TIMO VUORENSOLA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

TIMO VUORENSOLA 『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』

「クレイジーだけどタブーはないぞ!」
7年ぶりとなる期待の続編公開

月の裏側にナチスが秘密基地を建設し、人類を侵略するという大胆な設定で話題となった映画『アイアン・スカイ』の7年ぶりの続編『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』が7月12日より公開。個性的なキャラクターに加え、ローマ法王、スティーブ・ジョブズといった歴史的なキャラクターまでもが続々登場し、人類滅亡を懸けた宇宙戦争に挑むというこの超大作、クラウドファンディングで集まった資金は1.5億というのだから、期待度と愛され度は半端ない。『アイアン・スカイ』が愛される理由とは――ティモ・ヴオレンソラ監督に話を訊いた。

■今回もクラウドファンディングで1.5億円の資金が集まりましたね。これは前作に対しての評価と今作への期待でもあると思うのですが、監督はどのように感じていらっしゃいますか?

T 全体の制作資金は2000万ドル(日本円で20億くらい)で、そのうちの1.5億が今回クラウドファンディングで集められました。この資金がなければ制作をスタートすることもできなかったし、作品を続けることもできなかったので、いちばん重要な資金の一部がここで集められたことになるわけです。だけどファンの期待にだけに応えてしまうと、単純にファンサービスのものになってしまうので、自分が信じるもの、自分が観たいものを作る。そういう気持ちで作品に向き合ってきました。ファンはこの作品のユニークなところを気に入ってくれているし、次はこういうものが観たいという強い想いも持っているので、期待と違ったらちゃんと言ってくれるだろうし、受け止められると思っています。自分でも驚くほどクレイジーなアイディアが良質な作品になったと感じているし、1作目がフィンランドからはるばる日本まで旅をして、今回こうして2作目が出来上がって、そのこと自体がとてもすごいことだといま実感しているところです。

■魅力的なキャラクターが多いですが、どのようなイメージで作られたのでしょうか?

T オビ(ララ・ロッシ)は、前作の主人公であるレナーテ・リヒター(ユリア・ディーツェ)の娘なんです。お母さんは前作の主人公であり人類の救世主でもあったんですが、今作では仕事の責務に疲弊してしまい、保守的な考え方になってしまった。歳を重ねるとどうしてもこうなってしまうけど、若者たちがそのバトンを受け継いで、次を切り開いていかなければいけないということで、このオビというキャラクターを作りました。こうしなければいけないという、決められ事の多い中で育ったお母さんとは真逆で、反逆心に溢れ、力強い意思で自ら進んでいく女性をイメージしました。サーシャ(ウラジミル・ブラコフ)は、ステレオタイプ的なロシアの青年で、女性にアタックするためには自我をグイグイ押しつける自信過剰な若者で、オビからしたら「はぁ?あなた何?」みたいな感じなんですけど、一緒に闘っていく中で、自分を無理して作らなくていいんだ、自分のままでいいんだってことをしっかり学んでいくんです。マルコム(キット・デール)はオビのことを完全に信頼していて、愛している犬みたいなイメージで、基地の中でオビが正しいことをしているということを唯一理解しているキャラクターでもあるんです。こういうタイプの物語では、マルコムがヒーローにいちばん近いイメージなんだけど、あえてオビをヒーローにして、オビの手下とすることで意外性があっておもしろいかなと思ったし、『スタートレック』のファンだったら気づいていただけるかと思うんですが、『スタートレック』の世界では、赤いシャツを着ているキャラクターがいちばん最初に死んでしまうんだけど、彼はずっと赤いシャツを着ていながら死んでは生き還り、死んでは生き還りを繰り返すという、そういう内輪ネタでもあるんです。

■歴史的なキャラクターも増え、この先のストーリーも気になるところですが、続編を期待していてもいいでしょうか?

