EWAN MCGREGOR VANITYMIX 2019-2020 WINTER FEATURE INTERVIEW

ユアン・マクレガー『ドクター・スリープ』

スティーヴン・キングが仕掛ける最大の謎

世界屈指のベストセラー作家スティーヴン・キングの最高傑作『シャイニング』。雪に閉ざされたホテルに巣食う禍々しい力が引き起こした狂気と血の惨劇——1980年に映画化された作品は、今もモダンホラーの金字塔として、永遠の名作に数えられる。本作『ドクター・スリープ』で描かれるのは、その『シャイニング』の40年後の物語。原作は、惨劇を生き延びて大人になった少年ダニーを主人公に、『シャイニング』新章ともいうべき、新たな恐怖を描き出す。そして今回ダニーを演じる、実力派ユアン・マクレガーに、今作の魅力、役への思いを語ってもらった。

■『シャイニング』を初めてごらんになったのはいつでしたか?またどのような第一印象を抱きましたか?

E 初めて見たのがいつだったか、覚えていないんだよね。だけど、公開されてかなり経ってからだったのは、間違いない。見た人がみんな「すごく怖い」と言ったから、見ないでおいたんだよ。僕は怖い映画がそんなに得意じゃないので。(笑) ついに見たのは、ドラマスクールに通っている時か、卒業してからだったか、どっちだったかな?その時はひとりで見たんだ。そんな自分を「勇気がある」と思ったよ。(笑) 次に見たのは、今作の話が来てからなんだ。長い時間が経過したから、あらためて見ると、ちょっと古くなっているような気がしたけど、怖いことに違いはなかったね。あの音楽が怖いんだよ。

■『シャイニング』で有名な、ジャック・ニコルソンがドアから覗くシーンと同じ構図のシーンを、今作で撮影されていますよね。

E あれは注意深くやらないといけないなと思っていたよ。あれは(今作の)監督からの、キューブリックへのオマージュなんだ。あのジャック・ニコルソンのシーンは、本当に有名だけど、それを実際にやる僕としては、あまり重い意味を持たせたくなかったんだよ。だって、僕のキャラクターは、ジャック・ニコルソンがあれをやったというのを知らないんだから。ダニーはそこにいなかったんだ。だから僕はあのシーンを、あくまで普通に、リアルにやろうとしたんだ。

■この作品のオファーを受けた時のお気持ちを教えてください。また、『シャイニング』の続編である今作に、どう興味を持ったのですか?

E 今作の話を聞いた時、興味は持ったけど、同時に、「うまくいくものかな?」とも思ったんだ。スティーヴン・キングが書いた原作本があるというのを、その時は知らなかったし。『FARGO/ファーゴ』(アメリカのサスペンスドラマ)の時にも似ているね。あの話が来た時も、「うまくいくのか?」と疑問を抱いたんだよ。でも脚本を読んで、「これはいい。前と違う」と思ったんだ。そして今回もそう。『シャイニング』は閉鎖的で、ひとつのホテルに3人のキャラクターがいる。この映画はもっと広々としていて、その中で3つのストーリーが並行して語られるんだ。ひとつはアブラの話。彼女はシャイニングを持っている。次に僕、すなわち『シャイニング』のダニーが大人になったキャラクターの話。彼は、アルコール依存症から立ち直ろうとしている。そんな中、彼は自分の持つシャインを、他人を手助けするために使おうと考える。ホスピスの人が死んだ時、「大丈夫だから」と、彼らを落ち着かせてあげるんだよ。彼はオーバールックで死んだ人たちを見たから、そこで終わりではないと知っているんだよね。そして彼はアブラに会うんだ。さらに、レベッカ・ファーガソンのキャラクター、ローズの話がある。映画の『シャイニング』にはトゥルー・ノットが出てきていないんじゃないかな?たぶんスティーヴン・キングの『シャイニング』の小説のほうにも、出ていないと思う。これは新しいアイデアで、スティーヴンはこの世界を拡大したんだよ。そこも『シャイニング』と違うところだよ。

■ということは、『シャイニング』を見ていない若い人でも楽しめると思いますか?

E そう思うよ。『シャイニング』を見ていなくても大丈夫だと思う。見ていなくてもわかる。もちろん、見ていたら、マイク・フラナガン監督が同じシネマの言語を使っていることが理解できて、そこも楽しめるだろうけど。でも、見ていなくても大丈夫だよ。ただし『シャイニング』も良い映画だから、見ておくのはいいと思うよ。(笑)

■あなたはスティーヴン・キングには会っていないのですよね?

E そう、彼に会ったことはないんだ。現場で会えるかなと思っていたんだけどね。彼はきっと現場を訪問するだろうと思っていたけど、来なかったんだ。会ったことはなくても僕は彼が好きだよ。

■スティーヴン・キングがもし現場に来たとしたら、あなたはこのキャラクターについて何か質問したと思いますか?

E いや、しなかったんじゃないかな。もしも「ここは自分には理解しづらい」というような箇所があったりしたら別だけど。僕はHBOの『The Correction』に出た時、原作者のジョナサン・フランゼンと何時間も話をする機会をもらえたんだ。僕は彼に聞くための質問を用意しようとしたんだが、なかったんだよ。僕には、そのキャラクターがわかっていた。少なくとも、自分ではそう思っていたので、「僕はこう思うのですが」と言い、彼に「うん、そうだ、そうだ」と言われるような感じで終わってしまった。彼は俳優じゃないから、何が僕の手助けになるのかわからないんだよね。だから、今回もしスティーヴン・キングに会えていたとしても、役作りの鍵になるようなことを聞けていたとは思わないんだ。それに、僕にはすでに『シャイニング』というバックストーリーがあった。リサーチに必要なものは、もう揃っていたのさ。

■スティーヴン・キングはホラーのキングとして長年愛されてきました。彼の作品の魅力は何だと思いますか?

E わからないな。でも彼は本当に長いこと人気だよね。ストーリーとキャラクターが良くないとそれは無理だろうね。それに、彼のツイッターを見たら明らかなように、彼はとても良い社会的発言をするんだ。そういうことが組み合わさっているんじゃないかな。でも、ストーリーが優れていなければ、こんなに長く成功は続けられないよ。彼は頭が良い、優れたスキルを持つライターなんだと思う。そして「自分はこれを言いたい」ということがある。さらに、僕らを怖がらせるのがとってもうまい。(笑) みんなも彼に怖がらせられるのが好き。(笑)