ASCA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

Wタイアップシングルと新たな挑戦で感じる「人は薬にもなれる」。

ASCAが11月18日にニューシングル『Remedy / Double Wings』をリリース。TVアニメ「マジカル★エクスプローラー」のオープニングとエンディングテーマのWタイアップ作品となった今作で、ASCAは新しい気づきを数多く得たという。インタビューでは夏の海外遠征のことから、現在上演中の「竜とそばかすの姫 – PROJECT LAYRA -」、映画「GROTESQQQUE-グロテスク-」のことなど、たくさんのトピックについて話を訊いた。

■8月は海外遠征の月になりましたね。ドイツにインドネシア、台北にインド……インドネシアはよく聞くのですが、インドは珍しいですよね。

ASCA いやぁついに来ましたかと。(笑) 3年前くらいから、DJ和さんなど日本のアーティストがインドのイベントに出演しているのを見て、もしかしたらいずれインドに行くことになるかもしれないな?とは思っていたんです。そうしたらついに来ましたね。最高に面白かったです。いろいろとカルチャーショックでした。

■どんなところがカルチャーショックでしたか?

ASCA もう全部が予定通りに行かないです。(笑) 基本的に車移動だったんですけど、常に渋滞していて、しかも現地の方たちは「30分〜1時間遅刻は当たり前」という感覚なんです。だからリハーサル時間のスタートももちろん予定通りじゃないし、想定外のことが次々に起こるので、自分の当たり前が通じないことを改めて感じました。むしろ時間に縛られず過ごすことができて、私自身はとても心地よかったんです。

■遅れるのが普通だから、向こうも怒らないんですね。(笑)

ASCA そういうのを日本にも取り入れられないかな?と思いました。(笑) これが日本の当たり前になったら幸せなんじゃないかな?って。遅れすぎて最終的にその予定がなくなるなんてこともあったんです。そういった時でも自分自身が動じなくなってきたので、カルチャーショックを受けながらも、成長みたいなものも感じることができて、非常に今後の人生に活きる旅だったなと思いました。

■「インドに行くと価値観が変わる」と言いますもんね。(笑) 空港はカレーの匂いがしましたか?

ASCA いや、しなかったです。(笑) 確かにカレーのお店はいっぱいありましたけど、事前にいただいていた情報よりも綺麗でした。ただ、道路ですね。車線が全然ないんです。強い者だけが前に進めるみたいな感じで(笑)、割り込むしか前に進む方法はないみたいな。それにみんなためらいなくクラクションを鳴らしていて、多分押す必要もないのに押しているんですよ。(笑) それもひとつの運転技術として教えられているのかな?というくらい。「今からそっち行きますからね」みたいな意味合いで使っていたりするんです。

■もうウインカーは意味ないですね。(笑)

ASCA そんな感じです。(笑) もう全然日本とは違う常識がありましたね。

■いろんなところに行ってみて、観客のノリの違いみたいなものもありましたか?

ASCA ありますね。やっぱり好きでいてくれる楽曲も全然違うなと感じました。例えば台北の方はバラードが大好きなんです。しかも聴き入るんじゃなくて一緒に歌うんです。インドもそうでしたね。だから、主催の方からも「アップテンポな曲じゃなくて、バラードを歌ってほしい」とのリクエストがありました。その国によって人気の曲が違うんです。インドに関しては、現地のボリウッド(映画音楽)の曲をカバーさせてもらったのですが、みんなも一緒に歌ってくれて感動しました。正直、披露するまではとても不安だったんですよ。もしかしたらみんな知らなくて「ポカーン」となる可能性もあるじゃないですか。(笑) でもリハーサルで歌ったら、音響のスタッフさんが踊り出してくれたので、良かったなと思いました。「一体感をみんなで作ろう」という意識よりは、自分が楽しかったから楽しむし、聴く時は聴くという感じで、各々がそれぞれ楽しんでいる感じが良かったです。

■ドイツの観客は日本に近い感じなんですか?

