ベリーグッドマン VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

47都道府県に来てくれてる人も1人1人大切なピース。

阪神甲子園球場100周年記念事業アンバサダーに就任、47都道府県ツアーと阪神甲子園球場でのワンマンライブ開催を控えているベリーグッドマンが、ニューアルバム『ピース』をリリース。夢の舞台であった甲子園球場に立つ思いを綴った“夢物語”、渾身のコミックソング“サウナ”、2015年に制作されたグループとしての初の提供曲“サクラヒラリ”など、ベリーグッドマンらしさを感じさせつつ、これまでの歩みを感じさせるようなメモリアルな内容となっている。
今回は、そんなベリーグッドマンのRoverとMOCAの2人にインタビュー。各々の楽曲制作スタイルについて、47都道府県ツアーや甲子園ライブへの意気込みについて、たっぷりと話を訊いた。

■ベリーグッドマンは今年の11月に結成10周年を迎えますが、まもなく10周年という実感はありますか?

MOCA やりきった感は特にないですね。自分たちもツアーとかリリースで忙しくさせてもらって、その頑張っていた積み重ねで10年目を迎えられるので、1年1年を一生懸命やって10年を迎えられたのがすごく嬉しいです。まだまだ走れそうだという気持ちになれているのも嬉しいですね。

Rover 10年やったから達成感があるとかは全くなくて、11周年とか12周年とかも同じような気持ちだと思うんです。たまたま10周年の節目で甲子園球場さんと手を組んで、100周年事業を盛り上げることが決まって、本当によかったなとは思いますが。すごく素敵な10年目だなと思います。あとはメンバーの距離感も、9年目より10年目の今の方がいいと感じますし、みんな大人になって、自分の生活もあるし、それぞれの守るべきものもあるので、すごくいい感じの距離感を保てている気がして。ビジネスパートナー感があった時もあったんですけど、今は逆に友達みたいな感じになっていて。これも10年の歴史かなと思います。

■メンバーの関係性が変わったと感じた瞬間はありましたか?

Rover 僕はHiDEXとは中学の同級生で20年以上の仲ですし、どちらかというと犬猿の仲だったので、あまり電話とかもしないんです。制作の時はたまにするんですけど。でも最近、HiDEXに「ありがとう」と言うようになりましたね。今までは言ったとしても勢いで言っていたんですけど、今はちゃんと伝えられるようになって。言うようになってから、あまり今までは言っていなかったなと思いました。

■いい話ですね。

Rover ヒデからは「ありがとう」とは言ってこないんですけどね。(笑) MOCAは10年の時を経て勝負師の目になっていると思います。「こういう曲がいいんじゃないか」とか、10年の経験で培ったいろんな勝負理論みたいなものを持っているので、すごいなと。戦ってきてたんだなと思います。すごくリスペクトしています。

■MOCAさんはメンバーの関係性について変化を感じたりしますか?

MOCA 求めてくれる人たちがいるから、この3人の関係が維持できているところもあるのかなと思うんです。始めの1、2年目を振り返るとやっぱりギラギラしていたし、誰もどうなるかわからへんから、とりあえず「何かやらなあかん」っていう衝動だけで進んでいたのが、いい意味で自分たちのやるべきことが見えてきて、求められていることも実感して。応援してくれている人を飽きさせずにワクワクを届け続けるっていうミッションにコミットしていくようになって。だから、もしベリーグッドマンがなくなって3人とも目指すものが変わった時には、こういう戦友感みたいなのはないんだろうなと思います。同じ喜びと苦しみを10年間同じだけ味わってきたので、それが絆に変わっているのかなと思います。スタッフさんも一緒なんですけどね。

■今回のアルバムのタイトルはシンプルに『ピース』ですが、どんな意味が込められているんですか?

Rover これはHiDEXから突然出てきた言葉なんです。リード曲の“マスターピース”から取ったんだと思いますけど、気付けばいろんな意味でハマっていたんですよ。今年は4月から47都道府県ツアーも始まるんですけど、初めて行く場所も含めて、一つひとつパズルのピースを埋めていくような感覚というか。それで完成した絵が甲子園球場になっているみたいな感覚で、すごい明確な言葉だと思ったんです。

MOCA 47都道府県、1箇所も欠かさずに行くのは、自分たちにとっても初めてですし、そこに来てくれてる人も1人1人大切なピースだという思いも込めてこのタイトルになっています。めちゃめちゃシンプルだったので、怖くはなったんですけどね。『TEPPAN』、『必ず何かの天才』、『すごいかもしれん』って、ちょっとづつボケていってる中で、シンプルに『ピース』って、「大丈夫かな?」みたいな。(笑) 名前で言ったら「太郎」くらい全員が知っている単語なわけじゃないですか。

■確かに。(笑) 平和という意味のピースともかけているのかなと思ったんですが?

