Bialystocks「Bialystocks 2nd Tour 2023」ライブレポート＠EX THEATER ROPPONGI

ツアー追加公演で繰り広げた濃密な一夜。

9月10日、Bialystocksによる全国ツアー「Bialystocks 2nd Tour 2023」の追加公演がEX THEATER ROPPONGIにて行われた。ライブはステージの幕が閉じたままからピアノソロが流れ、“Nevermore”の歌い出しとともに幕が開く。スタンディングでぎっしりと埋まったフロアからは熱い歓声が上がり、イントロで菊池剛(Key)と共に迫力たっぷりのバンドが合流する。この日は朝田拓馬(Gt)、Yuki Atori(Ba)、小山田和正(Dr)、秋谷弘大(Syn/Gt)、そしてコーラスにオオノリュータローと早川咲の2人を迎えた編成。決して派手ではないが、音の厚みを感じさせるサウンドはゴージャスで、聴きごたえが抜群だ。そんなバンドを率いる甫木元空(Vo)のパワーにも圧倒される。楽器隊に寄り添って揺蕩うような柔らかさを備えたボーカルでありながら、厚みのあるバンドサウンドの中心でどっしりと構えた存在感と華やかな声色がバンドをまとめあげ牽引する。

拍動のようなドラムから“コーラ・バナナ・ミュージック”に繋がると、スラップベースと混沌とした歌詞がディープな印象を演出し、続く“花束”の序盤では揺らめくようなボーカルでギャップを作り出す。呟くような、それでいて段々と駆けあがっていく迫力ある歌声とともに、ドラムのゆったりとしたリズムにギターとピアノが彩りを添える“またたき”では穏やかな静けさが演出され、しなやかなバンドサウンドが描き出すサウンドスケープで会場を魅了した。丁寧かつフランクな挨拶を挟んで披露した“Emptyman”では一転し、アコギとウッドベースの温かさとカントリー調の陽気な曲調が明るく開けた空気を生み出す。シンセサイザーの音色がぬくもりを演出した“Over Now”では、甫木元の歌声が跳躍するメロディーを奔放に、かつ的確に駆け回る。浮遊感のある“ただで太った人生”、2人のコーラスとともに描き出した“差し色”と、生活に寄り添うような穏やかな楽曲を続けると、曲終わりからじっくりとベースソロを聴かせ“朝靄”へ。曲が終わるとそのままドラム、ベース、鍵盤による静かな繋ぎからシームレスに“All Too Soon”に突入し、間奏やアウトロではたっぷりのセッションを聴かせた。甫木元の歌声はリラックスしたような柔らかなものから朗々と歌い上げるようなものまで細かくニュアンスを変化させており、自由自在な印象。その力まない様子に、会場の空気も時間を追うごとにほぐれていくような感覚がある。

甫木元の渾身のハイトーンボイスが圧倒した“灯台”から、歌詞をじっくりと聞かせるような“フーテン”へと、ライブは後半に差し掛かっていく。楽器ごとのサウンドメイクから感じられるこだわりや総勢8人というスケールのバンド編成は決して簡素と表現するべきものではないが、しかしその洗練されたサウンドが作り上げる緻密でありながらシンプルな音楽が、ゆったりとした時間を作り上げていった。“あくびのカーブ”では、甫木元がカメラを持ち、メンバーを映す場面も。ステージ背後のスクリーンには甫木元が映している映像が表示され、その臨場感にオーディエンスも熱気を増し、映されたメンバーは演奏をヒートアップさせる。かと思えば、冷たい静けさを感じさせる“Winter”に続いて振れ幅を感じさせる。その流れは、それぞれの楽曲の魅力を引き立て合うようだ。

Bialystocksのライブの醍醐味のひとつに、楽曲に積極的に施されるライブアレンジがあるだろう。“頬杖”は中でもこの日のハイライト的存在。軽快なコーラスとの掛け合いや甫木元の声色、キーボードの軽やかな演奏が「さぁ明日はどこへ行こうか君とならどこまでも行けそう」という歌詞にぴったりな一方、ラスサビ前ではロック調のアレンジで獰猛に表情を変えた。更にファンクやジャズ、ロックなど様々な要素を感じさせる“I Don’t Have a Pen”で会場の高揚も最高潮になると、“Branches”、“Upon You”と続けた後、「こんなにたくさんの人とツアーを6箇所周回れて、我々も楽しい日々でした。また一緒に音楽を楽しむことができたらいいなと思います」と甫木元が語りかける。最後には“光のあと”をドラマチックに披露し、本編を終えた。

アンコールでは“日々の手触り”、“雨宿り”を披露した後、秋にテレビ東京ドラマ24『きのう何食べた？ season2』のエンディングとなる新曲「幸せのまわり道」をリリースすること、翌年1月に2人編成でのホールライブを行うこと、そして本公演がスペースシャワーTVにて放送されることといった告知もたっぷりと解禁された。静けさと情緒を含んだ楽曲に、生演奏の臨場感と表情をがらりと変えるライブアレンジを盛り込んだ本公演。音楽の喜びを感じさせるような、濃密な一夜となった。

Text：村上麗奈
Photo：Kana Tarumi

https://bialystocks.com/

Bialystocks「Bialystocks 2nd Tour 2023」＠EX THEATER ROPPONGI セットリスト
01. Nevermore
02. コーラ・バナナ・ミュージック
03. 花束
04. またたき
05. EMPTYMAN
06. Over Now
07. ただで太った人生
08. 差し色
09. 朝靄
10. All Too Soon
11. 灯台
12. フーテン
13. あくびのカーブ
14. Winter
15. Thank You
16. 頬杖
17. I Don’t Have a Pen
18. Branches
19. Upon You
20. 光のあと

ENCORE
01. 日々の手触り
02. 雨宿り
https://bialystocks.lnk.to/2ndTour_2023