『Wienners ONE MAN SHOW “HAPPY BANQUET”』ライブレポート@Spotify O-EAST

レア曲の連続で熱狂に包まれたアサミサエ卒業ライブ。

6月6日(金)、『Wienners ONE MAN SHOW “HAPPY BANQUET”』がSpotify O-EASTにて開催された。幸福な宴と称された本公演は、Wiennersにとっても重要な意味を持つステージになった。というのも、この公演を以て、2015年より10年間Wiennersとして活動してきたアサミサエ(Vo/Key/Sampler)が卒業することが発表されていたからだ。そんなメモリアルな公演を前にして、会場チケットはソールドアウト。開演前になると、生配信にも続々とコメントが連なっていた。

開演時刻を回り、盛大な拍手に迎えられながら∴560∵、アサミサエ、サポートメンバーの森田龍之助、そして玉屋2060%が登場する。ライブの開幕を告げる楽曲は“何様のラプソディ”だ。ぎっしりと熱量を詰め込んだ疾走感溢れるパンクチューンで、早速会場のボルテージを上げていく。「神様我々に光を」のフレーズは、この公演を以て別の道を行くメンバーの幸福を祈るようなニュアンスにも聴こえてしまう。楽曲のメッセージよりも音楽そのものを届けることに重きを置いているWiennersだが、だからこそというべきか、ひとつひとつの歌詞がなんの衒いもなく、純粋に心に響くのを感じる。しかしそんな感傷に浸る暇もなく、間髪入れずに続くのは“GOD SAVE THE MUSIC”。更にロックサウンドの中にメロディアスな抒情が含まれる“LOVE ME TENDER”を届けていく。アサミサエがメインボーカルを執る“ULTRA JOY”では、彼女の可憐な声色と、各所に潜むこぶしによる力強さが際立つ。続く“レスキューレンジャー”、“カンフーモンキー”含め、彼女の唯一無二の歌声が作り上げる、和風かつ歌謡的な空気がどれほどWiennersに影響を与えていたか、改めてひしひしと感じられる。

“RAISE A RIOT”ではパンキッシュなバンドサウンドがふつふつと心を湧きたたせると同時に、ドープな電子音がカオスな空気を作り出す。電子音をふんだんに組み込んだ見事な繋ぎから“GAKI”に続くと、“おおるないとじゃっぷせっしょん”へ。アサミサエのキーボード、∴560∵のベース、玉屋のギター、それぞれの洗練された楽器さばきが気持ちよく絡み合う。イントロで大きく歓声が上がった“VIDEO GIRL”でも、アサミサエのサンプラーさばきが光っていた。13年前の6月6日に発売された“十五夜サテライト”を皮切りに、フロアに乗り出さんばかりの熱を表出した“MUSASHINO CITY”、麦わら帽子を被ったアサミサエがソロで披露した“片瀬江ノ島”、ゆったりとしたグルーヴが一体感を作り上げた“シャングリラ”と、懐かしい楽曲を連続して披露するWienners。これまで彼らが歩んできた道のりを振り返るようなセットリストだ。そしてなにより、日本語の美しさの光るラブソングから、語りとパンクの融合、80年代のアイドルシーンを思わせる楽曲まで、10年以上前から存在する玉屋の圧倒的な手腕の広さと自由な発想に、改めてただただ驚かされるばかりである。「ライブハウスの俺たちがお茶の間の子供たち全員に届けようぜ!」との玉屋の言葉をきっかけに披露したのは、彼らの最新曲“WINNER! ゴジュウジャー!”。彼らのメジャーデビュー前を彷彿とさせる楽曲が直前に続いたこともあり、吉祥寺で始まった彼らの音楽が今やニチアサを彩る存在になっているという事実が、底抜けに明るい曲調とともに心を震わせる。

