人間臭く泥臭く…裏や心の奥底までも現し、よりパーソナルを露わにした安田レイのニューアルバム
安田レイのニューアルバム『Re:I』は、ある種、自分と向き合う中、これまで自身の殻を破れずに躊躇し葛藤していた彼女自身を解き放った作品だ。それは主に自身で作詞・作曲した今作収録の新曲群から伺えるのだが、より自身のパーソナルや裏側、内側までもを曝け出し吐き出したかのような「人間臭く泥臭い」楽曲たちも耳を惹く。それらはアルバムタイトルやジャケットのアートワークともリンクし、従来の彼女のイメージを保持しつつも、それだけでない部分や面も各所垣間見せているのも興味深い。
彼女は何故今作に於いてここまでに至れたのか。そこに至らせたものとは?その真意を訊いた。
■この取材を機に過去2枚のアルバムを改めて聴き返したのですが、今作が最も安田さんのディープな部分やウェットな面、陰もキチンと表されており、更なるパーソナル性が伺えた作品印象を持ちました。
安田 ありがとうございます!それはすごく嬉しい感想です!!というのも今回はテーマとして、「自分の殻を破る」というのがあったんです。今回のジャケットにも表れているように、今まであまり表に出してこなかった自分のパーソナルな部分や、それから「こんなことを表したら恥ずかしいかな…」と思う部分、自分で「ダメだな…」と感じている面など、今までの強がって生きていた自分を変えたいな…との強い思いがあり、今回制作した面もあったので。その辺りもこのジャケットぐらいはひょっこり表せたし、出せれたかなと。
■ひょっこりどころか私的にはかなり露出している感がありました。
安田 中でも特に今作の為に制作した“赤信号”や“Re:I”なんて、まさにそうかもしれませんね。特にこの2曲に関しては、作詞・作曲も自分が関わらせてもらったこともあり、自分の深い部分が現れたかもしれません。いわゆる昼の自分と夜の自分の二面性があったとしたら、私ってこれまでは昼の明るい時間を生きている人のイメージが強かったと思うんです。ところが実際はそれだけでもなくて、結構それとは真逆な自分も存在していたりするので。それをこれまでは表しちゃいけない、みたいな変な自制心があったもので…。
■それは「自身のパブリックイメージを壊しちゃいけない」との自制心?
安田 そうですね。あと見栄っ張りや強がりな面もあるし、キチンと思っていることを正直に伝えられなかったり、それらも関係していて。どこかあるんですよね、常に自分はシッカリとしていなくちゃいけないみたいな、妙な使命感が。とは言え、私も間もなく27歳になるし、これから大人の階段を上っていく中、それを演じるのが苦しくなってきたんです。もうそろそろ肩の力を抜いて、本当の自分として歌を歌ってもいいんじゃないかって。特に2019年はそれを強く感じました。
■いわゆるパブリックイメージにある「レイ像」に縛られるのが窮屈になってきたと?
安田 いや、それだけでもなくて。それも自分の中では実際に半分は存在しているので否定はしません。ただ、「それだけじゃないんですよ」って。逆に2020年はその辺りを表したかったし、知ってもらいたかったんです。それは曲の雰囲気や自分が作った歌詞やメロディを通してはもちろん、提供してもらった楽曲にしても、歌唱表現等でも表したくて。それらを通じ、「安田レイって本当はこういった面も持っていたんだ」や「こんな人だったんだ」と知ってもらいたくもあって。これを怯えず、「こう思われたい!!」みたいなあざとさも抜きにして、もっと素直にそれを出してみたんです。
■でもそれはある種、自身を曝け出したり、心情吐露も伴いそうですが、そこに対しての怖さや恥ずかしさ、勇気は如何でしたか?
安田 正直、聴いた方がどのような印象を持つかという不安や怖さはあります。いわゆる「4つ打ちのキラキラとした安田レイが好きな人は、これらを聴いてどう感じるのか?」への不安も正直あります。だけど、それに怯えていたら新しいことなんて何にも出来ないですから。ずっと近い世界観しか表せなくなってしまうし、それは面白くないなって。せっかく6年間歌ってきたので、ここらで変化が必要な年かもしれないでしょうし。
■でも従来のシングルのカップリングなどでは、このような面や世界観を表していたので、これまでずっと聴いて来た方々はそんなに驚かないだろうし、逆に嬉しいと思う方が多そうですよね。「レイちゃんがやっと曝け出してくれた!」って。でも、これまでのカップリングと今回の曲が決定的に違うのは、新曲各々にR&B的な要素を帯びている部分かなと。今までのそれらは、割りとシンガーソングライター然とした印象があったもので。
安田 そこに気づいてもらえたのは嬉しいです。両曲ともこれまでの未明感や夕方、はたまた昼間とは違ったタイプの曲ですからね。どちらかといったら夜や深夜、しかもアーバンな雰囲気が各々あって。
■あとはそれぞれに「沼」感も。(笑) ダメだと知っていながらもズルズルいったり、後ろ髪引かれたり。(笑)
安田 いけない場所に踏み込んでしまい、ズブズブとハマっていく主人公たちですからね、どちらも。私の性格が出てる。(笑) 憧れや願望があるんでしょうかね…?でも逆に共感してくれる方や理解してくれる方も多いかも。「人生何が起こるかわからない」それも今回はベースにしたくて。特に“赤信号”はこれまでの私になかったミステリアスさも上手く出せたし。静かな炎や沸々とした感じも表せましたからね。