汐田泰輝(Vo&Gt)、岩橋茅津(Gt)、中村龍人(Ba)、清弘陽哉(Dr)
バンドのこれまでと現在地を示す結成9年目のメジャー1stアルバム。
Bye-Bye-Handの方程式が5月22日にメジャー1stアルバム『ソフビ』をリリース。2015年に地元・大阪の中学の同級生で結成され、2020年度のNo Big Deal Records Auditionでグランプリを獲得、今作にてインディーズからメジャーに進出するBye-Bye-Handの方程式。ニューアルバムには、これまでリリースしてきた人気曲“ロックンロール・スーパーノヴァ”、“darling rolling”を含む13曲が収められている。インタビューでは結成9年目でのメジャーデビューについての想いや、アルバムに収録された各曲にまつわることを、プライベートでも仲が良い4人に話を訊いた。
■岩橋さん25歳おめでとうございます!(今回のインタビューは5月10日岩橋さんのお誕生日の翌日に行われました。)メンバーでお祝いはしましたか?
岩橋 ちょうど誕生日になった時、メンバーと車で移動中だったんですけど、なんか絶望的でしたね。(笑) メンバーの中で一番最初に四捨五入するとアラサーになってしまったので、あんまりめでたくないというか……。
■そう言われてしまうと年上のインタビュアーとしては心苦しいのですが……。(笑) それにしても中学の同級生とバンドを組むのっていいですよね。高校の進学先は別々だったんですか?
汐田 進学先は別でしたね。当時は川谷絵音さんが2つ違うバンドをやっていたりとすごく盛り上がっていて、「俺だって何かできるだろ!」みたいな感じでした。自分は飽き性なので、何かひとつのことを突き詰めて、いろんな所で音楽をやれたらいいな~って感じだったんですけど、なかなかバンドメンバーって集まらないじゃないですか。そうなると何も始められないので、各々がやっていたバンドを合体させたりして、今のこの形になりました。だから、結成当時の曲は別々のバンドで違ったキャラクターの曲を書いていた名残が残っているのかなって思います。
■ここまで昔からのお知り合いとなると、今だから話せるワルい思い出とかあるんじゃないですか?(笑)
汐田 ありますね。(笑) 特にギターの岩橋とは基本的にずっと一緒にいたんですけど、中2の時にケンカして、リアルに1年間くらい一度も話さなかったこともありました。
岩橋 何が原因でケンカしていたかも、もう忘れたんですけどね。(笑)
汐田 ちょうど声変わりする年頃だったので、久しぶりに話した時に、岩橋の声が前の可愛い声じゃなくなっていてびっくりしました。
■同じ学校なのに声変わりに気付かないほど話していなかったなんて……。(笑) そんな同級生3人の中に、2021年からベースの中村さんが加入したわけですが、最初は気まずくなかったですか?出身地は同じく大阪ですよね?
中村 同じ大阪で、同じ市の端っこと端っこです。(笑) だからお互いの学校も知っていて、地元のライブハウスでバイハン(Bye-Bye-Handの方程式)に出会い、主に陽哉くんと仲良かったので、入った時は気まずいとかは全然無くて。なんか「いつも良くしてくれてありがとうございます!」みたいな感じでした。
■もともと近い所で活動されていたんですね。それでは改めまして、メジャーデビューおめでとうございます!1st フルアルバム『ソフビ』の収録曲は、半分ほどが既にリリースされている楽曲ですが、今回はどうしてこのような楽曲構成に?
汐田 僕らの体感ではむちゃくちゃ引き伸ばした感じがするんですよ。何回もフルアルバムのリリースに踏み切ろうとしては、やっぱり辞めようかとなって。でも、そうしたことで偶然に生まれた楽曲がたくさんあって、それがすごくいろいろ迷った中での自分たちの「ここやねん」っていう所を示せていると思います。全部新しい自分たちの新曲にするよりも、模索したり迷ったりした中で偶然見つけた自分たちの既出曲を、ちゃんとした形に残すことが必要不可欠だなと思って今回はこういう形になりました。
■そして1曲目に“ソフビ人間”が来るわけですね。この曲が1曲目なのはもう独断ですか?
汐田 独断です。(笑) でもほんまに1回も揺れ動いていないというか、決めた通りの順番のまま完成まで持ってこれました。
■確かに“ソフビ人間”に始まり、“ロックンロール・スーパーノヴァア”で終わるのは、OPとEDが繋がる感じがしてすごく良かったです。ところでみなさんの「ロックンロールの神様」は誰ですか?
