories〜」を開催した。昨年3月に武部聡志をプロデュースに迎えた3rdアルバム『そのさきへ』をリリースしたWakanaは、同年7月にアルバムリリースを記念したワンマンライブ『Wakana Billboard Live 2023 ~そのさきへ~』をビルボードライブ横浜と大阪で行い、12月には東京・浜離宮朝日ホールにて年末恒例となっているクラシックコンサート『Wakana Classics 2023 ~Winter Party~』を開催した。そして、2024年2月にソロデビュー5周年を迎え、アニバーサリーイヤーに突入。フルバンド編成では、2021年4月に東京・大手町三井ホールで行われたワンマンライブ『Wakana spring Live 2020~magic moment~』以来、3年ぶりとなるワンマンライブで、Wakanaはヴォーカリストとしての魅力をダイレクトに発揮。ここでは、2公演が行われたライブの1st Stageの模様をレポートする。
音楽監督を務める武部聡志(Key)を先頭に、植田浩二(Gt)、浜崎賢太(Ba)、鶴谷智生(Dr)というバンドメンバーに続き、ペールブルーのドレスを身に纏ったWakanaがステージに上がると、満員の客席からは、これから始まるライブに向けた期待と生演奏で歌が聴ける喜びが詰まった大きな拍手が湧き上がった。オープニングを飾ったのは、1stアルバム『Wakana』の1曲目に収録されていた“約束の夜明け”。ソロとしての歩みを始めた5年前に自身で作詞した楽曲で、まだ見ぬ未来に対する不安や葛藤に揺れながらも「明日へ進む道に/飛び込んでゆこう」と歌を続けていく決意を込めたフレーズをドラマチックに歌い上げた。3rdアルバム『そのさきへ』に収録されていた一青窈×マシコタツロウ提供の“Rap Nui”では、軽快なバンドサウンドに乗せて、「新しい旅を始めるんだ/さぁもっと遠くへ」と体全体を使って表現し、ソロのヴォーカリストしての旅の続きを力強く宣言した。最初のMCでは「今日の日のことを毎日毎日考えていて。あっという間に今日が来てしまったのだけれども、皆さんのことを毎日思ってきたので、やっと会えたなという思いでいっぱいです。この5年間で得た思い出、たくさんの音楽を目一杯、ぎゅぎゅっと詰め込んでお届けしたいと思っております」と挨拶。そして、「自分の言葉をみんなに伝えることがすごく難しくて、悩みながらも、自分の思いをみんなに届けたいという決意を込めて書いた」という“翼”、その続編として製作された“殻”という、他者との関わりから生まれる孤独感を描いた2曲を続けてパフォーマンス。会場全体を情熱的なヴォーカルで赤く染め上げら、フラメンコ歌謡のようなサウンドとともにWakanaの多彩なヴォーカル表現が味わえる時間となっていた。
ここで、ソロデビューした2019年の9月に中野サンプラザで行われたワンマンライブ『Wakana Live Tour 2019 ~VOICE~』を振り返り、「ソロデビューしてまだ日が浅く、まだまだ自分自身も気づけていない“自分の声”があったり、皆さんがまだ知らない声があったり、届けたい声があったり。私の中でのいろんなVOICEがたくさん溢れていました」と語った。そして、ライブのサブタイトル『THE“VOICE”Stories』について、「時を経て、この5年間で、たくさんの物語が積み重なっていきました。思いがどんどん増えていきました。そんな、この5年間の思いを物語として、みんなにお届けしたいと、このサブタイトルをつけました」と説明。「きっとまだまだこれからも私の知らない声、皆さんにまだ届けたことのない声が生まれてくるかもしれません。それを楽しみにしている部分もあるという思いも込めています」と語り、ライブで歌うのは久しぶりだという“時間”をテーマにした“僕の心の時計”では、Wakanaの歌と武部によるピアノがデュエットのようにぴったりと並走。一音たりとも外せない正確なピッチを披露すると、ボカロにしか歌えないのではないかと思うような超絶技巧の高速ナンバー“KEMONO feat.清塚信也”を言葉の輪郭も明確に発しながら堂々と歌いこなす姿からは、改めてシンガーとしてのスキルとポテンシャル、表現力の高さが伝わってきた。
