息ができない夜にひとりもがく「本当の私」を描いた“Dose”。
Nowluが9月1日に新曲“Dose”をリリース。あわせてこれまでの作品をまとめたEP『Dose』を発表した。初ライブを海外で行い、ますます活動の幅を広げているNowlu。初のノンタイアップとなった新曲“Dose”(読み:どうせ)は、明るいアップテンポな曲調ながら、自身の弱さを吐露する歌詞を持つギャップのある1曲だ。インタビューでは楽曲が生まれたきっかけとなったNowluの心情に迫る。
■まずは初ライブの思い出から伺いたく思います。初ライブがブラジルのアニメイベントとは、なんだか陽気でいいですね。(笑)
Nowlu そうですね。(笑) 今まで海外はプライベートでは行ったことがあるのですが、お仕事で行くのは初めてでした。ライブ本番はめっちゃくちゃ緊張したんですが、直前まで「結構緊張しないな~」と思っていて。現実味が無いという感じだったんですけど、舞台袖に立った時に、薄い幕の向こうに見える人の感じが「何人いるんや?!」という感じで。大きい会場だったこともあって、すごく緊張しました。
■ステージには4,000人くらい来ていたそうですね。
Nowlu でも、ステージに出て歌い始めたら、ファンの方たちが思っていたよりも、可愛らしい感じというか、うっとりして聴いてくれていて。男性の方も「目がハートって、こういうことを言うのか~!」と思うほど、目をキラキラさせながらステージを観てくれていたので、すごく歌いやすかったです。緊張はずっとしていたんですが、そんなお客さんたちを見て、ちょっとほぐれました。
■海外のファンはきっと聴き方も違いますよね?
Nowlu そうなんです。好きに受け取ってくれるというか、ステージを見守るんじゃなくて、一緒に踊っていたり、ペンライトを振ったりしてくれて。日本のお客さんみたいに「じっと見つめる」というイメージとは全く逆だったので、「そんなに私のこと、知ってくれてたんだ?!」と驚きました。
■それは嬉しい反応ですね。MCもポルトガル語で?
Nowlu カンペを手首に書いて、ライブの途中にポルトガル語で「1個だけ覚えた言葉があって……私はパステル(ブラジルの揚げ餃子)を食べたことがないので、食べたいです!」と言ったら、めっちゃ笑ってもらえました。(笑)
■ウケたんですね!(笑) ブラジルの次はマレーシアにも行かれたそうですね?そちらはもう手慣れたものでしょうか?
Nowlu そんなことはないんですけど、やりやすかったです。(笑) マレーシアとブラジルは会場の感じも違って、ショッピングモールの中でのライブだったのですが、2階や3階からも見てくれていて、私もそれに目を配れるぐらいには余裕が出て、みなさんが楽しそうにしてくれているのが嬉しくて。ファンの感じも熱かったです。ただ、海外のライブだと動画を撮られるじゃないですか。そこに緊張しました。(笑) 「絶対ミスできない!」というプレッシャーがずっとありましたね。
■ふたつのライブあわせて、楽しかったことはなんですか?
Nowlu もう、全部です。ライブは両方とも楽しかったけど、ファンの方に初めて会うことができて、なんだか「本当にいるんだ!」と思って。(笑) 歌を口ずさんでくれていたり、私の名前を呼んでくれたり、会場特典の大きなポストカードを振ってくれたりと、ファンの方の存在を実感できたのが嬉しくて、楽しかったです。すごく愛を感じましたし、自信にも繋がりました。
■本当に良かったですね。そこから新曲“Dose”がリリースされたわけですが、聴いてみたら暗い曲だったので、少しびっくりしたんです……何かあったんですか?
Nowlu 確かに何かあった時の曲ですが、直近で何かがあったわけではないです。(笑) 1年半~2年くらい前に活動がストップしちゃった時期があって、その時に自分でも予期せぬストレスがかかっていたのか、息ができないような夜が続いた時があったんです。「息ってどうやってするんだっけ?!」みたいな。今思えばパニック発作だったのかもしれないのですが、できないことが重なって、「こういうことがこの先あるかもわからないから、今書くしかない」と思い、すごくしどかったんですけど、その時のことをメモに書いて残していました。
■なるほど。そんなことがあったんですね……。
Nowlu 人生が積み重なった時、辛かった時の記憶って美化されるじゃないですか。でもそれだと、しんどい時に自分が助からないなと思って、あえて苦しい時のことを吐き出そうと思って。それで、今回はノンタイアップで自由にテーマを決められるので、この曲を書こうと決めました。
■当時書いていたメモの内容は、何割ほど反映されているんですか?
