Wienners VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

玉屋2060%(Vo&Gt)

玉屋2060%、音楽に対する向き合い方の変化と新曲”GAKI”を語る。

Wiennersがデジタルシングル『GAKI』をリリース。怖いもの知らずな子供の勢いを反映した怒涛の歌詞とともになだれ込む、疾走感のあるキャッチーなメロディはWiennersらしさ満点である一方、ハードコアサウンドとEDMの融合がどこか新鮮さも感じる“GAKI”。バンドを始めた頃のように純粋な気持ちで音楽に向き合えているという玉屋が、実験的に作った楽曲だという。
今回はそんな”GAKI”を作り上げた玉屋2060%にインタビューを決行。“GAKI”についてはもちろんのこと、2024年に考えていたことや近年のバンドシーンへの向き合い方、音楽との距離感の変化、さらに2月から始まるツーマンツアーについてなど、たっぷりと話を訊いた。

■昨年2024年はWiennersにとってどんな年になったと感じていますか?

玉屋 2024年はフレッシュでしたね。自分もフレッシュだったし、バンドもフレッシュな感じでやれていたなと思っていて。それがなんでなのかはわからないですけど……でもメンバーが変わったということも大きかったんだろうなと思います。あとは単純に初めて見るお客さんが増えたり、初めて耳にする人が増えたこともフレッシュに、新鮮になっていった要因のひとつだったと思います。

■フレッシュにしようといった意識がもともとあったわけではなかったんですね?

玉屋 特にそういう意識はしていなかったですね。これまでの積み重ねのような気もします。今まで僕らはシーンというものに属さずにやってきたんですけど、パンク、メロディックパンクのシーンにある程度意識的にいるようにした結果、そこの方たちに気づいてもらえたっていうのが大きかったのかなと思いましたね。

■シーンに意識的に属してみたというのは、なにか考えることがあってのことだったんですか?

玉屋 今まで、良くも悪くもWiennersってどこにでも属せるけど、どこにも属せないバンドだったんですよ。付随する説明がなくても、好きな音楽だったらみんな聴くだろうと思っていたし。でもリスナーの方って、それでは手が伸びにくいんだなと思って。だからこそシーンみたいなものって存在するんだなと思ったんです。そこで、我々はどこにいるバンドなのかを絞って考えてもいいのかもしれないと思って。やっぱり我々はパンク、ハードコアから出てきた出てきた人間なので、パンクバンドとは思っていないですけど、ひとつ絞るとしたらパンクという大きなくくりかなと思ったんですね。今まではそこに絞っちゃうのもつまらないと思っていたけど、ある程度自分たちのスタイルが確立できて、自信を持てたからこそ、1回絞ってイメージを持ってもらおうと思ったというか。フロアがどんな風になってほしいかというと、やっぱりモッシュやダイブがあるライブをやりたいし。そう考えたら一番しっくりくるところがパンクシーンであり、違和感なくそこに入れたのが去年だったのかなと思います。

■シーンを上手く活用するというか?

玉屋 でもそれで気づいたのは、「そこまでちゃんと説明しないと気づいてすらもらえないかないんだなぁ」みたいなことで。好きなものだったら直感的にただただ好きって言ってもらえるものだと夢を持っていただけに、夢が壊れたとまでは言わないですけど、やっぱり「そうなんだな」と思ったし、だからこそみんな説明したり頑張っていたんだなと思ったし。ただ音楽好きとして、「それを変えていくために発信できることはないかな?」と思いました。同じようなことをWiennersを始めた時にもすごく思っていて。「みんな先入観で音楽を聴きすぎだな」みたいな気持ちになっていたんです。「目の前で起こっていることを楽しめばいいじゃん」と思っていたのを、最近また考えるようになったというか。「どうやってこれを伝えていったらいいんだろうな?」と思っている感じですね。

■以前の取材では、メンバー体制が変わったばかりで「サポートを入れたライブをすることで楽曲をより柔軟にとらえることができるようになった」というお話をされていました。2024年はその体制で活動していく中でいろいろと試行錯誤した期間でもあると思いますが、新たに感じたことはありましたか?

