『NakamuraEmi 10th Anniversary 「 背負い投げ 4本⽬ 」』ライブレポート@KT Zepp Yokohama

NakamuraEmi×UVERworld ジャンルを超えて投げて投げられ、アンコールなしの1本勝負。

NakamuraEmiがデビュー10周年を記念する対バンライブ『NakamuraEmi 10th Anniversary 「 背負い投げ 4本⽬ 」』を1月31日(土)、神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催した。『背負い投げ』では、これまで竹原ピストル、FuruiRiho、C&Kと競演してきたNakamuraEmi。今回の4本目にはUVERworldが登場するということで、この異色ともいえる組み合わせにファンも期待を寄せていた。公演当日、冷たい月の光が照らす横浜都心のビル街。深いスモークの向こうにはUVERworldのバンドセットが霞んで見える。人に埋め尽くされたフロア。唐突にカウントダウンが始まり、暗転していく舞台に映えるのはモニターの光だけ。爆発的な音の嵐と手拍子との中、スクリーンにバンドロゴが映ると真太郎(Dr)がドラムセットの中央で腕を突き上げる。叩きつけられたビートに合わせ、次々と舞台に姿を現すメンバー。最後に袖から駆け出たTAKUYA∞(Vo)はステップを踏み越え勢い良く跳躍し、ジャケットをひるがえして観客を仰いだ。「よっしゃ!ノッケから誰も聴いたことがない新曲、ブチ上がろうぜ!」“ZERO BREAKOUT POINT”でスタートしたライブ。縦横無尽に駆け回るTAKUYA∞は振り上げられた拳の波を睨め上げながら、誠果(Mani.&Sax)が奏でるサックスのブリリアンスな響きに身を委ねる。

「NakamuraEmiがやってくる前にくたばっちまおうぜ、そして何度でも甦ろうぜ!」の台詞に呼び込まれたのは“PHOENIX AX”だ。克哉(Gt)と彰(Gt)のギターが奏でるのは、6人の大構成バンドが切り出すソリッドなリフ。その轟音のもとに伸びるハイトーンにはフロアの大歓声が湧き上がった。「なんで今日の対バンに俺たちが選ばれたのか?終わる頃にはわかるだろう。あなたたちに刺さる曲ばかり選んできました」その言葉に歓喜するファンと、“PRAYING RUN”で響く大合唱。ジャケットを脱ぎ捨てたTAKUYA∞はステージに膝をつき、ファンと同じ視線で歌う。“Eye’s Sentry”では赤いスタンドマイクを持ち、熟練のグルーヴはバンドメンバーの仕草をもリンクさせていく。「(NakamuraEmiは)今日の対バンを引き受けてくれてありがとうって言っていたけど、ありがとうはこっちだよ。心から感謝してこのステージをやらせてもらってます。俺たちはこんなピリピリでガチガチの対バンがやりたかった!」曲間の熱いMCと、“ALL ALONE”の社会を皮肉った歌詞は、ひとり世界に立ち向かうNakamuraEmiに本気で立ち向かう曲。TAKUYA∞はバスドラムに片足をかけ、歌いながら、いつの間にか両手に持っていたマイクを突き上げる。

シンプルなライティングのもと、暗転の度に輝く楽器の電飾。この日はUVERworldにとっても2026年初ライブであり、“EN”は曲名がコールされると驚きの声が走った。ドラムの鼓動が底から響き、張り出した信人(B)のベースが音を縫い留める中で観客が歌声を重ね合う“Ø choir”。ゴージャスなバンドのサウンドはもちろん、観衆を熱狂させる存在。それこそがUVERworldの本質なのだろう。「やり切った、出し切った!今日も最高の日記が書けそうだ!」息を乱し、汗に塗れて断言するTAKUYA∞。彼はかつて19歳の頃の日記に「20歳になって何もなかったら死ぬ」と書いていたらしい。そんな青年が、今ではバンドのフロントマンとして何千、何万もの喝采を受け、たくさんの人生に寄り添い、数え切れない悲しみから誰かを救い上げている。「俺たちはたった一度だけ生まれて、たった一度だけ死んでいく。ラストソング“7日目の決意”、ありがとうございました」そうして壮大で短濃厚な50分間は、オーディエンスの人生を祝福する“7日目の決意”の大歓声と大合唱の中で過ぎていった。

舞台転換を経て、MCすら無く“メジャーデビュー”からスタートしたNakamuraEmiのステージは、UVERworldのセットと打って変わってスポットひとつ、ヴォーカルひとり、ギターひとりのシンプルな編成からスタートし、その後バンドメンバーがステージに登場した。装飾といえる装飾は色鮮やかなテーブルクロスのみ。先ほどまで腕を振り、声を張り上げていたオーディエンスは、息を呑んでステージを見詰める。そのまま“火をつけろ”、“かかってこいよ”に流れ込めば、アップテンポなナンバーとアシッドな照明に観客が酔いしれる。背中を焼く光の中、観客に挑みかかるNakamuraEmiのシャウト。歓声と拍手は次第に大きくなり、客席からも腕を振り上げる人の数が増えていく。「改めまして『背負い投げ』に来てくださってありがとうございます。今日はUVERworldさんにとんでもないライブをぶちかましていただき、おかげでボッコボコなんですが、あの覚悟の決まったとんでもねえ王者と一緒にやれて良かったです」「空気を読みがちな人生なのですが、人生で一番空気を読まないお誘いでした」と挨拶では謙遜しながらも、UVERworldのTAKUYA∞も「誰とでも対バンするわけじゃない」と語っている通り、NakamuraEmiはジャンルや音楽性の仕切りも無い、卓越したアーティストだ。そんな彼女が次に歌うのは、日産自動車のエンジニアとして働いていたという異例の経歴を持つ彼女だからこそ歌える“使命”。他のミュージシャンには歌えない、彼女自身の歩んできた人生経験が並ぶ語彙に、これまで頭を揺らし楽しんでいた観客は、一言一句を聞き逃すまいと舞台で闊歩するNakamuraEmiを見上げる。