Nowlu 言葉は変えているんですけど、9割ぐらいは。殴り書きのノートだったり、iPhoneのメモだったりに書いていたものを集めて、リズムに乗るように書いて……という感じです。
■それにしてもこのタイトル、英語読みの「ドーズ」ではなく、「どうせ」と読むんですね。
Nowlu そうなんです。それを狙っています。海外の方も引っかかるかなと思って。
■見事に引っかけられました。(笑) こうしてNowluさんとお話していても、SNSを見ていても、明るい方というイメージが強かったので、この詩が来たことに意外性があったんです。実際は「どっち」寄りなのでしょうか?
Nowlu そうですね。(笑) やっぱり、どっちも「自分」だなと思うんです。人から見られる時の自分は、基本的に陽が強いと思うんですけど、例えば歌詞に集中した時とか、考え込む時とか、いろんなことを自分の中で溜め込む癖があるので、そういう時は断然“Dose”側で、内側に向いちゃう時がありますね。
■アーティスト気質ということですね。サウンドの印象なのですが、ベースラインが超カッコいいです!曲はお任せでしたか?
Nowlu お任せで、いくつかの候補から選ばせていただきました。でも今回はいつもと違って歌詞が先なんです。初めての詞先の曲です。
■この「歌詞は暗くて、曲調は明るく」というのは、最初から決めていたのでしょうか?
Nowlu 曲調を選んでいく中で、「重くなり過ぎないように」と決まりました。私の勝手な主観なんですけど、歌詞も曲も重い曲って、ずっと聴けないと思うんですよね。なので、いつでも聴ける曲を作りたくて。メロディとして聴くのもいいし、歌詞に頼りたい時は歌詞をちゃんと聴いてもらってもいいし。両方の聴き方ができるかなと思っています。
■そして歌詞ですが、今回「これはよく書けたな」というワードはありますか?
Nowlu よく書けたというか、私はちょっと皮肉っぽいのが好きなんです。なので、「だけどそんな出来た世界じゃない」で落としちゃうのは、絶対に外したくないと思っていました。
■それ、気になったんですよ。「そんな出来た世界じゃない」って、希望を見せずに終わるのが珍しいなって。
Nowlu それが良かったんです。希望はなくていいというのが、その時の自分の本音だったので。希望が無いところで書いた曲ということも残しておきたくて……。殴り書きのメモを読んでいたら、「そうだったな」と思い、もう一回あの頃の自分に感情を戻して書きました。ただ、そこにちょっと諦めや皮肉みたいなものも混ぜたいなと思って、それを誰かに投げかけたい気持ちもあり、投げかけるような言葉に変えています。
■自分の曝け出し度で言ったら何割くらいになりましたか?
Nowlu 皮肉を混ぜてるという意味では、ちょっと隠しているので、「隠しているところに気づいてよ」じゃないですけど、それを含めて7割くらいですね。そこにアーティスト的な表現が乗って来ています。
■最初からこの曲を書くことは決めていたんですか?
Nowlu 多分、暗い曲にはなるとは思っていました。明るい曲を私はまだ書けなくて。今書くと嘘っぽくなるというか、拾ってきた言葉をつけちゃうような気がして。それだったら、このせっかくのノンタイアップの曲で、伝えたいことを伝えられないことが一番しんどいと思い、ちゃんと歌っていて感情が乗る曲にしたいということで、こうなりました。どうやったら伝わるか、世界観を作るのが大変でした。
■そんな感情とは対照的な、明るい曲調ですよね。
Nowlu 真っ暗だと、ちょっと踊れないじゃないですか。やっぱり踊りたいんです。聴いていて踊りたくなるような曲にしたかったので。
■そうやって心情を吐露している一方で、歌詞はちょっと抽象的な感じがしました。
Nowlu 私、基本的にそうやって書いちゃうんですよね。タイアップ曲ならもっといろいろ考えることがあるんですが、自分で自分のことを書く時は、自分がいつ聴いてもいいものだったり、誰かに聴いてもらった時に共感してくれたり、そういうことを求めてしまいます。含みの無い言葉があんまり得意じゃないんです。柔らかいというか、ひとつの表現から何パターンか考えられるような言葉を選ぶ方が好きなんです。