最新の作品が最高傑作である。それに相応しいアルバムを作りました。
Am Ampが、待望のメジャー1stアルバム『Category』を7月8日にリリース。ハードボイルド、フィルム・ノワール作品と賞されたMV曲“bakemono”や、美しくメロウな“Andrée”、クールでスリリング、哀愁でメロウと2つの要素を兼ね備えた“ミス”など、Am Ampの持つ多様な音楽性がこのアルバムから見えてくる。彼らは現在、全国ツアー中。この衝撃を次はライブを通して感じてもらいたい。
今回は須賀京介、JOHN、矢沢もとはる、宮城紘大の4人に、いろいろと話を訊いた。
■待望の1stアルバム『Category』が完成しましたが、以前から構想は練っていたのでしょうか?
須賀 これまでにもシングルはもちろん、ミニアルバムを定期的にCDリリースし、配信という形でもコンスタントに楽曲を出し続けてきて、バンドとしても理想的な形でまとまってきた感触もあったことから、「そろそろこの辺でアルバムを」という感覚はありました。
JOHN “Andrée”や“トレモロ彼女”など、配信リリースしながらも盤(CD)にはしていなかった曲たちも溜まってきていましたし、過去の楽曲たちも、今のAm Ampのライブスタイルにアレンジして演奏したい曲もいろいろあったから、それらを形にして届けたいと思い、新曲はもちろん、未CD化の曲たちや、過去の曲たちもリアレンジして収録しました。
■“psycho(Category ver.)”や、“HEAT(Category ver.)”など、リアレンジ曲の多くがかなりエッジの利いた、激しくスリリングなスタイルに進化していますよね。
JOHN だいぶヤバい感じになりましたよね。本作の裏テーマが、「バンドサウンドを強めに表現する」ことだったので、どの曲もがっつり生ドラムの音で土台を固め、ベースもギターもエッジの立った強めの音でドンと音を重ねて、全体的に激しさが増している印象はあります。
■攻めた楽曲も印象深く耳に刺さりますが、そこはさすがAm Amp、ふわっとした甘くポップな表情を持った“Andrée”や“ジェルネイル”など、しっかり幅広さも示しましたね。
JOHN アルバム全体の流れや楽曲のセレクトに関しては、4者4様いろんな思いがあったといいますか。「こういうテーマの曲があったらいいよね」などの話をしながら、結果的に今の形になったところはありました。自分でいうなら、“ジェルネイル”のような軽やかな表情を入れたい気持ちがあった上での話になりますけど、曲を煮詰めていく中で、森の鼓笛隊のような雰囲気を持った、思っていた以上にかわいい内容に進化したというパターンもありましたけどね。(笑)
■みなさんは自分なりに「こういうアルバムにしたい」という構想を持って制作に入ったわけですね。
JOHN みんなに共通していたのが、「生のバンド感を大事にしたい」という思いと、「ライブで生きる曲であり、ライブの定番曲を中心に据えよう」ということでした。個人的にも、「ライブで映える曲」を意識して新曲を作り、既存の曲のリアレンジもしていきました。もちろん“ジェルネイル”のような表情も入れているように、そればかりではないですけどね。
矢沢 自分の中に明確にあったのが、「落ち着く場所があまりない」と言いますか、「頭から最後までハイスピードで駆け抜けるようなアルバムにしたい」という思いでした。いわゆるテンポが速いとか遅いではなく、「様々なジャンルや方向性を持った楽曲があれど、全体的に突き抜けていく作品にしたい」という気持ちがありました。それをアルバムの幹の部分にした上で、いろんな風に曲の枝葉を広げたのがこのアルバムになります。
宮城 僕も個人的には「ライブで盛り上がる作品になればいいな」という思いを持ってアルバム制作に向き合いました。Am Ampは7月で結成から丸2年経つんですけど、今の僕らにとって2年間という歩みは、Am Ampの存在を知ってもらうという意味はもちろん、ライブが持つ熱量やパフォーマンスを形作ることや、お客さんに満足してもらう上でも必要な期間でした。そこで得た手応えや、今後もライブバンドとして進んでいく上での意志をぶつけたのが、このアルバムになります。
須賀 確かに2年という歳月を重ねたことで、ようやく本当の意味でバンドになれたなと感じることが多くて。と言っても、まだまだその入口に立ったばかりですけどね。普段からAm Ampのライブに足繁く通ってくれている人たちなら、作品やライブごとに行っている僕らのチャレンジや、「次はこういうことを打ち出すんだ」というバンドの変化に気づいてくださっているけど、Am Ampという名前は知っていても、そこまで深くは……という人や、今回で僕らのことを知る人たちだっていると考えたら、過去の楽曲のリアレンジも含め、「これが今の僕らです」と、最新のAm Ampの姿をまずは届けたかったんです。実際、活動を始めたばかりの2年前と、1周年経った頃と、今のAm Ampを比べても、自分たちでも別物?と口にしたくなるくらい、明らかに進化したと感じています。だからこそ、「今の僕らはこうなんです」というのを示せる1枚にしたかったし、実際にそうなったなと自信を持って言えるアルバムが出来ました。