Kalafinaの“I have a dream”のカバーからはアコースティックコーナーへ突入。ピアノ伴奏のみで声楽的なヴォイスを響かせ、その歌声1つで観客を楽曲の世界観に惹き込むと、アコースティックギターが加わり、2020年に他界したWakanaの父親への思いを半﨑美子が曲にしたためたバラード「標」から涙と笑いが交錯する別れを歌った“アキノサクラ”へ。「今年も心に」に続く「また枯葉舞い散る」というフレーズで言葉に詰まり、歌えなくなるシーンがあった。この日が「母の日」だったこともあるが、家族想いで故郷を愛するWakanaの目に涙が浮かんでるようにも見えた。“where”からは再びフルバンド編成に戻り、高揚感に溢れたダンスビートが広がっていくと、観客から自然とクラップが湧き起こった。歌詞の通りに「丸く弧を」描いてみせた“揺れる春”では右手を掲げて、「高鳴る鼓動その先で 明日が待っている」とまさに高らかに声を響かせると、“Flag”では雄大なサウンドの中で「僕たちの旅は続くだろう/どこまでも どこまでも 遠くへ」と呼びかけ、“Happy Hello Day”では観客一人一人を手を繋ぐように歌いながら、「ありがとう今日の日が/君と逢えたこの日が」と感謝の気持ちをストレートに送った。クラップが鳴り止まない客席の熱気を受けながら、メンバー紹介を経て、“恋はいつも”は大合唱となり、会場が心地良い一体感に包まれた。
クライマックスを前にWakanaはこの日のライブに集まってくれた観客にゆっくりと語りかけた。「みんなを目の前にすると、自分が知らなかった声が現れてくるし、もっと伝えたい思いが溢れてきます。こうしてみんなから頂いた思いを音楽にして返していく。それが私の人生なんだなと改めて感じています」という言葉に会場からは大きな拍手が送られた。「コロナ禍でライブができなかったときに書いた歌詞で、どんな時も声の限り、みんなに伝えていこうと思うし、音楽がみんなに届くことが、やっぱり私にとって大切な瞬間だと思う」という言葉から、“明日を夢見て歌う”へ。最新アルバムの収録曲でWakanaが作詞し、武部が作曲と編曲を手がけたピアノバラードで「進めこの声の限り/明日を夢見て歌うよ」という前向きなメッセージを届けて本編を締めくくった。
アンコールの拍手に応えて、白いノースリーヴのマキシワンピに着替えて再登場したWakanaは、「私の中にある音楽、歌の全てをこの曲に込めました。皆さんと一緒に、ずっと、その先を見つめて行けたら嬉しいです」と語り、最新アルバムのリード曲“そのさきへ”で「ひとりじゃないから/いつでも ここにいる」というフレーズを共有し、「皆さん、またお会いしましょう」と再会の約束をし、ライブはエンディングを迎えた。終演後のWakanaは「いろいろと考えてモヤモヤしてたけど、正解はライブがくれるんだなと確信した」と語っていたが、この5年間の集大成とともに、これからの道のりへの期待が高まる、極めて意義深いライブだった。なお、Wakanaは7月13日(土)に神奈川県・横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホールで、RYTHEMとのツーマンライブ『エアトリpresents 毎日が夏祭り2024』に出演する。また、12月18日(水)には、東京・浜離宮朝日ホール(音楽ホール)で5年連続5回目となる恒例のクラシックライブ『Wakana Classics 2024 (仮)』の開催が決定したことも発表した。
Photo:牛島康介
https://www.jvcmusic.co.jp/wakana
『Wakana 5th Anniversary Live 〜THE“VOICE”Stories〜』@I’M A SHOW セットリスト
01. 約束の夜明け
02. 1st Stage Rapa Nui / 2nd Stage 442
03. 翼
04. 殻
05. 僕の心の時計
06. KEMONO feat.清塚信也
07. I have a dream(Kalafina Cover)
08. 1st Stage 標 / 2nd Stage 金木犀
09. 1st Stage アキノサクラ / 2nd Stage オレンジ
10. 1st Stage where / 2nd Stage 君だけのステージ
11. 揺れる春
12. Flag
13. Happy Hello Day
14. 恋はいつも
15. 1st Stage 明日を夢見て歌う / 2nd Stage 時を越える夜に
ENCOLE
01. そのさきへ
02. あとひとつ(2nd Stageのみ)