汐田 僕はBUMP OF CHICKENですね。楽曲について触れられていることが多いと思いますけど、僕はNetflixに上がっていたライブ映像を見た時、ステージの上で音楽が楽しくてイチャイチャしているメンバーたちが、あの年齢でもおじさんに見えなくて。(笑) だってお客さんをあんなに何万人も集めておきながら、客席を無視して腰とかさすり合っているんですよ?その姿を見て、「これが将来の夢かな」と思ったんです。ライブハウスでも、アリーナでも、お客さんの前で自分たちの世界に浸って、ずっと同じことをやっている……っていうのが。
■ロックバンドの象徴的な姿としての憧れですね。
汐田 そうですね。自分たちのバンドも「地元の仲間でバンドをやっている」という所をアイデンティティとしてやっている部分があるので、BUMP OF CHICKENの幼稚園や小学校からの同級生で組んだっていうバンドストーリーについても憧れがあります。
岩橋 僕はELLEGARDENです。父親の影響で音楽やアーティストを好きになることが多くて、物心つく前から、車の中ではサザンオールスターズやエアロスミスが流れていたんですけど、小学4年生くらいの時に、親父がレンタルしてきたELLEGARDENのベストアルバムを聴いて、その時に初めて「ロックバンド」という存在を認識したんです。それまでは「バンド」というより「ミュージシャン」っていう感覚だったのが、ELLEGARDENを聴いて初めて「バンドってこういうことか!」となりました。
■その「バンドという概念を初めて理解する瞬間」みたいな感覚、すごくわかります。
岩橋 僕が知った当時はELLEGARDENは一時活動停止していて。だから僕はこのバンドのライブは観られないんだな……と思っていたんですけど、活動再開されたのでライブも観に行くことができて、やっぱELLEGARDENが一番好きやな……と思いました。
清弘 それでいうと僕はRADWIMPSですね。似たような理由なんですけど、「ロックバンド」と意識して聴き始めたのがRADWIMPSなので。神様っていうよりは、なんか「お母さん」みたいな存在です。(笑)
中村 僕は中学生の時、母親から「チケット取れたから一緒に行こ!」みたいな感じで、半ば強引にUVERworldのライブに連れて行かれたんです。その時は正直そんなに興味がなくて、わざわざライブに行くっていうのが面倒くさくて、「まぁいいか」みたいな感じで連れていかれたんです。だけどステージを見た瞬間に衝撃を受けました。衝撃っていうか、頭がパチパチパチパチするみたいな。(笑) それからバンドがやりたい、めっちゃ音楽がやりたいと考えるようになりました。ベースをやりたいというか、バンドをやってこういう景色を作りたいと思って。
■どうして楽器はベースを選んだんですか?
中村 特別な意味は無いんですよね。(笑) もともとバスケやっていたので、高校に進学した時にバスケ部に入ろうかと迷ったんですけど、その学校のバスケ部があんまり盛り上がっていなくて、それで軽音楽部に行ってみたんです。先輩のバンドのところに行ってみたら、たまたまベースがいなかったので、やってみたら「上手いじゃん!」と言われて、それで浮かれてベースを始めました。
■おだてられて始めたパターンだったんですね。(笑) ベースとドラムに関しては各ミュージシャンに「始めたきっかけ」のエピソードがありますが、バイハンのドラムに関しては「ドラムのポジションが空いていたから」でしたよね?
清弘 最初はもう大変でした。ちゃんと「ドラム」になっていなかったかもしれません。(笑)
汐田 9年かけて育て上げられました。(笑)
■収録曲の話に戻って、2曲目は“風街突風倶楽部”になるわけですが、この曲の「青さ」は作っているものですか?素の「青さ」ですか?
汐田 内容としては作っていますけど、出ているものとしては素というか……。
■周りから見るといかがですか?
岩橋 素でしょ。
中村 うん、素だね。
清弘 素ですね。
■やっぱり素なんですね。(笑)
汐田 作り方としては、先に「原作(ストーリー)」みたいなものを頭の中で作っているんですけど、でもやっぱり嘘は書けへんよなというか……。
■「嘘は書けない……」怪しい発言では?(笑)
汐田 なんていうんですかね。(笑) 描いているものはフィクションなんですけど、乗っかっている気持ちみたいなものに嘘はないようにしています。
■セルフライナーノーツには、この曲に「バンドの精神性が大きく反映されている」と書いてありましたが、バイハンのバイハンにしか無いものってなんですか?
岩橋 メンバーの仲が良いです。そこは何よりの強みでもあると思う。バイハンは絶対に全員で移動して、全員でご飯を食べて、全員でいつも一緒にいます。周りからも「おまえらずっと4人でおるな!」って言われるくらいなので。(笑)
汐田 基本は意見が強い人に引っ張られるんですけど、別行動する時はすぐ別行動します。「俺はコレが食べたい」「俺たちはアレが食べたい」になったらすぐ解散、みたいな。(笑) 僕が一番こだわりが強いので、1対3で別れることもあります。
■仲がいい中でのドライさって、バンドが長続きする秘訣だと思います。現に9年続いているわけですもんね。続いての曲“swamp(沼)”ですが、これは元になったエピソードが気になります。
汐田 友達がいわゆる「沼男」に引っかかっちゃったんですよ。言い方は悪いですけど、向こうには他にもイイ感じの女の子がいて……っていう。そういう男の人ってどこか余裕があって、立ち振る舞いが全然変わってくるんですよね。それで、自分は相手にとって女の子たちのうちのひとりなんやけど、自分の恋する気持ちは止めることもできないし、かといって気持ちを伝えても上手く行く未来が見えないし。
■あ~、それはまさに「沼」ですね。
汐田 正直、自分にはその感覚があんまりわからないんですけど、「イマ」の歌を作りたいって思ってた時にその話を聞いて、自分の身体の中に沼男に陥る感覚が入って来たんです。バイハンを聴いている子たちの中にも、きっと同じような経験をしている子がいると思うんですよ。それこそバンドマンに沼っちゃったとかもよくいるし。そんな子に対しての「応援歌」じゃないですけど、聴けば気持ちがスッキリするような、イマの子たちにぶっ刺さる音楽を作りたくて、この曲を作りました。自分では絶対に書かないような題材ですけど、友達と話をしてると、そういうの書きたいなってなりました。
■今作にはいろんなタイプの恋愛が描かれていますが、みなさんはどの曲みたいな恋愛がしたいですか?