ASCA そうなんですよ。今年で5年連続でドイツに行かせてもらったんですけど、ある種ホームみたいな感覚というか、みなさん一体感を作ってくれるんです。だから、登場する前とか、歌い終わった後にASCAコールをみんなで声を揃えて叫んでくれたり、楽曲中に煽ったりすると、みなさん同じタイミングで盛り上がってくれて。距離で言えば4か所の中でヨーロッパが一番遠いですが、すごく安心して歌える場所だなといつも思います。

■この海外公演を経て変化があったことや、変えていこうと思ったことがあれば教えてください。

ASCA どこに行ってもそうなんですが、自分が思っている「当たり前」は、その国では「当たり前」じゃないということですね。気づくと何か一つの考えに固執してたりするじゃないですか。それに気づかされるのが海外なんです。固執すると視野も狭くなって、選択肢も減って楽しくなくなるんです。海外に行く度に、もっと自由でいいなとか、もっといろんな楽しみ方があるなとか、可能性を広げてくれるので、虜になっています。なので、行ったことない場所こそ行きたいです。もう逆に「カルチャーショックを受けたい」、「この固定観念を壊してほしい」と思うようになりました。愛すべきインドには、また行きたいなと思いました。

■そのお話を聞いて私も行きたくなりました。(笑) そして今作のニューシングルですが、「マジカル★エクスプローラー」のオープニングとエンディングということで……。同じアーティストが同じクールのアニメのオープニングとエンディングを兼任するのはとても珍しいと思うのですが、どういった経緯で担当することになったのでしょうか?

ASCA 経緯というか、お話をいただいた時は私もびっくりしました。今までもアニメのテーマ曲をたくさん歌わせてもらってきていますけど、オープニングとエンディング両方というのは、嬉しい反面、良くも悪くも私が色をつけてしまうというか、「顔」になると思うので、「どんな楽曲だったらいいのか」とか、「アニメファンのみなさんはどんな曲だったら嬉しいだろう?」とか、いろいろと考えました。

■オープニングとエンディングで特に歌い方を変えようと思った部分などはありますか?

ASCA オープニングの“Remedy”は、9周年のタイミングで改めてしっかりお届けするシングルだから、ASCAの楽曲を好きでいてくれる人に、「やっぱりASCAのボーカルってカッコイイよね」と感じてもらいたいという思いで制作しました。この2年は、私の声の武器をちょっとずつ増やしていったんですね。例えばAメロ、Bメロの部分だと、疾走感がありながらも、ふくよかに声の深みみたいなところが出るように歌いましたし、サビに関しては、一気に突き抜けていく力強さがありつつ、歌詞の言葉をしっかり届けたいという意識で歌っています。

■2曲ともシリアスなナンバーになっていますが、作品自体は明るい雰囲気の作品だと思いました。意図的にシリアスな2曲にしたのでしょうか?

ASCA シリアスというよりは、私自身が人生を歩んできて、今何を届けたいかということを、原作と照らし合わせながら作っていきました。人生での気づきって、すごくシンプルだなと年々思うようになってきたんです。なので、シリアスにしようという意識は一切ないんです。説得力があるボーカルでありたい。言葉をちゃんと届けて、聴いてくれる人の「薬」になる曲にしたかったんです。「人には力がある」というところから作っていって、そういう自分が人生で感じてきたことを、シンプルにしっかりと届けたいと思った時に、シリアスに受け取っていただけたのかなと思います。

■“Remedy”は「治療薬」という意味のタイトルですが、どのあたりが作品と繋がっているのでしょうか?

ASCA 原作を読ませてもらった時に、主人公が最初はひとりで魔法を上達させるために頑張っていたのですが、周りの生徒だったり、先生だったりのおかげで、どんどん成長していく姿や、壁にぶち当たった時に乗り越える力をもらっている様子を見て、以前メモをしていた「人は薬」というワードを思い出したんです。このテーマを作詞家さんにお伝えしたところ、”Remedy”というタイトルを名付けてくれました。

■クレジットはされていないですが、作詞には少し関わっているんですね。

ASCA そうですね。作品の中で「ひとりでは勝てなかった」シーンがあったり、学べなかったスキルがあったり、成長できなかったシーンがあったりするのが、人間の世界と一緒だなと思いました。そういう精神性みたいなところで作品と繋がれたらいいなと思い、“Remedy”というタイトルになりました。

■それにしても、曲調も歌詞も、いかにもアニソンという感じで、歌い方もザ・アニソンという感じになりましたね。

ASCA 自分が磨いてきたボーカルの強みみたいなところを、もう一回ブラッシュアップして、より進化した姿を届けたいというのはありました。「ただ力強かったり、クールなだけじゃなくて、もがいてきた日々があるから、今、私はもう一回歌を楽しいと思って届けられているんだよ」というドラマが、この歌詞にはしっかり詰まっています。歌詞をみなさんに届けたいという気持ちはすごくあります。

■レコーディングはすんなりいきましたか?