続くのは、「地元の厚木に珍しく雪が降った時に作った曲」だという“雪模様”。これまでのヒップホップ調とは一転したバラードは、NakamuraEmiの雄大な声量のもとにつぼみを開き、雪の如くステージから舞い落ちる。鈴の音の冷たい甘さ、ドラムに溶け込んでいく歌声。前曲から続き、オーディエンスはその空気に圧倒される。“Rebirth”では雨のような青いライトに、グリーンに染まるNakamuraEmiとバンドメンバー。神秘的なフルートが紡ぎ出すのは、一方通行で歩む彼女の半生だ。銀に輝くフルートはまるで魔法の杖。官能的な異国風の響きに呼び込まれる“梅田の夜”は、打楽器とシンプルなリフ、クラップの中、繰り出される言葉は弾丸となっていく。カワムラヒロシ(Gt)、伊澤一葉(Pf)、まきやまはる菜(Ba)、柏倉隆史(Dr)の紹介を経て、「対バンが決まってから1日たりとも今日のことを考えなかった日はなかった」「いても立ってもいられず太極拳とカンフーをやった」なんて可愛いエピソードを披露し、笑いを誘ったNakamuraEmiは、コロナ禍の中でできた“投げキッス”を歌う。会場のあらゆる所から流れ込むコーラスに、そっと心を抱きしめ守る優しい詞。髪を掻き上げる仕草ひとつで見る人を魅了し、耳を裂く絶唱に呼吸を忘れさせるNakamuraEmi。決して大きくはない彼女の身体が、ステージの上ではとても大きく見えた。

その勢いのままに、「たくさんの人に出会えたきっかけの曲」“YAMABIKO”へ。観客のクラップとかき鳴らされるアコースティックギターに、輝かしい歌声が降り注ぐ。マクロの視点でファンを抱きしめるUVERworldに対し、NakamuraEmiの歌声はミクロの視点でファンひとりひとりに口付けを贈るものだ。サビのシンガロングはファンの垣根もなく、マイクを通さないNakamuraEmiの声は2階席まで届いた。ここで「スペシャルな試み」として黒いジャケット姿のTAKUYA∞を呼び込んだNakamuraEmiの“スケボーマン”とUVERworld “PRAYING RUN”のマッシュアップを披露。オーガニックな響きの中、ふたりの歌声は絡んで溶け合い、繋ぎ目も曖昧にハーモニーを重ねていく。それはどちらの曲でもなく、完全に新しいひとつの楽曲。最後に「10周年おめでとうございます!」と言葉を残してTAKUYA∞はステージを後にした。「(TAKUYA∞は)どうしてあんなにキラキラしてるんでしょうね?北海道のイベントの時にTAKUYA∞さんを電車で見かけたんですけど、帽子とマスクしていて目しか見えなくてもキラキラしてました」そんな思い出話を語り、NakamuraEmiは最後に「この日に披露することを想いながら作った、UVERさんとのこの日が無ければできなかった楽曲」だという、新曲“UBU”をステージ初披露。アンコールなし、本編一発勝負の中、5拍子の浮遊感が耳にこびりつくこの曲。「自分」を突き詰めて歌うNakamuraEmiが、誰かを抱きしめるために大きな翼を広げた言葉たちの中、天井からは光のシャワーが彼女を包み込んで、まぶしさに輪郭がぼやけていった。

圧巻の初披露を終えて、「背負い投げ4本目、ありがとうございました!」とシンプルな挨拶でステージを後にしたNakamuraEmi。終演後には『背負い投げ 5本目』が4月18日(土)に東京・ 代官山UNITでRHYMESTERを迎えて、『背負い投げ 6本目』が5月15日に神奈川・F.A.D YOKOHAMAでTHA BLUE HERBを迎えて行われることが告知され、会場は驚きの声と温かい拍手に包まれた。

Text:安藤さやか
Photo:福政良治

『NakamuraEmi 10th Anniversary 「 背負い投げ 4本⽬ 」』@KT Zepp Yokohama セットリスト
・UVERworld
SE. WICKED boy
01.ZERO BREAKOUT POINT
02.PHOENIX AX
03.PRAYING RUN
04.Eye’s Sentry
05.ALL ALONE
06.EN
07.Ø choir
08.7日目の決意

・NakamuraEmi
01.メジャーデビュー
02.火をつけろ
03.かかってこいよ
04.使命
05.雪模様
06.Rebirth-MPC ver-
07.梅田の夜
08.投げキッス
09.YAMABIKO
10.PRAYING RUN × スケボーマン w/TAKUYA∞
11.UBU
<プレイリスト>(一部楽曲を除く)
https://lnk.to/nNP81IDH