ASCA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ASCA『Howling』

「勇気をもらったとか、一歩を踏み出す力になったとかなくていいんです。
ただ側にこのシングルがあれば嬉しいです」

ASCAが前作『CHAIN』以来、約8ヵ月ぶりとなるシングル『Howling』をリリース。歌詞には彼女の切なる想いが、歌声にはすさまじい程のパワーが込められた表題曲は、TVアニメ「魔法科高校の劣等生 来訪者編」のOPテーマで、10月4日から先行配信されている。自粛期間中、自身と向き合った結果、気づくことのできた大切なこととは――この曲とこのシングルに込めた想いとともに、その大切なことについて話してもらった。

■“Howling”は「魔法科高校の劣等生」のオープニングテーマですが、どのように作っていったんですか?

ASCA まず原作を読ませていただいて、主人公の(司波)達也、(司波)深雪、ヒロインのリーナ(アンジェリーナ=クドウ=シールズ)に、ちょっと不自由なところを感じたんです。決められた道を歩かされているというか。でも、その中でもっと強くなっていきたいという意思や葛藤も感じて。そこに自分自身のシンガーとしての葛藤や想いがリンクしたので、そういう部分を歌詞に反映していったんですけど、制作の方からリーナの視点を入れて欲しいというオーダーがあったんです。達也と深雪には憧れるけど、自分とは違うというか、優秀過ぎて正直ついていけないんですけど、リーナは闘う時は強いんだけど、普段は可愛いらしい女の子で、そういう中で葛藤してるという姿にすごく共感できるところがあって。

■ご自身に似ていらっしゃった?

ASCA はい。なので、アニメと自分の経験してきたことをリンクさせるとするならば、そこだなと。そこから広げて書いていきました。

■いつ頃書かれたんですか?

ASCA 自粛期間に入る直前くらいですね。もしかしたら、もうしばらくはファンのみんなに会えなくなるかもしれないっていう状況で書き始めました。この楽曲を作ってくださったSakuさんは、去年の12月のツアーも一緒に周ってくれて、そのツアーが終わってから、この曲の制作がスタートしたので、ライブの余韻が残っていたというか「ライブで映えるような楽曲を作りたい」って、2人で話していたんです。そこが上手い具合にリンクして「ファンのみんなに会えないからこそ、ライブでまた会った時に、みんなで一緒に声を上げられるような楽曲にしよう」ってことで、こういう楽曲になったんです。

■なるほど。

ASCA 今までアニメタイアップさせていただいた楽曲は、全部ストリングスが入っていたんですけど、今回は入れなかったんです。よりライブ感を出して、みんなと一緒に楽しめるようにって。そういう意味では、今までのASCAとは違う新しい挑戦ではありました。

■自粛期間はどんな気持ちでしたか?

ASCA 制作が進んでいく中で、どんどん自粛期間が長くなっていったんですけど、人生で初めて悔し泣きをしました。海外で歌わせていただく機会や、ずっと出たかったイベントが中止になったり、自分のライブやツアーも中止になってしまったりして、悔しくて泣くことがあるんだなって。でもその時、私は「こんなにも歌が好きだったんだ」ということに気づくことができたんです。なので、今は会えないけど、みんなと一緒に声を上げられるような楽曲を作ることができて、未来の楽しみを作れたと思うので、意味のあるシングルになったと思います。

■確かにASCAさんの気持ちが「これでもか」っていうほど詰まっているなと思いました。

ASCA 詰まりまくっていますね。特に今回は「独りじゃないだろ」って部分に想いを込めて歌ったんです。

■それは?

ASCA 今までの活動では、自分自身との闘いというか、孤独な気持ちがずっとあって、け結構考え方が内向きだったというか、ひとりよがりみたいなところがあったんですよね。だけど、去年の12月に初めてツアーを周らせてもらったり、ワンマンライブをさせてもらって、ファンの方の声援とか、そういうみんなのパワーにすごく助けられているんだなって思ったんです。だからこそ、この自粛期間も乗り越えることができたと思っているし。「孤独じゃないんだ、みんながいるんだ」っていうことを、ファンのみんなが私に教えてくれたから、今度は私が「独りじゃないよ」って、自信を持ってそう言えるんです。なので、この部分にわたしの想いがいちばんこもっているんですよ。

■これまでは孤独を感じることも多かったですか?