ASCA “Double Wings”は「ここ数年で一番早かったんじゃないかな?」というくらい早かったんですけど、“Remedy”はすごく時間がかかりました。物語の顔になるということもありましたし、第1クールで流していただけるということもあって、テイクを重ねるごとにこだわりたい箇所が増えていって、細かいニュアンスを突き詰める作業がありました。

■逆に“Double Wings”は早かったんですね。

ASCA そうなんですよ。“Double Wings”は初めて聴いた時から、自分の声の気持ちいいところや、おいしいところを聴いてもらえる曲だなと思っていて。実際に歌ってみても、細かくディレクションをしてもらうというよりかは、音楽に導かれるまま、「聴いてくれる人を温かく包み込める曲になればいいな」という想いで歌いました。だから早かったんだと思います。

■「ここは特に聴きどころだから聴いてほしい」というところはありますか?

ASCA “Remedy”の歌詞にはパワーがたくさんあって、読んでくれた人や応援してくれる人に、「ここまで歩んでこられたのはみんなのおかげだよ」と思ってもらえるような歌詞がたくさん散りばめられています。「救われているのはこっちだよ」というファンのみなさんと自分とのお互いの関係性が描かれているようなフレーズがたくさんあります。また、日々生きている中で、思うようにいかなかったり、立ち止まったりしていることに寄り添いたいと思っている人がこの曲の中にはいて、「みなさんの日々の薬になりたい」と思いながら歌ったので、ASCAの歌を聴いたことがない方にもぜひ聴いてほしいです。

■そういう時に聴こうと思います。ミュージックビデオはストレートな作りでしたが、時間がかかったところや、大変だったことはありましたか?

ASCA 今回は「ステンドグラス」というテーマを提案させてもらったんですが、撮影する場所を探すのがなかなか大変だったみたいで……。(笑) ロケーションは良くても、理想のステンドグラスじゃなかったりで、探してくれたスタッフさんたちが大変そうでした。あとはリリースは11月ですが撮影が夏だったのですごく暑かったです……。衣装もニットだったし、そういう戦いがありましたね。

■羽根は本物の羽毛ですか?

ASCA 本物です。ハシゴの上に登ったスタッフさんが上から羽根を降らせてくれているんですが、なかなか理想通りにはいかなくて、拾い集めてはまた降らせてと、何度も撮影しています。あと、コップの水を倒すシーンや、クリスタルを落とすシーンも、舞台裏ではスタッフのみなさんが一生懸命拾い集めてくれていました。アナログな撮影現場で、みんな頑張ってくれました。(笑)

■衣装がすごくオシャレですよね。

ASCA そうなんです。ビジュアルに関しても、前回はピンクでフェミニンな印象だったものから、今回はクールビューティーなASCAのビジュアルというものを再構築しようという想いがあって、作り込んでいったんです。細かいところで言うと、シルエットがAラインで、ふわっとしていたものから、Iラインになって、可愛くなりすぎず、でもカッコよくもなりすぎないようにと、「女性らしさも残しながら、クールビューティーとはなんだろう?」というのを、もう1回作らせてもらったビジュアルになりました。

■メインビジュアルのステンドグラスの光は自然光ですか?

ASCA これはライティングで作り込んでいただいて、アートディレクターさんが手作りで(ステンドグラスの)ボードのようなものを作ってくださって、後ろからライトを当てて表現しました。これが結構、「顔にどの色を当てるのがいいのか」というのが難しかったんです。青すぎても顔色が悪く見えるし……。それで選ばれたのがこのピンクでした。初回生産限定盤の写真はちょっと角度を変えて、もっと暖色系のオレンジのところに光を当てているんです。この絶妙な塩梅で全然映り方が変わってしまうので、本当にいいカットを選べたと思います。