MOCA そうですね。自分たちが一番最初に作った曲が“コンパス”なんですけど、平和を願った曲なんです。その平和というのも、自分たちの半径5mくらいの家族だったり、友達だったり、大切な人の幸せを願うという意味なんですけど、そういう決意から僕たちはスタートしていて。“マスターピース”も、今の自分たちが「“コンパス”のような曲をまた作ったらどういう感じになるのか」というところから作った曲なので、繋がっている部分もありますね。

■半径5mの平和を願う曲から始まったベリーグッドマンが、10周年のタイミングで47都道府県に向けてメッセージを届けるようになっているというのは感慨深いですね。

MOCA 不思議ですよね。自分たちはまだ顔も見ていないのに、僕たちのことを知ってくれている人たちが青森にもいるっていう。それを望んで音楽という道を選んだので、これ以上の幸せはないなと思います。

■アルバムはライブの光景を想像しながら作ることが多いんですか?

Rover そうですね。ライブの光景をイメージして楽曲を制作することも多くて、「世の中に名曲を落とし込もう」みたいな気持ちは全然ないんです。「ライブで歌った時にお客さんに喜んでもらえるようにしよう」というのが最大の目的で、それが自然とみんなに愛される曲になるっていうのが理想かなと思っているので。今回も47都道府県ツアーをイメージしながら作った曲が多いですね。

■今回のアルバムはどのタイミングで制作していたんですか?

Rover “サクラヒラリ”は提供曲で、2015年にできていた曲ですし、“もしもいつか”もHiDEXのソロ曲として4、5年前くらいに作っていたもので。“夢物語”も年始に先行配信していたものなんですけど、それ以外は11月末くらいですかね。前作アルバム『すごいかもしれん』をリリースして1ヵ月くらい経ってからだったと思います。“マスターピース”以外は8日間ぐらいでデモを出したような気がします。

■すごく早いですね。

Rover というのも、本当は正月に休みたかったんですよ。働きすぎて嫌いになりたくなかったんです。僕は曲を作っている時、すごく殺気立っていると思う。それで性格悪くなるのも嫌やし、疲れるのも絶対に良くないし、ベリーグッドマンのことを嫌いになりたくないし。でも期限は決まっているわけじゃないですか。期限を決めたのも自分たちなんですけど。なので、早くできるものは早くやりたいなと思って、その後に「一回冷静になっていいものにアップデートしよう」という感覚で作ったのが今回の作品なんです。逆に無理したなとは思いましたけど、でも出来上がったものは正解だったと思っています。

■Roverさんの制作スタイルとしては、ご自身を追い込みながら進めることが多いんですか?

Rover そういう曲の方が多いかもしれません。めっちゃ優柔不断なので、途中まで作ったものを捨てる時もあるんですけど、「これ嫌や」とか、「何がいいかわからへん」とか、独り言を言うんですよ。「そんなもん何がいいねん、誰が聴くねん」みたいな。なんか悲しいなって思いますよ。(笑) ただ、めっちゃこだわりを持って作っています。後輩の歌とか新譜とかを聴いてめっちゃいいなと思うけど、それに全然負けていないと思いますし、まだまだいけるなって思う。でもその一方で、MOCAとかが出してきた “オドリバ★ジャポニカ”とか“Ame”のメロディーを聴いて、俺はどんだけ生まれ変わってもこのメロディーは出されへんなとも思います。HiDEXの“もしもいつか”も、僕は2番の平歌を歌っているんですけど、めっちゃ難しいんです。今回も結構追い込んで作りましたけど、その余裕のない感じも47都道府県っぽい気がしますし、僕の中ではかなり上位にくる好きなアルバムです。

■ちなみにMOCAさんの制作はどんなスタイルで行うんですか?

MOCA 僕はめっちゃマイペースです。とはいえ、せっかちなので早く終わらせたいんですけどね。(笑) でも自分が作りたい曲だけを作って完成するわけじゃないので、2人の感じを見ながらではありますね。今回はRoverがかなりハイペースでやってくれていると感じていたので、「俺は何もせんでええか」と思ったりしつつ。(笑) HiDEXはゆっくりのんびりいこうというタイプなので、ちょうど中間くらいの位置を保ちながら進めていました。

Rover 今回は「ちょっと早すぎる」とヒデに怒られましたからね。

MOCA 12月30日くらいに終わらせて、1日から4日はゆっくりしようと思っていたんです。でもヒデ的には1月1日から仕事する予定だったらしいんですよ。

Rover ただ、我々もアルバム以外の楽曲制作やアレンジ作業もあったし、そういうのが入ってくるのは分かっていたので、年明けは絶対忙しくなると思っていたんです。だから今しかないだろうみたいな。蓋を開けたら本当にそうなったので、やっぱり早めにやっておいて良かったですね。もしアルバムを早く作りすぎて、その後が暇だったら、めっちゃヒデからいろいろ言われていたかもしれない。(笑) ヒデが一番マイペースで、僕は仕切りたがりなんですけど、今回は過酷な作業を強制してしまったかもなと反省もしています。でもそこからしか出ない底力みたいなのはちょっと感じられたので、それはそれで良かったです。

■年始にリリースされた“夢物語”は、11月に行われる甲子園でのライブに向けて作られた曲なんですよね?