ASCA 「もっといい楽曲を届けるためにはどうしたらいいんだろう?」とか、そういう完璧でいなくちゃいけない自分との闘いというか、そういうのがいつもあって。きっと視野が狭かったんですよね。それがライブを通して、ファンのみんなと交流することで「ひとりじゃないんだ」っていうことに気づくことができて。

■その気づきは大きいし、きっと歌にも説得力が増しましたよね。

ASCA そうなんです。今までも「信じ続けよう」とか、聴いてくれる人を励ますような曲をたくさん歌ってきたけど、今はもっと言葉に説得力を持って歌えるというか、みんなが教えてくれたからこうやって歌えてるっていう想いは強いですね。

■“ハイドレンジア”、これはあじさいですか?

ASCA そうです。この曲はデビュー前から存在している楽曲で、ちょうどSakuさんと出会った時くらいに、この楽曲を歌ってみて欲しいと言われて。ずーっと世に出ることはなかったんですけど、私の記憶の中にもSakuさんの記憶の中にも残っていて、「あの曲をどうにかして世に出せないものか…」と、いつも2人で考えていて。(笑) なので、今回念願叶ってやっと出すことができるんです。

■こちらの歌詞はどのように書かれていったんでしょう?

ASCA 1番はSakuさんがすでに書いていて、2番から私が書かせてもらったんですけど、1番の美しい世界観を壊さずにどう書いていこうかということで…超大変でした。(笑)

■きっとそうでしょうね。

ASCA なので、Sakuさんに1番の歌詞の意味をヒヤリングして、「これは想っていた人の気持ちが、自分に向いてないということに気づいてしまって、でも自分はまだ好きで…っていうことでいいんですか?」って聞いたら、「あ、そういうことでいいです」って、めっちゃ軽い感じで返ってきたので、「人の気も知らないで!」って。(笑) そこから書き始めていきました。

■あはは、なるほど。

ASCA 自分に気持ちが向いてないということに気づいてしまったのが1番で、そこから2番で時系列が戻って、どうして自分に気持ちが向いてないことに気づいてしまったのかということを書いていって。他の人にやさしい笑顔を向けている、私は見たことがなかった、そんな笑顔をするなんて知らなかった、だから2番がいちばん悲しくて絶望しているんだけど、最後のサビで、時間が経って、少しだけ傷が癒えて前を向けているというところを書いておこうと思って。まだ悲しみが完全に癒えたわけではないけど、ちょっとだけこの楽曲に希望を持たせたいなということで、そういう流れになっているんです。その微妙な心の移り変わり、心理描写を、雨と花で表現したんですけど、これを書いたのがちょうど梅雨の時期で、ジメジメした部屋にこもって書いていました。

■SakuさんはASCAさんの歌詞について、なんておっしゃっていましたか?

ASCA 「いいね、いいね」って。でもこれは、自分自身の実体験も混ぜたので、もうツラかった、ほんとツラかったんですよ。

■そうだったんですね。

ASCA ジメジメした部屋で、そのツラい記憶を掘り起こしながら書くのもツラかったし、歌うのもツラかったです。

■ここまで繊細な曲をすごく力強く歌われているので、逆にグッとくるものがありました。

ASCA プリプロしていた音源が、サビに入った瞬間、雨に打たれているんですよ。その音を聴いた時、「サビで大雨降ってるじゃん」と思って。なので、そのイメージがそのままボーカルになっているというか、大雨が降って叫んでいるじゃないけど、悲痛な叫びみたいなところから、今回レコーディングのヒントみたいなものをもらいました。

■あと、最後の「あいの花」の部分の「あい」の字が、それぞれ毎回違って素敵だなって。

ASCA 微妙な変化なんですけどね、とにかく2番は相当悲しいんだろうなって。そこでは悲しい「哀の花」だったんだけど、最後は愛情の「愛の花」になって、自分が誰かを想うことや、その想いが届かなかったけど、誰かを愛せたということは絶対に無駄じゃなかったし、きっとこれからも人生の糧となって生き続けていくと思うし…ということで、最後はこの「愛の花」になりました。

■お気に入りの曲を納得のいくカタチに仕上げることができましたね。

ASCA サウンドがすごくドラマチックだし、インストがまた美しいんですよ。こんなにインストを聴いたことがあるだろうかっていうくらい、この曲はインストで聴いていて、それくらいお気に入りなんです。2番終わりの間奏のところで弦が入るんですけど、そこがまた切ないし、でもやっぱり希望も感じるし。この曲は自分の書きたいものというよりは、Sakuさんが作ってくれた音に導かれて書いていったっていう感覚が強いです。

■そういう書き方をされたのはこれまでありました?

ASCA ここまで邪魔をせずに書こうと思ったのは初めてかもしれないです。人の詞に寄り添って書くことで、自分からは出ないワードが出てきたり、作詞に関しての新しい扉を開いてもらった感じですね。