アルカラ『YAON no OTOKO!!』ライブレポート@日比谷野外大音楽堂

自由でパワフルに、ときに繊細な抑揚で魅了した20周年記念公演。

11月26日(土)、アルカラによる20周年記念公演『YAON no OTOKO!!』が行われた。アルカラにとって初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブとなったこの日は、開演前の影アナにて会場収容率を50%に留めたため、ガイドラインに沿って観客の声援が解禁されることが伝えられた。会場は早速歓声に満ち、久方ぶりの解禁に開演前から高揚も高まっていく。

早速熱気に満ちた会場に登場したアルカラは、「アルカラ始めるぞー!」と高らかに宣言し、“ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト”で開幕。野外の広い会場で掻き鳴らされるバンドサウンドには迫力がありながらも解放感があり、クリアに響く稲村太佑(Vo&Gt)の歌声も心地いい。「日比谷踊れますか?!」と“Dance Inspire”で前のめりな勢いを作り上げると、“tonight”と新曲を続ける。20周年を記念して発売されたアルバム『キミボク』は、これまでのアルカラの作品よりも大人びたテイストで、曲調のバラエティや歌声のニュアンスを広げた作品になっていた。そのリリースを経た本公演では、どの曲の演奏を取ってもアルカラが元々持つ勢いがあると同時に、抑揚の幅など「聴かせる」ライブとしての魅力も加わっていたように感じた。

「オーライみんな、歌える準備できてる?」と稲村が煽ると、キラーチューンの“アブノーマルが足りない”、“チクショー”と続き、早速クライマックス級の盛り上がりへ。朗々と空気に身をゆだねるように歌った“アブノーマルが足りない”のサビでは「久しぶりに歌え!」とマイクを向ける。ひりひりとした高揚感のある演奏と、駆け抜けるようでありながらメロディの美しさを引き立てるボーカルは聴きごたえ抜群。「日比谷野音、調子どうですか?!楽しかったら楽しいって言えばいいし、歌いたかったら歌えばいい!」と伝え、“DADADADA!!”へ。じっくりと稲村のボーカルを聞かせるAメロから、3拍子のBメロでは疋田のドラムや下上のベースもぐっと音量を抑え、サビではキャッチーに盛り上げる。「歴史ある会場でやらせていただきますので、誠実に、友情に厚く、礼儀正しく、そして親切に、快活に、質素に、勇敢に、それと感謝を持って!そんな歌をお送りします」と「8つのおきて」を組み込んだMCから“ボーイスカウト8つのおきて”へ。野外にパワフルな音色を響かせながら“キャッチーを科学する”、せりあがっていくようなエネルギーを感じさせる“目の前には”と続けると、熱くなった空気を落ち着かせるようにアカペラで歌い出したのは“秘密基地”。サビに向かって高ぶる歌声には強度が感じられ、メンバーの演奏も情景を描くようにダイナミックかつ繊細だ。

稲村が初めて野音を訪れたのは6、7年前のこと。とあるイベントに出演していた相川七瀬に挨拶をするためだったという。その際、酒に酔った稲村は会場にある売店の店員に「いつか野音のステージでワンマンするので、その時はよろしくお願いします!」と話したと明かす。晴れ晴れとした表情でその時の言葉を現実のものにした喜びを話すと、“水曜日のマネキンは笑う”、“夢見る少女でいたい。”とその喜びを音にするように力強い音色で続ける。“愚痴ばっかりのローレロレロ”の「あの日の少年はここに」というラインはまさにこの日の稲村を表しているようで、そんな歌詞を堂々とステージにて歌い上げる姿は壮観だ。稲村がのびのびとバイオリンを奏でた“鮮やかなるモノクローム”では、パワフルに率いる疋田武史(Dr)のリズムと下上貴弘(Ba)のベースさばき、稲村の華麗なバイオリンの音色が混ざりあい、これまでとは異なるどこかスリリングな空気を作り上げる。演奏し終えた稲村は、バイオリンで“HYPER CHANT”、“RAINBOW”、“荒狂曲“シンセカイ””のフレーズを弾くというサプライズも盛り込み、更に会場を熱くした。

「野音は来年100周年を迎えるそうで、アルカラは20周年で、ここに比べればまだまだ青二才です。でもアルカラもまだ青一才やった時があった。そんな時の曲を」と“相対”、“+.−”,“メランコリア”を続けて披露。キャリア初期から演奏し続けているディープな雰囲気とほとばしるような勢いのある楽曲が鮮烈に響くと、『キミボク』に収録された“ゼロの雨に撃たれて”へ。更に“ドナドナドーナツ”を披露する。「これからもライブハウスだったり、CDだったり、ラジオにもいるので、生きてまた会いに来てください」と話し、本編最後の楽曲“boys&girls”へ。ここで叫びのように繰り出された「僕 あなた 生きてる」という歌詞は、この日のライブ全体を象徴していたように思う。前のめりかつ抑揚のある生き生きとした演奏と遊び心のあるボーカル、そしてオーディエンスが自由に声が出せるという、ひとつ抑圧の減った公演であったことも含め、「生きてる」という実感を伴わせるようなライブであった。

アンコールでは、20周年に言及した際にオーディエンスから「おめでとう!」の声が飛び交い、「こんなん久々やね!みんなもっと言って!」と喜ぶ場面も。そんなやり取りを経て、「全員厄年を越えまして、次は躍進の年にしたいと思います。 THE LAST ROCKSTARSの勢いで海外進出も目指したい」と続けると「YOSHIKIさんにあやかって!」と“紅”のサビを演奏。思わぬカバーに会場を熱狂に包むと、ライブは“交差点”でフィナーレ。曲中盤、「アルカラ結成日、2002年7月26日に一緒にいた男、高木誠司!その辺にいるから連れてきてくれへん?しょうぴーもいるから一緒に連れてきてくれ」と稲村が呼びかけ、打ち合わせなしでシンガーソングライターの高木、Live music bar PADOMAの店長である西本昇平をステージに呼び出すという自由っぷりも炸裂。普段のライブハウス公演では定番となっている稲村の自由奔放さは、50%の収容率でも1000人を越えるキャパシティの野音であろうと健在だ。高木と西本は戸惑いながらもステージに上がり、最後は3人のボーカルで“交差点”を一層盛り上げる。そして最後は、稲村の提案でステージにいた全員で西本を胴上げしながら退場。彼ららしく自由で活発、かつ今作で見えた大人びた魅力や歌の豊かなニュアンスも発揮された、聴きどころも楽しみどころも多いライブとなった。

Text:村上麗奈
Photo:新倉映見

https://arukara.net/

『YAON no OTOKO!!』@日比谷野外大音楽堂 セットリスト
01. ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
02. Dance Inspire
03. tonight
04. アブノーマルが足りない
05. チクショー
06. DADADADA!!
07. ボーイスカウト8つのおきて
08. キャッチーを科学する
09. 目の前には
10. 秘密基地
11. 水曜日のマネキンは笑う
12. 夢見る少女でいたい。
13. 愚痴ばっかりのローレロレロ
14. 鮮やかなるモノクローム
15. 相対
16. +.−
17. メランコリア
18. ゼロの雨に撃たれて
19. ドナドナドーナツ
20. boys&girls

ENCORE
01. 交差点