アサミサエが作詞、作曲を担当した“愛鳥賛歌”にてメロディアスで慈愛の溢れるボーカルがフロアを優しい空気に包み込むと、「Wiennersをやってきて思い残すことはないのですが、この曲を歌ってみたくて、今日は特別に歌ってみたいなと思います。聴いてくれますか?」と歌い始めたのは“午前6時”。柔らかいバンドサウンドと共に、彼女の情感豊かなボーカルが響く。じっくりと聴き入った会場からは、温かな拍手が送られた。アサミサエが「次はみんなが歌う番です!」と話すと、本編も後半戦の合図だ。“FAR EAST DISCO”の大合唱が繰り広げられたのち、インドの祭りにインスピレーションを受けた正真正銘のお祭りソング“TOKYO HOLI”へ。玉屋は「しんみりとかさせないから!」と叫び、フロアも思い切り体を動かし腕を振り上げ、まさに様相は宴そのもの。“蒼天ディライト”、“SOLAR KIDS”と、ぐんぐんと伸びていく熱量。それと同時に、“蒼天ディライト”の「ばいばいじゃあねマイユース」の歌詞が、寂しさ、名残惜しさに少しずつ現実味を帯びさせる。そんな本編のラストナンバーは“姫君バンケット”。アサミサエはステージを左右に歩きながら笑顔で歌い、フロアにふわふわと浮く色とりどりの風船を時折叩き返しながら「綺麗だね」と笑みをこぼす。一抹の寂しさがありながらも、それをはるかに上回る温かさと幸福の溢れる空間となっていた。

アンコールに応え再びステージに姿を現す4人。「言い残したことはないですか?」と玉屋の問いかけに対し、「思い出の中でもずっとふざけてた」とアサミサエは笑顔で振り返る。「10年間続けられて、自分のこと『立派じゃん!』って思うんですけど、みんなのおかげで10年間続けてこられたなって思うんです。これからもこうやってみんなに歌を聴いてもらえるように、たくさんの方の力を借りて頑張りたいなと思うので、今後ともよろしくお願いします。マジでみんなで地球を盛り上げていきましょう!」と締めくくると、すかさず「ヤバ、規模デカ!」と玉屋。会場からアサミサエに労いの拍手が送られると、寂しさを跳ね飛ばすかのように“UNITY”、“TRADITIONAL”と、すさまじいエネルギーが会場中に迸る。“おどれおんどれ”で大熱狂のフィナーレかと思いきや、フロアからはダブルアンコールを求める声が。エネルギッシュなアンコールを経ても尚有り余った熱量をすべてぶつけるかの如く“Cult pop suicide”、“よろこびのうた”を思い切り披露し、幸福な宴を終えた。記念撮影を終え4人がステージから捌けた後も名残惜しそうに、そしてこの日のステージを称えるように手拍子が続いていたが、アサミサエによる影アナが「また新世界でお会いしましょう!」と伝えると再会を願う拍手に変わり、この日の公演がいよいよ幕を閉じる。これまでの編成のWiennersが見れなくなってしまう名残惜しさとともに、Wienners、アサミサエ両名が今後どのように進化した姿を見せてくれるのか、ますます期待が高まる一夜であった。

Text:村上麗奈
Photo:かい

https://wienners.net

『Wienners ONE MAN SHOW “HAPPY BANQUET”』@Spotify O-EAST セットリスト
01. 何様のラプソディ
02. GOD SAVE THE MUSIC
03. LOVE ME TENDER
04. ULTRA JOY
05. レスキューレンジャー
06. カンフーモンキー
07. RAISE A RIOT
08. GAKI
09. おおるないとじゃっぷせっしょん
10. VIDEO GIRL
11. 十五夜サテライト
12. MUSASHINO CITY
13. 片瀬江ノ島
14. シャングリラ
15. WINNER!ゴジュウジャー!
16. SHINOBI TOP SECRET
17. 愛鳥賛歌
18. 午前6時
19. FAR EAST DISCO
20. TOKYO HOLI
21. 蒼天ディライト
22. SOLAR KIDS
23. 姫君バンケット

ENCORE
01. UNITY
02. TRADITIONA
03. おどれおんどれ

W ENCORE
01. Cult pop suicide
02. よろこびのうた

『Wienners ONE MAN SHOW “HAPPY BANQUET”』
6/15(日)までアーカイブ配信
https://w.pia.jp/t/wns-happy-banquet/