Rover そうですね。応援してくれた人に対しての感謝状です。僕たちはもがきながらやってきましたけど、ここまで頑張ってきて、夢をつかめたのはみんなのおかげなので。でもお涙頂戴みたいにするのは嫌だったので、アッパーチューンを作ろうかなとも思ったんですよ。それこそ“オドリバ★ジャポニカ”とか“サウナ”みたいな。でも11月に甲子園ライブを発表して、「僕たちはそれに向かっていきます!」って言っている時期の新年一発目で“サウナ”みたいな曲は違うか……みたいな。(笑) 「しっかりみなさんに感謝を伝えて出発しよう」という曲ですね。

■“夢物語”は『すごいかもしれんツアー』の東京公演でも披露されていましたが、いかがでしたか?

Rover LEDパネルに甲子園の写真とかも載せてもらって、歌詞もしっかり出してもらって歌った時、甲子園球場で歌ったらすごいことになるなと思ったんですよね。この曲を甲子園で歌うために頑張ってきたし、応援もしてもらったし。甲子園でこの曲を歌うことが最大の夢かもしれないですね。それと同時に“オドリバ★ジャポニカ”も歌いたいですけどね。(笑) このバランス感がめちゃくちゃ僕たちらしいと思います。

■MOCAさんは元高校球児でもありますし、“夢物語”に対する気持ちもひとしおなのではないですか?

MOCA この曲は地下鉄に乗りながらトラックを聴いて、何を歌おうかなと考えていたんです。「自分にしか歌えない歌詞って何やろ?」って思って、気がついたらこの歌詞を書いていて。次の日に聴いて、恨みつらみが根深い男なんだなと思いました。(笑) 野球を愛しすぎて、野球には微笑んでもらえなかったので、引っ越しする時に野球道具は全部捨てたんです。グローブもユニフォームも全部捨てて。ユニフォームは背番号はなかったんですけど、何か文字を入れないとダメだったので、「大声」って書いてあって。(笑) 「あの日と変わらず大声で 誰よりも叫んでやる」というリリックもそこから出てきたんですけどね。それからベリーグッドマンを結成して、なぜかアスリートだったり、プロ野球選手に多く登場曲として使ってもらって、「野球の方から寄ってきてるやん」っていう感覚もあって。それで甲子園でライブができるっていう。何とも不思議な縁ですよね。「ようやく野球に愛してもらえる時がやってきたか」っていう。感動というか、嬉しさがありますね。

■改めて語っていただくと、すごい物語ですよね。

MOCA おかんに「甲子園決まったわ!」って言ったら「ありがとう!」って言われました。「ありがとう」なんや……と思って。

Rover へぇ~。でも「ありがとう」なんやろな。それで何て返したん?

MOCA 「こちらこそありがとう」って。

■お母様も感慨深いと思います。“オドリバ★ジャポニカ”は賑やかなダンス曲ですが、どんな発想で作られた曲なんですか?

MOCA 僕は毎日サウナに入るんですけど、サウナで曲が降って来たことがないなと思っていたんですよ。そうしたら別の日にサウナに入っていたら、この曲が降ってきて。慌てて脱衣所に戻って、脱衣場では携帯を出せないのでコインロッカーの中で「ヒザが笑うほどに踊れ」ってサビまでを録りました。(笑) ツアーでライブハウスを多く回るので、Roverがアッパーソングを多めに入れたいって言っていて、「これは俺が出さなあかんやつや」と思っていたんです。その責任から降ってきたんだと思います。

Rover でもこの曲は良い曲ですよ。なんか元気になるというか。しょうもない曲ですけど。(笑)

MOCA こういう意味のない曲を何曲も出したいですね。

Rover ヒデのヴァースなんて、何言ってるかわからへんもん。(笑)

■(笑) でも意味のない歌詞を連ねることができるのもまた才能だなと感じます。

MOCA ルーツにB-⁠DASHの“ちょ”とか、氣志團さんの“One Night Carnival”がありますし、それでヒットを作っているのとか、すごく尊敬するんですよね。自分もどちらかと言うと、こういうので売れていきたいみたいな野望もあるので。こういうのを出しておかないと応援ソングが作れないので、バランスとしては必要なんですよ。