■ここには最新モードのAm Ampが詰め込まれてるということですね。
須賀 そうです。過去の曲たちをライブ演奏していく中で、自分たちでもバンドの成長に合わせて曲が変化し続けてきたのを感じていたからこそ、それをさらに増幅させる形でリアレンジしたのが、このアルバムに収録した(Category ver.)たちです。もちろん本作だけを聴いても充分楽しめますけど、過去の楽曲たちと聴き比べてもらうのも、また一つの楽しみ方だと思います。
■ライブに活動の主軸を置いてきた中で、どう進化し成長したのかも、このアルバム『Category』を聴くことで感じられますからね。
須賀 その変化を一番感じられるのが、“PZA(Category ver.)”です。“PZA”を出したばかりの頃は、どういうバンドになっていこうかと、トライ&エラーをし続けていた頃というか、試行錯誤を繰り返していた時期で。今でこそ「バンドサウンドを全面に押し出した」と胸を張って言えますけど、あの当時は同期を多めにするなど、エレクトロなバンドになっていく可能性だってありました。“PZA”と“PZA(Category ver.)”を聴き比べてもらえたら一目瞭然だと思います。今のAm Ampはこういう方向性で進んでいくという変化が、音的な面で一番顕著に見えるのが、この“PZA(Category ver.)”だと思います。
JOHN 確かにこの曲は変化やバンドの方向性を一番わかりやすく示した曲になりました。その上で、MVも制作した“bakemono”を聴いてもらえると、今のAm Ampの求めるスタイルを、「なるほど」と思ってもらえるんじゃないかな。アルバムの収録曲でいうと“bakemono”、“PZA(Category ver.)”、“HEAT(Category ver.)”辺りが、今のAm Ampの軸になる楽曲で、そこに“ジェルネイル”や“Andrée”のような表情も加えることで、このバンドが持つ振り幅や懐深さを示すことができました。もちろん“bakemono”のような曲調でアルバム1枚を貫くのもありだけど、振り幅を見せていくところがAm Ampらしさでもあるので。
須賀 今回『Category』と題したアルバムを作りあげたことで、表現の横幅も決まったし、バンドとしての軸足が定まったと思います。ここからさらに軸となる部分を深くして
いくのか、さらに振り幅を広げて見せるのか、そこは自分たちでも楽しみにしているところです。
JOHN Am Ampは一つのスタイルを突き詰めていくのではなく、「こんなことも出来る」という姿をずっと示してきたバンドです。幅広く表現していけるところも、このバンドの強みでもあるから、そこは今後も柔軟に活かしたいですね。
■演奏の振り幅もそうですが、みなさん“bakemono“のMVでは演技の振り幅も見せてきましたよね。中でも矢沢さんのニヒルな表情がめちゃくちゃクールでカッコ良すぎです!
矢沢 僕にとってお芝居とは、曲を表現していくのとリンクしていることなんです。僕自身、お芝居はどうやって練習すれば良いのかわからなかったけど、実際に演じて思ったのが、「演技とは自分の中にあるものをアウトプットしていくこと」だと気づきました。
■4人の役柄についても教えてください。※以下、MVストーリーネタバレあり
須賀 最初に自分が思い描いたのが、各ジャンルのボスたちを4人に当てはめることでした。もとはるは情報などでしのぎを得ている、いわゆるインテリ系のカリスマ経済ヤクザで、JOHNはMVの劇中でも見せているように、銃の密売で稼いでいる武器証人。そして紘大はクラブにたむろする若者たちやアーティストなど、クラブ界隈を跋扈するカラーギャングを束ねるカリスマ。そして自分はこういう連中のいるコロニーを牛耳るボス。そのボスが一番最初に反旗を翻されるという……。(笑)
宮城 そこから、各自の大演技が始まるからね。
矢沢 少し裏話を語るなら、あのストーリーは撮影しながら変えていった面もありました。それこそJOHNはね。
JOHN 最初は自分も生き残るはずだったんですが……。
須賀 監督さんと何度かシナリオの打ち合わせを行い、本番までに構成は出来上がっていましたが、その時点で、もとはるとJOHNが生き残っていたので、「差し支えなければJOHN
も殺してください」とお願いして、急遽、本番当日に内容を変えてもらいました。
JOHN 結果、それがすごく良かった。一人だけ生きて勝ち残った方が、彼(矢沢)のバケモノ感が際立つじゃないですか。
須賀 そう。最後に一人勝ちするからバケモノなわけで、そこでJOHNも生き残っていたら、話の筋が少しブレちゃうなと思って。
矢沢 前々作の“ミス”のMVでは須賀さんが、前作の“Andrée”ではJOHNが当番(主役)で、今回はそれが僕にまわってきたわけですけど、正直言ってバケモノ感を出すのは大変でしたよ。
須賀 いや、別に当番制にはしていないけどね。(笑) でも“Andrée”はJOHNの夢落ちと捉えれば、最近のMVは確かに毎回誰かが主役を張っているよね。
JOHN あっ、そうだったのか!気づいたら僕の当番回は終わっていたんですね。(笑)
矢沢 “bakemono”は、ぜひMVもセットで見てください。その方が世界観をより深く楽しめますから。