T もちろん。次回の舞台は火星です。旧ソ連の共産党主義の方々が火星に基地を作っているので、ぜひ楽しみにしていてください。それとは別に、中国との共同製作で、スピンオフの作品も作っています。撮影も終わり、編集半ばといったところですが、こちらも楽しい作品になると思いますよ!

■楽しみにしています。では最後にこの映画のみどころを教えてください。

T ぜひ背景にも目を向けてほしいです。表層的にはまっすぐなアクションものに思えるかもしれないけど、その奥にはいろいろなオマージュやメッセージが潜んでいます。映画ネタ、日本の作品に関するネタ、クラシックな昔の作品やネット関係のネタなど、たくさん散りばめられているので、映画オタクの方にはそこもチェックしてほしいですね。クレイジーだけどタブーはないぞ!っていう映画なので、反骨精神で観てほしい。最近のSF映画は、観客に受け入れてもらわなければという慎重さの中で作られているけど、僕らはそういうハードルがないから、好きなだけいかれてクレイジーなものを作れるんです。その部分をまずは楽しいなと思ってもらって、それと同時にいま我々が住んでいる世界をまた違った角度から考え直してほしいし見つめ直してほしい。この作品に出てくるカルトや恐竜が実際いまの世界になくても、それと同じようなものが存在しているわけだからね。そういう部分に想いを馳せて観てほしいです。

Interview & Text:藤坂綾

PROFILE
1979 年11 月19 日フィンランド生まれ。CMやミュージシャンのプロモーション動画を製作する一方、2005 年にSF コメディ映画である『スターレック 皇帝の侵略』を発表し、国内外で高い人気を示した。また、「月面ナチスの地球侵略」という強烈なテーマもさることながら「クラウドファンディング」で製作費を募ったりなど、非常にユニークな前作『アイアン・スカイ』の来日では、 2012 年フィンランド映画祭のオープニングセレモニーに登場し、自身が大ファンと公言するきゃりーぱみゅぱみゅとのコラボレーションが実現。また、『機動戦士ガンダム』の生みの親である、日本を代表するアニメ監督・富野由悠季氏とニコニコ生放送で対談し、「ガンダム」や『宇宙戦艦ヤマト』を観ていたと熱く語るなど、日本のポップカルチャーのファンでもある。

作品情報
『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』

TIMO VUORENSOLA 『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』

7月12日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督:ティモ・ヴオレンソラ
脚本:ダラン・マッソン / ティモ・ヴオレンソラ
出演:ララ・ロッシ / ウラジミル・ブラコフ / キット・デイル ほか
配給:ツイン
© 2019 Iron Sky Universe, 27 Fiims Production, Potemkino. All rights reserved.
http://ironsky-gyakushu.jp/

STORY
2018年、人類は月面ナチスの侵略に勝利するも、自ら引き起こした核戦争で地球が荒廃してしまった。それから30年後、人々はナチスが建設していた月面基地で生き延びていた。しかし、月面基地のエネルギーは限界に達し絶滅の危機に瀕していた。人々が苦しむ姿に機関士のオビは胸を痛めていた。ある日、地球から宇宙船が月に飛来。そこにはロシア人の乗組員のほか、死んだはずの月面ナチス総統ウォルフガング・コーツフライシュが密かに同乗しており、月面基地に忍び込むのだった。何の企みか、ウォルフガングはオビに人類を救う手段を打ち明ける。地球の深部には未開の世界が広がっており、そのエネルギー源を集約する“聖杯”を持ち帰れば人類は救われるというのだ。未曾有の危機に瀕している人類を救うため、オビは仲間たちとともに<ロスト・ワールド>に向けて旅立つ。しかし、そこはナチス・ヒトラーと結託した秘密結社ヴリル協会が君臨する世界だった。ヤツらは人類絶滅を企て、恐竜とともに地底から攻めてくるッ!!

TIMO VUORENSOLA 『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』
TIMO VUORENSOLA 『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』
TIMO VUORENSOLA 『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』
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TIMO VUORENSOLA 『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』
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