玉屋 超極論ですけど、俺、「別にバンドをやりたいわけでもパンクがやりたいわけでもないんだな」というのが改めて分かったというか。(笑) とにかく音楽が好きで、音楽がやりたいんですよ。その中で、たまたま一番テンションの合っている音楽がパンク、ハードコアで、バンドってカッコいいなと思っていて。でも別にライブでギターを弾かなくてもいいし、でも「この曲だったらギターを持ってもいいか」と思ったりするみたいな、そういうのが試行錯誤の結果、分かってきました。いい意味でバンドにこだわっていないし、パンクが大好きだからこそ、そこに我々がこだわらなくても一緒だよねみたいな、そういう感じがしています。

■音楽という大きな括りが好きで、いい意味でバンド形態やジャンルにこだわりがなくなっていったということは、制作をする上では自由すぎて逆に足かせになってしまいそうな気もしますが、曲作りの際に根幹となっている考えにはどんなものがあるのでしょうか?

玉屋 今は自分の聴きたい音楽を作るというのが一番大きいというか。自分の聴きたい音楽イコール、みんなをワクワクさせられる音楽だと思っているんですけど。頭の中にあるこのイメージを具体化できたらみんなめっちゃ驚いてくれるんじゃないか、めっちゃ楽しめるんじゃないかみたいなところが大きいです。Wiennersを始めたのもなにかメッセージがあって始めたわけではないし、今でもでかいメッセージみたいなものはないし、言いたいことって「戦争反対」くらいなんですよ。それをわざわざ曲にしたいなと思う時は曲にするんですけど、音楽をやりたくて音楽をやっているので、「面白い音をどうやって発明しようかな?」というのをとにかくやっている感じです。例えば高校時代に友達の家に集まって、ユニオンとかで買ってきたCDとか、レコードをみんなで聴きながら「これヤバくね?」、「めっちゃカッコよくない?」みたいな感じをやり続けたいなって、バンドを始めた時にも思っていて。当時はずっとこのテンションでやれたらいいと思っていたんですけど、ある時期からそういう感覚がなくなっていってしまったというか、別のことでもっと成長しないといけないことがあって、そういう感覚に焦点を当てる時間がなくなってしまった期間があったんです。でも最近は、また始めたての頃みたいな感覚でできるようになった感じがします。自分たちの新曲も、みんなに「これヤバくない?」みたいな、「みんなこれ聴いてよ、ヤバイっしょ!」というテンションになったというか。それが音楽の楽しみ方としてすごく合っているなと思います。

■めちゃくちゃ純粋な曲作りになっているんですね。新曲の“GAKI”も、そういった純粋なテンションで作った楽曲なんですか?

玉屋 それこそこれは純粋中の純粋というか、元々どこにも出すつもりもなく作っていた曲で。原型を作ったのは1年前くらいかな?ハードコアのEXCLAIMというバンドの7インチがめちゃくちゃ好きなんですけど、それを改めて聴いてカッコいいなと思って。曲はもちろんだけど、音が本当にカッコよくて。こういう曲を作りたいと思って、趣味で作り始めていたんです。その同時期、パンク以外の好きなジャンル、EDMやダブステップにワブルシンセとか、歪んだシンセをどうミックスさせるかを考えていた時期で、その実験みたいな感じでデモを作ってみたのが“GAKI”だったんです。「どういう風にすればギターとシンセがかぶらずに聴こえてくるんだ?」というのを実験しながら作っていて。リリースする気はなかったんですけど、「こんな曲もあるよ」くらいの感じで、メンバーやスタッフに聴いてもらったら、「これ出さない?」みたいな感じに言ってくれて。「じゃあ出します、ありがとうございます!」みたいな感じでした。だからある意味めちゃくちゃ純粋に作った曲です。

■聴いた時、メロディーからはWiennersらしさをすごく感じるのに、サウンドはすごく新鮮に聴こえたので、実験的に作ったというのは納得です。

玉屋 そうですよね。僕も出すつもりがなかったというのは、結構ハードコア寄りすぎだなというか。別に俺はいいんだけど、みんなはどう思うのかな?みたいなのがあって。でもチームのみんながいいって言ってくれたから、「それなら俺は全然OK!」という感じでした。(笑) でも逆に、「次にリリースするWiennersのハードコアな曲を作ろう」という気持ちで作っていたら、サビはあんなにキャッチーにならなかったと思うんですよね。というのも、ハードコアとかパンクが好きなので、変にアピールしたくなっちゃうと思う。(笑) だけど“GAKI”は何も考えずに作ったので、それも新鮮味の理由になっているのかなと思います。

■原型を作っていた段階で、歌詞も書かれていたんですか?

