EWAN MCGREGOR VANITYMIX 2019-2020 WINTER FEATURE INTERVIEW

ユアン・マクレガー『ドクター・スリープ』

■キングの小説を映画化した中で、あなたが一番好きなのはどれですか?

E そうだなあ。僕としてはやっぱり今作(『ドクター・スリープ』)と言うべきだろうね。いや、本当にそうだよ。『シャイニング』も好きだったけど、あれを見た時、スティーヴン・キングがあれを嫌っていたことは知らなかったんだ。キューブリックがやった変更は、彼が認めたものではなかったんだよね。僕は原作を読まずに見たので、知らなかったんだ。原作を読んだ今は、どうしてスティーヴンが怒ったのか、理解できるよ。ラストだって全然違うし。あの経験で学んだから、今、スティーヴンは、自分の小説が映画化される時にもっとコントロールしようとするんだ。監督やキャストを選ぶ上でも意見を言う。脚本も彼の許可をもらう必要がある。マイク・フラナガンがこの映画を見せたら、彼はすごく気に入ってくれたようだよ。それは嬉しいことだね。僕だって、原作者を怒らせるようなものに関わるのは嫌だしね。それを書いた人にしてみたら、フェアじゃないよね。だから彼は今、もっと慎重なのさ。彼に気に入ってもらえて、僕も満足だよ。

■『ドクター・スリープ』の最も強烈なおすすめシーンはどこですか?

E 演じる僕の立場から言うと、このキャラクターがどん底のところから始まるところが、すごく好きだよ。映画の最初に出てくるのは子供の頃のダニーなんだけど、そのすぐ後に僕に変わる。そのシーンで、ダニーは母と一緒にフロリダに住んでいるんだけど、彼はひどいアルコール依存症で、ボロボロの状態なんだ。人生で最悪の時にいるんだよ。そういうところにいたのに、回復し、罪の償いをすることになるという役は、役者にとってとってもおもしろい。僕はもう本当に長いことまったく酒を飲んでいないから、久しぶりに酔っ払った気分を思い出すのは奇妙だったけどね。それは怖くもあったけど。

■ダニーは子供の頃のトラウマを克服しようとしますが、そこはあなたも共感できなしたか?

E もちろん。彼を苦しめるオーバールックの悪魔は、メタファーなんだよ。僕らを恐れさせるものは、自分の中にある、自分が嫌う自分の部分なんだよ。自分が過去にやったこと、恥だと思っていること、そういうのを、人はできるだけ見ないようにするものだろう。アルコール依存症の人は、酔っ払うことで、それを感じないようにする。だけど、それはそこにあるんだ。それを取り払うには、依存症から回復し、そこに向き合って、時間をかけてやるしかない。そうやって取り除いてしまえば、もうずっと抱えていなくていいんだ。ダニーの場合は文字通り、魂の中に閉じ込められたオーバールックの悪魔で、最後に彼はそれを解き放つことができるのだけど、これはメタファーなんだと僕は思うよ。だからみんな共感できるんだ。僕たちは、自分で変えられないものを持ちつつ生きていかなければいけない。それを受け入れ、それをできるかぎり良い形で使うように努力しなければいけない。人生とはそういうものなんだよ。

PROFILE
1971年生まれ、イギリス出身。 映画『トレインスポッティング』で世界的にブレイクした。 さらに『スター・ウォーズ』新三部作のオビ=ワン役にも抜擢され、2016年には映画監督デビューを果たすなど、活躍の幅を広げている。

作品情報
『ドクター・スリープ』

ユアン・マクレガー『ドクター・スリープ』

11月29日(金) 全国ロードショー
監督:マイク・フラナガン
原作:スティーヴン・キング
出演:ユアン・マクレガー、レベッカ・ファーガソン ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
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STORY
惨劇を生き延びた、あの“少年”の物語。40年前、雪山のホテルでの惨劇を生き残ったダニー(ユアン・マクレガー)は、トラウマを抱え、人目を避けるように孤独な暮らしを続けていた。そんな彼のまわりで起こる児童連続殺人事件。ある日、ダニーのもとに謎の少女アブラ(カイリー・カラン)からメッセージが送られてくる。彼女は「特別な力(シャイニング)」を持っており、事件の現場を“目撃”していたのだ。事件の謎を追う二人。やがて二人は、ダニーにとって運命の場所、あの呪われたホテルにたどり着く……。

ユアン・マクレガー『ドクター・スリープ』
ユアン・マクレガー『ドクター・スリープ』
ユアン・マクレガー『ドクター・スリープ』