足立佳奈 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

竹内唯人と、もどかしい恋模様を歌った『この雨がやんだら』の制作を語る。

足立佳奈が、WOWOW 連続ドラマW-30「アオハライド Season1」主題歌を担当する。9月23日にリリースされたその新曲“この雨がやんだら”は、足立と同世代のシンガー竹内唯人とのコラボ曲。足立の空気を含んだ柔らかい歌声と、竹内の低音の歌声の相性の良さとともに、学生のもどかしい恋愛を繊細に描いた歌詞が楽しめる楽曲となった。
本稿では、この夏に6周年を迎えた足立にインタビューを決行。6周年記念ライブの感想や、“この雨がやんだら”に込めたこだわりについて話を訊いた。

■活動6周年目を迎えた8月30日に記念ライブが行われましたが、いかがでしたか?

足立 すごく楽しかったです。コロナ禍以降、マスクを外してのライブが初めてだったんです。今年の4月までツアーをやらせてもらっていたんですけど、その時はまだマスクを着用してのライブでしたし。8月30日はお客さんの制限がなくなっていたので声量も全然違いましたし、曲の間で「かなちゃん!」という声を聞いた時も、「これが2019年に感じたライブだったな」と思って、すごく楽しかったです。2019年は私も10代とかで、まだデビューして間もない時だったんです。何事も初体験が多かったので、ライブにもまだ慣れていない頃で。「あの時はあんな感じだったな……」と、過去の自分と照らし合わせる感じでした。

■過去の自分と照らし合わせることで、ご自身の成長を実感することもありましたか?

足立 コロナ前の時は、ライブの中でみんなと一体になったり、一致団結する瞬間をあまり感じたることがなかったんです。それぞれのテンションが上がっている感じで、パワーの交換をしている感じだったんですけど、今回はライブ会場がみんなでひとつになっている感じがして、これからもっともっとみんなとの距離を詰めていけたらいいなと思いますけど、まずは第一段階上がれたと思います。

■そんなライブで初披露された新曲“この雨がやんだら”は、WOWOW 連続ドラマW-30「アオハライド Season1」主題歌です。「アオハライド」は元々御存知でしたか?

足立 はい。私が中学生くらいの時に映画にもなっていた作品でしたし、漫画も流行っていましたし。映画が始まったタイミングで、友達に「めっちゃいいから観てきなよ!」と言われて、映画も観に行ったりしました。なので、私も「アオハライド」は青春だなと思います。

■今回、タイアップのお話が来て、原作をまた読み返したりもしたんですか?

足立 そうですね。原作も読みましたし、映画ももう一度観ました。懐かしく思いましたね。でも学生服を着ている主人公たちを観た感覚は当時とはまた違っていて。当時は私も学生だったので、「高校生ってこんな感じかな」と思っていたんですけど、今は懐かしいという感覚が強かったです。

■登場人物に対する感情も当時とは変わりましたか?

足立 そうですね。双葉と洸の二人が神社で会う印象的なシーンがあるんですけど、当時の私の家の近所にも神社があったんです。なので、当時は神社に行った時に、「ここにいたらもしかしたら洸が来るんじゃないか」とか思ったりして。(笑) そういう勝手なイメージを膨らませていたのが当時で、今は作品として俯瞰して観ている自分がいて。印象が変わるなと思いました。

■今回、改めて映画を観たり漫画を読んで、どんな楽曲にしようというイメージがありましたか?

足立 最初に思ったこととしては、男女で歌いたいというのがありました。少し前にTani Yuukiさんとコラボさせてもらった時に思ったんですけど、一番リアルにストレートに伝えるには、男性は男性の気持ちを、女性は女性の気持ちを歌うのがいいと感じたんです。なので、今回も男性シンガーの方と歌いたいというのが最初のアイデアでした。

■男女で歌いたいというところから、竹内唯人さんを選んだ理由というと?

足立 元々私が竹内さんの楽曲を聴いていて、「なんて心地のいい歌声なんだ」と思ったんですよね。いい意味で力が入りすぎていないというか。自分はそれとは逆で結構ガツガツと歌うタイプではあるので、ないものねだりですけど、いいなと思っていて。竹内さんの声に惹かれて、是非お願いしたいということで始まりました。

■それまでに竹内さんとは親交があったわけではなかったんですね?

