BLUE ENCOUNT VANITYMIX 2019-2020 WINTER PICK UP INTERVIEW

BLUE ENCOUNT『ポラリス』

田邊駿一(Vo&Gt)、江口雄也(Gt)、高村佳秀(Dr)

「ヒロアカ」の力も借り、沢山の人の何らかの糧になれたら…
BLUE ENCOUNTの目指すポラリスとは?

今夏ミニアルバム『SICK(S)』を発表し、それと共に初のホールツアーを行ったBLUE ENCOUNT。固定席、より幅広い客層、観られている感覚、遠くまで音や歌を届ける使命等々の魔力は、彼らに「どうしたら従来の自身の音楽性を保持しつつ、更に映え、突き刺せる音楽に至れるのか?」を更に深く考える動機にもなった。そこで出た結論の一つが玉井健二をプロデュース・編曲に迎え制作された前作シングル『バッドパラドックス』であり、今回のニューシングル『ポラリス』(アニメ「僕のヒーローアカデミア」第4期OP曲)と言える。
歌を聴かせ、より楽曲をドラマティックに仕上げることでも定評の高い玉井と共に創り上げた今作は、まさに彼らの勢いや熱量はそのままに、更に聴きやすく伝わりやすく心に届きやすいものとなった。田邊駿一(Vo&Gt)、江口雄也(Gt)、高村佳秀(Dr)の3人(※辻村勇太(Ba)は体調不良のため、取材は欠席)に、ここまでに至った境地を訊いた。

■今回の『ポラリス』は、今夏のホールツアーでの良い意味での丁寧さと伝え方が非常に活かされ、反映された作品印象を持ちました。熱さや情熱をキチンと伝えつつ、その伝え方が従来とは違うというか…。

高村 それが伝わって下さっているのはめちゃくちゃ嬉しいです。まさに今おっしゃって下さった通りで。これまでの自分たちの正攻法みたいな、いわゆるこうやったらブルエン節が出る、今回はそこではなく、もう一歩先のフェイズや方向性に向かっていきたくて。より多くの人たちに聴いてもらいたくなったというか。自分たちもやはり進化していかなくちゃならないですから。それらも含め、前作シングル同様、今作でも玉井(健二)さんに入ってもらい、また新しい僕らの魅せ方みたいなものが出来たかなと。自分的には古き良き自分たちと新しい自分たちを融合させられた感が、今回の“ポラリス”には非常にあるんです。

江口 「やはりこれからは一部の方だけでなく、全ての方の心に刺さる曲を作りたい」となった時に、今回のようなアプローチに向かうことは、まるで流れに乗るように自然でした。それで、実際にやってみたら、こっちの方が断然歌も刺さるし、各々の楽器も映えるし空間も使える。もう、いいことだらけで。

■確かに今作はみなさんらしさと、らしからぬさの同居が特徴的で。特にキラキラとしたものとウェットなものの同居も印象深いです。ギターを中心のキラキラしたウワモノに対して、歌はかなりウェッティですもんね?

田邊 もう今回は「粘っこくいこう」と。ウェットよりももっとネットリと絡みつくような。(笑) 玉井さんは歌をめちゃくちゃ厳しくジャッジされる方で。久々に歌録りの際は歌いに歌いまくりました。それこそ喉がつぶれるぐらい。元々この楽曲自体は僕らが作っていたんです。ほとんど完成状態で玉井さんにお任せしたんですが、結果とんでもなく素晴らしいものに仕上げて下さいまして。

■先ほどの歌唱指導について、もう少し詳しく教えて下さい。

田邊 語尾のアクセントやすごく細かいニュアンスを大事にする方でしたね、玉井さんは。例えば「ここちょっとクセ強めに歌ってみて」とリクエストされて。「えっ、それじゃあコブシが強く回り過ぎて演歌調になっちゃいますよ~?」と心で思いつつも、一応その通りに歌ってみたら、サウンドや前後の歌い方ともマッチして、逆にすごくいい感じに仕上がったんです。サウンド等と上手く絡み合って、全然クセを感じさせなく響いて。たぶんあれも、ああでもしないときっとウワモノに負けて消えていたんだろうなと。あとは大事な言葉自体を強く歌うのではなく、むしろその前後を強く歌うことで、より本質が伝わる。それらを直で学んだし、それこそ歌入れのディレクション中はずっと「へーっ」、「はーっ」と感心しながらレクチャーを聞いていましたから。(笑)

■ではその辺りかなり勉強になったのでは?

田邊 なりました、なりました!歌入れにも関わらずボイトレに通っている感覚でしたから。(笑) 玉井さんにプロデュースを受けたボーカリスト仲間はみんな言うんですよね。「玉井さん、絶対にボイストレーナーになるべきだ!!」って。(笑) 面白かったのは、玉井さんはプリプロダクションの時、演奏面ではちょっと間違っても「大丈夫、大丈夫」なんて軽くいなしてくれるんですが、こと歌だけは別で。もう、プリプロの段階から僕だけ鬼コーチ状態でしたから。(笑) 「まだこれ仮の歌詞なので…ここからいろいろと変わっていきますけど…」と伝えているにも関わらず。(笑) でもその後、それを元にキチンと編曲したものが送られてきて。それを聴くとやはり完璧なんですよね。

■ギターはいかがでしたか?

江口 いい意味でウワモノ感が出せたかなって。みんながしっかりとベーシックを作ってくれたが故に、自由にその上を泳ぎ回れたというか。ここ最近はやはり、いま以上のフェイズに向かったり、より世論の心にぶっ刺す、いわゆるヒット曲みたいなものが欲しくなってきていて。そのポテンシャルがこの曲には充分にありますから。それこそこの曲はライブハウスでもホールでもフェスでも刺さる。そんな楽曲なんです。

田邊 玉井さんの頭の中では、最後の味付けは聴いた人毎の耳や心の中で完結出来るようになっているんですよね、不思議と。それが曲なんだな…と改めて感じました。今回のライブハウスツアーでも、この“ポラリス”は既に全会場で披露しているんですが、各地盛り上がりも違うし、その各地でも各席で聴いている雰囲気が全く違うんです。ただただ盛り上がっている子もいれば、その景色の一瞬一瞬を逃したくないと必死に聴き入っていたり。かと思えば、初めて聴いたはずなのに、既に口パクで一緒に歌おうとしている子がいたり。そんな景色を場内の至るところで目にするぐらい十人十色で。そこまで各々が違った感受を受ける曲もこれまでの自分たちの曲ではなかったですから。それが逆に自分たちでも「ああ、アーティストとして観られている…」ひいて言えば、「自分たち」って自覚にもつながっていったんです。