玉屋 仮でありました。展開も7割くらいまでしかなかったんですけど、そこから足していって。「GAKI」というワードとか、「ガキの使いじゃない」という大きな歌詞のテーマはあったんですけど、それこそこれも何かを伝えたくて作った曲ではないので、正直歌詞なんてどうでもよかったというか。でも「この曲を一番カッコよく聴こえるようにするにはどういうテーマがいいのか?」みたいな感じで作っていましたね。ハードコアの好きなところって、ある意味滑稽なところで。「ワーッ」って歌っているけど、マイクが遠すぎてほとんど聴こえていないとか、でもめちゃくちゃヤバくて、超怖くてみたいな、その滑稽さがいいなと思っていて。それを俺らに変換したら、小学生みたいな、絶対に弱いひょろひょろのヤツが、「なんだてめぇ、このヤロウ!」って吠えている感じがいいなと思ったんです。「ガキの使いじゃねぇ、バーカ!」みたいに言っているけど、「お前絶対ガキだろう」みたいな感じにしたかったんですよ。「このヤロウ!」とか言っている子供って、「無知がゆえに無敵だな」と思って。それも愛おしいなと思って、そこから膨らませて作りました。

■勢いのある、怖いもの知らずな子供の雰囲気と、ハードコアのサウンドがぴったりですよね。

玉屋 本当にサウンドありきで歌詞をつけていったからだと思います。あとは単純に汚い言葉を使いたい、みたいな。(笑)

■以前のインタビューでも、「まだ馬鹿とかふざけんなって言いたい」とおっしゃっていましたが、それと似た感じなんですかね?

玉屋 それはあると思います。「馬鹿」とか言いたいんですよね、やっぱり。気持ちいいし。基本的にこの歳で「バーカ」とか、「クソ」って言うのって、まず駄目じゃないですか。(笑) モラルに反しているし、そんな人間駄目だけど、何かを表現しているという免罪符をいただいている時点で、これはもう大いに使って暴言を吐いていこうと。(笑) 

■(笑) これもサウンドありきかと思いますが、「3時待つ味覚殺気立つ」の言葉の組み合わせ方は本当にインパクトがありますし、それでいてすごく気持ちよく言葉がハマっていると感じました。こういった、脈絡がないようである単語の組み合わせが本当にお上手ですよね。

玉屋 「3時待つ味覚殺気立つ」は、自分の中でも子供の持つとてつもないエネルギーを上手く表せたなと思っています。3時をめっちゃ待ってるって、すごい子供じゃないですか。だけど、それでめちゃくちゃ殺気立ってるみたいな、そういう雰囲気が言い表せたかなと。伝えたい映像であったり思い出を、説明ではなくて、単語を並べただけでどれだけ伝えられるかみたいなところはすごく考える部分ではあって。それをパッと聴いた時に、「こいつ何も考えていないな」と思われるくらいの、誰でも分かる言葉で作るという。なので、歌詞を見た時に、ただ書き殴ったように見えるのが一番理想なんです。

■ちょっと漫才に似たものを感じますね。(笑)

玉屋 マジでそうですよね。笑うという行為って、めちゃめちゃ単純明快じゃないですか。面白ければ笑うし。だけど、その単純明快な笑いの裏にはすごくロジックがあって、計算し尽くされた間と振りがあってそうなるんだけど、そんなことを感じない方が笑える。だけど、裏は考えた方がいい。マジでそういう感覚ですね。だから、「なんかこいつ馬鹿だな」くらいに思ってもらえればいいというか。一応すごく考えて作ってはいるんですけど、そこが前面に出過ぎないようにというか。「真似しようとは思えるけど、多分真似してみたら絶対にできないよ」みたいな、そんな感じですね。