足立 そうですね。ご一緒するタイミングくらいで、たまたまテレビのお仕事で一緒になったりはしたんですけど、実際に初めてちゃんとお話をしたのはレコーディングの日でした。「いくつなの?」「僕はかなちゃんの年下ですよ」みたいな。「私って先輩なんだ!」みたいな感じでした。(笑) 唯人くんのアーティストの部分と、お話する中で見えてくるプライベートなパーソナルな部分がまた少し違っていて、それもきっと彼の魅力なんだろうなと思いました。

■初めから和気あいあいとした雰囲気だったんですね。

足立 そうでした。それで早速歌ってくれて、「どんな感じで歌ったらいいですかね?」って聞かれたんですけど、「ひとまず一回歌ってみて!」と。ぱっと歌ってもらった時に、私がイメージしている唯人くんの声が聴けたので、「これ!これ!」と思いました。

■実際に竹内さんに歌ってもらってみて、足立さんから「もっとこんな風に」といったリクエストを出すことはあったんですか?

足立 少し余裕のある歌い方が彼の持ち味だと思うんです。でも私とのバランスも考えながら、「もうちょっとこのワードだけ、好きな女の子に言うようなイメージで」とか、「目の前にいる女の子に伝えるようなイメージで歌って」というのはリクエストさせてもらいました。

■そんな竹内さんのレコーディングを受けて、足立さんはレコーディングでどのようなアプローチをしたんですか?

足立 唯人くんがちょっとフェイクを入れてくれたり、歌い方を変えてくれた瞬間があったんです。それがすごく良かったので、私も取り入れさせてもらいながら歌っていきました。

■足立さんは普段はお一人で歌われていますが、男女ボーカルとなると、歌う際の感覚も多少なりとも変化があると思います。制作していく中で、メインボーカルが二人だからこそ感じたことはありましたか?

足立 普段一人で歌う時は、「自分がいいと思ったらいい」という判断軸なんですよね。でも今回はそうではないというのが違う点でした。あとは、男性と女性のパートがそれぞれあって、恋愛の歌を歌うということで、「彼のことが好きなんだ」という気持ちで歌ったりして。そういう臨み方って、相手パートがあるからこそできるのかなと思いました。

■確かに同じように男女の気持ちを描いた曲を一人で歌うとなると、相手の人物像を明確に描くのが難しくなるかもしれませんね。

足立 そうですね。やっぱり自分の中で具体的に想像はしますけど、それって自分の中で完結してしまうので、リアルに浮かんでくるようなものではないと思います。でも今回は自分の中だけで完結せず、聴いている人にも分かる形で相手がいる状態だったので、すごくありがたかったですね。歌っている側としても気持ちを作りやすかったです。

■足立さんと竹内さんの歌声はすごく対照的で相性がいいと感じたのですが、実際に歌い終えて完成形を聴いた時、どんな感想を抱きましたか?

足立 まさにすごく声の相性がいいなと感じました。6周年のライブの時にも唯人くんをゲストでお迎えして歌ったんですけど、歌い終えた後に、唯人くんが「俺らの声の相性、すごいよくないですか?」って、会場のみなさんに言っていて。まさにその言葉通りだなと思いますし、リリースされて聴けば聴くほどそう思いますね。

■それこそこれまでもTani Yuukiさんとのコラボなど、何度かコラボレーションを経験してきた足立さんですが、コラボレーションならではの醍醐味はどのように感じていますか?

足立 私がコラボさせてもらった曲はラブソングが多いので、先程も言ったように、男女というのが見える分、分かりやすいなと思います。あとは聴いている時も、作っている時も、自分は女性の視点で物事を考えればいいので、それはすごくいいなと思います。

■ちなみにラブソング以外で、こんな曲でもコラボしてみたいという願望はありますか?

足立 今それを訊かれてぱっと思いついたのは、応援歌ですかね。男女で歌うことで、どの世代の人たちにも性別を問わず聴いてもらいやすくなるのかなと思って。まっすぐに届くものがあるんじゃないかと思うので、ぜひ応援ソングを歌ってみたいです。

■足立さんは少し前まで高校時代の友人の方と一緒に住んでいたと以前お話されていましたね。その方も音楽をやっていたとのことでしたが、コラボのお話などはなかったのですか?

足立 そういうことはなかったですね。お互いに曲を作り合ったりはしていましたけど、お互いにリスペクトがあったので、そこに踏み込むことはしなかったです。

■自分の近くに音楽を作る仲間がいる環境だったのが、今は一人で考える時間や制作する時間が増えた環境になって、制作面などで変わったことなどはありますか?

足立 今までよりも夜に考えることが増えました。なので、夜空に対する曲を作ったり、「朝になったら」という考え方をしている歌詞だったり、夜に作っているんだろうなという曲が最近は増えましたね。それはネガティブなわけではなくて、今までは夜は友達と二人の時間を過ごすことが多かったので、それがなくなった分、歌詞の内容も少し変わってきた気がします。