岩橋 全部イヤかな……。
汐田 なんかあるやろ!(笑)
清弘 僕は“春のチャンス”かな。
汐田 僕はもう“やさしいひと”ですね。超自分!って感じの曲なので。
中村 僕は……う~ん……。
岩橋 ……。(笑)
■じゃ……次の質問行きましょっか。(笑) “閃光配信”はセクシーなMVが最高でした!でもこのMVは歌詞から受ける印象とはちょっと違う気がするんですけど、どんなコンセプトなのでしょうか?
汐田 深津さんっていう“風街突風倶楽部”の時から一緒にやらせてもらっている方に撮っていただいたんですが、“風街……”の時の結構攻めた感じが、自分たちの表現したいピースにバチンとハマったんです。それで、毎回いろんな角度から攻めて行こうと思って“darling rolling”のMVも作ったんですけど、それが撮影が過去イチしんどい作品だったんですよ。(笑) だけど同時にいい反響もすごくて、やっぱり頑張って良かったなって思って。
■頑張ったものに手ごたえがあると嬉しいですよね。
汐田 それで、それを違う角度で超えるには何かまた新しいものを生み出さないといけないと思って、僕たちのメジャー1stアルバムで一番攻めるなら……と考えた時に出て来たのが「エロ」だったんです。(笑)
■なるほど。
汐田 僕らってアメリカンなポップスの中にゴリッと感があるので、「ちょっとアメリカンな感じのMVにしたいです」って深津さんに言ったんです。そうしたら、何かが……すれ違っちゃったんですよね。(笑)
中村 僕もう笑っちゃっていますからね。(笑) みんなの前での撮影だったから、目が合って笑っちゃっているんです。
■ご共演された女優さんは撮影の時どんな感じでしたか?
汐田 やっぱりプロだから、撮影の時はスイッチみたいなのが入って、こっちがモジモジしていたら向こうからガンガン来るんです。だから余計に恥ずかしくなるっていう。(笑) いざ演奏シーンになると、僕たちは本業だから本気でやるじゃないですか。そうしたら監督が女優さんに「ちょっと演奏に負けてるね」って言っていて、そう言われたのをめっちゃ悔しがっているんです。周りにはうらやましがられるんですけど、現場ではお互いめっちゃ本気でした。
■アスリートみたいな感じですね。(笑) そして次の“darling rolling”ですが、この曲は「“ロックンロール・スーパーノヴァを超えるための曲」として書かれたそうですね。超えるために何をしましたか?
汐田 “ロックンロール・スーパーノヴァ”はすぐにできたんです。あと、ルールとして「とにかく絶対に歌詞の1行は覚えてもらう」っていう工夫をしていました。それで、その条件だけは守りながら素早く作ったら、この形になりました。
■確かに。初めて聴いた時から全曲1行は歌詞を覚えています。ちなみに曲は意図的に3分30秒前後にまとめていますか?
汐田 そうですね。秒数というよりは、体感で「なんか物足りないな」って思う所で終わるようにしています。
■それでも要素はギュッと詰まっていますよね。ドラムなんかすごく歌っているし。
清弘 ドラムは泰輝の弾き語りだけの音源を聴いて付けていくんですけど、弾き語り音源にドラムを合わせていくための要素って、ギターのストロークに合わせるか、メロディに合わせるかの2択じゃないですか。だから直感でそんなに深く考えずに作っています。
■テクニックの組み合わせなどはあまり意識されないのでしょうか?
清弘 実際に楽器を叩きながらじゃなくて、頭に浮かんできたものをパソコンに打ち込んで、そこから練習する方式を取っているので……。
■えっ?!それってすごく珍しいですよね。
清弘 なので、レコーディングしてる時に、「ちょっとホンマに無理やからココ変えるわ」ってなることもあります。たまに自分で作っているのにどうしても叩けない部分が出てきちゃうことがあって、1週間以上もそこだけ練習したのにできなかったこともあって、ついに「これは人間に叩けるものなのか?」と思い始めたので、ドラムの師匠に相談して聴かせてみたら、「これは人間には無理だね!」って言われて。(笑) 1週間をムダにしました。